Movie Review 2004
◇Movie Index

ドッグヴィル('03デンマーク)-Feb 22.2004
[STORY]
アメリカ、ロッキー山脈のふもとにある小さな村ドッグヴィル。小説家志望のトム(ポール・ベダニー)は、ある晩ギャングから逃げてきた女グレース(ニコール・キッドマン)と出会い、家に連れて帰る。そして村人たちと相談し、2週間で彼女が村人全員に気に入られたら、このまま彼女を匿うことを提案する。グレースは村にとけこんでいくが、警察がやってきてから村人たちは少しずつ彼女に対する態度が変わっていく。
監督&脚本ラース・フォン・トリアー(『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
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2003年カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品(ただし無冠)。本作は監督が提唱したドグマ95とは正反対の、だだっぴろいスタジオに白線を引き、いくつかの小道具を置いただけのセットで役者たちが演技をするという、実験的な映画だ。すでに続編も予定されているそうだが、キッドマンはもう二度と出たくないらしい(笑)この映画の宣伝もあまりしたくないとか。撮影中の不満や怒りは『メイキング・オブ・ドッグヴィル〜告白〜』というメイキングで分かるらしいけど、上映中は見に行けそうにないかな・・・。

上映時間が3時間もあって、ストーリーだけ抽出するとものすごくイヤ〜な話なのに、不思議と見ててつらくはなかった。最後なんてむしろスカッとしてしまった、とても不思議な映画だった。まず物語が9章からなっていて、章のタイトルとストーリーのさわりが紹介される。これに随分助けられたというか(笑)これからつらくなるんだっていう心構えができて、安心して見ることができた。・・・ってストーリーが分かってしまう映画ってどうなんだ?って感じなんだけど、この映画に関しては、ラストまで想像できる展開なのがかえって良かった作品だった。まさに風変わり。

そしてセットの中で役者が演じていくスタイル。これもこの映画では効果的だった。ドアを開けるパントマイムやホウキで掃くシーンなどがおかしいので、つらいシーンもそれで和まされていたように思う。また、家の壁を作らなかったこのセットがあるシーンでものすごい効果を上げていたので書かせていただく。(ネタバレ)それはステラン・スカルスゲールド演じるチャックにグレースが強姦されるシーンだ。観客には家の壁が見えないので村じゅうに丸見えなのに、村人たちは気づかない。いや、気が付かないフリをしていただけなのか、と思わせる。さらに、あのだだっ広いスタジオの中でキレイとは言いがたい尻を晒すチャックの滑稽さに、酷くムカツキながらも思わず苦笑してしまう。ここでチャックの矮小な人間性までも晒してしまってるのだ。(ここまで)すげーよ、やっぱり変人で天才かもしれんね、この人(監督)は。

個人的に村人のキャラクターで良かったのはクロエ・セヴィニーが演じたリズだ。ほかの町に恋人がいるため、トムに言い寄られていたのが迷惑だったはずなのに、グレースを疎ましく思うようになってからは、トムとグレースが仲良くしているのが気に入らなくなるのだ。分かるわー。そしてトムもまた中途半端に学があるもんだからかえって始末が悪い人の典型なのである。簡単に言うとお前が一番悪い!(笑)どの人物もみんなどこか自分にも当てはまる汚い部分を持っていて、時々心がチクチクと痛み、ハマり過ぎて快感な時もあった。今までのトリアー作品の中ではかなり好きな映画だ。次回作もこの手法で撮るらしいが、マンネリと感じなければいいな。
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オアシス('02韓国)-Feb 14.2004
[STORY]
轢き逃げで男性を死なせたジョンドゥ(ソル・ギョング)が刑期を終えて家へ戻った。そして被害者の家を訪ねると、男性の息子夫婦は脳性麻痺の妹コンジュ(ムン・ソリ)を利用し、障害者用の新しいマンションに引越しの最中だった。しかし彼女はおいてきぼり。取り残されたコンジュに興味を持ったジョンドゥは、抵抗できない彼女の胸を触り失神させてしまう。ジョンドゥはコンジュに謝り、逃げるように立ち去った。しかしその後、なぜかコンジュからジョンドゥに電話が掛かってきた。
監督&脚本イ・チャンドン(『ペパーミント・キャンディー』
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2003年ヴェネチア国際映画祭で最優秀監督賞、新人俳優賞(ムン・ソリ)を受賞。

私が衝撃を受けた『ペパーミント〜』の監督、主演、助演が再び揃った映画ということで見に行ってきた。でも実はムン・ソリが『ペパーミント〜』に出てたことはすっかり忘れてまして・・・ソル・ギョングの初恋相手だったのか。とにかく彼女の演技は凄かった。一番最初にコンジュとして登場した時には正直言ってちょっと過剰な演技だなって思ったんだけど、だんだん自然に見られるようになって、終いには演技ではなく、脳性麻痺の1人の女性として見てしまった。彼女の演技なくしてはこの映画は成り立たなかったと言いきっていい。

ただ映画そのものは『ペパーミント〜』ほどの衝撃というか、グッと掴まれているような感覚を望んでいたので、それがなかったのが物足りなかった。今回は主役2人の境遇の辛さを事細かに描くことをしなかったせいだろう。この映画ではそういう演出を選択したのだろうが、ワタシ的にはそれが物足りなかったと。

また、レストランで断られるシーンはわざとらしかったし、高速道路でのグルグルシーンは狙いすぎですっかり醒めてしまった。決定的だったのは(ネタバレ)交通事故を起こしたのがジョンドゥではなくて実は兄であり、前科持ちだったジョンドゥが身代わりになった――という事実が明らかになるシーンが全部セリフで説明されていたのに唖然とした。(ここまで)素人じゃないんだからさ。

さらにオープニングのタペストリーのシーンや、蝶のCGが素晴らしかったのに、象のシーンがショボく見えてしまったのも残念だった。逆にあそこはもっとやりすぎても良かったんじゃないかな。せめてもう少し明るくしても良かったのでは。
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ラブ・アクチュアリー('03イギリス=アメリカ)-Feb 11.2004オススメ★
[STORY]
若き英国首相デヴィッド(ヒュー・グラント)は秘書のナタリーに一目惚れ。
妻を亡くしたばかりのダニエル(リーアム・ニーソン)は義理の息子サムから恋の相談を受ける。
恋人と別れたばかりの作家ジェイミー(コリン・ファース)は言葉の通じないポルトガル人のオーレリアに恋をする。
ハリー(アラン・リックマン)に部下のミアがアプローチ。それに気付いた妻のカレン(エマ・トンプソン)は・・・。
ハリーの部下サラ(ローラ・リニー)は同僚のカール(ロドリゴ・サントロ)に2年7ヶ月片思い中。
落ちぶれたロックスター、ビリー(ビル・ナイ)とマネージャーのジョーはクリスマス・ソングで再起をかける。
親友と結婚したジュリエット(キーラ・ナイトレイ)に恋しているマークは彼女につらくあたる。
モテない男コリンがアメリカへ渡りナンパをすると企てる。
映画の代役で過激なラブシーンを演じながら、ぎこちなく天気の話をするジョンとジュディ。
そして彼らを見つめるデパートの店員ルーファス(ローワン・アトキンソン)。
監督&脚本リチャード・カーティス(『ブリジット・ジョーンズの日記』の脚本家で本作で初監督)
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ロマンティックコメディを得意とする脚本家の初監督作品。今まで私が見た映画では『ブリジット』と『フォー・ウェディング』しかないんだけど、この中では一番面白かった。19人のそれぞれのクリスマスまでのエピソードをまとめたもので、この全部が面白かったわけじゃないんだけど、このうちのいくつかでもハマれば好きな作品になるんじゃないかな(あれですよ。『黄泉がえり』みたいなもんですよ)

私のお気に入りはこちら。
◆ジェイミーとオーレリア(会話が噛み合ってないのに気持ちが通じてるところがいい)
◆ビリーとマネージャー(彼らをホモだと思う人もいるみたいだがそれは違う。彼らは強い絆で結ばれている)
◆ジュリエットに片思いのマーク(切なくて泣いた。ジュリエットのビデオシーンの美しいこと)
◆ジョンとジュディ(とにかく可愛い。空港での会話に大笑い)
ほら、4つもあったよ。ほかの話はハマるほどではなかったけど、サラが数秒喜ぶシーンは一番好きだし、カレンが泣くシーンではもらい泣き。サム少年が恋する相手の歌の上手さに感動した。

キャストについても申し分ないが(監督の今までのコネ(?)で出てる人ばっかりだけど)『いつか晴れた日に』でヒュー・グラント&エマ・トンプソン、アラン・リックマン&ケイト・ウィンスレットというカップルに「逆だろ逆!」と思ってたので、今回トンプソンとリックマンが夫婦で「よしよし」と思っていた。しかしグラントがトンプソンの兄という設定にやっぱり「ちょっと待て!」と言いたくなった。そりゃ実年齢ではグラントのほうが1つ上だけど、どうみてもトンプソンのほうが姉さんだよね。一瞬字幕の間違いかと思っちゃったよ(いや、ここもひょっとして笑いドコロだった?)
すべてのエピソードがうまくいくわけじゃない、にしたのはもちろんいいと思う。でももう少しフォローがあっても良かったな、と思うエピソードがいくつかあったのが残念。また、バックに流れる音楽が多すぎてちょっとウザかった。効果的な使い方をしている場面もあったので、ここらへんはもっと整理してほしかったな。

それと、やっぱりクリスマスシーズンに見る映画だと思ったよ。クリスマスが無理だからバレンタインに合わせたんだろうけど、違うんだよー!今年のクリスマスまで延ばしても良かったのでは?(しょうがないからクリスマス時期になったらDVDでまた見るか)
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ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還('03ニュージーランド=アメリカ)-Feb 7.2004オススメ★
[STORY]
前作の続きより。
滅びの山への案内役ゴラム(声:アンディ・サーキス)は、フロド(イライジャ・ウッド)とサム(ショーン・アスティン)を仲違いさせ、指輪を奪う計画を練っていた。それに気付いたサムはフロドに忠告するが、フロドは聞き入れない。一方、ヘルム峡谷の戦いに勝利したアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)たちは、メリーとピピンを助けるためにアイゼンガルドへ向かうが、こちらもすでに戦いは終わっていた。しかし冥王サウロンがゴンドールを攻撃すると知り、ガンダルフ(イアン・マッケラン)はそれを知らせに向かうが・・・。
監督&脚本ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』
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2001年から1作ずつ公開されてきた三部作の完結編。第74回アカデミー賞では11部門でノミネートされ、作品賞の本命と言われている(お願いだから取ってね)

『二つの塔』の時と同じように、待ちきれずに先行ロードショーで見てきました。前2作よりもさらに長い203分!トイレが近い人なので朝から水分をほとんど取らずに臨みましたよ。おかげで全くトイレの心配なくエンドクレジットまで見ることができた。次に見る時もがんばろう。もうねー、見るこっちも本気にならなきゃ見れない映画だと思う。軽い気持ちじゃ最後まで見れない。終わった後、ものすごく疲れた・・・。

しかし!こんなに長い映画なのに、見終わった直後の感想は「物足りない!」だった。冗談なんかじゃなくて、これで終わりだなんて信じられない、ていうか信じたくないっていう気持ちかねえ。『王の帰還』だけさらに前後編でも良かったぞ、個人的には(笑)やっぱり『二つの塔』の時点でもう少し先までやっておくべきだったんじゃないかな。たしか『ハリー・ポッターと秘密の部屋』に蜘蛛が出ちゃったから、原作では『二つの塔』に入っている蜘蛛シーンが『帰還』に回されちゃったんだよね。悔しいなぁ、なんか。物足りない部分は年末のスペシャル・エクステンデッド・エディションに期待するしかないってことか。というかですね、1作目からもう1回再編集して全部で15時間とかになりませんかね?切った映像もったいなさ過ぎ。セットで5万円でも買う、たぶん。

えー、内容について全く語ってませんが、それは次に見に行った後にしようと思う。今は感動よりも喪失感のほうが大きいというのが正直な感想だ。終わってしまったのがとにかく寂しい。はぁ・・・。しかしこの寂しさを埋めるために物欲に走りそうになっていることは内緒だ!(でも1つの指輪をまた買ってしまいそうだよ)
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シービスケット('03アメリカ)-Jan 24.2004オススメ★
[STORY]
1930年代のアメリカ。チャールズ・ハワード(ジェフ・ブリッジス)は自動車ディーラーとして巨額の富を得るが、息子を自動車事故で亡くしてからは車に触れようともしなかった。しかし2番目の妻の影響で馬に興味を持つようになった彼は、風変わりな馬の調教師トム・スミス(クリス・クーパー)を雇う。そしてスミスは競馬場でシービスケットという小さな馬と、レッド(トビー・マグワイア)という大柄な騎手に出会う。ハワードは2人と馬に希望を託す・・・。
監督&脚色ゲイリー・ロス(『カラー・オブ・ハート』
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原作は『シービスケット あるアメリカ競走馬の伝説』というベストセラーノンフィクション。製作はキャスリーン・ケネディとフランク・マーシャルという超有名コンビ。製作総指揮にはトビー・マグワイアも名を連ねている。第74回アカデミー賞作品賞ほか7部門でノミネートされている。

これ本当に実話だったの?!って疑うほどドラマティックなストーリー。実際にはハワードの子供は実は1人じゃなかったり、映画化する際に変えた部分もあるらしいが、それでもビックリするような話だよね。フィクションなら下手くそな話作っちゃって・・・なんて思ったかもしれない。それに加えて演出もかなりベタベタ。トムがシービスケットとレッドと運命的な出会いをするシーンなんて思わず笑いがこみ上げてしまったほど。でも実話だからと思うとそれも許せてしまうというか。きっと制作側も分かっててやったんだろうが、見事にそれに引っかかって感動してしまいました(笑)

とにかく見てて胸が熱くなった。レース前はワクワクし、レース中はハラハラし、勝ちつづけるところではニコニコしっぱなし。挫折するような出来事があっても決して諦めず、自分と仲間を信じて再びチャレンジする。影響を受けるほどじゃないけど、見終わって少し元気をもらった感じ。ここまでストレートに表現されると素直に受け取れてしまうものなんだね。普段ひねくれ者の私なのに(笑)軍事力を誇示するようなアメリカ万歳映画は好きじゃないが、こういうアメリカ万歳な映画は好きだ。

キャストもメインの3人はもちろんのこと、競馬実況アナウンサーを演じたウィリアム・H・メイシーの芸達者ぶりも面白かった。ゴールデングローブ賞では彼がノミネートされてて「おや?」っと思ったんだけど、実際映画を見てみて納得!ラジオで聞いてみたくなった。それとレッドの親友で同じく騎手のウルフを演じたゲイリー・スティーヴンスは小柄で本物っぽいと思ったら、本物の騎手だったのね。演技もなかなか上手かったなー。
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