Movie Review 2008
◇Movie Index
落下の王国('06インド=イギリス=アメリカ)-Sep 7.2008スキ★
[STORY]
1915年ロサンゼルス。映画のスタントマンをしていたロイ(リー・ペイス)は撮影中に大怪我を負い、主演俳優に恋人を奪われ自暴自棄になっていた。そんな時、病室に木から落ちて腕を骨折した少女アレクサンドリア(カティンカ・アンタルー)が偶然現れる。ロイは彼女に自殺するためのモルヒネを盗ませようと思い付き、作り話を聞かせはじめる。
監督&脚本ターセム(『ザ・セル』
−◇−◇−◇−
24ヶ国以上の国で撮影され、13もの世界遺産を使用し、4年かけて撮影された作品。 衣裳デザインは石岡瑛子。第40回シッチェス・カタロニア国際映画祭でグランプリを受賞した。

好きです、これ。出来がいいとか悪いとか抜きにして、とにかく好き。『ザ・セル』はいまいちで辛口感想を書いてしまったけど、これはベタ褒めします(笑)久々にパンフ買ってしまった。見終わったずーんと落ち込まない『パンズ・ラビリンス』っていう感じかな。映像は全く違うけど、少女が出てくるところ、つらい現実から逃れるように想像の世界へのめりこむところが似てるかなと。国と時代の違いももちろんあるけど、本作の少女のほうが幼くて無邪気な分だけ、明るい作品になっているのだと思う。

最初の白黒の映像を見た時から「これは好きな映画だ」という気持ちでいっぱいだったんだけど(以前『バタフライ・キス』を見た時と同じ感覚を味わった)象が泳ぐところとか、砂漠を横断する山車のシーンとか、夢のようなシーンの連続に大満足。あ、ちょうど『アズールとアスマール』を実写化するとこんな感じかもしれない。これも好きな映画だし、私の好みにぴったり合ってるんだわ。
撮影期間が長かったせいか、ロイの顔がシーンによって変わってるような気がしなくもないんだけど(笑)どのシーンにも時間を掛け、慈しむような、愛情をたっぷりかけた作品だというのが、見てる間ずっと伝わってくる。

ストーリーはもうちょっとテンポよくしてくれてもよかったかな。ロイがアレクサンドリアを騙すためだけのおとぎ話だから、途中でストーリー迷走するようなところがあるのもしょうがないんだけど、そこでちょっとダレてしまう。
でも、現実の世界での少女の発言がそのまま物語の中に反映されたり、レントゲン技師の防護服が物語の中の敵の鎧となって出てきたりと、遊び心もあって、何だかいとおしくなる。自分だけの宝物にしておきたいような作品だった。
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20世紀少年('08日本)-Sep 3.2008
[STORY]
1997年。ケンヂ(唐沢寿明)はコンビニを経営しながら子供を置いて出て行った姉キリコ(黒木瞳)の娘カンナの面倒を見ていた。ある日、同窓会に出席したケンヂは同窓生から“ともだち”と呼ばれる教祖が率いる新興宗教教団が、ケンヂが小学校時代に作った『よげんの書』とそっくりのことを言っていると聞く。その後、仲間の1人だったドンキー(生瀬勝久)が“ともだち”に関わったことで死んでしまう。ケンヂは『よげんの書』を作った仲間たちとともに“ともだち”を止めようとするが・・・。
監督・堤幸彦(『TRICK 劇場版2』
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原作は浦沢直樹の同名漫画。全3部作の映画の第1章で、本作は2001年までが描かれている。脚本には浦沢直樹も携わっていて、漫画とは違う展開になるかもしれないという噂もあり。

原作は前から読みたいと思ってたんだけど長いのでなかなか手が出なくて、映画化が決まったことで思い切って読み始めた(24冊買っても置き場所に困るので漫画喫茶に通いました(笑))

登場人物が多く、時代があちこち飛び、展開がものすごい速い。いや〜公開前に読んでおいて良かった。これ読んでなかったら、誰が誰だか分からないわ、あだ名は覚えられないわ、で大変だっただろうな。
それにしてもキャスティングは上手かったと思う。役者だけ並べられたら「この人たちがみんな同級生ってありえないんですけどー」って思っただろうけど、漫画の顔が頭に常に浮かんでいるのでそれほど違和感なし。オッチョなんて・・・オッチョだもんなぁ(笑)あとドンキーは少年がイイ。よく見つけてきた!マルオ、ヨシツネ、ケロヨン、フクベイ、モンチャンもいい。しいて挙げるならケンヂが一番違うような気もする。でもギターを弾く姿とか歌はぴったりなんだよね。

それはカメラアングルも大きいかもしれない。漫画とまるっきり同じカット割をしてるシーンがふんだんにあって、これを躊躇いなくやるから監督に堤が起用されたのかもしれないなぁと思った。徹底して漫画を実写化しましたという感じ。それならそれでいいよね。下手にオリジナル色を出されてもイライラしそうだし、うざったいだけ。原作も徐々に突拍子もない展開になるから、あまりリアリティを追求したってしょうがないし。このクオリティならあとの2作もそれなりに期待できそう。

2章の公開日は2009年1月31日で3章は2009年秋らしいが、できればあまり間を置かずに公開してもらいたいものだ。
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パンダフルライフ('08日本)-Sep 3.2008
[EXPLANATION]
中国四川省にある成都ジャイアントパンダ繁育研究基地。ここでは約60頭のパンダが暮らしていて、出産と育児、親離れして仲間と暮らすパンダたちを追う。
一方、日本の和歌山県白浜にあるアドベンチャーワールドでは、双子の隆浜(リュウヒン)と秋浜(シュウヒン)が4歳になり、中国の研究基地に里帰りをする様子を描く。
監督・毛利匡(『ヨルカケ〜映画『夜を賭けて』の日々〜』)
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中国以外では初めて研究施設の産室の取材を許可されたというドキュメンタリー。ナレーションは菅野美穂。劇中のイラストは漫画家のくらもちふさこが担当した。

パンダは大好き!というわけではない(“たれぱんだ”は嫌い)中国政府のパンダ外交については嫌だなぁと思ってるし、上野にパンダがいなくても別にいいじゃん〜と思っている。実物は見る機会があれば見てみてもいいかなーとは思うけど、生で見なくても別に・・・という程度だ。でもTVの動物番組で四川省のジャイアントパンダ保護区を特集したVTRが面白かったのと、この映画の予告も面白そうだったので見てみることにした。

う〜、やっぱ可愛いっす(笑)生まれて間もないパンダから4歳くらいまでのやんちゃ盛りのパンダをひたすら眺めるだけでもいいもんですな(これ以上でっかくなるとさすがにあまり可愛くないというか、ダラ〜っとしてるだけに見える)お母さんにしがみついておっぱいを吸う赤ちゃんから、仲間同士でじゃれ合う子たち、木登りしてどーんと落っこちる姿とか、もうたまらんです(笑)でもこれって映像だから見れるわけで、動物園ではこんな姿はやはり見れないわけで、やっぱり生で見なくても別にいいかな、と我に返ったりしました。

それとドキュメンタリーとしては浅いというか甘いというか、もうちょっと詳しく知りたいと思った箇所がいくつかありました。例えば隆浜と秋浜が別れて暮らすようになる経緯が途中すっとばされてる感じがしたし、灰色だったジーヨーがいきなり黒くなっちゃったので、もう少しじっくりと変わっていくところを見たかったな、と。飼育員や研究員のインタビュー等ももっとたくさん見たかった。ただ、想像妊娠しちゃったパンダのくだりは面白かった。こういうのはなかなか見れないから見てよかったと思う。

つい最近、神戸の動物園でパンダの赤ちゃんが生まれたんだけど3日後に死んでしまったというニュースを見たが、この映画を見る前までは「何でもっとちゃんと見てやらなかったんだろう」と思ったけど、映画を見た後では飼育の難しさを知ったので、ただただ残念だったなという気持ち。
それにしてもアドベンチャーワールドの梅梅(メイメイ)はすごいお母さんだ。双子を生んでも一頭しか育てられないパンダが多い中で、もう何度も出産して自分の手で双子を育ててるんだから。グレートマザーメイメイだったら・・・生で見てみたいな(笑)
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12人の怒れる男('07ロシア)-Aug 23.2008
[STORY]
裁判所で殺人事件の裁判が行われていた。被告はチェチェン出身の少年で、養父であるロシア軍将校を殺害した罪だった。検察は最高刑に当たる終身刑を求刑し、あとは12人の陪審員による評決によって有罪か無罪かが決まるだけだった。陪審員2番(ニキータ・ミハルコフ)が陪審員長となり、さっそく挙手による投票が行われたが、11人が有罪に手を挙げる中、陪審員1番の男(セルゲイ・マコヴェツキー)だけが無罪に1票を投じた――。
監督&脚本ニキータ・ミハルコフ(『シベリアの理髪師』)
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1957年のアメリカ映画『十二人の怒れる男』のリメイク。第64回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品され、ミハルコフが特別銀獅子賞を受賞した。また第80回アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた。
罪に問われた少年、12人の陪審員のうち1人が無罪を主張するというオリジナルと同様の部分もあるが、少年をチェチェンの孤児にするなど、現在のロシアが抱える問題を取り上げている。

ミハルコフの映画は実は過去に1本しか見ていないんだけど、アメリカのオリジナルはもちろん、日本の三谷幸喜脚本の『12人の優しい日本人』も面白かったので、このリメイクも面白いに違いないと期待していたのだが――。

うーん。これロシアの人じゃないと面白く思わないかも。12人のオジサマたちのうちの何人かが身の上話をするんだけど、これが事件とは何の関係もない話だったりして「だから何が言いたいのさ」と思うこと数回。最初に無罪を主張する1号の話は説得力があるし話そのものもイイ話なのよ。だけど後の人の話はただ長いだけ。それで2時間40分もあるんだからもう〜(溜息)絶対に2時間以内にできたはずだ。

肝心の事件については時たまポロポロッと出されるだけだし、そこで新たに分かることというのは、よく考えれば分かることばかり。3日も裁判に立ち会っていれば途中で気付くはず。ひょっとしてあの人とあの人以外はみんな事件に関心がなかったということの表れなのかな。それにしたってさ(ブツブツ)
それから逮捕されるまでの少年の生い立ちがフラッシュバックされるんだけど、犬が何かを咥えてるシーンばっかり何度も何度もしつこいくらいに繰り返される。一体これにはどんな深い意味が・・・!とワクワクしてたのに「え、それですか・・・」と絶句。ロシア人ならあれの意味を深く感じ取ることができるんでしょうか。私には分かりませんでした。

公式サイトを見てみたら、出演者はみなロシアの名優ばかりのようだ。私はミハルコフの顔しか知らないのですごく地味に見えたけど、ロシア人が見ると豪華キャスト!だったんだろうなぁ。
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ダークナイト('08アメリカ)-Aug 14.2008ヨイ★
[STORY]
ジョーカー(ヒース・レジャー)と名乗る男がゴッサムシティの銀行を襲い、資金元であるマフィアに接触する。一方、ブルース・ウェインことバットマン(クリスチャン・ベール)はゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)、さらに検事のハービー・デント(アーロン・エッカート)の協力を仰いでマフィアの資金源を断とうとする。ブルースは正義感の強いデントこそゴッサムシティを平和に導くヒーローだと確信しバットマンを辞めようとするが、ジョーカーがバットマンの殺害を予告する。
監督&脚本クリストファー・ノーラン(『バットマン ビギンズ』
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『〜ビギンズ』の続編で脚本はクリストファー・ノーランと彼の弟ジョナサン・ノーランとの共同脚本。主要キャストは前作と同じだが、レイチェル役はケイティ・ホームズからマギー・ギレンホールに代わっている。
また、ジョーカーを演じたヒース・レジャーが本作の完成前に亡くなり、撮影中には特殊効果技師のコンウェイ・ウィックリフが亡くなっている。そのため本作はこの2人に捧げられている(エンドクレジットにメッセージが出る)

アメコミヒーロー映画は1作目より2作目のほうがいい作品が多いと個人的に思っていたので(『X-MEN2』『スパイダーマン2』、それから前のバットマンも『リターンズ』が好き)本作も期待大だったんだけど、期待以上の映画だった。

ジョーカーがとにかく恐ろしかったが、やっぱり恐い悪役は映画を面白くするものだと実感した。人が持っている悪意を凝縮したような存在で、一番触れられたくないところを突いてくる。生い立ちが複雑そうだがそれが全く見えず、心の中を覗けたとしてもそこに広がるのは真っ暗な闇だけだろう。ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーはコミカルなところがあったが(別にそれが悪いというわけじゃない。あの映画にはそれがピッタリだったからOK)こちらのジョーカーはふざけてるところすら怖いのだ。でもナース服を着たジョーカーはちょっとカワイイと思ってしまった(笑)足なんか華奢でさー。ナース姿のフィギュアがあったら欲しいかも。

もう1人の敵トゥーフェイスは逆に同情を禁じえなかった。人を殺してしまったけどそれは復讐で、殺される側も悪いことをしたから・・・ってそこがジョーカーの思う壷か!今回は悪人に対して手を下すことの是非を問う映画だったな。ジョーカーが船に仕掛けた爆弾にしてもそう。私はこの船のシーンが一番印象に残っている。『スパイダーマン2』でも一般人の行動にグッと心を動かされてしまったけど、本作でも船の乗客たちの選択に涙が出た。ヒーローは共感しにくいところがあるけど、一般の人々は自分に当て嵌めやすくて共感しやすいんだな。とてもいいシーンだった。

今までも敵役がニュースになってしまうバットマンだが、今回はヒースの訃報と大熱演も重なり、すっかり主人公が霞んでしまった(日本公開時にベールが逮捕されて盛り上げたけど←盛り上げたって言うのかそれは)ブルースでいる時の出番自体少なかったしね。それらも含めて、これがバットマンの宿命なのかもしれない。次回作ももちろんあるだろうけど、今度はもう少しブルースのシーンがあるといいな。
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