Book Review 2004
◇Book Index

『ダ・ヴィンチ・コード』ダン・ブラウン
[STORY]
ルーヴル美術館館長ジャック・ソニエールが殺された。館長と会う約束をしていたハーバード大学の教授ロバート・ラングドンは警察から疑われるが、ソニエール孫娘で暗号解読官のソフィー・ヌヴーは、祖父が自分だけに分かる暗号を残していることに気付く。ソフィーはラングドンと共に警察の手から逃れ、謎を解くために奔走する。
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読んだのは映画化が決まる前だけど、読みながら「これは絶対に映画化される」と確信を持った作品だった。犯人だと疑われた主人公が美女の助けを借りながら、暗号を解き館長を殺した真犯人を探していく。忍び寄る危険と罠、あっと驚くドンデン返しと、著者が映画化を見越して書いてるような(そこがちょっといやらしい)映画のノベライズのような感じ。実在の場所がたくさん出てくるから許可さえ下りれば撮影しやすいだろうしね。ちなみに1作目の『天使と悪魔』は読んでません。本作が面白かったら読もうと思ったけど・・・読まなくていいかな・・・と。
自分は宗教には疎いので、作品中のキリスト教の解釈について「へー」とか「ほー」とか感心しながら読んだが(さすがに信じはしないけど「最後の晩餐」のイエスの隣の人はもはやアレにしか見えなかったりする)信者の方が読んだら激怒するかもしれない、とは思った。

公式ページでは本編に登場する場所の写真を見ることができるが、ネタバレ写真もあるというので読み終わるまでは見なかった。でも写真を見ないと文章だけでは分からない記述も多く、自分の想像力では補えないのがつらかった。すでに読み終わった後になって関連書籍が続々と出版されたけど、読んでる最中だったら買ってしまったかもしれない。「最後の晩餐」だって絵を見てみないと全然面白くない。しょうがないので「最後の晩餐」が載ってるサイトを探してプリントアウトしましたよ。これでラングドンの説明がよく分かったが、表紙は「モナ=リザ」ではなく「最後の晩餐」にするべきだったのでは?表紙のインパクトは「モナ=リザ」のほうが大きいけどさ。

登場人物たち、特に主役2人は著者の主張を喋るだけ、事件を追いかけるだけの存在で魅力がないと感じた。お約束で最後にラングドンとソフィーがいい関係になるが、ホントにお約束を踏んでるだけ。殺されたソニエールがどういう人物だったのかは気になるし、ベズ・ファーシュのアクの強さは面白いと思ったが。でも少なくともラングドンはトム・ハンクスじゃないよね(笑)彼は“ハリス・ツイードのハリソン・フォード”と言われるような男なんだから、それに近い人じゃないと(ハリソン本人はさすがに歳を取りすぎなんで)ちなみに私は『抱擁』のアーロン・エッカートが頭に浮かんだので、彼を想像しながら読みました。ソフィーはハリウッド映画にも出るようになったマリオン・コティヤール、ソニエールはイギリス人だけどアンソニー・ホプキンス、ベズ・ファーシュは『シックスパック』のリシャール・アンコニナ、シラスは『薔薇の名前』『ロスト・チルドレン』のイメージでロン・パールマン、ティービングはデヴィッド・シューリス(ってもはや願望ではないか)
見る前からキャストなどで文句言いそうだけど、公開になったら絶対見に行きます。
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『君のいる場所』ジミー(幾米)
[STORY]
アパートの隣同士に住みながらも、“彼女”は左へ曲がるくせがあり、“彼”は右へ曲がるくせがあるため出会わない2人。あるとき2人は公園で出会い 意気投合する。別れ際に電話番号を交換するが、互いのメモが雨に濡れて読めなくなり連絡が取れなくなってしまう。
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台湾在住の絵本作家の代表作で『ターンレフト・ターンライト』というタイトルで映画化された。

私は映画を見て原作が気になったので手にとってみたんだけど、絵本というからもっとページ数の少ないものを想像していた。どうして絵本が 映画化されるの?絵本をどこまで膨らませたの?ってそこがすごく気になってたわけなんだけど、見てびっくり。絵本といっても完全な大人向けで、 ページ数も60ページくらいある。2人が子供の頃にも1度出会っていたことや、妙なライバルが現れるところは映画オリジナルだけど、大まかな流れは 絵本の通り。ファーストカットとラストカットが絵本と映画とが同じで、制作者がちゃんと絵本に敬意を表して作ったんだなーというのがよく分かった。

絵は可愛らしくて私の好み。雑踏の中ですれ違う2人を描いたところはびっしりと書き込まれていて、2人を探すのに苦労するくらい(笑)部屋が 隣同士にもかかわらず1年以上も会うことができず、彼らには相談する友達もいなくて、都会で孤独を感じる場面が延々と綴られる。 映画がコメディタッチだったので同じようなものを想像していたけど、絵本はどこか突き放したような、傍観者的な表現が続く。原作の雰囲気の 通り映画化していたら随分暗いものに仕上がっていただろうな。ちょっと見てみたかったが(もちろんあの映画でよかったけど)
この孤独な場面の絵は、リアルに描かれているものもあれば抽象的な表現のものもあって、私はエレベーターですれ違う2人を 魔物みたいなものが邪魔してる絵が特に好きだ。
じらしてじらしてじらしてじらして、ようやく会えた時にこっちも幸せな気持ちになってしまうんだけど、あと数ページでいいからその後の2人が見たかった。 ちょうどいい終わり方だと分かっていても、ズルイなぁと思ってしまう。もっと見せろ(笑)

他の作品も気になって、たまたま一緒に置いてあった『幸せの翼』をめくってみたけど、こちらはもっと重くて私はちょっとダメだった。ウォン・カーウァイが製作 するという『地下鉄』も気になるので、今度探してみよう。

というわけで映画の感想はこちら
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