Movie Review 2003
◇Movie Index

青の炎('03日本)-Mar 19.2003
[STORY]
櫛森秀一(二宮和也)は17歳の高校生。母(秋吉久美子)と妹(鈴木杏)と穏やかに暮らしていた。しかし突然、10年前に母が再婚してすぐに離婚した曾根(山本寛斎)が家に押しかけ、そのまま居着いてしまったのだ。しかも曾根は昼間から酒を飲み暴力を振るう。秀一は曾根を殺そうと考える。
監督&脚本・蜷川幸雄(『魔性の夏 四谷怪談より』)
−◇−◇−◇−
原作既読な上に好きな作品なので、なるべく原作と比べないように頑張って見ようと決意し・・・いや、これよく出来てるんじゃないですか。ストーリーに関しての感想は原作とほぼ同じなので割愛。泣くまではいかなかったけど、ちょっと切なくなりました。

犬がどーとかのエピソードと芝居がかったセリフ回しにうざったさはあったものの、監督が言う“アイドル映画”としてきちんと成り立っていて感心した。でもだからって竹中直人を出すことはないと思うがね。コミカルな役柄にするのでも他の人にやってもらいたかったよ。キャストに関して文句を言いたいのはここだけ。

タイトルは『青の炎』だったけれど、映画では青い空や、水族館の水槽で青を表現していた。水槽は秀一の部屋にもあり、彼がしばし中に入って考えたり眠ったりするシーンがある。上に犬の話がいまいちと書いたが、犬じゃなくて魚やイルカなんかだったらおかしいと思わなかったかもしれない。秀一が水槽の中に入る意味も理解できたと思うしね。

それにしても松浦亜弥はスゴイな。演技が上手いのか下手なのかもはや判別不能。彼女が喋った瞬間にその場の雰囲気がガラッと変わってしまうのだ。「あやや、恐ろしい子・・・!」←姫川亜弓さん風に
おかしなセリフ回しと無表情さがCGっぽくて、ゴラムを超えたぜ!と一瞬でも思ってたしまった自分。ひょっとしたら紀子(あややの役名)はモテナイ君の秀一が作り出した架空のキャラクターだったのかも?!(と思わせるシーンがあるのよね。シャッターが下りたはずなのに音もなく(以下略))
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過去のない男('02フィンランド)-Mar 15.2003オススメ★
[STORY]
一人の男(マルック・ベルトラ)がヘルシンキの駅に降り立った。長旅に疲れた男は公園で野宿をしていると暴漢たちがやってきて彼を殴り、金や荷物を盗んで逃げていった。大怪我を負った男は記憶をなくしており身元も分からないままだった。瀕死の男は港湾に辿り着き、そこである家族に助けらる。記憶が戻らぬまま男はこの地で生活を始め、救世軍のイルマ(カティ・オウティネン)と出会う。
監督アキ・カウリスマキ(『白い花びら』
−◇−◇−◇−
『浮き雲』も好きな作品だったけど、これも同じくらい好きだなぁ・・・としみじみ思っていたら、本作はカウリスマキの新三部作の2番目にあたる作品で、1作目が『浮き雲』なんだそうだ。
(過去に敗者三部作『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』のというのがあるそう。残念ながら私はどれも未見)

なるほどね、だから同じくらい好きなんだわ。誰もが羨むような最高の幸せはやってこないけど、今の自分にふさわしいほんの少しの幸せが訪れる。この暖かさがたまらなく心地いいのだ。独特の間も、役者たちの距離も、色使いもみんな素晴らしい。なんか『浮き雲』の時と同じような感想になっちゃうな。

本作で特筆するべきは食事だろうか。前作もレストランが舞台だったけれど食べ物にはあまり目がいかなかった。けれど今回は料理シーンや食事シーンがとにかく多く目につく。男が助けられた家族が作るスープ、救世軍が配るスープ、男がイルマのために作る食事、素朴なのになんでこんなに美味しそうなんだろう。そのあとに出てくる寿司(と日本酒。BGMにクレイジーケンバンド)の、綺麗だけれどただそれだけのものとは違う。やはり作る人の気持ちと湯気かな。

余談だけどオウティネンの役名が『浮き雲』ではイロナ、本作ではイルマだった。さて次は?やっぱり頭に「イ」がつくんですかね。とにかく楽しみ。
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抱擁('01アメリカ)-Mar 9.2003
[STORY]
19世紀の詩人ヘンリー・アッシュ(ジェレミー・ノーザム)の没後100年を記念する展覧会がロンドンで開催されていた。アッシュの研究をしているアメリカ人のローランド(アーロン・エックハート)は、図書館でアッシュの直筆の手紙を見つける。それは愛妻家で有名だったアッシュがクリスタベル・ラモットという女性に宛てたものだった。ローランドはラモットの研究家であるモード(グウィネス・パルトロウ)と協力して2人の関係を調べ始める。
監督&脚本ニール・ラビュート(『ベディ・サイズモア』
−◇−◇−◇−
私の頭が悪いせいかもしれないが、非常に分かりにくい映画だった。まず字幕というか翻訳がおかしいのか、会話がうまく噛みあってないように感じ、なかなか映画に集中することができなかった。そして登場人物の設定もなかなか理解できず。19世紀のパートは分かりやすかったけど、現代のパートで少々混乱。アッシュの収集家クロッパーとウルフ教授とモードの関係が分かるまでに時間が掛かった。

また、アメリカ人のローランドがアッシュの手紙をいきなり見つけてしまったのが最大の謎。今まで誰もあの本を読んだことなかったの?ローランドとモードが2人で手紙を見つけるシーンはとっても面白かったんだけど、ローランドが見つけた別の手紙はどうやって見つけたの?それとアッシュとラモットが泊まったホテルがいきなり分かったのはどうして?もうここらへんは頭の中がクエスチョンマークでいっぱいだった。

19世紀パートと現代パートの切り替えは自然でとても良かった。この切り替えで混乱することは全然なかったしね。ただし、アッシュとラモット、ローランドとモードの関係の対比を描くのはあまり上手くなかったと思う。現代の2人がもったいぶった態度を取る、っていうのは分かるけど、それでもお互いに惹かれ合ってるように見えなきゃダメでしょ。それが全然見えないというか、最初に書いたけど2人の会話がやっぱりおかしいと思った。
関係ないけどエックハートの顔がデカ過ぎなのも気になっちゃって、つい隣のパルトロウの顔と比べてしまったよ。倍くらいありそう(ごめん)

原作がどんな感じで、脚本はどの程度アレンジされた(端折られた)のかすごく気になる。ひょっとしたら原作を読んでないと分からない映画だったのかも。読んでみようかな(って上下巻で分厚いじゃん!)
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ヘヴン('01ドイツ=イギリス)-Mar 9.2003
[STORY]
イタリアのトリノ。イギリス人の教師フィリッパ(ケイト・ブランシェット)は、亡くなった夫や生徒たちに麻薬を売った男に復讐するため爆弾を仕掛ける。しかし計画は失敗し、罪もない4人の命を奪う結果となってしまった。警察に連行され、取り調べを受けることになったフィリッパは、母国語で尋問を答えると要求する。そこで通訳となったのは若い刑務官のフィリッポ(ジョヴァンニ・リビージ)。彼はフィリッパに一目惚れする。
監督トム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』
−◇−◇−◇−
脚本は96年に亡くなった映画監督クシシュトフ・キェシロフスキの遺稿で(クシシュトフ・ピエシェヴィッチとの共同脚本)ダンテの『神曲』(「地獄」「煉獄」「天国」)をモチーフに書かれた三部作のうちの第一部。また製作は同じく映画監督のアンソニー・ミンゲラが担当している。

ここから先は未見の方に先入観を与える可能性がある文章のため、読む方は十分ご注意下さい。

ブランシェットのリアルな演技にうっかり騙されそうになるんだけど、なんつーかファンタジーでしたな(悪い意味じゃなく)

というよりフィリッポという男のキャラクターが現実的じゃなかった。彼がフィリッパに恋をした日の夜におねしょをしてしまうというエピソード、これがもう彼のすべてでしょ。彼に助けられたフィリッパはそのままズルズルとフィリッポワールドに引き入れられてましたからね。ものすごいパワーっすよ。麻薬の売人さえ仕留められたら罪を償うって言ってたのに、結局はフィリッポと逃げちゃうんだからね。そして一緒に天国へ──。
こういう映画を見るといつもの私なら「罪は償え!」って怒るところなんだけど、この映画の場合は全然気にならなかった。だってこれはファンタジーだから☆

という冗談はこれくらいにして(冗談だったの?)登場人物の内面よりも、構図を意識しながら見ちゃったので、2人がどうなろうと気にならなかったのかもしれない。冒頭のヘリコプター操縦シミュレーション画像と2人の逃亡先となったトスカーナの風景がとてもよく似ていること、生まれた月日とフィリッパとフィリッポという名前、二人の服装と髪型。そして大きな木の下の2人が結ばれるシーンはアダムとイブのようだ・・・などと、2人が1つになっていく様を冷静にいちいち確認しながら見ちゃったせいということだ。もちろん映像の美しさにうっとりしながらね。そういう見方をしても十分面白かったんだけど、本来こういう見方は良くないよなぁ。もっと自然に、映像の流れに沿うように感情を乗せて見たかった。キェシロフスキだって草葉の陰で泣いてるかもしれんな・・・(なんて、そんなことはないか)
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Kissing ジェシカ('01アメリカ)-Mar 9.2003
[STORY]
ジェシカ(ジェニファー・ウェストフェルト)はニューヨークの新聞社に勤める28歳、恋人なし。元彼で上司のジョシュには書いた記事をボツにされ、兄からは婚約したという知らせが届き、いろんな男とデートをするがうまくいかずに落ち込み気味だった。そんなある時、新聞に大好きなリルケの詩が引用された恋人募集広告を見つける。しかしそれは女性の恋人を探す女性からのものだった。悩みながらもジェシカは思い切って相手の女性ヘレン(ヘザー・ジャーゲンセン)に会うことにしたが・・・。
チャールズ・ハーマン・ワームフェルド(ミュージックビデオ等を経て長編劇場映画初)
−◇−◇−◇−
脚本はジェシカ役のウェストフェルトとヘレン役のジャーゲンセンが担当。大元は舞台で2人が上演した作品らしい。映画化するに当たってかなり肉付けしたんだろうけど、ジェシカとヘレンの会話部分は舞台で演じた部分を多用してそう。2人のやりとりが自然で、演じ慣れてるように見えたのよね。

ヘレンが口紅を3色混ぜて使っているという話や(真似したくなった!)ジェシカの靴を褒めるシーン、そしてセクシーなブ男の話も最高(・・・でもライル・ラベットはブだけどセクシーじゃないだろう)2人がだんだん恋人同士になっていくところから惹き込まれた。そして口うるさいジェシカの母親が、ふと娘にかけた言葉では泣きそうにもなった。強引で、娘を自分の所有物のように扱う母親なのかと思ったけど、彼女の本質を理解した上での行動なのね。妊娠してるジェシカの同僚もイイ味出してたし、女性キャラクターは皆よかったと思う。
逆に男性たちは類型的だったかも。ヘレンの友人のゲイカップルなんてもっと面白いキャラクターになりえただろうに、ちょっと物足りなかった。

ストーリー展開は予想と違っててびっくり。この映画の場合は予想通りでいて欲しかったんだけど(ここからネタバレ)ジェシカとヘレンが駄目になっちゃうなんて。それまで男をとっかえひっかえしていたヘレンが、煮え切らないジェシカにイライラしながらも惹かれていくところが良かったし、ヘレンと付き合っていることを周りの人達に言えずにいたジェシカがきちんと告白できるようになったところも良かったのに、どうして2人の関係がそれからたった3ヶ月で終わっちゃっうのさ(泣)
だけど別れた後、ヘレンがやっぱり女性の恋人を選ぶところは面白かった。ジェシカは本当に自分がやりたかったことを始めるというのもいい。ただ、ジョシュとうまくいきそう?だったりヘレンと友人として付き合うようになるのは出来すぎかなとは思うけどね。
(ここまで)まぁ面白かったんで複雑だけど結局はプラスマイナスゼロ・・・かな。
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