Movie Review 2001
◇Movie Index

8月15日(原題)('01フランス)〔未公開〕-Jun 24.2001
[STORY]
8月15日の祝日を過ごすため、マックス(リシャール・ベリ)、ヴァンサン(シャルル・ベルリング)、ラウル(ジャン=ピエール・ダルッサン)の3人が別荘にやってきた。しかし彼らの妻は子供たちを置いて彼女達だけでバカンスに出かけてしまっていた。3人は子供の世話と家事をしなければならなくなり・・・。
監督パトリック・アレッサンドラン(長編2作目)
−◇−◇−◇−
製作はリュック・ベッソン。脚本は監督の妻リザ・アズエロス=アレッサンドランが担当。

非常にまったりしたドラマ。派手な展開もなく、ただ3人の男たちが愚痴ったり落ち込んだり怒ったりして、最後は妻たちのこと、女性全般について考え始めるというお話。

この3人の男はそれぞれ個性的。産婦人科医で愛人がおり、妻とは離婚したいと思っているマックス、子供っぽくてゲームボーイに夢中になったりサウスパークTシャツ(ほしい!)を着たりしてるヴァンサン、相手とは未入籍で、もしかして逃げられてしまったのかも?!と不安がるラウル。妻たちは仲良しでも、彼らは顔見知り程度だったので、最初は気まずくなったり衝突したりとグチャグチャしてるのだが、それが次第に仲良くなっていく(当然、お酒を酌み交わすことでね)この過程はありがちとはいえ、なかなか微笑ましいものだ。みんなオッサンだけど意外に可愛らしいのよね。

8月15日といえば日本でもお盆時期なので、避暑に出掛ける設定にも無理はなく、入り込みやすい話ではある。でも、妻たちだけがいなくなってしまう展開には驚いてしまうな。日本なら、夫は嫌になっても子供は大事だから置いていかないものね。それに夫たちの動揺ぶりも日本じゃあまり見掛けないタイプかも。うるさいのがいなくてせいせいしたなーと一日中飲んだくれたり、ゴルフしたりしそうだもんね(笑)それだけ日本の男性は、女性に対して高を括ってるのかもしれませんが。フランス女性のほうが思い切りが良さそうだ。

そんな考え方の違いを比べる意味では面白かったけれど、ドラマとしてはもう少し波があって欲しかったな。舞台で上演したほうが面白いんじゃないの?って思った(この発言は毒か?)
それとネタバレ気味なので色変えるけど(ここから)彼らの妻たちの顔が是非とも見たかった。出ないだろうとは思ってが。それか女性3人並んで立っててもらって、誰が誰のパートナーなのか、エンドクレジットを使って観客に当てさせたりすれば面白かったかも(ここまで)
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メルシィ!人生('00フランス)-Jun 23.2001オススメ★
[STORY]
ピニョン(ダニエル・オートゥイユ)は会社で経理を担当しているごく平凡な男。ある日、彼は偶然自分がリストラされることを知ってしまう。絶望したピニョンは自宅の窓から飛び降りようとするが、隣に引っ越してきたベローヌ(ミシェル・オーモン)に助けられる。そしてオーモンはピニョンがゲイであると証明する合成写真を作り、会社宛に送りつける。すると会社側は同性愛者からの反発を恐れ、彼を解雇しないことに決めた・・・。
監督&脚本フランシス・ヴェベール(『奇人たちの晩餐会』
−◇−◇−◇−
『奇人たち〜』で大笑いさせてもらったヴェベール監督の新作は前作を凌ぐ面白さで、めちゃめちゃ笑わせてもらった。フランス映画際ということで、観客の中にフランス人が多いせいもあるんだろう。会場のノリがすごく良くて、多分普通に劇場で見た時にはここまで笑わないだろうなあ。

自らを“透明人間”と言うほど、取り立てて個性もなく地味で冴えない中年男のピニョン。2年前に妻子とも別れ、たまに電話しても息子は全然会いたがらない。しかしウソをついてゲイだとカミングアウトしてから、彼自身は変わらずとも、彼を取り巻く人々が彼のことを違った目で見るようになり、一躍注目の的となってしまう。
これは分かるな。もし自分の会社の人がカミングアウトされたら、もう普通の目では見られないもの。偏見は全くないけど、その人の何気ない行動1つにとっても、全てそれに結びつけてしまいそう・・・。

そんなわけで、彼は会社の中で目立った存在となり、いつものシリアスなオートゥイユからは想像できないような、こっ恥ずかしいコスプレをさせられてしまったりする。しかし、悪いこともあれば良いこともあって、彼自身の考え方や行動に変化が現れはじめるのだ。展開に多少無理があったり、ただ笑わせるためだけとも思えるシーンもあるけど、最後のオチもきれいに決まって、非常に満足できる作品だった。

出演者は他に、ゲイを毛嫌いしている人事部長サンティニにジェラール・ドパルデュー、ピニョンの女上司にミシェール・ラロック、重役ギョームに前作で主演だったティエリー・レルミット、そして社長にジャン・ロシュフォールと、とっても豪華。

公開になったら是非見てもらいたい。
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天国で殺しましょう('00フランス)〔未公開〕-Jun 23.2001
[STORY]
パラダイスという名前の農場を営むジョジョ(ジャック・ヴィルレ)とリュリュ(ジョジアーヌ・バラスコ)夫妻は昔から仲が悪く、ケンカばかりしていた。しかし離婚すればジョジョは家を追い出され、大事にしているヤギとも離れ離れになってしまう。そこでどんな容疑者も無罪にしてしまう弁護士ジャクアール(アンドレ・デュソリエ)を訪ね、妻を殺したとウソをつき、どうすれば罪が軽くなるのか聞き出そうとする。
監督ジャン・ベッケル(『クリクリのいた夏』)
−◇−◇−◇−
『我慢ならない女』('51)のリメイクだそうだが、そっちは未見なのでよく分かりません。

夫が妻を殺す計画を立て、何とか微罪で済むように弁護士に相談しに行くなんて、普通に考えたらものすごくヤな話である。でもそれをコメディとして、そしてほのぼのしみじみとさせる話に持っていくところがうまい。そして展開もさることながら、妻がものすごくヤなオバチャンで、夫のことを心の底から同情できる存在に見せているところが、この作品のポイントだろう。

しかしよく考えてみれば、なぜ妻がそんな風になってしまったのか、そして彼女の本当の気持ちについての描写がないので、居心地の悪さも感じる。監督もそれを十分承知してるようで、それを描いてしまうとコメディにならないから描かなかったそうだが、このあたりの選択は非常に難しいだろう。
特にリュリュがジョジョのワインに毒を仕込むあたりは、その動機が分からない。本当に彼女はジョジョを殺そうと思っていたのか?それとも単に苦しめばよい、くらいに思っていたのか・・・。

また、ジョジョが事前に弁護士に相談していたという事実が裁判中にバレてしまうのではないかと、見てるこっちはずっとヒヤヒヤしてたんだけど、そういうことはなかったね(笑)個人的にはそういうシーンが欲しかったけど。
にしてもこの相談シーンはめちゃくちゃ笑えた。話が通じてるような通じてないような、会話が噛み合ってないようで噛み合っていく。リズムが良く、2人の息も合ってて、セリフそのものの面白さ以上の面白さがあった。
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センターステージ('00アメリカ)-Jun 22.2001
[STORY]
ジョディ(アマンダ・シェル)は、アメリカン・バレエ・アカデミーの練習生オーディションに合格し、ニューヨークへやってくる。しかし練習は過酷でジョディなかなか上達しない。おまけに足の骨格がバレエに向いていないと先生から宣告されてしまう。
監督ニコラス・ハイトナー(『私の愛情の対象』)
−◇−◇−◇−
一旦打ち切られたものの、人気があって再び上映が始まった作品。見そびれちゃってたので、再上映してくれて助かった。

バレエがテーマとはいっても、きっと普通の俳優が格好だけでやってるんだろうなーなどと思っていたら、吹替えじゃなくて本当に踊っててまず驚いた。なんでも主要出演者のほとんどがバレエ経験者で、現役の人もいるそうな(バレエ全然分からないからな、私)
そうそう、長野オリンピックのフィギュアスケートで金メダルを取ったイリア・クーリックがロシアからの留学生役で出演していて、ダンスシーンも他の出演者から比べるとちょっと少な目だけど披露している。スケーターでもバレエは基本なのかな。ちゃんとキマってました。

というわけでバレエシーンは必見。クライマックスで見せる2つのプログラムはこの映画のために組んだオリジナルだそうだが、クラシカルなものと現代的なものと両方楽しめるのがいい。そういうプログラムになった経緯も無理がなく自然だし、うまいね。

しかし私はバレエ以外の、練習生たちのドラマ部分があまり好きじゃなかった。みんなコナマイキなんだもん(笑)特にエヴァって子がねぇ。オーディションをわざわざ受けて、わざわざNYの学校に入るような子が、なんで先生に対して反抗的になるんだ?誰かの言いなりじゃなく自分の意志でやってんでしょ。わかんねえ。そんでもって「ジョナサン(先生)のせいでバレエ団入団は無理かもしれないわ」なんてため息つきながら言ってんの。先生に嫌われるのは当たり前でしょ。バカ娘決定(笑)
主役のジョディも理解しがたい行動取ったりしてやっぱりバカ娘だし、ワタシ的には母親の夢のためにバレエをやってるモーリーンが一番共感できるキャラクターだったね。
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王は踊る('00ベルギー=フランス=ドイツ)-Jun 21.2001
[STORY]
わずか5歳にして国王となったルイ14世(ブノワ・マジメル)は、政治に関しては母や側近たちに実権を握られており、自分のダンスを見せることで人々から崇拝を受けていた。そんな国王を輝かせるために音楽家のリュリ(ボリス・テラル)は何曲もの戯曲を書き上げるが、彼は国王に対して特別な感情を持っていた。
監督&脚本ジェラール・コルビオ(『カストラート』)
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美貌のルイ14世とバイセクシャルの音楽家の愛憎と、王を従えようとする長老たちや音楽家を陥れようとするほかの音楽家たちの策略・・・そんなドラマを絢爛豪華な衣装や舞台装置を使って描いていく。まさにフランス宮廷絵巻。『ベルばら』を読んだ者にとっては一度は憧れる世界だな。しかしこういう歴史を描いた作品を見る時にはいつも思うんだけど、ある程度事前に知識はもってたほうがいいと思う。作品によっては、観客が知っていることを前提に作られているから。この作品でも、後半になると話がガタガタしてくる。前作『カストラート』も同様だったので、この監督のパターンなのかな。途中までは丁寧に描いていたのに急に年数が経ってたりするので、驚いてついていけなくなってしまうのだ。

パターン化といえば、前作同様、演奏場面やダンスシーンはものすごい迫力で見ていて飽きないんだけど、人物描写に関しては平板な印象を受ける。何かあるとすぐに激昂し八つ当たりすんのはお約束なんでしょうか。そんな表面的な言動ばかりが目について内面が見えないのがもどかしい。そして演奏と激昂が繰り返されるというパターンが読めてしまうのがつらい。「またか」っていう気になってくる。そういう映画だから仕方ないけど、そういう意味では新鮮味のない作品だ。

総括に書いたけど、ルイを演じたブノワ・マジメルが時々窪塚洋介に見えてしょうがなかった。ちょっと目を細めて口を尖らせるところが似てんのよ。日本人でキャスティングするならこの役は窪塚にやってもらいたいもんだわ(別にファンじゃないけど)リュリは思いつかないが、モリエール(演じるはチェッキー・カリョ)は夏八木勲な。←ワタシの中でカリョと夏八木はすでに似てると位置付けられている
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