Movie Review 2000
◇Movie Index

ニコラ('98フランス)-Apr 21.2000
[STORY]
12歳のニコラ(クレモン・ヴァン・デン・ベルグ)は内気で大人しい少年。ある時、スキー合宿に参加することになったが、過保護が父親はバスで行くことに反対し、父親の運転する車で行くことになった。遅れて宿舎に到着したニコラは皆となかなか馴染むことができない。またおねしょが怖くて夜眠ることもできない。そんな時、近くで少年の失踪事件が発生し・・・。
監督&脚色クロード・ミレール(『なまいきシャルロット』)
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小さい頃、ものすごく臆病で(今もそうだけど)いろんなことが怖かった。一時期は毎日のように怖い夢を見て眠れなくなっていた。でも怖がりなくせに想像力が逞しくて、さらに怖いことを考えては自分を追いつめていったように思う。だからこの作品のニコラ少年を見ていると、とても他人事だとは思えない。彼がヘンな夢を見たりや空想したりすることは決して異常なことではない。不安を解消する術を知らず、大人しくて口にも出せないから、つい内に篭ってしまう。ふとしたことから嘘をついてしまうことさえ痛々しく感じた。

そんな情緒面を描きながらもストーリーはかなり計算された作品だと思った。ニコラの空想を映像化したものが随所に挿入されるが、これがまた現実なのか空想なのか最初は全然分からず何度も騙された。しかし慣れてきた頃に今度は別の意味でまた騙された。伏線を張られていたことに気付いたのは映画が終わった後だったもの。

ニコラがこのような空想僻を持つようになった理由は何だったのだろうか?そして父を恐れる理由は?などさまざまな疑問を感じながらも、ニコラの想像の世界、まるで童話ような世界へ見てるほうは入り込んでいく。しかし目覚めると必ず現実がある。そしてその現実は残酷だった。威圧するような恐ろしさはないが、冬の寒さのような、つま先から少しずつ冷えていくような感覚が味わえる作品だ。

ところでこの作品中に出てくる3つの願いを叶えてくれる話(ネタバレというわけではないが一応伏せ字にしておこう:1つ目のお願いにお金を選ぶと子供が死んで保険金が入り、2つ目に子供を生き返らせて欲しいと願うとバラバラ死体のまま子供が戻ってきてしまい、3つ目に子供を死なせて欲しいと願う話)は、私も以前から知ってる話だし日本独自の話だと思っていたけど違うのね。有名な話なのかな。
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スクリーム3('99アメリカ)-Apr 9.2000
[STORY]
大学を卒業して3年、シドニー(ネーヴ・キャンベル)は森の一軒家に住み、電話でカウンセリングする仕事をしていた。その頃、ハリウッドではシドニーの事件を元にした『スタブ』の最新作『スタブ3』の撮影をしていた。そこで次々に出演者が殺害される事件が起こり、その動機はシドニーの母親の過去と関係があるようだった。
監督ウェス・クレイヴン(『スクリーム』 『スクリーム2』
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今回、脚本はケヴィン・ウィリアムスンでなく『隣人は密かに笑う』で脚本を担当したアーレン・クルーガーが担当している。3作とも同じ監督、同じ脚本家でやってほしかったけど、前2作のストーリーをブチ壊すようなことがなくて良かった(って壊そうとしたら止められるだろうが)3作通して見ても全然辻褄が合わないとか(そりゃ多少あるけど)作品のカラーが違ってしまっている、ということはなくちゃんと纏めている。終わった後に妙に清々しい気持ちになっちゃったりして(笑)この手の作品では珍しいんじゃないかな。

怖さは2作目の時も少なくなっていたが、今回はホントに怖くない。あんなに怖かった例の犯人の扮装も全然怖くない(ちょっと寂しい)慣れちゃった所為もあるんだろうな。犯人登場前の音楽とか雰囲気も掴んでしまったし、犯人じゃない場合も読めてしまっている。1作目のドリちゃんマジ泣きの怖さといったら・・・。

ま、むしろ怖さよりも殺人の動機と犯人は誰か?にウェイトが置かれていたように思う。そんでもってシドニーのお母さんってこんな人だったとはね。と1作目を思い返してみたが、これについてはほとんど覚えてなかった。さらにコットンの存在をすっかり忘れていました(1番可哀相な存在だよね彼は)

あとはデューイとゲイルの関係と、シドニーのトラウマからの解放と成長。しかし、はっきり言って今回の主役はシドニーよりデューイ&ゲイルだった。単にラブラブ夫婦ぶりを見せつけられたよーな。ホントはシドニーのことをもっと描かなきゃいけなかっただろうにね。でも、シドニーが『スタブ3』のセットの中に迷い込み、かつて自分が暮らした家とそっくりなことに驚き、かつ過去の恐怖を思い出して怯えるシーンは良かった。それを見てる私も「そういえばこんな家で、窓からビリーが入ってきて」と思い出したもの。にしてもシドニーってどんどん不細工になっていってるよ。可愛かったのにねぇ。ゲイルもまるで別人だし。要は殺人鬼やオバケより女が1番怖いってことか(と纏めてみる)
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ストレイト・ストーリー('99アメリカ)-Apr 8.2000
[STORY]
アイオワ州に住む73歳のアルヴィン・ストレイト(リチャード・ファンズワース)は、10年間も仲違いをしていた兄のライル(ハリー・ディーン・スタントン)が倒れたと聞いて会いに行くことを決意する。アルヴィンは小型トラクターで1人、560キロ離れたウィンスコンシン州へと旅立った。
監督デイヴィット・リンチ(『ロスト・ハイウェイ』
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これもロードムービー、だよね。でも派手なカーチェイスなどなく、大事件もなく、トラクターの速さと同じくらいゆっくりしたテンポで映画は描かれていく。でも車だったらたいしたことない坂でも、老人が運転するトラクターではカーチェイス並みのハラハラ感があったりする。こう言っちゃ失礼だが“はじめてのおつかい”みたいな感じかな。でもこのおじいちゃんは、行く先々で人々の心を癒したり和ませたりする力を持っているのだった。

例えば路上とかで言葉書いてるよーな人に「家族とは」とか「兄弟とは」なーんて説教されたら「あんたに言われたくないよ」と思うが、アルヴィンに言われたら多分「おっしゃる通りでございます。ありがたきお言葉」と平伏すね。言葉の重みが違うんだな。苦労して、様々な経験をしたからこそ言えるセリフという感じ。普段、私が映画やドラマ見て感動する時ってセリフじゃなく、話の流れとか、役者さんが泣いてる姿に貰い泣き、とかなんだけど、たいした動きもなくセリフだけで心の中に入ってきたから驚いた。「若い頃のことを忘れられないのが辛い」なんて言葉は受け止めることさえできない。あ、そういえば毛利元就じゃん!ってセリフもあってちょっとびっくり。

ファンズワース以外の出演者など詳しくチェックしてなかったんで、まさか兄ライルをスタントンが演じてるとは思わなかった。ファンズワースの兄になるんだから80歳以上の俳優じゃなきゃダメじゃ〜ん、なんて思ってたら、登場したのがスタントンで「あれっ?」と思った。ファンズワースより見た目若いじゃねえか!(笑)と思わずツッコミ入れました。その後、心配になったのでスタントンの年齢を調べてみたら、今年で74歳。まぁ歳っちゃぁ歳だし、アルヴィンという役が73歳だからそれよりは年上だよね。でも実際年齢、ファンズワースは79歳でスタントンよりも5歳も上になるのだ。70代にもなってたった5歳くらい、と思うかもしれないけど、2人並べてみるとやっぱ違うわけ。リンチ的にはスタントンだろうけどなーなんて考えてたら、いつのまにか映画が終わっていた。ワタシ的にはそこが惜しい。
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ラビナス('99アメリカ)-Apr 2.2000
[STORY]
メキシコ・アメリカ戦争から生還したジョン・ボイド(ガイ・ピアース)は、兵士として失格の烙印を押され、シェラ・ネバタ山脈の砦へ左遷された。ある夜、砦にコルホーン(ロバート・カーライル)という瀕死の男がやってきた。彼は大雪のために道を閉ざされ洞窟に避難していたが、食料が尽きたために人肉を食べて飢えを凌いでいたという。洞窟にいるという生存者を助け出すためにボイドたちは洞窟へ向うが・・・。
監督アントニア・バード(『フェイス』
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アントニア・バードの監督、出演はカーライルにピアース、それとデビッド・アークエットということで(アークエットはそんなファンじゃないけどさ)かなり楽しみにしてた作品だったんだが・・・正直申しまして、途中で帰りたくなりました(マジ)そんな風に思うことってほっとんどないんだけど、今回ばかりはちょっとね。

始まってすぐに嫌な予感はしてたんだ。何も血がドバーッとか死体ゴロゴロとかが嫌だったんじゃない。何て言うのかな、話がヘンな方向に進みそうな、想像してたのとエライ違うところへ行ってしまうんじゃないかっていう嫌な予感。ヤバイんじゃな〜い?と思ったら案の定、“人の肉を食う”という禁断の重たいテーマから外れまくって、“人肉食って不死身になった人間と人間の闘い”がメインの話になっていった。もうここからはお笑いである。戦闘シーンのバックに流れる滑稽な音楽に半笑いし、ボイドがまさに命懸けで食いとめようと躍起になってる裏で「あいたたた」なことしちゃう人がいて脱力するといった具合。上映終了後に客席から溜息が洩れたのは事実でっす。でも最初からこういう映画だったんだ、と思えば悪くない、かもしれない(ちょっと無理矢理)

ピアースは髭に長髪でありながらもあっさりしてて存在感が薄く、濃いぃ役柄のはずのカーライルも迫力不足だった。アークエットに至ってはゲスト出演?と思うくらいに出番がなくて可哀相(笑)そんな中で1番は砦の司令官を演じたジェフリー・ジョーンズでしょう。いつもどことなく不気味に見えて、出てくるだけでわたし恐いんです、この人。
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真夏の夜の夢('99アメリカ)-Apr 2.2000
[STORY]
19世紀イタリア。父の命令に背いて恋人ライサンダーと駆け落ちしたハーミア。しかし彼女の婚約者ディミトリアス(クリスチャン・ベール)と、ディミトリアスに恋するヘレナ(キャリスタ・フロックハート)も2人のあとを追って森へ入る。彼らを見た妖精王オベロン(ルパート・エヴェレット)は妖精パックを使って彼らの恋をまとめようとするが・・・。
監督マイケル・ホフマン(『素晴らしき日』)
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『十二夜』みたいな面白さを期待してたのに、何だか纏まりなくてあまり面白くなかった。舞台でやるべき作品を映画として作るなら、違和感ないようにしてほしいのだが、場面展開などが不自然でギクシャクしてるようにみえた。偏見かもしれないけど、そもそもアメリカでシェイクスピアものをやるのが間違いなのかも、とまで思ってしまった。出演者にしても、芸達者なはずのケビン・クラインもアメリカ人のせいかセリフがあまりしっくりしてなかったような。

また、これはストーリーがこういうものだからしょうがないといえばしょうがないが、登場人物たちが多すぎて、見てるこちらが誰に焦点を当てていいのか分からないまま話がどんどん進んでいってしまったように思う。中心となるのはハーミアたちの四角関係となるわけだが、1番の見せ所かつ笑いドコロであるライサンダーとディミトリアスがヘレナを巡って小競り合いするシーンがちっとも盛りあがってなかった。さらにもっと面白いであろう芝居シーンも寒かったー。これってこんなもんなの?『恋に落ちたシェクスピア』ほどまでとは言わないけど、ある程度の盛りあがりを期待していた私が悪かったんでしょうか。

ヘレナを演じたフロックハートはTVドラマ『アリーmyラブ』のアリー役でおなじみだけど、髪の毛振り乱してディミトリアスに迫ったり、1人パニック起こしてアヒル口をとがらせたりと、この役にぴったりと言えばぴったりだけど、アリーのまんまといえばまんまだった(苦笑)アリーを見てキャスティングしたのは間違いないでしょう。
(さらに余談だけど『グリーンマイル』に引き続きサム・ロックウェル出演映画を見たことになるな〜)
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