Movie Review 2003
◇Movie Index

スパニッシュ・アパートメント('01フランス)-Jun 22.2003─フランス映画祭横浜2003
[STORY]
大学生のグサヴィエ(ロマン・デュリス)は、就職に有利だという父の友人の勧めでバルセロナに留学する。そしてイギリス、イタリア、ドイツ、ベルギー人たちが暮らすアパート“ローベルジュ・エスパニョール”に住みはじめる。勉強の傍ら、フランスに残してきた恋人マルティーヌ(オドレイ・トトゥ)がいながら、世話になった人妻アンヌ=ソフィーに手を出してしまう。
監督&脚本セドリック・クラピッシュ(『パリの確率』
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フランス映画祭横浜2003上映作品。映画祭上映時のタイトルは『ローベルジュ・エスパニョール』だった。

日本でもドラマ化しそうなストレートな青春ストーリー。青いです。甘酸っぱいです(笑)ヨーロッパの国々から集まった、EUの縮図のようなアパートメントで、みんな好き勝手にやっていて、時々衝突する。でもいきなり一致団結したりする。正直これにびっくりした。そしてこの一致団結シーンには大爆笑した。このフランス映画祭で一番笑ったのがココ。良かったよ、笑える映画があって(笑)

人が歩くシーンが早回しされたり、映画なのにテレビ番組みたいにスクリーンの右下に小窓が出るシーンがあったり、テンポ良くするためのアイデアに遊びごころがあって面白い。クラピッシュ作品の中では上位になるなぁ。でも主人公グサヴィエというキャラクターがあまり好きになれなかったので、彼がもっと好感の持てる人だったら一番好きな映画になってたと思うな。彼女がいるのに浮気して、彼女から別れを告げられればまるで自分には非がなかったかのように落ち込む。バカでしょ(一刀両断)一見、いい人そうに見えるこういうタイプが一番いけないよね。こういう映画だって分かってたけど、最後の彼の選択も私の好みではなかったし。バカバカしいのは好きだけど、青々しいのは嫌いなのかも(笑)

でもやっぱり一度はこういう生活に憧れるなぁ。基本的にはお互い干渉しない。プライベートは一応尊重してくれる。食事は一緒に、たまに外にも遊びに行く。相談にも乗ってくれる。ピンチの時は助けてくれる。感心したのは、これだけ男女が揃ってるのに、この中で1組もカップルを作らなかったところ。邦画でもハリウッド映画でもそこはお約束として設定したと思う。カップルがいないからこそ単純に「こういう仲間っていいな」って思ったし、自分も中に入ってみたいって思った。ビバヒルみたいなのは入り込む隙はないし、はっきり言って気持ち悪い。
欲を言えば、同居人たちのことももっとたくさん描いて欲しかったな。せっかく7人も出てきてるんだから、それぞれの国の特色を出して、カルチャーギャップで大笑いさせてもらいたいかった。
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畏れ慄いて('02フランス)-Jun 21.2003─フランス映画祭横浜2003
[STORY]
アメリー(シルヴィー・テスチュ)は、幼いころ日本に住んでいたベルギー人。日本で働くことに憧れ、念願が叶い、日本の一流企業に通訳として採用される。しかし1日目から課長のサイトウ(諏訪太郎)に叱られる。直属の上司であるフブキ(辻かおり)に慰められ彼女を慕うようになるが、ふとしたことがきっかけで彼女からも執拗にいじめられるようになる。
監督&脚本アラン・コルノー(『めぐり逢う朝』)
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フランス映画祭横浜2003上映作品。日本での公開は未定。

日本生まれのベルギー人作家アメリー・ノートンの同名小説。著者が1989年に日本企業に勤めていた経験を元に書かれたという。小説のほうは読んでないので映画に関しての感想しか書けないが、ホントなんですかね?この話。映画を見たあとに著者のインタビューを拾い読みしてみたら、本当にトイレ掃除を命じられたって言ってるんだけど・・・(でも別のインタビューでは体験したままではないとも言ってるらしい。どっちだ?)

バブル期の商社のトンデモっぷりは実際に聞いたことがあるし、日本の小説でも群ようこがOLモノを書いてたりするが、それでもここまでおかしな話はないでしょう。例えば、最初は普通に仕事をしていたのに、考え方の違いやから彼女が嫌われ、パワハラを受けるようになった、というのならまだ分かる。でも映画では、彼女が配属された瞬間から嫌がらせをされている。では、そもそも彼女を雇ったのは一体誰なの?何のために雇われたの?得意先の口利きやら縁故ならもっと大事にされているはずだし、トイレ掃除させられてるのを社長さえも知っていた。でも何も変わらなかった。っていうか、通訳なのに何で経理なんだよ、誰か教えれ!!(笑)

えー、こういう時に便利な言葉があります。これは日本社会をカリカチュアライズした小説なのである。多少デフォルメした部分はあるが、ユーモアを交えつつも鋭く本質を突いている(つもり)──と言うしかないだろう。これが日本ではなく、他の国が舞台だったらここまで気にならないんだろうけど。そう思うと見た時にやっぱり不満があった『MON-ZEN』なんて可愛いもんだったなぁ。

でも、そういう納得いかない部分を切り離して見てみて「あー、これはいいところ突いてるな」って思ったのは、アメリーが裏切ったフブキと直接話そうとして、テンシ部長に止められるシーン。アメリーは「話せば分かる」と言って直接ぶつけて逆効果になってしまうのだが、自分だったらやっぱり黙ってて、そ知らぬ顔して仕事を続けてると思う。
それからトイレ掃除という屈辱に耐えるところはちょっと泣きました。トイレが自分の居場所であり、いじめられることが自分の存在意義である、というアメリーはポジティブのように見えるけど、これは一種の自己防衛本能なんじゃないかな。泣いたり謝ったりするよりよっぽどもヤバイ状態だと思った。で、そんな目に遭ってなぜ辞めないのかというと「日本人は簡単に仕事を辞めないから」なのだ。彼女は日本の会社で日本人であろうとしたのだ。おバカだけどいじらしいじゃないの(涙)ありえない!と思いながらも感情移入してしまった。
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NOVO ノボ('02フランス)-Jun 21.2003
[STORY]
会社のコピー係をしているグラアム(エドゥアルド・ノリエガ)は5分前の記憶をなくしてしまう障害を持っている。ある日、人材派遣会社から来たイレーヌ(アナ・ムグラリス)に社内を案内するうち、瞬く間に2人は恋に落ちる。
監督&脚本ジャン=ピエール・リモザン(『TOKYO EYES』)
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少し前の記憶を忘れてしまう映画といえば『メメント』があるが、あれほど作り込まれてはいない。まぁフランス映画だからキッチリやってないだろうなぁとは思ってたけど、記憶障害の定義が曖昧で、5分経ったらサッパリ忘れてしまうのか、5分ぶんしか記憶を貯めておけずにどんどん忘れていくのか、そして彼が記憶障害であることをどこまで認識しているのか?見ててサッパリ分からない。いちいちこと細かく説明する必要はもちろんないけど、彼は本当に5分で記憶がなくなってるの?って言いたくなるようなシーンがあって腑に落ちなかった。

グラアムとイレーヌが会うたびに恋してるようにも見えなくて。グラアムはピュアな雰囲気が出てたけど、イレーヌが彼のことで悩んだり苦しんだりして、見てるこっちがそれで切なくなったり、というのを期待してたんだけどなぁ。後半はストーリーを追いかけることすら面倒になっちゃって、流し見してしまった。残念。

あとはただ出演者に見惚れて終わり。ノリエガはいい男だし、ムグラリスはリブ・タイラーに似た美人だが、声がちょっと良くない。それよりびっくりしたのがイザベル役のパス・ベガの美しさ。同じくノリエガ主演の『パズル』にも出てたことは・・・忘れてた(笑)あの映画での彼女は全く印象に残ってないなぁ。今回の映画での未亡人みたいな風情が色っぽくて、私はイレーヌより彼女に肩入れしながら見た。出番多くなかったけどさ。
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シュシュ、パリデビュー('02フランス)-Jun 20.2003─フランス映画祭横浜2003
[STORY]
アルジェリアからフランスに密入国したシュシュ(ガド・エルマレ)は、教会での寝泊りを許され、精神分析医ミロヴァヴィッチ(カトリーヌ・フロ)の元で働くことになった。彼女の助言によって、シュシュは念願の、女装し女として生きることを許される。そして甥が働くキャバレーで常連客スタニスラス(アラン・シャバ)と恋に落ちるが・・・。
監督&脚本メルザック・アルアーシュ(日本未公開)
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フランス映画祭横浜2003上映作品。本国では観客400万人を動員し大ヒットした。日本での公開は未定(でもワーナーのロゴが出たので多分公開するでしょう)シュシュ役のエルマレが監督に本作の映画化を持ちかけ、脚本も2人で手がけたという。

フランスで爆発的大ヒットコメディ、といわれて期待しないほうがおかしいでしょ。ものすごく期待して見に行った。結果は「あれっ?」
監督たちはこの映画を、主人公がオカマだからといってヘンに面白おかしく描きたくなかったそうだ。・・・だからか。こっちの勝手だけれど、やっぱり女装と聞けば面白おかしい作品を期待してしまうわけで・・・。途中笑えるシーンも少しはあったけど、全体的には乗れずに終わってしまった。

自分の期待と違ったから文句を言うわけじゃないが、ヘンに面白おかしく描いたとしても、描きたいテーマにしっかり沿ってさえいれば観客はちゃんと理解できると思うんだよね。でもこの作品では、密入国者がフランスにやってきて女装も男性との恋もOKという自由を手に入れる、手に入れてやる、っていう主人公の気持ちがあんまり伝わってこなかった。シュシュがどうして女装するようになったのか?というベースの部分もきちんと作りこんで見せて欲しかったし(少年時代の話が出てくるけど、いまいち心に響かず)エピソードもブツ切りで集中力も途切れちゃった。マリアに恋する教会の神父見習い?や、ミロヴァヴィッチ先生のオフィスにたびたびやってくる警官、なんていうキャラクターも出てくるんだけど、他のエピソードに時間を割き始めると、彼らが全く登場しなくなってしまうのだ。で、忘れた頃にまたひょっこり現れたりして。バランスも悪かった。

そもそもシュシュっていうキャラクターを最初から最後まで好きになれなかったのよね。ミロヴァヴィッチ先生と話をしてる時のシュシュは素直で可愛いと思ったけど、他ではなんというか、余所からやってきた者のくせに生意気で可愛げがない。それよりシュシュの友人や甥っ子のほうがよっぽども可愛かったよ。甥っ子の女装は綺麗だったなー。肩幅広くて二の腕が逞しいのが余計にエロチックで見惚れちゃった。
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シェフと素顔と、おいしい時間('02フランス)-Jun 19.2003─フランス映画祭横浜2003
[STORY]
パリのシャルル・ド・ゴール空港。エステティシャンのローズ(ジュリエット・ビノシュ)はメキシコ行き飛行機に乗るつもりだった。しかしストのために飛行機が出発しないことに!慌てた彼女は急いで友人に電話を掛けた。実は恋人に別れの手紙を置いてきたのだ。これを始末しないと恋人が空港までやってきてしまう。しかし友人に手紙を捨てるよう必死に頼みこんでいる最中に、携帯電話をトイレに流してしまった。そこで偶然そばにいたフェリックス(ジャン・レノ)に携帯を貸してほしいと頼みこむ。
監督&脚本ダニエル・トンプソン(『ブッシュ・ド・ノエル』)
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フランス映画祭横浜2003上映作品。

ありそうでなかった2人の共演作品。正直ビノシュは苦手なのだが、料理系映画が大好きなので見てみることにした。料理に関しては美味しそう!と思うシーンがなくて残念だったけど(ワインは飲みたいと思ったが)ビノシュは、この映画ではあんまりイヤじゃなかったなぁ。いつもの“薄幸な美人”を装ってないところが大きかった。ローズというキャラクターがあっけらかんとしてて、かなりドジで、おまけにヒドイ目にも遭ってて笑えたからだろう(イジワルだな自分)あと髪をアップにしてあのメイクだとサビーヌ・アゼマに似てんのよね。だからか?(笑)あ、メイク落とした時ちょっとイヤだったから、雰囲気だけじゃなくて、やっぱり顔もダメなのかもしれない。

とりあえず2人が共演してれば内容なんて二の次、なんていう映画ではない。ストーリーはひねりのないラブストーリーだけど、構成がよくて面白かった。空港でストや天候不順で飛行機が飛ばなくなり、携帯電話も使えない。そんな状況で出会った男女。冷凍食品会社の社長の男が料理を作り、厚化粧の女がスッピンになる。そして飛行機が動きはじめる頃、2人はまたお互いの道を歩もうとするのだが、2人が出会うきっかけとなった携帯電話がやはり物語の鍵を握っていて・・・という(死語だけど)小粋な展開だ。
フランス映画お得意の男女の会話に「なんでこんな下らないことで延々会話が続くんだ?」と半ば呆れつつも飽きなかった。実質、登場人物はローズとフェリックスの2人だけなのよね。空港の雰囲気は映画でしか出せないだろうが、舞台でやっても面白いんじゃないかなと思った。
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