Movie Review 2005
◇Movie Index

メリンダとメリンダ('04アメリカ)-Jul 2.2005
[STORY]
とあるレストランで劇作家たちが“喜劇と悲劇のどちらが人生の本質か?”という議論に夢中になっていた。そこでメリンダ(ラダ・ミッチェル)という1人の女性を主人公にした物語を作り始める――。
悲劇を得意とする劇作家は、写真家との不倫の末に夫と離婚し、子供の養育権を取られてしまい、挙句の果てに自殺未遂で精神病院に入院していたメリンダを登場させる。そんな彼女のために親友たちはパーティーを開く。そこでメリンダはエリスというピアニストと恋に落ちるが・・・。
一方、喜劇を得意とする劇作家は、女性監督スーザンと売れない俳優ホビー夫婦のアパートに引っ越してきたメリンダを登場させる。彼女は夫の不倫をきっかけに離婚していて、スーザンは彼女に男を紹介するが、ホビーは気に入らない。実は彼はメリンダに恋をしていたのだ。
監督&脚本ウディ・アレン(『さよなら、さよならハリウッド』
−◇−◇−◇−
本作にはウディ・アレンは出演していない。アレンの映画はよく見てるので好きなんだけど、本人が出てくるとイライラさせられることが多い。でもあの毒気も面白さなんだなぁと今回気が付いた。あのウダウダっぷりにストレスを感じないのもいいけど、やっぱり物足りないのだ。

メリンダ以外は、悲劇と喜劇で登場人物は重複しない。悲劇のほうには薄幸顔のクロエ・セヴィニーが出ていて、喜劇のほうには面白い顔(笑)のウィル・フェレルを登場させ、違いを見せている。ただシチュエーションは似たところがある。メリンダがバツイチだったり、彼女に紹介する男が歯科医だったり、ピアノが上手い男と恋に落ちたりする。また、同じアイテムや店が登場したりもする。このあたりは劇作家たちが話を作っていくうちに同じになっていったんじゃなかと思うんだけど、その掛け合い部分を見たかったな。

私の勝手な予想だったんだけど、例えば悲劇作家の創作ストーリーに喜劇作家が文句をつけたり茶々を入れたりして、そのたびにストーリーがおかしくなっていって、悲劇だか喜劇だか分からなくなっていって、結局は喜劇も悲劇も人生の本質でない、というオチに持っていくのかと思っていた。だからどちらの物語もそれなりに終わって無難に纏めちゃったなーと、そこにも物足りなさを感じた。でも両方見てみて、喜劇のほうはホビーの慌てふためきっぷりがアレンの映画らしくて面白かった。悲劇のほうは中途半端なラストで、たぶんアレンは喜劇のほうが好きで、それを主張したかったのかな?と思った。

あとどうでもいいんだけど、悲劇のほうのメリンダが杉田かおるに、喜劇のほうのメリンダが長谷川京子に見えた(笑)・・・私だけか。
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バットマン ビギンズ('05アメリカ)-Jun 25.2005
[STORY]
幼い頃に目の前で両親を殺されたブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)は、放浪の旅の途中でデュカード(リーアム・ニーソン)という男と出会う。彼から心身を鍛えられ、数年後ゴッサム・シティに戻ってくるが、街はさらに腐敗していた。ブルースは自分が尤も恐れるコウモリのコスチュームに身を包み“バットマン”として悪に立ち向かおうとする。
監督&脚本クリストファー・ノーラン(『インソムニア』
−◇−◇−◇−
『スターウォーズ〜エピソード1』『キングダム・オブ・ヘブン』に続くリーアム・ニーソンの“お師匠さん”三部作(と私が勝手に命名)の最後を飾る(のか?)作品。同じような役で正直またかよ〜と思ったが、本作はちょっとヒネリがあって最後まで楽しめた。

バートン、シューマッカーが監督したシリーズのほうは見てたけど、本作を見る時にはスッパリ忘れたほうがいいと思った。前シリーズはゴッサム・シティがオモチャのようだったり敵のコスプレが派手でコミカルだったので、本作のシリアスでリアルな描写に最初は違和感があったし、メインの悪役が分かりにくい(厳密にはラーズ・アル・グールやスケアクロウがそうだろうが、今までの作品のように登場しない)ことにも戸惑ってしまった。余計なイメージを持ってない ほうがすんなりこの新しい世界に入っていけただろう。
けど個人的にはシリアスなほうが好きだし、ブルースがバットマンになるまでの心の葛藤を丁寧に描いていて説得力もあり、何よりヒーロー誕生の瞬間に自分も立ち会ったみたいで、グッと親近感が湧いた。前シリーズのバットマンにいまいちピンとこないのは、最初からバットマンとして登場したからかもしれない。

ベールは『マシニスト』からせっかくあそこまでムキムキになったのに、アクションシーンでの映像が暗すぎだったり人物に寄りすぎで、身体の動きが見づらくて残念だった。アクション映画を撮ってた監督じゃないとはいえ、そこは明らかに下手。今後の課題だな(偉そうだな自分)
バットモービルはその見た目のゴツさに最初はガッカリしたけど、実際に動いているところや操縦しているところを見て好きになった(笑)でもパトカーから逃げるシーンは長くてしつこくて、私が唯一飽きちゃったシーンでもあった。

脇を固める出演者は豪華だった。ブルースの父を演じたライナス・ローチ好きなので、彼の出番ばかり気にしていたせいか、トム・ウィルキンソンやゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンが出演していることをすっかり忘れていて、出てきた時にはビックリ。そうか、この人も出てたのか!って(笑)汚職警官がはびこる中で、クリーンな警官役をオールドマンがやっているのが意外で笑ってしまった。とても『レオン』の時と同じ人とは思えない。マイケル・ケインのアルフレッドも素晴らしかった。前シリーズのマイケル・ガフのアルフレッドも良かったけど、ケインのアルフレッドは誇り高くて、ブルースの父親代わりのような存在に見えた。
しかし見終わって一番印象に残ったのはキリアン・マーフィー演じるクレイン博士だった。何ですかあの人は!異様に白い肌に赤い唇が妙にツヤツヤしていて、気持ち悪いんだけどまた見てみたい人だ。次回作にも出てほしいなぁ。

『スパイダーマン』『X-メン』も1作目より2作目のほうが良かったので、これも次回作のほうが良い出来になるんじゃないかと期待している。今から楽しみだ。
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ロシアン・ドールズ('04フランス)-Jun 19.2005
[STORY]
バルセロナ留学から帰国して5年、30歳になったグザヴィエ(ロマン・デュリス)は作家になったものの思うような作品が書けず、TVドラマの脚本や自伝の代筆など本意でない仕事をしていた。かつての恋人マルティーヌ(オドレイ・トトゥ)は今はシングルマザーで、グザヴィエとはただの友達になっている。そんなある時、留学時代の仲間でイギリス人のウィリアムからロシア人女性と結婚すると聞かされる。そして彼の姉ウェンディとも再会する。
監督&脚本セドリック・クラピッシュ(『スパニッシュ・アパートメント』
−◇−◇−◇−
第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。『スパニッシュ〜』の続編で、こちらは既に一般公開も決定している。

5年が経ち、社会人になったグザヴィエだが、前作で書くと言っていた小説は書きあがってないし、恋人がいても他の女の子を口説いてしまう悪い癖も直ってなくて、やっぱり好きになれない。しかも今回は笑えるシーンもほとんどないし、留学時代の仲間たちは昔の部分も残しつつも自分のアイデンティティを確立し、仕事をこなし生活している。特に前作でレズビアンであることをカミングアウトしたイザベル(セシル・ドゥ・フランス)の生き方はカッコよくて、困ったことがあると彼女に頼ってしまうグザヴィエのダメっぷりに余計にイライラしてしまう。そこが狙いなんだろうけど。

ただ前回がスペイン、今回はロシア&イギリスと、フランス以外の国を舞台に使う演出が上手いんだな。イギリス国内はそれほど特色は出てなかったけど、往復するユーロスターの使い方が面白かった(監督もここで出演)そしてロシアのほうはサンクトペテルブルクで最も美しいと言われるロッシ通り(通りの幅22m、両側の建物の高さ22m、通りの長さ220mという調和の取れた通り)を、完璧なスタイルのモデルが歩くシーンがすごくいい。あのシーンでのグザヴィエのモノローグも良かった。

前作の人気を受けて多分続編を作ったんだろうけど、さすがにこの次はもうないだろうなぁ。EUの縮図のようだと言われた前作だが(本作は違ったけど)今年(2005年)5月にフランスでEU憲法が否決されたことを受けて、監督が新たな展開を思いついてたりして。でも個人的には続編じゃなくて、新しいクラピッシュ作品が見たい(それから悪いが主演がデュリスというのもそろそろ飽きたので、別の出演者希望)
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マリスコス・ビーチ('04フランス)-Jun 19.2005
[STORY]
マルク(ジルベール・メルキ)と妻ベアトリクス(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)は、娘と息子とともに海辺の別荘へバカンスにやってきた。息子のシャルリーは親友のマルタンを招待するが、その仲良しぶりにベアトリクスは息子がゲイなのではないかと思うようになる。それを聞いたマルクはそれとなくシャルリーに話してみるのだが・・・。
監督&脚本オリヴィエ・デュカスケル&ジャック・マルティノー(『ジャンヌと素敵な男の子』)
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。
『描くべきか、愛を交わすべきか』に続き、こちらもまったくフランス人てやつはよぉ〜〜〜な作品だった。大らかですね。もう笑うしかないです。

親離れした娘と、反抗期で親に隠し事をしてそうな息子を持つ仲の良い夫婦という、一見どこにでもありそうな家族。しかし息子はゲイかもしれず、妻には他に愛人がいて、実は夫にも誰にも言ってない秘密があった・・・というお話。一歩間違えるとドロドロになりそうな話だが、マルクとベアトリクスが明るく、舞台がリゾート地のせいかカラッとしたコメディに仕上がっている。しかも最後は大団円で踊りまくります(笑)監督は北野武の『座頭市』からインスピレーションを受けたらしいが、どう見てもGAPのCM。フランス人のセンスって分からねぇーーー。

息子がゲイかもしれないと不安がる親というシチュエーションに興味があって見てみたんだけど、息子のことよりもマルクの秘密が分かった時のほうが俄然面白かった。ジャン=マルク・バールが物語の半ばから出てきて、しかも水道管工事の業者の役だなんておかしいなぁ〜と思っていたら、なななな何と(ネタバレ)マルクの元恋人だったなんてーーー!(笑)息子以前の問題じゃないですか。逆に息子は親が勘違いしていただけでゲイではなかったんだけど、その過程ももっと笑わせてほしかったなぁ。最初から違うだろうと匂わせ過ぎていたし、息子役の子もあまり演技が上手くなかったな。まぁこっちを面白くしすぎるとマルクがゲイだったという驚きが引き立たなくなるけどね。(ここまで)ジャン=マルク・バールのファンの人に是非見てもらいたいけど一般公開にはならないでしょうね。邦題からして超適当だもん。原題は『Crustaces et coquillages(甲殻類と貝)』これらがフランスでどういう意味を示す(隠語か?)のかは分からないけど・・・。とにかく『グラン・ブルー』のジャックの面影ゼロです(笑)
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明るい瞳('05フランス)-Jun 19.2005
[STORY]
幼い頃から精神を病んでいるファニー(ナタリー・ブトゥフ)は、兄ガブリエルと彼の妻セシルと一緒に暮らしているが、セシルとうまくいっていなかった。ある夜、ファニーはついにセシルに暴力を振るってしまう。ファニーは家を飛び出し、亡き父の墓があるドイツへ向かう。途中、車がパンクして困っていたところ、ドイツ人農夫のオスカー(ラース・ルドルフ)に助けられる。
監督&脚本ジェローム・ボネル(日本未公開『オルガのシニョン』)
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。2005年度のフランスの新人監督に贈られるジャン・ヴィゴ賞を受賞。ブトゥフはボネルの前作『オルガのシニョン』でも主役を演じている。

たぶん一般公開はないと思うので(決まったらスマン)ネタバレとか関係なく感想を書いちゃいます。
ファニーという女性のエキセントリックさに最初は辟易していたが、彼女の両親のことが分かってからは嫌ではなくなり、家を飛び出してからの彼女が意外に逞しくて(しかもコミカルで笑える)だんだんと好感を持つようになった。途中で出会うドイツ人のオスカーがシャイで可愛らしい人なので、ファニーまで可愛く見えてくる。

監督がティーチ・インで、言葉の通じる相手とはコミュニケーションが取れない女性が、言葉の通じない相手との豊かなコミュニケーションを描いていく物語だと言っていた。けれど私は見ていて言葉云々よりも、オスカーは彼女の名前以外は何も、過去も苦悩も知らないまま、ただ彼女をそっと受け入れたのが良かったんだと思った。そしてあの自然の中で自給自足で暮らすという生活もね。彼女にはそういう環境が必要だったんだろう。兄は妹の気持ちを理解しているし、大事に思ってはいるけど、奥さんとの生活もあるから割り切らなきゃいけない。それを感じ取っているファニーはセシルに嫉妬してちょっかいを出しちゃうわけで・・・あのままでは3人とも傷つき疲労するだけだったと思う。

ラストはただ彼女が車で帰っていくシーンだけで、これからどうする?どうなる?は、ぼかしてあるので想像してみる。父の墓参りをしたことでファニーは気持ちに区切りがついたし、家に戻っても今までよりは兄夫婦とうまくやっていけるかもしれない。でも、できたら彼女には今度はちゃんと支度をしてオスカーのところに行ってほしいな。
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