Movie Review 2003
◇Movie Index

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔('02ニュージーランド=アメリカ)-Mar 6.2003オススメ★
[STORY]
こちらへ。
監督&脚本ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』
−◇−◇−◇−
映画の『二つの塔』ってこういう話だったんだ・・・(今更何を)

一作目と違って今回は字幕でも違和感はないんだけど、やはり吹替版のほうがストーリーが分かりやすい(でもアラゴルンの声はどうも好きになれん)映像にも集中できて、ヘルム峡谷の門を守ろうとするピーター・ジャクソンや洞窟の子供たちも分かった。そして字幕版より泣きまくり(これは吹替版だからというよりも、初見時と再見時での違いだと思うが)

前作を見た時もそうだったんだけど、初見はやっぱりどうしてもフロド中心に見てしまうのね。でも2回目からはいろんな人たちに目を向ける余裕が出てくる。今回はハルディアですよ。もう出てきただけで涙が出ました。アラゴルンの歓迎に一瞬戸惑いながら微笑むところが最高。ほっぺたに吹き出物ができちゃってるんだけど(エルフなのに)それさえも愛しい。思わず帰ってから前作のハルディア登場シーンを再生してみたりして。この時はこうだったんだよねえ。明らかに原作を無視した展開なんだけど、私はすごく嬉しかった。

原作との違いといえばボロミアの弟ファラミア。彼もまた兄と同じように指輪に魅せられてしまいフロドたちを乱暴に扱う(原作では指輪に関心を持たない)彼に限らず、人間は精神的に弱い生き物として描かれている。けれど、弱い生き物だけど誘惑を跳ね除ける力も持っている、そのことを表現したいのだと思う。ファラミアに関しては次回作『王の帰還』で彼の本来の姿を見せてくれるはず。悩み過ぎのアラゴルンも次回作では立派な○○(自主規制)になっていることでしょう。

絶賛してばっかりだけど、気になったところもいくつかある。目立ったのはメリー&ピピンのパートだ。オークたちによって縛られているはずのピピンが、シーンによっては縛られてなかったりしてるし、メリーの傷が右眉だったり左眉だったりしてる。そしてエントに運ばれていくシーンは、背景の色と全然合ってなくて下手くそな合成を見せられているような感じ。何でここだけこんなに雑なんだろうか。そのあとの戦いのシーンが好きなだけに(火のついたエントが水の中に頭を突っ込むシーンが特に好きだ!)とても残念。
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ビロウ('02アメリカ)-Feb 23.2003
[STORY]
第二次世界大戦中、アメリカ軍潜水艦はドイツ軍Uボートに撃沈されたイギリスの病院船の生存者3名を救出した。しかしその中の1人が女性だったため、艦内に衝撃が走った。女性は潜水艦に不吉な災いをもたらすという言い伝えがあるからだ。そしてその直後、ドイツ軍の船に見つかってしまう。スクリューを止めて息を潜める中、突如艦内にあるレコードが鳴り響き、ドイツ軍の攻撃を受けてしまった。救出された3人の中にスパイがいるのか?それとも・・・。
監督&脚本デヴィッド・トゥーヒー(『ピッチブラック』
−◇−◇−◇−
原案&製作&脚本は『レクイエム・フォー・ドリーム』のダーレン・アロノフスキー。『ピッチ〜』と『レクイエム〜』の監督ならば見ねばなるまい。というわけで思い切りB級映画を期待して見てきた。

本作もまた『ピッチ〜』と同じように、戦争モノ?と思わせておいてスパイもの?いや、実はホラー、という二転三転する構造。しかし欲を出しすぎたのか、うまくこの切り替えができずに中途半端になったような気がする。救出された人の中にスパイが?というところはもう少し引っ張っても良かったんじゃないかな。もっと彼らを徹底的に調べるシーンがあれば緊迫感が増したかも。また、冒頭の映像がちょっと分かりにくくて引き込まれるまでに時間がかかった(でもこれは後々のアレに掛かってくるのでしょうがないといえばしょうがないのだが・・・)もう少しうまい見せ方があったんじゃないかな。

最初からホラーテイストでも良かった。なぜこういう事態を引き起こしたのか?という謎も二転三転するので、これだけでも十分引き込む力はあったと思うんだけどねぇ。個人的にはさらにもう一転させて(ここからネタバレ)実は艦長の霊の仕業などではなく、艦長を殺してしまった者たちが自滅していっただけ。戦争中で潜水艦という密室でどんどん追い詰められてしまった。(ここまで)だったらもっと面白かったと私は思う。

潜水艦の外部や魚の群れがモロCGと分かってもこれはこれで好きだし、内部は本物の潜水艦と精巧なセットを併用したとあってとてもいい。怖いシーンは一瞬一瞬だけで、ずっと怖さが持続しなくて正直いまいちなものが多かったけど、鏡のシーンは一番印象深い。怖いけどちょっと綺麗でね。それと怖いシーンじゃないけど、仮眠室の壁の写真をアップにするカットも良かった。

ブライス大尉を演じたブルース・グリーンウッドがサム・ニールに似てて、役柄もサム・ニールが演じそうな感じだった。この映画が大作だったら彼がキャスティングされていたかも。マシュー・デイヴィスの役はジョシュ・ハートネットかな。・・・それだと全く違う映画になるか。
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ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔('02ニュージーランド=アメリカ)-Feb 15.2003オススメ★
[STORY]
前作の続きより。
ウルク=ハイとの戦いで3つに分裂してしまった旅の仲間。指輪を持つフロド(イライジャ・ウッド)は庭師のサム(ショーン・アスティン)と共に滅びの山へと向かっていた。一方、アラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)らはウルク=ハイたちにさらわれたメリーとピピンを追いかけていた。だがその頃、メリーとピピンは隙を見て逃げ出していた・・・。
監督&脚本ピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』
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公開が待ちきれず、先行ロードショーに行って参りました。私のように一刻も早く見たい人ばかりが集まっているせいか、前作のように途中で席を立つ人もなく、劇場全体が緊張感に包まれていた(いやー嬉しいね)いや、だってもう休むヒマないもん(笑)これでもか!まだ見せたる!どうだ参ったか!の連続なのだ。見終わってさすがにグッタリしたけれど、全然満足できなかった!それはもちろん本作が3部作の真ん中で、これまたいいところで映画が終わってしまったからということもある。が、それよりも内容が濃すぎて大まかなストーリーと字幕を追うのが精一杯で、細かいところまでチェックできなかったことが大きい(つまり自分のせい)1作目も3回見てようやく満足できたので、本作もあと2回は見ることになるでしょう。

本作の見どころは戦闘シーンだといわれているが、私は戦闘そのものよりもむしろ、危機的状況に立った時に人はどうすればいいかを描いているのだと思った。そういうと今の世界情勢とどうしても絡めたがる人がいるんだけど(まぁそれもしょうがないと思うんだけどさ)この映画はアメリカ人じゃなくてニュージーランドの指輪ファンが何年も前から作っている映画だということを忘れてはならない。
戦争に限らず、私たちの身近なことで(仕事でも学業でも恋愛でも病気でも)危機が訪れた時を想像してみるといい。その時、何ができるか?ということなのだ。指輪のことも然り。核兵器だなどと考えずに、自分の身近な誘惑と考えればいい。

と、真面目な感想はこれくらいで(笑)
もうギムリが面白いわ可愛いわで最高!前作はいまいち目立ってなかったけど今回の彼はこの映画の一服の清涼剤だわ。ホッとします。ありがとうギムリ。そしてウインクする白いじいさん萌え。ゴクリ&スメアゴルの演技(?)にビックリ。あんまり泣かせるなよサム!
そしてフロドである。トップクレジットの割に今回あまり出番はないのだが、やっぱり一番印象深い。前作では剣を持ってもすぐに取り落とすような弱いホビットだったのに、本作では明らかに変化しており、親しい者にまで刃を向けるようになる。・・・しかしなんつーか、悪に蝕まれていく姿は壮絶なまでに美しかったな(お、なんかイタくなってきたぞ)ナズグルと対峙した時の顔なんてもう、息を飲むほどに綺麗だった(はい、ここまでにしときます)イライジャ・ウッドの時は何とも思わないのになぁ。

で、PJは一体どこに出てたのよ?今回もまた見逃した!
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レッド・ドラゴン('02アメリカ)-Feb 15.2003
[STORY]
ウィル・グレアム(エドワード・ノートン)はハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)命がけで逮捕した優秀なFBI捜査官だったが、今は退職して家族と静かに暮らしている。そこへかつての上司クロフォード(ハーヴェイ・カイテル)が、立て続けに2件起きた一家惨殺事件の捜査に協力して欲しいと頼みに来た。クロフォードの説得により事件の現場を再検証したグレアムは、すぐに重要な手がかりを発見する。
監督ブレット・ラトナー(『ラッシュアワー』
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無難にまとめた佳作。ホプキンスのレクター3部作の中では、ストーリー展開に関しては一番出来がいいかもしれない。でも一番面白みがない作品でもある。何度も見ようっていう気が起こらない映画だ(『羊たちの沈黙』は何度でも見てしまうのだが)ノートン先生やフィリップ=シーモア・ホフマンが出ててもね。

本作にはグレアム、レクター、そしてダラハイド(レイフ・ファインズ)という3人もの役者が揃っているのに──まぁレクターは原作でもそれほど活躍はしないが──ダラハイドに焦点を当てすぎて、対するグレアムが単なる“レッド・ドラゴンを捕まえるヒト”だったのが残念。グレアムが事件現場を再捜査するシーンや写真を見るシーンは、彼が犯罪者と非常に近い考えを持つことができる、つまりレッド・ドラゴンと紙一重な人物だということが分かる非常に面白い、私がこの映画の中で(原作でも)一番好きなシーンなんだけど、これ以降は彼を生かした活躍がほとんどない。・・・というか、ダラハイドと盲目の女性リーバ(エミリー・ワトソン)の恋がメインになっちゃうからねえ。

ファインズはハマり役とまでは言えないけど悪くもなかった。実は彼がやると聞いてすごい心配だったのだ。ただ、もうちょっと筋肉つけさせてあげたかったな(2ヶ月くらいしか余裕がなかったらしいね)タトゥーが似合わなすぎる。一番の見せ場であの肌の緩み具合じゃ全然怖くないんですけど。あれでもっとムキムキしてたらダラハイドだ!って思えたと思う。

最後にこれだけ書かせて。怖い!と思えるのが映像じゃなくて音だけ、っていうのは映画監督的にどうなのよ?
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アレックス('02フランス)-Feb 11.2003
[STORY]
レクタム〔直腸〕というゲイクラブで、マルキュス(ヴァンサン・カッセル)と友人のピエール(アルベール・デュポンテル)が、テニア〔サナダムシ〕という男を捜していた。数時間前、マルキュスの恋人アレックス(モニカ・ベルッチ)がレイプされ、その犯人を探していたのだ。マルキュスはテニアを見つけ、殴りかかるが・・・。
監督&脚本ギャスパー・ノエ(『カルネ』)
−◇−◇−◇−
『メメント』と同じくラストから始まってオープニングで終わる作品。ただしこちらはもっと徹底していて、エンドクレジットが一番最初に出るし、文字がところどころ鏡文字になっていたりする。さらに配給会社がつける日本語タイトル(と字幕翻訳者名)が映画の一番最後に出た時はニヤリとしてしまった。コムストック、なかなかやるな。

しかし参りました。カメラが終始動きっぱなしで、特にゲイクラブのシーンでは直視できず、酔わないように客席を見たり下を向いたりして気を紛らわせたほど。こういう映画だということは知っていたので、ちゃんと一番後ろの席を選んだのにやっぱりダメだった。ホントはちゃんと見たかったんだよ〜。まぁ時間が戻るにしたがってカメラも揺れなくなっていくので、始まって30分くらいの我慢かな。意図は理解してるんで、もうちょっと普通に見せて欲しかったなぁ(泣)
でもレイプシーンでカメラが微動だにしなかったのが逆にすごい怖かった。カメラがぐるぐる動いている時よりもずっと長い時間に思えて、あーこういう効果もあるんだなぁって感心した(レイプシーンそのものにはもちろん感心しなかったけどね!)

凄まじい暴力やレイプシーン、時間の逆行にブレまくるカメラなどに話題が先行しているけれども、ストーリーや登場人物たちのキャラクターもきちんと練られていると思った。アレックスとマルキュス、そしてアレックスの元恋人ピエール、この3人の微妙な関係が面白かった。性格的にはピエールのほうが真面目だしアレックスを大切にしてるように見えるんだけど、物語が遡っていくうちにアレックスがマルキュスを選んだ理由も分かったような気がする。その前に(ネタバレ)レクタムで必死にマルキュスを止めに入っていたピエールが、テニアを見つけた途端に殴り殺す(ここまで)シーンを見てるんだけど、どうもピンとこなくてね。マルキュスに対しては、アレックスを怒らせて1人で帰すようなバカげたことをしたコイツに私は非常に腹を立ててたんだけど、その後のアレックスと2人きりのシーンを見て、やっぱり彼のほうがいいのかなーって思ったり。そしてアレックスはちゃんと2人の性格を見抜いてるんだなぁ。

もちろんレイプしたテニアが悪いのだが、アレックスを怒らせたマルキュスもいけないし、夜中にあの薄いドレスのまま1人で外に出たアレックスも無防備すぎた。 こういう状況を作ってしまったマルキュスやアレックス、そしてアレックスがテニアと出くわしてしまったタイミングの悪さがこの悲劇を生んだ。 「もし〜だったら」って考えるのは好きじゃないんだけど、ちょっと考えてしまった。

ホントはもう正直言って見たくない映画なんだけど、『メメント』のDVDみたいに時間通りに見られる機能がつけば、もう1回見たいな。
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