Movie Review 2004
◇Movie Index

ソウ('04アメリカ)-Oct 30.2004オススメ★
[STORY]
老朽化したバスルームで医師のゴードン(ケアリー・エルヴィス)とカメラマンのアダム(リー・ワネル)が目を覚ました。2人とも片足を鎖で繋がれ、身動きが取れない。部屋の中央には頭部を撃ち抜いた死体が倒れている。2人に宛てたテープにはジグソウと名乗る犯人から、生き残りたければ6時間以内に相手を殺せというメッセージが入っていた。しかもゴードンは妻と娘を人質に取られていた。
監督&原案ジェームズ・ワン(初監督作)
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サンダンス映画祭2004で上映されて話題となった“ソリッド・シチュエーション・スリラー”――極限状態に置かれた人間がどうやってそこから脱出するかを描く作品だ。『CUBE』と同じジャンルですな。

アダム役のワネルはワンの友人で、本作の脚本も手がけている。タイトルの『ソウ』とはsee(見る)の過去形、ノコギリ、そしてこの事件の犯人である“ジグソウ”とも掛けているそうな。
低予算で撮影期間はわずか18日という映画だが、出演者は上記以外にもダニー・グローヴァーやモニカ・ポッターも出演しているので、しょぼい感じはしない。

もっとつらくて息苦しい映画かと思ったら、意外とそうでもなかった。このシーンが続いたらやだなぁと思うところで早送りされたり場面が変わったりして、思ったよりもストレスは感じない。繋がれた2人が疑心暗鬼になり相手をひどく罵り合ったりしないし、パニックになるのは本当に最後のほう。その最後のほうも展開が早いので、つらいと感じる暇もなく展開していく。個人的にはジャンルが違うが『戦場のピアニスト』『ピアニスト』(笑)のほうがよっぽどもストレスを感じたもん。ただ逆に感情移入したい人はガッカリするかもしれない。ゲームだったんだと思うほかにない。

まぁ粗を探そうと思えばいくらでも見つかるし(設定や登場人物たちの行動とかね)予算がなかったからかもしれないが、あの部屋を上から見たカットが欲しかったな。2人の距離や真中の死体の位置が分かりにくくて、動けないもどかしさが伝わらなかった。めいいっぱい手を伸ばすとどこまで届いたのかなあ?
それと残されていたアイテムを、パズルを解くように活用すると想像していたので(『ペイチェック 消された記憶』みたいにね)そういう使われ方をしなかったのが物足りない。でも制作者は細かいことよりもスピード感を重視したんだろう。完成度よりも設定の斬新さとインパクトで勝負した。これで映画会社や観客の注目が得られれば・・・っていう気持ちが伝わってくる。そんな野心むき出しなのは嫌いじゃない(笑)むしろ次の作品が楽しみだ。この勢いのまま、けれど本作より緻密なストーリーを期待したい。

最後にネタバレを含んだ感想を。(ここから)ジグソウは最前列で見ていただけでなく、自分もゲームに参加していたんだと思う。2人のうち1人は医者だったわけだし、落ち着いていれば自分を見ただけで死んでないって気づいたかもしれないのだ(だから上に書いたように、ジグソウと2人の距離が知りたかったのだが)気づかれてしまったらそこでゲームオーバー。気づかれなければ自分の勝ち。ただ自分が殺されないように準備はしていただろう。あの電流もバレた時の保険だったかもしれない。電流を流してる間に逃げられるからね。でも、思ったよりも彼らが頭が悪かったので(笑)何時間もあそこで寝てなきゃならなかったわけで。あそれはあれで拷問じゃないですかね。首が痛そう。んも〜早くしてよ!ヒントいっぱい出したのに〜!なんて悶々としているジグソウを想像すると少し笑えます。DVDにジグソウ視点バージョンモノローグ付きが入ってたら買っちゃうかも?!(ここまで)
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ターンレフト ターンライト('03香港)-Oct 30.2004オススメ★
[STORY]
台北。バイオリニストのジョン(金城武)と翻訳家のイブ(ジジ・リョン)は壁一枚を隔てた隣同士。しかしジョンの部屋の玄関は右側で、イブは左側のため、2人はまだ一度も顔を合わせたことがない。ある時、たまたま公園で出会った2人は話をするうち、お互いが初恋相手だと知り運命を感じる。だが、突然の雨で電話番号だけを交換した2人は、雨に濡れて読めなくなってしまった番号を見て途方に暮れる。しかもまだ相手の名前も聞いていなかったのだ!
監督ジョニー・トー&ワイ・カーファイ(『ヒーロー・ネバー・ダイ』)
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台湾の人気絵本作家ジミー・リャオの『君のいる場所』を原作に映画化。リャオと家族は本作に特別出演している(もちろん後から知った)本の感想はこちら

ものには限度ってものがある。と、つい最近も書いたが、この映画はその限度を遥かに超え、突拍子もないクライマックスに、普段ならば突っ込み入れたり呆れてものが言えない状態になりそうなところを、思わずあまりの嬉しさにバンザイしたくなってしまうという、ものすごい勢いのある作品だった。やるならやっぱりこれくらい徹底しないとダメなんだな。ホントにすごかった。

とにかくジョンとイブの徹底したすれ違いぶりに最初は笑って見てたのだが、あまりにもじらすものだから途中から ハラハラしたり悔しがったりと大忙し。しかも途中からジョンにはシャオホンという食堂で働く女の子が、イブには医者のフーが猛烈アタックを開始するのだ(日本ならストーカーで逮捕ですよっていうアプローチが怖ろしかった・・・)この2人に翻弄されたジョンとイブが本当に気の毒なんだけど、シャオホンとフーも落ち着けば憎めないキャラクターで、彼らもまた・・・ね。上で突拍子もないと書いたが、伏線も張ってあって映像にも脚本にも気を配った作りだと思った。なんかもう1回見たくなってきたぞ(笑)あと絵本のほうも気になるなぁ。

この映画の金城くんが私は今までの中で一番好きかもしれない。ただカッコイイ役よりも、情けなかったり弱ってる彼のほうが魅力的にみえる。ただヴァイオリンよりチェロのほうが似合うと思う(笑)
ジジ・リョンはクセのない美人で、この映画は雨のシーンが多いんだけど、彼女の爽やかさがうっとおしさ(雨だけじゃなくてドクター・フーも相当ウザかった)を和らげていたんじゃないかな。ただ周りの濃いキャラに押され気味で、あのファッションのせいかもしれないけど、マネキンのような棒立ちの印象を受ける場面もしばしば。会えないのが苦しい、切ない、っていう顔がもう少し見たかった。
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ホワイト・ライズ('04アメリカ)-Ocgt 29.2004
[STORY]
ニューヨークで働くマシュー(ジョシュ・ハートネット)はビジネスパートナーと、彼の妹である婚約者とともに故郷のシカゴで商談をまとめていた。しかしレストランで、2年前に突如自分の前から消えた恋人リサ(ダイアン・クルーガー)の後姿を見かける。マシューは婚約者に内緒で海外出張を取りやめ、リサを懸命に探すうち、ついに彼女のアパートを突き止める。しかし部屋にいたのは同じ名前の別の女(ローズ・バーン)だった。
監督ポール・マクギガン(『ギャングスター・ナンバー1』
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第17回東京国際映画祭特別招待作品。
1996年に公開されたフランス映画『アパートメント』のリメイク。主演はヴァンサン・カッセルで、消えた恋人リザにモニカ・ベルッチ、もう1人のリザをロマーヌ・ボーランジェが演じた。ちなみに本作がきっかけでカッセルとベルッチは結婚した。

『アパートメント』はフランス映画にしては(失礼)辻褄の合うサスペンスタッチのラブストーリーでかなり面白かったので、リメイクしても面白いだろうと見てみた。中盤まではほぼオリジナルと同じ。ただ主人公の出張先が、オリジナルでは東京だったのが、本作では上海なのよね。日本のバブル時代がいまの中国だからか?それと今だったら携帯の普及率が当時よりもっと高いと思うんで(アメリカなら尚のこと)そこまですれ違わないんじゃないのー?なんて苦笑しながらも楽しんで見ていた。

で、はっきり言っちゃいますが、オリジナルと本作ではラストが違いました。さらに言っちゃうと私はオリジナルのほうが好きです。(ここからネタバレ。『アパートメント』のネタバレもあり)オリジナルはクライマックスからラストにかけてが予想外の展開で、思わずのけぞりそうになってしまったが、本作は至極真っ当な作りとなっている。アメリカでオリジナル通りにしてたら大ブーイング間違いなしだろうから、これは正しい選択といえる。でも本作のラストは納得はするけれども面白くはなかった。実は私はこうなるとストーリーを予測していたし・・・↓

違っていたら恥ずかしいだけなのだが、マシューの友人ルークが働いている靴屋は中国製の靴を扱う店だったと思う(店の看板が漢字で書いてあったり店員がチャイナドレスみたいなのを着てたので)マシューはアレックスの嘘を確かめるために靴を履かせるが合わなかった。そして本物のリサに会うために空港へ向かう時、その靴も持って行くわけ。しかし空港で婚約者とバッタリ。彼女は目ざとく靴を見つけ、中国土産だと勘違いして履いてみるとサイズぴったり。そうです、本物のシンデレラはレベッカだったのですー!困り果てたマシューの前をリサが通り過ぎていく・・・でTHE END。やっぱり大ブーイングか(笑)
本作ではマシューがアレックスによって最愛の人との仲を引き裂かれそうになったが、最後は愛を貫く誠実な人間として描かれている。ちょっとヘタレだったけどやっぱりヒーローらしい。オリジナルのほうは流されやすくて小ズルイ印象があるんだけど、どっちが魅力的かというとやっぱりオリジナルのほうなんだなぁ。アレックスもオリジナルのアリスのほうがいい。カフェでマックスに騙していたことを告白するシーンはとてもよくて、ここで初めて彼女に同情できたから。アレックスは泣きすぎて逆に嫌な女だなと思ってしまった。損な役で可哀想だったな。
(ここまで)

ほとんど比較の感想になってしまったが、できたら本作を見たらオリジナルも見てほしい。恋人リサ(リザ)はタイプは違うがオリジナルも本作もどちらも美しいので、目の保養になります。特に本作のほうはクルーガーを熱心に撮っていたように見えた。気持ちは分かるが(笑)
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時の流れの中で('04台湾)-Ocgt 26.2004
[STORY]
台湾の故宮博物院の学芸員チン(グイ・ルンメイ)は、日本からやってきた島(蔭山征彦)という青年から『寒食帖』という書が見たいと頼まれるが、現在は展示してないため見せることができない。何とかしたいと美術史を執筆している先輩のタンハン(レオン・ダイ・リーレン)に相談するが、彼は執筆が進まずチンのことなど構っている暇がない。タンハンに想いを寄せているチンは、彼がまだ失恋から立ち直ってないから書けないのだとタンハンを責める。
監督チェン・ウェンタン(『夢幻部落』)
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第17回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。台湾国立故宮博物院の依頼により作られた。

コンペ作品は情報が少ないので選ぶのが難しい。監督や出演者で決める場合もあるし、ストーリーで決める時もある。今回はストーリーが面白そうだったので選んでみたのだが・・・。

故宮にある『寒食帖』という書が3人の男女を結びつけるという話だというから、書に秘密があって、それを調査する3人が三角関係になったりするんだとばっかり思ってた。そしたら違ってた。はっきり言って島が登場するまでは話がぜんぜん進まない。故宮博物院の成り立ちがアニメで語られたり、タンハンのことが好きなチンがイライラしたり。チンが先生から博物院のトンネルに入れてもらえることになり大喜びするシーンが出てきたので、ここからいよいよ物語が進むのかと思いきや何もなく、トンネルもワクワクするようなものではなく、ちっとも面白くねえんです(笑)

ようやく島が出てきて『寒食帖』を見たいと言い出すあたりから話は進むのだが、その理由はワクワクするようなものではなく、泣けちゃうイイ話なのであった。イイ話なんだけど落胆度のほうが大きくて、せっかく島青年が感激して咽び泣いているのに、こっちはトホホな気分で泣きたくなってしまった。そして気がつくとその島青年が自作の歌を披露してるんです。いきなり「君のために作った」とか言っちゃってチンの前で歌ってるんです。かなり歌はうまいしイイ曲なんだけど、こっちはあまりの唐突さに笑いたくなってしまった。そして気がつくと映画は終わっていました。いやー参った参った。

台湾の人気俳優が出演してるし、日本人も出ているので(蔭山征彦は中国語上手!)日本で公開になればいいなぁと思うけど、如何せん映画の出来がね・・・。内容についても故宮博物院から何か注文があったんだろうか。それにしては故宮内の映像も少なく、台湾に行って見てみたいと思わせるものもなかったな。
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世界でいちばん不運で幸せな私('03フランス)-Oct 26.2004
[STORY]
ジュリアン(ギョーム・カネ)は幼なじみのソフィ(マリオン・コティヤール)と子供の頃からあるゲームを続けている。相手が仕掛けるゲームに必ず乗り、成し遂げればメリーゴーランドが描かれた缶を差し出すというもの。最初は子供のいたずら程度だったものがだんだんエスカレートし、悪趣味なものに変わり、お互いに愛してることを言えずにゲームが続いていく・・・。
監督&脚本ヤン・サミュエル(イラストレーターや絵本作家を経て長編デビュー)
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第12回フランス映画祭横浜2004出品作品。映画祭ではチケットが取れなかったんだけど、タイトルがすでに決まっていたので一般公開を楽しみにしていた。

が!期待してたのと全然違う話じゃないのよ。『アメリ』の2匹目のドジョウを狙ったアルバトロスフィルムめ!可愛らしいタイトルと予告映像に騙された、という感じ。確かにファンタジックな映像は似ている。『アメリ』では自分の気持をうまく表現できない女の子を描写するのに効果をあげていた。本作ではジュリアンとソフィ、2人だけの世界を築き上げるためにファンタジックに仕立てたんだろう。確かに効果的だった。でも、看板に偽りアリだ。何が不運なんですか?原題が“Jeux d'enfants”――子供の遊び―なんだから、それに近いタイトルで良かったんじゃない。もしくは『世界でいちばん人を不幸にするバカップル』これでしょう。

ものには限度ってものがある。この映画はその許される範囲を超えていたと思う。ジュリアンとソフィのゲームは、大学生まではまだ笑っていられた。服の上から下着を身に着けて(しかも上下お揃いじゃないところが芸が細かい)何の恥ずかしげもなくその格好のまま堂々と黒板の前で問題を解いているシーンは、もう何年も過激なゲームを続けてきて慣れっこになっているんだなーというのが伝わって面白かった。

でも大人になってからは悪趣味というか、犯罪だよ。ジュリアンが車で逃走するシーンの嬉しそうな顔にはハッとしたけれど、やっぱり好きになれない。ゲームの賭けに使われていたのがメリーゴーランドの缶。子供の頃は本当に欲しくてゲームをやっていたんだろうけど、大人になってからもずっとその缶を使い続け(お金や奢りではそこで消えてしまうものね)ゲームが終わらないよう奪い合っている様子は、いじらしいというか愛し合っているんだなって分かって切なくもなったけれど、やっぱり好きになれない。人に迷惑を掛けなければふざけようが悪戯しようが構いませんよ。だけどコイツらのせいで何人もの人が悲しい思いをした。2人にかかわった人こそが世界でいちばん不運だった。しかしこんな映画がフランスで大ヒットするんだから、不思議なもんだよね。
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