Movie Review 1999
◇Movie Index

恋に落ちたシェクスピア('98アメリカ)-Mar 5.1999オススメ★
[STORY]
1593年ロンドン。スランプに陥っていたシェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)はどうにか新作コメディを書き始めた。そしてその芝居のオーディションに現れたトマス・ケントという青年の演技に惹かれ、彼の後を追い掛ける。たどり着いた場所は商人の豪邸で、そこで彼はヴァイオラ(グィネス・パルトロウ)という女性に運命的な恋をする。
監督ジョン・マッデン(『QueenVictoria 至上の恋』
−◇−◇−◇−
こういう映画を見ると、リアルな映像じゃないストーリーが嘘臭いなどと文句を言ってた自分を忘れてしまいそうになる。映画なんだから嘘でも夢でもいいじゃない〜と180度違った考えになっちゃう。まさにシェイクスピアと彼の作品を愛する人たちが作り上げたおとぎ話だ。そして何とも贅沢なキャスティングのアンサンブルが素晴らしい。

まずはグィネス。首が長くて眉が薄いせいか(笑)アメリカ人なのにこういうクラシカルな衣装がよく似合う<姿勢は悪いけど。そしてトマスとして男装した時(昔は女は舞台に立ってはいけないという掟があった)のその貧相な顔(失礼)がそれなりに男っぽく見えるのもいい。どちらかというと私は『エマ』の時のほうがいいと思うが、この役は女優冥利に尽きるというか、イイ役もらって得したね〜と言いたい。いや私はグィネス好きだよ。

そしてルパート・エヴェレット&コリン・ファースという『アナ・カン』な2人が出てるのもニヤリだ。ルパートはゲイの劇作家役でそのまんまだし、コリンは『イングリッシュ・ペイシェント』でレイフ“長男”ファインズに奥さんを寝取られる役だったが、今回はジョセフ“末っ子”ファインズにやっぱり婚約者を寝取られる役で(ホントにそれを狙ったのかどうか知らんが)笑える。ファインズ一家には相当な恨みつらみがあるだろう(笑)

そして1番のお気に入りはトム・ウィルキンソン演じる借金取り。最初はオーナーから取りたてるために通っていた劇場と芝居にだんだんのめり込み、シェイクスピアの芝居に感動し、小さいながら役柄をもらって大喜び。セリフを何度も練習し衣装にも力を入れてしまう。いいなぁその気持ち分かるなぁ。また練習では吃ってばかりいた男が本番で堂々とセリフを言うシーンには鳥肌が立った。舞台から客席を見た時の異様な圧迫感を捉えたカメラがまたいいんだ。そう、まさにこれなのよ!と見ながら何度も肯いた。自分もちょこっとだけど演劇やってたせいか、芝居を作り上げる様を描いた話は大好きだ。

そんでもってシェイクスピアとヴァイオラの秘めた恋があの『ロミオとジュリエット』という芝居に転じていくところは鮮やか。史実でないと分かっていても上手いと思う。さらにヴァイオラという名、男装と聞いてすぐに思い付く『十二夜』の原形もここで産まれるのがミソ。ま、客観的に見れば感動するような話じゃないけれど、見てる間じゅう変な演劇熱に浮かされ続けた私にとってはおなかいっぱいになる映画でした。
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ヤジャマン 踊るマハラジャ2('93インド)-May 1.1999
[STORY]
民衆から慕われているヤジャマン(ラジニカーント)と金持ちで悪党のワッラワラーヤはことある毎に衝突している。2人とも美しい娘ワイティーシュワリ(ミーナ)に恋しており、彼女を巡って牛車レースを行ったところ見事ヤジャマンが勝利した。結婚した2人を妬んだワッラワラーヤは、ワイティーシュワリに毒を盛って子供を産めない身体にしてしまった。
監督&脚本R・V・ウダヤクマール
−◇−◇−◇−
『2』と銘打っているが『ムトゥ 踊るマハラジャ』より前に作られた作品だし、ラジニとミーナちゃんが共演したってだけで、設定や役柄も全く違う。S・セガールの『沈黙シリーズ』とか、共通の出演者もいないくせに『マイ・シリーズ』などと勝手にシリーズ化している映画(『マイ・ライフ』や『マイ・ルーム』など)と同じようなもんだと思えばよろしいか(笑)

『ヤジャマン』はとてもシリアスなドラマだ。笑えるシーンはほとんどなくストーリー性が高い。アクションも派手さがなくキレもないが、1発殴るごとにヤジャマンの怒りと悲しみが伝わってくる。昔は日本でも子供の産めない女は実家に帰されたという話があるが、インドのしかも地方では特に子供が出来ないのは肩身の狭い思いをするのだろう・・・ってここまで書いて思ったんだけど、『ムトゥ』ではそういったごちゃごちゃしたことを削ぎ落として、エンターテイメントとして映画作りをしているように感じる。その次の『アルナーチャラム』なんて一切取っ払った感じだもんね。ストーリーは見せ場を盛り上げるための付属品にすぎないと。でも踊ったり派手なアクションしたりするラジニのほうが好きなので、というかまさにそれを見に行って喜んでるわけだから、ここで鹿爪らしくストーリーを語ってもしょうがないっつーかウソくさいかな、と思ったのでここまでにする。3本見てみて分かったさ。私は娯楽としてラジニを見たいんだ〜!

音楽はインドでは大御所と呼ばれているらしいイライヤラージャという人。リズム重視のラフマーンと違ってこっちはあくまでも歌詞を伝えるってことを重要視したメロディラインらしい。そのせいかやっぱりほとんど曲を覚えてないしあんまりいいとは思わなかった(笑)字幕がなければ言葉なんて分かんないんだから、やっぱりリズムや覚えやすいメロディに惹かれてしまうのはしょうがないやね。ちなみに無責任カタカナ歌詞カードはもちろん買いましたとも。オルバンオルバンオザラ〜リ〜♪

ラジニカーントにソックリなスーパースター見習い『ヤジャマン』レビューもどうぞ。
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8MM('99アメリカ)-May 1.1999
[STORY]
大富豪の遺品だった8ミリフィルムには、リアルな殺人シーンが映されていた・・・。富豪夫人は探偵のトム・ウェルズ(ニコラス・ケイジ)に8ミリの真偽を調査するよう依頼する。トムは殺された少女の身元を突き止め、彼女が女優になるためハリウッドへ行ったことを知る。
監督ジョエル・シューマッカー(『評決のとき』
−◇−◇−◇−
ポルノショップ経営者役のホアキン・フェニックスが着ているTシャツがいま人気らしい。浮世絵を刺青風にデザインしたやつで、私は見たとき笑っちゃったんだけどまさか売れセンだったとは。ホアキンはまだ若いくせにちょっと出っ腹であんまり似合ってなかったけど、リバー@兄ちゃんに似てない不細工さ加減がかえって色々使い勝手がありそうで嫌いではないです(笑)

トムはビデオの謎を追ううちに殺された少女と母親に同情し、自分も娘を持つ親として、いつのまにか探偵として調査するという行為から逸脱し、自ら少女の仇を討とうとする。悪くないんだけど、スナッフビデオによって自我が崩壊してしまったり裏の世界へ足を踏み入れてどうしようもなくなっちゃたり、というのをケイジが演じるだけに期待してしまっていた。まぁそうじゃなくても、トムが調査よりも復讐に燃えるヤツになっちゃう過程を上手に描いてなかったのが不満足の理由かな。ビデオやポルノの描写もそれほど嫌悪感を感じるようなものではなかったんで(肝心なところはトムの驚愕の表情カットが入るのだ〜)トムの行為に途中からついていけなくなってしまった。

あと音楽があんまり合ってなくてそれにも違和感。だけど犯人の家に侵入したシーンで、音楽でなく、掛かっていたレコードの曲が終わって、針がブツッ、ブツッ、とする音だけがするところがある。このブツッ、ブツッ、というのが緊張したトムの心臓音みたいでこれは良かったな。

(ここからネタバレ)また黒マスクの男の顔は絶対にファントムみたいに崩れた顔だと断定していたせいか、マスクの下が平凡で、なおかつメガネを掛けた顔がどこにでもいそうな顔だったのでかえって驚いた。こんなヤツがあんなに残虐なのか〜!ってね。この意外性は今までにない感じで買います。迫力なくてつまんなかったけどね<どっちなんだよ(笑)(ここまで)
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デッドマンズ・カーブ('98アメリカ)-Apr 29.1999
[STORY]
「もし学生が自殺したら、同室のルームメイト全員にオールAを与える」というデッドマンズ・カーブと呼ばれるルールを悪用して、ルームメイトのランドを自殺に見せかけて殺そうと企むティム(マシュー・リラード)とクリス(マイケル・ヴァルタン)。計画は実行され、彼らはオールAを獲得することができたかに見えたが・・・。
監督&脚本ダン・ローゼン(デビュー作)
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ティム役のリラードは『スクリーム』のスチュアート役で出演していたあの兄ちゃんだ。日本にもこういう顔のお調子者でズル賢い奴がクラスに1人はいる。しょっちゅう何かよからぬことを企んでいて、勉強よりもそっちにうつつを抜かしてるような奴。このストーリーも「人を殺すことに画策してる暇があったらしっかり勉強しれ!」って真っ先にツッコミ入るような内容だけれど(笑)悪知恵というやつは勉強では培われないもの。最終的にはオールAが目的ではあるけど、いかにバレずに上手にやるか、人を騙せるかという過程に快感を感じるような気がする。そういう意味ではリラードはまさにハマリ役でしょう。うまくランドを殺してからも「まだ何かやるつもりだな?」と思わせる嫌な雰囲気をプンプン臭わせてうまい。

一方、ティムにそそのかされて片棒を担ぐことになったクリスは真面目だけが取り柄のような何も考えてなさそーな、いかにも騙されそうな兄ちゃんで、コイツは何だか草刈正雄に似ている(笑)<以下、草刈と呼ばせてもらうぜ

展開としては『ワイルド・シングス』のようなドンデン返しがドドドドッと起きるんだけど、こちらのほうがそれはうまいと思った。出演者がそれほど有名じゃないし、エンディングテーマも「DEAD MAN'S CURVE!」を連呼するチープな唄だし(笑)最初からB級C級を意識したような作りとストーリーがマッチしているし、見ているほうもそれと分かっているからある意味、安心してニヤニヤしながら見ていられた。

でも違和感はやっぱりたくさんある。ドンデン返しを狙ったものの多くにありがちなご都合主義やら展開やら、拾い出したらキリがない。見ている間には観客に考えさせないよううまく隠してはいる。だけど気になったのは(ここからネタバレ)結局クリスとランドがグルだったというのはいいけど、草刈が実は狡猾なヤツだったという伏線がもうちょっとあってほしかった。それが1番の違和感。そしてランドの恋人の自殺は筋書き通りだったのか?また全てお見通しのような表情を見せる精神科の女医も気になる。彼女も実はどこかで絡んでいる、というならもっと面白かったのにと思った。(ここまで)
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キャメロット・ガーデンの少女('97イギリス=アメリカ)-Apr 29.1999
[STORY]
ケンタッキー州にある高級住宅地キャメロット・ガーデンに、デヴォン(ミーシャ・バートン)という10歳の少女の家族が引越してきた。ある日、デヴォンはキャメロット・ガーデンの外に出て森をさ迷ううち、トレーラーに住むトレント(サム・ロックウェル)という22歳の青年と出会う。デヴォンは彼に興味を持って毎日のように森を訪れるが・・・。
監督ジョン・ダイガン(『妻の恋人、夫の愛人』)
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デヴォン役のミーシャちゃんの演技にはびっくりした。大人が考え、大人の願望をたっぷり込めたセリフを、ほぼ自分のものとして発している。言わされてるんじゃなくて、1度自分の中で咀嚼して言っているのだ。そこが凄い。その彼女のおかげで卑しい大人の思惑が少し薄れたのが救いでした。

でなければもっと酷い作品になっていただろうと思う。だってストーリーのどれを取っても中途半端で類型的だから。特にデヴォンとトレント以外のキャラクターがありがちすぎる。外面はいいけど傲慢なデヴォンの父と、夫に隠れて若い男と浮気する母、そして金持ちだけどやっぱり傲慢なトレントの同級生たち。彼らをありがちな存在にすることでデヴォンとトレントの2人を際立たせる効果を狙ったのかもしれないけど、結局はこの2人に他の人物たちが絡んでくるんだから、そこまでしっかり描いてくれないとねぇ。だからクライマックスからラストへの持って行きかたが無理矢理すぎてかなりガッカリ。ある程度、予想はしてたけどまさかそう来るとは。収拾つかなくてタオルどころか全部放り出しちゃいました〜みたいな。やはりここは「これはファンタジーだから」と思うしかないのかしら。それにしては現実との融合がうまくできてないのが難点。

でもその中ではトレントの両親と会うシーンはちょっと良かったな。朝鮮戦争で身体を壊した父と母が年金で細々と暮らしている。身体がおかしくなったのは国の所為だけれど、父は国旗を大切にしているところがトレントには歯痒い。ここらへんのエピソードに涙してみたりして。屈折したトレントの過去が分かる1シーンではあるけれど、直接デヴォンとはあんまり関係ないのね。かえってこっちをメインにしてくれたほうが、大感動したかもしれない。でもしたら全然違う映画になっちゃうのか(笑)
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