Movie Review 2003
◇Movie Index

シカゴ('02アメリカ)-Apr 19.2003
[STORY]
1920年代のアメリカ、シカゴ。ショーのトップスターを夢見るロキシー・ハート(レニー・ゼルウィガー)は、夫がいる身でありながら、ショーに売り込んでやるという男と浮気をしていた。しかしそれが嘘だと分かると逆上し、男を撃ち殺してしまう。逮捕されて留置所に移送されたロキシーは、そこで夫と妹を殺して拘留されているスターのヴェルマ・ケリー(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)を目にする。ヴェルマは敏腕弁護士のビリー・フリン(リチャード・ギア)を雇って無罪を勝ち取ろうとしていた。
監督ロブ・マーシャル(舞台の振付や演出を経て映画監督デビュー)
−◇−◇−◇−
第75回アカデミー賞で、作品賞、助演女優賞(ゼダ=ジョーンズ)、美術賞、衣装デザイン賞、音響賞、編集賞の6部門を受賞。

振付師であり演出家であり映画監督でもあったボブ・フォッシーの傑作ミュージカルを映画化──ということなのだが、私は舞台を見たことがないので比べようもなく、ストーリーも全然知らなかったので、 どんな風に話が転がっていくのか全く想像つかなくてかなり楽しめた。
ミュージカルだというから、初っ端から道端でいきなり踊りだしたらどうしよう?なんて思ってたんだけど、最初のミュージカルシーンはヴェルマのステージという現実世界からスタートしたのですんなり入り込めた。その後のミュージカルシーンはほぼ登場人物たちの脳内で行われていて、現実部分ときっちり分かれている。それでも切り替えがうまいのか両者が乖離している印象は全くない。むしろ映画として見せるにはベストなやり方だと感心。私のようにミュージカル慣れしてない人でも引かないように作られているのね。

キャストではやはりゼタがイイ女過ぎてシビれた。悪女なのになりきれてなくて、人の良さそうな姐さんっぽいところが出ちゃってるところもかえって魅力的(ゼルウィガーは内面から性悪っぷりが出てたもんね←これは褒め言葉)多少修正してるかもしれないけど声質もよく歌も上手かったし、肉付きが良くて見とれてしまった。ゼルウィガーが筋肉質で胸もひっこんじゃってて(『ブリジット・ジョーンズの日記』などで太った役が多かったから痩せるの大変だったと思うけど)全然セクシーじゃなかったので余計にね。2人が並んで踊っててもついゼタを見てしまったよ。

そしてギアが思ったよりもずっと良かった。見直した。彼のファーストショットは思わずプッと吹き出しそうになるほど可愛らしいの。女優たちをうまく引き立てながら、自分の見せ場もちゃんと演じてたと思う。でもタップシーンは、苦労したと思うけど細かいカット割りをせずにもう少しきちんと見せて欲しかったな。

ミュージカルシーンはどれも見ごたえあってよかったんだけど、ロキシーの夫が1人寂しく踊るシーンは、このシーンがあるからこそ他が引き立つのだろうし、ここが好きだという人も多いだろう。でもワタシ的には退屈だった。ここで集中力が途切れてしまって思わず腕時計を見てしまった。申し訳ないが彼の歌もセロファンのようにすぐ素通りして欲しかった(鬼?)
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リベリオン('02アメリカ)-Apr 5.2003オススメ★
[STORY]
第三次世界大戦後、人類は戦争を防ぐために感情を抹殺することを決定し、毎日プロジウムという精神安定剤を打ち、絵画や音楽を楽しむことを禁じた。プロジウムを拒否した反逆者は、クラリック─聖職者─と呼ばれるGUN=KATAの達人によって次々と打ち倒されていった。実力NO.1のクラリックであるジョン・プレストン(クリスチャン・ベール)もまた、何の疑問もなく反逆者たちを取り締まっていたが、違反した仲間を殺したことで4年前に違反行為で処刑された妻のことを思い出し、少しずつ感情を取り戻していくが・・・。
監督&脚本カート・ウィマー(『ラストリベンジ/怒りの標的』)
−◇−◇−◇−
製作は『スピード』のヤン・デ・ボン。ウィマー監督は本作で監督2作目だが『スフィア』や『トーマス・クラウン・アフェアー』などの脚本も手がけている。

ビックリしました。これ傑作だね(B級アクションの)みんなこういうの見なきゃダメだよ!(笑)『マイノリティ・リポート』みたいな近未来管理社会で『マトリックス』みたいなゲーム系アクションをかましつつ「どうする〜?アイフル〜♪」と悩む主人公。ありがちな話ではあるけれど(いや、アイフルはないだろうよ)主人公が侍風情でとてつもなくカッコイイのです(長ランのくせによぅ)ああ〜クリスチャン・ベールをカッコイイと思ってしまう日が来ようとは・・・。でもあれはクリスチャン・ベールではなくてジョン・プレストンなので。

とにかくGUN=KATAが最高。GUN=KATA(ガン=カタ)とは銃の型のこと。銃を撃つにも相手からの弾をよけるにも決められたフォームがあるってことらしい。これをマスターしてるクラリックは最強なわけだ。映画ではすぐに彼の実力は見せない。真っ暗闇の中で轟音と敵の倒れる音しか聞かせない。そういう焦らしがまたカッコ良さを引き立たせているのだ。そして次の戦闘シーンではしっかりとGUN=KATAを見せてくれる。もうね、これ見ると笑っちゃうよ。うまく説明できないのでぜひ見て欲しいなぁ。

ストーリーはよく見れば辻褄合わないし、きちんと作ろうと思ったら破綻すると思うし、展開も予想通りなんだけどあまり気にならない。独特の世界観を作り上げているからだろうか。何の飾り気もないビル群と黒ずくめの人々がゾロゾロ歩いていく姿のビジュアルがいい。表情も色もない世界だからこそ、反逆者マリー(エミリー・ワトソン)の口紅の色や、涙を流すプレストンに切なくなってしまうのだろう。何でとっ捕まったのにマリーは化粧濃いんだよとツッコミを入れていたが、こういう効果を期待したのならばまぁ許す。

プレストンがスッゲカッコ良かった分、ショーン・ビーンやウィリアム・フィッチナーの使い方が勿体無くてもどかしかった。彼らのようなクセのある役者を起用したのだからきっと何かあると期待したのに何もなくてね。特にショーン・ビーンの役柄にもう1つアクセントがあれば、マリーの役にも重みが出ただろうに。そのあたりは下手くそ。でもDVDが出たら何度か見返すだろうな。
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ヤマムラ・アニメーション図鑑('03日本)-Apr 5.2003
[EXPLANATION]
アニメーション作家・山村浩二の短編アニメ10本を公開。
『水棲』(1987)ハイビジョン・アワード'92ハイビジョン推進協会会長賞受賞 他
『バベルの本』(1996) シカゴ国際児童映画祭大人の審査員が選ぶアニメーション第1位 他
『カロとピヨブプト─おうち』(1993)シカゴ国際児童映画祭アニメーションフィルム最優秀監督賞受賞 他
『キッズキャッスル』(1995) 第12回テヘラン国際青少年映画祭国際コンペティション入選 他
『遠近法の箱』(1990)
『カロとピヨブプト─あめのひ』(1993)シカゴ国際児童映画祭アニメーションフィルム最優秀監督賞受賞 他
『キップリングJr.』(1995) シカゴ国際児童映画祭特別名誉受賞 他
『カロとピヨブプト─サンドイッチ』(1993)シカゴ国際児童映画祭アニメーションフィルム最優秀監督賞受賞 他
『どっちにする?』(1999) オタワ国際アニメーション映画祭Children's film 最優秀賞 他
『頭山』(2002)第75回アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネート 他
−◇−◇−◇−
『頭山』が見たくて行ってきた。初日1回目だったので山村さんの挨拶もありました。映画を見た後だったんだけど、山村さんて『頭山』の主人公にちょっと似てると思った(笑)

私が普段考えてるアニメとは違って“動く絵本”という感じがした。色えんぴつや粘土、また写真を使った作品もあるという。作風がどれも全く違うので、同じ人の作品とは思えないほどだった。またセリフや音楽ではなくボイスパーフォーマンスを起用しての絵と音で楽しませる作品(『キッズキャッスル』)もなかなかいい。子供はこういうの好きそう。
それからやはり最新作の『頭山』はとても完成度が高いと思った。桜が咲いて人が徐々に溢れて騒ぎ出す様子、これが浪曲師の国本武春が三味線と語りもあいまって、アニメというより紙芝居のようで、でもやっぱりアニメなのよね。この演出が面白かった。

はじめはショートフィルムのような感覚で見てしまったせいか、物語の最後にすごいオチを期待してしまって「なんだ何もないのか」とか「これだけ?」などと思っちゃったりしました(笑)正直オチはどれも微妙かな(『カロとピヨブプト』と『頭山』以外)ストーリー的にもう少し面白ければ、短編アニメらしい瞬発力で見せる作品があればなぁと、ちょっと思った。
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能楽師('02日本)-Apr 5.2003
[EXPLANATION]
観世流シテ方の関根祥六と祥人の舞台と稽古、そしてインタビューを収めたドキュメンタリー。佐野史郎が世阿弥の言葉を朗読している。
監督・田中千世子(『藤田六郎兵衛 笛の世界』)
−◇−◇−◇−
能は好きなんです。実際見に行ったことはないけど。学生の時に能を勉強するクラスを取っていました。講義中にウトウトしてばっかりだったけど。今回はそのダメダメ学生時代を反省するべく見に行ってきました。劇場内の平均年齢高かったなー。

能のどこがいいのかというと、やはり無駄のない美しさなんだろうな。華美な舞台装置もなく、面1つで喜怒哀楽すべて表現できるところ。祥六氏が、気持ちを表現するよりもまず形を大事にするというのもよく分かる。気持ちを表現しようとして無駄な動きが増えて基本の形が崩れてしまったらそれは美しくないだろう。また、現代まで守り続けた形をそのまま未来まで繋げてゆく役目も担っているんだろう。形を変えた時点でそれはもう違うものになってしまう。その違ったものが受け継がれていたら・・・と思うとゾッとする。変わっていってもいいものもあるだろうが、変わって欲しくないものもある。それが能なんだと思う。

そして美しかったといえば祥六氏と祥人氏のインタビュー時の佇まい。背筋をピンと伸ばして正座した姿に無理がない。また父子なんだけども、それよりもまず師と弟子であり、その距離感がとても良かった。

映画は能初心者の私でも知ってて、一番面白い場面『道成寺』の一番の見せ場、白拍子が舞って鐘の中に入り、蛇体の鬼女となった姿を現す場面を見せてくれる。白拍子の足遣いについてや、鐘を下ろす仕事(鐘後見)の難しさの説明が事前にあるため、さらに分かりやすく面白い。またこういう派手な演目よりも老女を演じるほうが難しいというのも頷ける。ホント、いちいち感心するばかりでした。

面白かったといえば、祥人氏の意外な趣味というか特技。サッカーがすごく上手い。あのバランス感覚は日ごろの稽古のおかげなんだろうか。凄いな。
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ピノッキオ('02イタリア)-Apr 2.2003
[STORY]
真夜中、フィレンツェの町にネズミの馬車が駆け抜ける。乗っているのは青い妖精(ニコレッタ・ブラスキ)。道に迷った彼女が青い蝶を放つと、蝶は町を明るくして、荷馬車の丸太にいたずらをした。丸太は町で大暴れし、ジェベット爺さんに拾われた。ジェベット爺さんは丸太で人形を作り、ピノッキオ(ロベルト・ベニーニ)が生まれた。
監督&脚本もロベルト・ベニーニ(『ライフ・イズ・ビューティフル』
−◇−◇−◇−
『ライフ〜』でアカデミー賞主演男優賞を受賞した男が、本作でラズベリー賞主演男優賞を受賞した。・・・すっごい極端(笑)どっちも演技的には変わらないっつーのに。でも『ライフ』での彼は“子供を元気づける父親”としてのハイテンション演技だったからまだ許せたけど、今回は“50過ぎのオッサンが無理やり子供らしさアピール”するためのハイテンション演技だからムカつくわけよ(笑)映画の後半でトーンダウンするまでホントにつらかった!(なんで見たの?とか聞かないでね。ただのマゾなんです)

許しがたいのはピノッキオだけじゃありません。嫁に妖精役かよ!というツッコミは当然します(笑)青い髪なんだけどライトの加減によっては白髪に見えるので、妖精というより魔法使いのお婆さんなのよね。美人だけど老けすぎ。
それから映画に登場する子供たちもピノッキオに合わせたのか全員大人が演じていて、それはまぁそれで舞台を見てるような雰囲気で違和感はなかったんだけど、ピノッキオと友達になるルシーニョロ(キム・ロッシ・スチュアート)ってのがイタリアンジゴロみたいなルックスのくせに、ペロペロキャンディを盗んで嬉しそうにペロペロするの。これがもう見てらんない!(だからなんで見たの?とか聞かないように。ただのマゾなのよ)

けれども、キャストはアレなんだけども、ストーリー展開は至って真面目だった。もっとシュールなものを実は期待してたのよ(『シベ超』みたいなのを、と言えば分かりやすいかな)まぁ文部科学省推薦映画だからそんなことはなかったわけで・・・。最後は綺麗にまとまり過ぎて、これはこれで気持ち悪かった。しかも人間になったピノッキオは人形だった頃以上にオッサン過ぎたし、最後の歌までつらかった〜(だからマゾなんだってば!)
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