Movie Review 2004
◇Movie Index

ペイチェック 消された記憶('03アメリカ)-Mar 17.2004
[STORY]
近未来。ジェニングス(ベン・アフレック)は、企業の極秘プロジェクトに加わっては短期間で仕事をやりとげる優秀なフリーのコンピューターエンジニア。報酬は高かったが、機密漏洩防止のためプロジェクトに関わった期間の記憶を消されていた。そんなある時、オールコム社の社長から3年掛かるプロジェクトの依頼を持ちかけられる。高い報酬に彼は仕事を引き受ける。
3年後、仕事を終えたて記憶を消されたジェニングスは報酬を受け取ろうとするが、報酬を破棄する代わりに封筒を受け取るというサインを彼自身がしたと弁護士から聞かされる。その封筒にはガラクタしか入っていなかった。この3年間に一体何があったというのか・・・!
監督ジョン・ウー(『ミッション・インポッシブル2』
−◇−◇−◇−
原作はフィリップ・K・ディックの短編小説『報酬』(最近では『マイノリティ・リポート』が映画化されている)

記憶のない男が封筒に入ったガラクタを手がかりに、この3年間に何があったのかを探っていくストーリー。私はこの謎と、ガラクタをどんどん役立てていくところを面白く見ていたので、監督がジョン・ウーだということをすっかり忘れ、途中のアクションシーンが長すぎてイライラしてしまった。特にバイクシーンは意味なく長すぎ。監督的には一番の見せ場だったかもしれないけど、この映画には違和感あったな。それにトム・クルーズもそうだったけど、ベン・アフレックも色気ないのね。

と、ここでベン・アフレックについて考えてみる。マッチョで男前で、婚約者がアレだったとうハンデ(?)を除けばアメリカ女性に大人気というのはよく分かる。でも日本じゃそれほど人気でないというのもよく分かる。日本女性はもっと目がクリッとしてて愛嬌があるタイプのほうが人気が出るんだな。母性本能をくすぐるタイプというか。ベンちゃんの場合はいくら弱っていても助けたい気持ちにならないし、あんまりハラハラしない。そんなわけでアクションにハマれなかったっていうのもあったわけで。それにこんなにもブッサイクなユマ・サーマンは初めて見た!もともと女性を綺麗に撮るタイプじゃないけど、これはヒド過ぎた。ファンだったら見ないほうが懸命かも(すまん)

ストーリーの肝であるガラクタであるが、ここで1つ疑問が。(ここからネタバレ)彼は自分の未来を見て、殺されると知ってアイテムを集め始めたんだよね。て、ことは1つアイテムを封筒に入れるたびに未来が進んで先が見えるわけだ。ということは、時には間違ったアイテムを入れてしまい、失敗して自分が死ぬところを何度も見たということか?なんかそれやだな(笑)っつーか、私物は全部チェックされてるはずなのに、何で会社のパスを持ち出せたんだろう?アイテムのうち、それだけ浮いてるようにみえた。(ここまで)あ、細かいところはツッコミしちゃまずいか(笑)

一度消えてしまった記憶は戻らない――ということで、真相が見えても話をどんどん進めてしまって、彼の消えた3年間を回想シーンなどで見せなかったのは、テンポも悪くなるし正しいとは思うが、個人的にはやっぱり見たかった。真相を知った彼が何を考え、そしてどう阻止しようとしたのか?そこがスッパリと抜け落ちてしまっているため、どこか気持ちの悪さを残したままエンディングを迎えたという感じ。特にラストシーンは取ってつけたみたいで、特にね・・・。
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イノセンス('04日本)-Mar 13.2004
[STORY]
2032年の日本。人間とロボットやサイボーグが共存する社会。 公安九課に所属するサイボーグ刑事バトー(声:大塚明夫)は、かつての同僚で現在は行方不明の草薙素子(声:田中敦子) を思い続けていた。そんなある時、ロボットが暴走して所有者の人間を殺して自らも破壊する事件が発生する。 バトーはパートナーのトグサ(声:山寺宏一)とともに捜査をはじめる。
監督&脚本・押井守(『アヴァロン』
−◇−◇−◇−
1995年に公開された『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の続編。
宮崎駿映画でおなじみの鈴木敏夫がプロデューサーを務めていて、タイトルと主題歌を決めたのは彼(はじめのタイトルは『攻殻機動隊2』)そのタイトルと主題歌に誘われて、続編と知らずに見てしまった人も多かっただろう。見事に前作の説明が一切なく本当に理解できただろうか(見てても分からないところがあるんだから)
いっつも思うんだけど、三部作であることや続編であることをわざと伝えない宣伝のしかたってどうなんだろう?ライトな映画ファンがパッと飛びついてくれたらそれでOKだとでも?“理解できなかった=面白くない、嫌い”な映画として捉えられてしまったら、それはとても悲しいことだ。もし、この映画をこれから見る方がいたら、必ず前作を見るようにして下さいね。でもまぁ、タイトルも主題歌もホントにいいと思う。ただ、劇中音楽は前作同様に民謡コーラスのため、ラストで聞くフォロー・ミーがおかしく聞こえた(ジャズだからね)

CG映像にはとにかく見惚れてしまった。前作よりも近未来感が出ていて美しい。でも普通のアニメ部分との差が激しくて、いちいち気になってしまった。技術的なことは全く分からないけど、やっぱり難しいことなのかな?しかし人形部分のアニメは何よりも丁寧だ。色づかいからパーツがバラバラになるところまでじっくりと描かれているのを見て、思わずニヤけてしまった。フェチだな〜。

サイボーグゆえに表情があまりよく分からないバトーだけれど、素子への思いはじゅうぶんに伝わってきた。(ちょっとネタバレ)襲い掛かってくる人形たちに対して容赦なく銃を放つバトーが、一体の人形に素子が入った途端に、その裸の人形に服をかけてやるのだ。このシーンが大好きだ。そして久しぶりに素子との息の合ったコンビぶりに嬉しくなり、最後の少女に対する怒りのシーンではちょっと泣きそうになっちゃった。素子とはまた別れてしまったけど、この世界のどこかにいる彼女とバトーはいつも繋がっているんだ、って思わせてくれた。良かったな。(ここまで)ただここまでくるまでに分からないことがいっぱい。正直言って事件についてはホントに分かってないや。またちゃんと見直さなくては。

声優さんがみんなベテランで大人の声なのがいい。素子の声も好きなんだが、今回はハラウェイ検死官(榊原良子)の喋りと声が素敵だった。竹中直人も実写のような邪魔臭さがなく(すまん)正しい使い方してるし。宮崎アニメもこれくらい(以下略)
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ホテル ビーナス('04日本)-Mar 7.2004
[STORY]
最果ての、とある街。ひっそりと佇むカフェビーナスの上階には、辛い過去を背負った人々がオーナーであるビーナス(市村正親)に見守られながら生活している。0号室のチョナン(草なぎ剛)は店を手伝いながらここに住む人々の世話もしている。1号室からは酔ったドクター(香川照之)とワイフ(中谷美紀)の争いの声が絶えない。そんなある日、寡黙な男ガイと口を利かない娘サイがカフェにやってきて、新たな住人となる。
監督タカハタ秀太(TV番組『チョナン・カン』のディレクターで映画初監督)
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深夜番組『チョナン・カン』から生まれた作品。日本製作なのに全編韓国語で日本語字幕がつき、モノクロ映像という珍しいスタイルの実験作、と言っていい作品かな。脚本はCMプランナーでCHEMISTRYの歌の作詞も手がけている麻生哲朗が担当。

番組自体は、最初は面白かったんだけど最近はあまり面白くないので、見たり見なかったりという程度(でもハン・ソッキュとの対談はちゃんと見た)あと、以前スマスマでやった広末涼子とのショートドラマがすごく面白かったので、こういう映画だったらいいなぁ半ば期待しつつ、後半やった親子モノドラマはいまいちだったので、こういう映画だったらイヤだなぁと不安になりつつ(笑)見に行ってきた。結論から先に言うと、やっぱり良かったところと良くなかったところ、半々という感じだった。

心を閉ざす少女サイと住人たちが心を通わせていくところはとても良かった。彼女の何気ない足音にチョナンがタップで反応する。次第に彼女はチョナンに応えて欲しくて足を鳴らすようになる。タップシーンがあるせいか、登場人物たちの靴をクローズアップするカットが多く、靴を見ただけで誰だか分かるようになるほど。足ってかなりキャラクターが出るものなんだと感心した。サイはおそらく母親が履いていたであろうサンダルを無理して履いていて、そこが痛々しくて切ない。

ただ住人たちの悩みそのものは微妙だったな。人との関係を拒んで生きようと決意するものの、やっぱり心のどこかでは人と係わりたい、慰められたい、癒されたい、と思っている弱い人たち、悪く言えば甘ったれた人たちが肩を寄せ合う場所という設定。これそのものはワタシ的にはOKなのだが、ドクターの悩みの元を知って一気に興冷め。いくらなんでもそりゃあねぇだろうよ。そこまで甘えてどうすんだよ。そりゃあワイフも往復ビンタですよ(笑)いやぁこの映画の中谷美紀はものすごく綺麗だったな。
そして「俺たちだって生きてるんだあああ!」と突っかかるシーンはもう笑うしかなかった。何だよ唐突に。そんなこと言われたほうだって困るよなぁ。アホか。・・・と呆れながらも映像そのものには感動して涙を流している自分がいました(結局泣いてんのかよ)

あとチョナンの悩みですが、一見ありがちで浅い感じがするけど(ここからネタバレ)彼が日本人で彼女が韓国人だったとしたら複雑だな。あの父親の激昂ぶりからして交際する時から反対されていただろうし、結婚(?)するために彼女が日本へ行くのも大反対しただろう。過去の日本と韓国のことを持ち出すほどだったかも(これはねえ・・・)それをやっと許してもらえた矢先の事故だった。(ここまで)彼がボロボロになるのも無理はない。でも映画ではそこまで突っ込んで書けなかったのか、書くのはやめたのか定かじゃないけど、ぼかしてるせいで理解できない人も多かったんじゃないかな。映画のトーンを考えるとこれ以上の突っ込みは無理だったんだろうが、そんなことかと切り捨てられないような表現も必要だったのではないか。
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ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還('03ニュージーランド=アメリカ)-Mar 2.2004オススメ★
[STORY]
こちらへ。
監督&脚本ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』
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第74回アカデミー賞11部門受賞。受賞記念にさっそく翌日2回目行ってきました。今回は日本語吹替版です。思えば1作目の字幕版が酷すぎて日本語吹替版を見るようになったんだけど、2作目3作目とだんだん字幕が普通になっていったのでもう吹替で見る必要はほぼなくなったんだけどね。アラゴルンとゴラムの声に違和感あるし。でもやっぱり字幕を追いかけるのに忙しかったので、映像に集中できるよう吹替でも見てみた。やっぱり何人かは声が気になったけど、字幕より疲れないし集中して見ることができた。海賊なピーター・ジャクソンもようやく発見!ピピンは吹替でも歌がうまかったな〜(笑)

3作まとめての感想になっちゃうんだけど、よくぞここまでやったよ・・・!と胸がいっぱいになった。一見、CGまみれの映画に感じてしまうんだけど、建物はセットを組んだりミニチュアを作っているし、ホビットたちの映像は小さい人を使ったり遠近法を利用したりと原始的なやり方も多用している。剣や鎧もすべて手作りで、鎖を繋げる作業を1年以上も続けた人だっているのだ。役者たちも怪我をしながら戦闘シーンをこなし、メイクのための早起きも肌がボロボロになるのも厭わずに頑張った。製作に苦労したから素晴らしい映画なのだ、ということではないし、映画というのはあくまでも完成品を見て判断するのは当然のこと。でもメイキングを見てなかったとしてもやっぱり素晴らしい作品だと断言できる。

私は原作は読んでいるけど思い入れはあまりないので、映画化するにあたってのアレンジはほぼ満足している。ドラマではないから削らなくてはならない場面は絶対にあるし、万人向けにするならば難しい部分は分かりやすくしなければならないと思う。戦うシーンではやっぱりハラハラしたいし、ラブシーンだってあっても構わない。ファンから不評のアルウェンについては、むしろ可哀相だなーと思ってしまう。当初のアルウェンの設定が途中で変わってしまったせいで一貫性のないキャラクターになってしまったのは明らかにスタッフが悪い。せめてファーストシーンの、剣をアラゴルンに突きつけるシーンさえなければ、だいぶ彼女に対する印象が違ったのではないだろうか。あとはリブ・タイラーの笑い方にダメ出ししてくれていれば(ってやっぱり彼女自身にクレームつけてるじゃん)

うーん。ちゃんと纏めようと思ったけどやっぱりダメだ。『王の帰還』のスペシャル・エクステンデッド・エディションが出てからちゃんと書きたいなぁ(また先延ばしですか)
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ゼブラーマン('04日本)-Feb 28.2004
[STORY]
2010年横浜市八千代区。この町では近ごろ野鳥が変死したり、1万頭のアザラシが川をのぼったりと、おかしな現象が続いていた。また若い女性たちが次々に襲われる事件も発生していた。町が危機的状況になっていることを知ってか知らずか、小学校教師の市川(哀川翔)は昔やっていたTV番組『ゼブラーマン』に夢中で、自分でコスチュームを作っては身に付け、夜中になるとそのまま出歩くようになっていた。そんなある夜、市川は女性が襲われているところに出くわし、普段では出ない力を発揮して男をやっつけてしまう。
監督・三池崇史(『カタクリ家の幸福』
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1990年から13年間で99本の映画に主演してきた哀川翔の100本目の記念映画。脚本は宮藤官九郎。

1978年に実際にTV放映された『ゼブラーマン』のリメイク――ではなく、当時『ゼブラーマン』がなぜ作られたのか?その謎を本作で解き明かす作りになっている。ここらへんが少々理屈っぽいせいで映画全体のテンションも低く感じてしまったんだけど、こういう絡ませ方は嫌いじゃない。むしろ面白いやり方だなって感心したほど。

あとはクドカン得意の小ネタが連発。いきなり登場の貞子モドキが、思い返すと一番の笑いドコロだったな。また、手作りゼブラーマンコスチュームのまま外に出るかどうか市川が悩むシーンや、ゼブラーマンに詳しい転校生の浅野君を尊敬してしまう市川が可愛くて可愛くて。そして一番の見どころは、何と言っても鈴木京香のゼブラーナースだ。このシーンだけでも1800円の価値あり(笑)二の腕と谷間が素晴らしい。食い入るように見ちゃったよ。

と、中盤までは楽しかったんだけど、途中途中の渡部篤郎の何喋ってんのか分からない演技モドキにムカつきつつ、上のTV版『ゼブラーマン』の謎シーンで落ち着いてしまい、ゼブラーマンが山ごもりするあたりで疲れてしまい、クライマックスでガッカリしてしまった。(ここからネタバレ)百歩譲って敵がCGなのは許そう。本当なら敵だって着ぐるみが良かったよ。相手が竹内力なら申し分なかったよ(ってそれだとやりすぎか)でもゼブラーマンが羽の生えたシマウマCGになってしまったのは本当にガッカリした。哀川翔をバカにしてんのか!ファンというわけじゃないけど、あそこは生身のゼブラーマンが闘って勝利するべきだったと思う。だから勝っても満足できなかったし、爽快感もなかった。(ここまで)ラストシーンでちょっと救われたけどね。あと、こういうアクションヒーローもので必ず突っ込まれる器物破損ネタを堂々と入れてきたところは、逆に好感を持っちゃったな。
パート2も作れそうな雰囲気だけど、どうせなら次は『ゼブラーナース』でお願いします(笑)
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