Movie Review 2002
◇Movie Index

マルホランド・ドライブ('01アメリカ=フランス)-Mar 2.2002オススメ★
[STORY]
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監督&脚本デイヴィッド・リンチ(『ストレイト・ストーリー』
−◇−◇−◇−
2回目、行ってきちゃいました。一度目では恐くて目を瞑りそうになっていたシーンも今回はしっかり見れたし、すっかり忘れていたシーンもあって全然見飽きることなかった。やっぱりこの映画好きだ〜。

一応、自分なりに解釈をつけてみようと思うが、だいたいパンフやネットで言われてるのと同じかな。以下ネタバレ。

冒頭のジルバシーンはダイアンの夢(そこからダイアンのベッドシーツが写るんで)
ただしそれ以降、ブルーボックスを空けるところまですべてが夢ではないと思う。ダイアンの願望や想像じゃないかな。夢というには理路整然としすぎてるんだよね。特に叔母の家に住むようになるというのは「自分がこうだったら」という願望、オーディションシーンはそこからさらに飛躍させた想像。私もたまに「自分が金持ちだったら」とか考えるわけ(笑)そんでその想像がどんどんエスカレートして考えつくところまで突き進むわけよ。前半のダイアンってまるでそんな感じがするんだな。

普段からそんな想像ばかりしてるから、それがいつからか夢に見るようになってしまった。ケシャーに妻がいてその妻が浮気しているのは願望かもしれない、しかし圧力によってカミーラという女をキャスティングしなければならないというあたりは、自分が選ばれない理由(言い訳)が夢に現れたのかも。さらにウィンキーズでダンが浮浪者を見るシーンは、殺害依頼を見られたかもしれない不安が夢に現れた・・・。

ブルーボックスを開けたあとは現実だが、現実のほうが夢のように見えるのはダイアンがクスリに手を出していたからだろう。


簡単だけど、こんな感じ。これが正しい答えだと言い切ってるわけじゃないので念のため。まだまだ説明できないところがいっぱいあるし(っていうか全部説明できちゃったらリンチじゃない!)もう1回見たらまた違う答えを出すかもしれない。でも何度見てもやっぱり悲しいお話だと思うだろうな。

一度目の時はリタに痺れてしまったが、今回は改めてベティとダイアン、全く違う女2役を演じたナオミ・ワッツの上手さに目が行った。ベティのオーディショーンシーンは何度見ても好きなシーンだな。それからベティとダイアン、パッと見ただけでは同一人物とは思えない理由は、髪型やメイクだけじゃなく歯並びが違うということに気付いた。歯の色もちゃんとダイアンのほうが黒っぽいし、唇のあたりもアゴのラインも崩れてるの。こうなると全然顔つきが違って見えるのね。人間の顔って恐ろしいー!
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キリング・ミー・ソフトリー('01アメリカ)-Feb 24.2002
[STORY]
アリス(へザー・グラハム)は、ロンドンに住むアメリカ人。Webサイトを開発する仕事をし、エンジニアの恋人と同棲していた。ある朝、いつものように出勤途中の横断歩道で、信号のボタンを押すアリスと同時にボタンに触れた男(ジョセフ・ファインズ)がいた。2人はしばらく見つめあい、そして別れたが、アリスは男のことが気になり仕事が手につかない。とうとう男が入っていった本屋を覗き、彼に誘われるまま家について行ってしまう・・・。
監督チェン・カイコー(『さらば我が愛/覇王別姫』)
−◇−◇−◇−
チェン・カイコーが初めて英語作品に挑んだハリウッド進出第1作目。しかし彼はなんでこの作品を撮ったんだろう?本当に彼の意思で彼の撮りたいように撮れたんだろうか。そんな疑問が出た作品だった。彼の作品はあまり見てないし、すごい好きな作品てのもないんだけど、でもここまでしっくりこない作品だとはね。ぶっちゃけた話、チェン・カイコーが撮らなくてもいいような話だと思いました。それこそ『エリザベス』のようなコスプレ系を撮ったほうがよっぽどもしっくりきたと思うんだけど(ジョセフ・ファインズつながり)アン・リーやジョン・ウーはうまくいったのになぁ。

すべてにおいて中途半端だと思った。ほんの少しとはいえ雪山のシーンではちっともハラハラしないし、 アリスとアダムの運命の出会いも激しい情事も気持ちが入っていかなかった。あの話題の首締めシーンは『愛のコリーダ2000』ばりに激しいのかと思ってたら、案外あっさり終わっちゃったし。アダムの性癖と過去の女性関係に疑問を抱くというサスペンスな展開も、纏め方が悪くてがっかりしてしまった。アリスが誰かにアダムとの出会いや疑惑について語りはじめるところから物語が始まるのだが、それが生かされてなかったのも痛い。せっかくヘザー・グラハムが体当たりでがんばったのに・・・。

まぁ別の見方をすれば、面白いといえば面白かったかな。だってこの話(ネタバレ)結局デボラとアダムは変態姉弟だったということじゃん?(笑)(ここまで)見終わって脱力もするってもんだ。
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カタクリ家の幸福('01日本)-Feb 23.2002
[STORY]
長年勤めていたデパートをリストラされたカタクリマサオ(沢田研二)は、妻テルエ(松坂慶子)、出戻りのシズエ(西田尚美)と娘のユリエ、前科を持つ息子マサユキ(武田真治)、マサオの父ニヘイ(丹波哲郎)とともに「白い恋人たち」というペンション経営をはじめる。しかし待てど暮らせど客はやってこない。そんなある日、1人の客がやってきて家族は大喜び。ところが翌日客を起こしに来てみると、客が自殺していた!警察沙汰を恐れたマサオは内緒で死体を埋めることに決めるが、それが災難の始まりだった。
監督:三池崇史(『漂流街』
−◇−◇−◇−
韓国映画『クワイエット・ファミリー』を大胆にリメイク。ミュージカルシーンあり、CGあり、特殊メイクあり、立体アニメシーンあり。そして出演者はみな個性的。元の作品で、ストーリーが中だるみしてたとか、家族のキャラがいまいち、などと私が感じていたところがグンと良くなっていた。リメイクってたいてい元祖を超えられないものだけど、これは超えた、というより突き抜けた、と言ったほうがいいかな(笑)キム・ジウン監督はこの作品見ただろうか。是非感想が知りたい。

まず驚いたのが立体アニメ。冒頭からいきなり出たので、まだ他の映画の予告があったのか、と思ったほど。出演者たちが実写から立体アニメになるのを見て、正直最初はこの映画にハマれるのか心配だった。でもニヘイ爺ちゃんが危険な目に遭うシーンで実写からいきなり立体アニメに変わるのを見た時、これはウマイぞ!と感心してしまった。これならどんなアクションでも大丈夫(笑)そして案の定、クライマックスでも実写からアニメに早変わり。これまたニヘイ爺ちゃんがイイ味出してました(味っつうか魂を・・・)アニメに拒否反応を示さなければ、あとはもうノリノリで見れる。

ミュージカルシーンもいろんなバリエーションがあって『サウンド・オブ・ミュージック』風だったり、 ロック系やカラオケ用デュエットもあって飽きない。初めて死体を埋めるシーンでの歌と踊りが、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でセルマが罪を犯した時のシーンにそっくりだと思ったんだけど、パロってると考えていいのかな。

ジュリーは歌はうまいけど、ダンスで身体がゆさゆさしてたのが非常に気になりましたです・・・(痩せてね(泣))でも昔のジュリーからは考えられないようなハジケたシーンあり。
武田真治は意外にも踊れてた!セリフは「お前三村かよっ!」ってこっちがツッコミ入れたくなるようなツッコミのセリフばっかりだったな(笑)
一番私がイイと思ったのは松坂慶子。ダイコン持っていろんなところに出没する某CMキャラと同じといえば同じなんだけど、役に対して真面目で一生懸命さが伝わると同時にとても楽しそう演じてて、見てるこっちまで楽しくなった。天然ボケらしいセリフ回しも可愛かった。好きですテルエさん(萌え)
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マルホランド・ドライブ('01アメリカ=フランス)-Feb 20.2002オススメ★
[STORY]
真夜中。マルホランド・ドライブを走る車の後部座席に女(ローラ・エレナ・ハリング)が乗っていた。 突然車が止まり、運転手が彼女に銃を突きつけた。その時、若者が運転する暴走車が彼女の車に突進してきた。女は傷を負いながら車を降りて逃げ出し、あるアパートに身を隠した。
女優を夢見てハリウッドにやってきたベティ(ナオミ・ワッツ)は、留守中の叔母のアパートに住むことになった。しかし家の中には知らない女がおり、彼女はリタ(ローラ・エレナ・ハリング)と名乗り、事故に遭って怪我をしたので休ませて欲しいと頼んできた・・・。
監督&脚本デイヴィッド・リンチ(『ストレイト・ストーリー』
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本作は当初TVドラマとして企画されたが、パイロット版を見たTV局が過激だと判断し、企画を中止してしまった。しかしフランスのプロデューサーが名乗りをあげ、劇場作品として公開することとなった。そして、この作品でリンチは2001年カンヌ映画祭監督賞を受賞。第74回アカデミー賞でも監督賞にノミネートされた。

『ロスト・ハイウェイ』『ストレイト〜』と個人的にあんまり・・・だったけど、ついにきました!最高。
『ロスト〜』に似てるといえば似てるんだけど、こちらのほうが理解力のない私でも分かりやすかったっていうのが、まずあるかな(元々TV用だったせいもあるか)あまりにも突飛だと考えることを放棄してしまうけど、今回の謎については考えてみよう、整理してみようという気になる。その考えについては今の時点では書かないけど。

いつのながらアンジェロ・バダラメンティの音楽は首筋を撫でられているようなゾクゾクする音を聞かせてくれるが、それ以上に映像が恐ろしくて、白昼のシーンなのに何でこんなに怖いんだろう?と何度か目を閉じそうになった。また、殺し屋のドジっぷりにちょっと笑ったり、ある歌を歌うシーンに感激したり(この歌のためにサントラ買ったし)、予想もつかない展開にびっくりしたり、見終わって悲しい気持ちになったりと、自分の中でさまざまな感情が出たことに驚き、こういう作品が大好きなんだと思った。

さらにワッツとハリング、この2人の妖艶で緊張感のあるシーンに終始ドキドキ。いつも感想で書いてるけど“女と女”という関係が好みなのだ。「いつでも裏切って男に寝返えること」ができそうな危うさがたまらない。特にハリング演じるセクシーで謎めいたリタには、ベティじゃないけどクラクラした。私ってそっちの気があるのかも、ちょっと思ったりして(マジっすか)

2回目の感想はこちらへ。
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ピアニスト('01フランス=オーストリア)-Feb 10.2002
[STORY]
ウィーン国立音楽院でピアノ教師をしているエリカ(イザベル・ユペール)は、幼い頃から厳しく躾られ、今も彼女を監視する母と二人暮しをしていた。そんなエリカにはピアノばかりに打ち込んでいた反動か、自傷行為やポルノショップ通いをする秘密を持っていた。あるピアノコンサートで知り合ったワルター(ブノワ・マジメル)という青年がエリカに恋をし、彼女もまた彼に惹かれていくが・・・。
監督&脚本ミヒャエル・ハネケ(『ファニーゲーム』)
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2001年カンヌ国際映画祭グランプリ、主演女優賞(ユペール)、主演男優賞(マジメル)を受賞。

中年にさしかかった女性ピアニストと美青年の恋・・・というと、うっとりするようなメロドラマを想像しがちだが、これは全然甘くない映画だ。むしろ見てて体が冷えてくるし痛い。非常に不快になる人もいるだろう。これから見ようって人もここを読むかもしれないのに、そんな人に先入観を与えちゃいけないとも思うんだけど、タイトルや大まかなあらすじを読んで甘い期待をしている人にあえて釘を刺しておこうかなと(おせっかいかなぁ。でもねぇ)

私は『ファニーゲーム』も気になって見るかどうしようか迷ってたんだけど、残酷で不快な映画だと聞いて結局怖気づいてしまった。そんなこともあってか本作を見る前にちょっと情報を仕入れ、最初からこういう作品なのだという心構えをして見た。それでもダメージは大きかった。好きな映画ではないけど、決して忘れない作品の1つになりそう。やはり前年度のカンヌパルムドーム作品『ダンサー・イン・ザ・ダーク』とカブるところある、かな。

この映画はまさにユペールがいたからこそ成り立っている作品と言っていいだろう。彼女には私からも主演女優賞をあげたいと思う(何の価値もありゃしませんが)とにかく凄まじかった。見た目は知的で冷静、しかし彼女の行動や考えを見ていると恐ろしくなってくる。絶対に近づきたくないけど、でも理解できないこともない、ような気がする(このへんの自分の感情はとても曖昧。スッパリ斬り捨てられないの)その痩せた小柄な身体から時折青い炎が見えるほどだった。

対してマジメルは主演男優賞な演技とは思わなかったんだけど・・・。『王は踊る』から比べると随分モサモサしてて田舎っぽかったね。でもあとで思い返してみると、ワルターって男もエリカ以上におかしな男かも。(ネタバレ)だって普通、エリカの教え子にケガをさせたのが彼女自身だと知ったら怖くならない?そこに感動して女子トイレまで追いかけちゃうなんて、あんたどうかしてるよ(笑)さらにエリカの家に押しかけて乱暴した翌日、何事もなかったかのように爽やかな笑顔を彼女に見せる。一体どうなってるの?(ここまで)

もう二度と見たくないはずの作品なのに、分からなすぎてまた見てしまいそうだ(苦笑)この痛々しさが快感になったら・・・いや、そこまでは考えたくないな。
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