Movie Review 2001
◇Movie Index

夏至('00フランス=ヴェトナム)-Jul 29.2001
[STORY]
ヴェトナムのハノイ。母の命日に集まった三姉妹。長女スオンは夫と息子がいながら不倫をしており、次女カインは夫との間にできた子供のことをまだ姉たちに内緒にしている。三女リエン(トラン・ヌー・イエン・ケー)は兄と二人暮しで恋人とはうまくいっていなかった。命日の夜、三姉妹は母の初恋話を聞かされ、戸惑いながらも自分たちの秘密に重ね合わせていく。
監督&脚本トラン・アン・ユン(『青いパパイヤの香り』)
−◇−◇−◇−
『パパイヤ』は私の大好きな作品で何度も見てるんだけど、2作目の『シクロ』ははっきり言って好きじゃない。前者はストーリーはどっちかっていうと少女マンガ系なんだけど(笑)ヴェトナムの懐かしい風景に人々をうまく溶け込ませ、様式美を見せる映画だった。そして後者は貧しい家庭に生まれた少年の厳しい生活を描いたもので、風景よりも人間ドラマがメインであり、時にグロテスクに思えるシーンもあった。そしてこの作品はちょうどこの2作の中間になるかな。『パパイヤ』では料理するシーンまでもヴェトナムの風景の一部だったけれど、ここではしっかりと人間の生活として描かれていると思う。風景に埋没することなく調和が取れていて、息遣いと風の音が同時に聞こえる、そんな作品だった。そうそう、今回撮影は『花様年華』のリー・ピンビンが担当していて、前にも増して美しい映像が見られます。

しかしドラマ部分で、文化の違いかもしれないがあまりよく理解できないところがちょこちょこあり、そこでいちいち考えてしまってうまく乗れない部分があった。何も考えずにただ流れに任せてればもっと気持ちよく見れたかもしれないけどね(『パパイヤ』はちょうどそんな感じだった)特に長女と次女に関してははあのままでいいのか?と、いまだに心配なんだけど、これはこれでいいのかなぁ。

トラン・アン・ユンの公私に渡るパートナーで今回はリエンを演じたイエン・ケーは、相変わらず菩薩のような美しさだが、さすがに23歳のうぶな娘という役は無理だと思った。子供まで産んでるのにぃー!そのお子さんですが、長女の息子役で出演しています。ただしこの子、本当は女の子です(!)こちらには全く無理がなかった(笑)
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チェブラーシカ('69-74ロシア)-Jul 21.2001
[STORY]
ロシアの果物屋で、アフリカから輸入したオレンジの木箱に不思議な動物が入っていました。果物屋のおじさんがその動物を起こそうとしますがすぐに倒れてしまうので“ぱったり倒れ屋さん”という意味の、チェブラーシカと名づけます。(「こんにちはチェブラーシカ('69)」)ほかに「ピオネールに入りたい('71)」「チェブラーシカと怪盗おばあさん('74)」
監督ロマン・カチャーノフ(『手袋』)
−◇−◇−◇−
ロシアの国民的人気キャラクターのパペットアニメ。原作はロシアの児童文学作家エドゥアルド・ニコラエヴィッチ・ウスペンスキーの『チェブラーシュカとなかまたち』
正体不明の動物チェブラーシカと、動物園で“わに”として働くゲーナ、いじわるすることが生きがいの老婆シャパクリャク(彼女は人間)など、動物と人間が何の分け隔てもなく登場し、友達になり働いたり遊んだりしている。

初めて見たけど、とても懐かしい感じのするアニメだった。昔見たNHKの人形劇みたいな(ちなみに『ひょっこりひょうたん島』じゃなくて、私の世代は『プリンプリン物語』ね。それでも古いか(笑))
ちょっとずつ人形を動かして撮影してるせいか、人形たちが薄汚れてたり、毛がバサバサしてるんだけど、それもいい味になっているという。

チェブラーシカがとにかく可愛らしい。見た目はもちろん仕草も工夫されていて、上目遣いでお願いしたり、巨大な頭に釣りあわない小さな指で物を持ったりするシーンには思わず「キャッ」ってなるね(笑)それに性格も良くてがんばり屋さん。でも三番目の話ではちょこっとズル賢いことを言ったりもする。これが人気キャラクターっていうの分かるよ。ここにいるいい大人が見事に騙されてるし(笑)ただし、チェブラーシカの下マブタがクッと上がるシーンはびみょーに恐かったっす。

愛らしいが、でもどこか寂しげな印象も受ける。画面の暗さは技術的な問題だろうが、やっぱりキャラクターの性格と表情かなぁ。友達がいなくてひとりで遊ぶチェブラーシカやゲーナのシーン、シャパクリャクに列車の切符を盗まれたチェブラーシカとゲーナが線路の上を歩くシーン――寂しくても泣かない、トラブルが発生しても騒がない。50歳のゲーナはまだしも、小さなチェブラーシカがこれほどまでに健気だと、かえって悲しくなってしまう(はっ!実は小さななりして相当なおじぃだったりする?!(笑))。そしてゲーナが唄う歌は誕生日のお祝いの歌なのに哀愁が漂っていて、歌詞を読まなければ分からないほどだ。短絡的な私は「共産主義だったからか」と思ってしまったが、この頃のソビエト連邦という国のことも知りたくなりました。
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焼け石に水('00フランス)-Jul 21.2001
[STORY]
1970年代のドイツ。フランツ(マリック・ジディ)は、街で中年の男レオポルド(ベルナール・ジロドー)に声を掛けられ、彼の家にやってくる。そしてそのまま同棲することになる。しかし半年後には2人の関係はぎくしゃくしていた。そこへフランツの婚約者アナ(リュディヴィーヌ・サニエ)と、レオポルドの昔の恋人で、男から女へ性転換したヴェラ(アンナ・トムソン)がやってくる。
監督&脚本フランソワ・オゾン(『クリミナル・ラヴァーズ』
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原作はドイツの映画・演劇人で、36歳で亡くなったライナー・ヴェルナー・ファスビンダーが19歳の時に書いた未発表の戯曲。オゾン作品でオリジナルではない作品は初ということになる。そのせいか、ヘンタイ度(!)がいつもより低くて文学的なかほり(笑)さえしたなぁ。そこが個人的には物足りなかったかな。作品を重ねるごとに、目に見える過激さは減っていってるような気がする。これからは奥底や裏までしっかり見つめなきゃダメかしら。

4章からなるストーリーで、映画に出てくる登場人物はたったの4人。そして物語はレオポルドの部屋の中だけで繰り広げられる。延々と交わされる会話はテンポが良くて飽きない。特に2章でのレオポルドとフランツの会話は、レオポルドが飽きっぽくて釣った魚にエサはやらない的態度があからさまに出てて、非常にむかつきながらも惹きつけられた。ジロドーってほんっとにこういう役が似合うね。『趣味の問題』でも青年を翻弄していたけど、女の子を翻弄するより性に合ってるような気がしてならない(笑)フランツの恋人アナが、舌ったらずでロリータっぽいのにダイナマイトバディなところもいいし、アンナ・トムソンが性転換した役というのも面白い上にハマってて、以上のキャスティングはどれもバッチリ。

問題はフランツである。ビジュアル的にはこの役に合ってると思うんだけど、演技がちょっと・・・。1章でレオポルドにからかわれて怒るシーンを見てまず違和感を覚えて、2章でレオポルドにベタ惚れになってるはずなのに、それが見えなかったし。フランス語は全く分からないのでセリフに関しては何とも言えないけど、表情や仕草にそれらが表れてないのね。だからクライマックスのシーンを見ても、気持ちが伝わらなかった。話そのものはとても切なくて哀れで愚かなのに、映像ではほとんど何も感じなかったな。そのかわりラストショットでようやくキュッときましたが。
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ELECTRIC DRAGON 80000V('00日本)-Jul 21.2001
[STORY]
子供の頃に雷に打たれたことから電気に感応してしまう男・竜眼寺盛尊(浅野忠信)は、いなくなった爬虫類を探す仕事をしながら好きなエレキギターを弾く毎日を送っていた。そんなある時、電気屋をしながら怪電波をキャッチする男・雷電仏像(永瀬正敏)が竜眼寺に目をつける。
監督&脚本・石井聰互(『五条霊戦記―GOJOE』
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『五条』に引き続き、浅野と永瀬が共演した55分の作品。劇中のナレーションも『五条』出演者だった船木誠勝が担当しており、主題歌は石井監督や浅野が結成したバンドが唄っている。趣味の色が濃い、遊びで作ったような作品だ。

だから最初からこっちも思いっきり気を抜いて見たんだけど、映画というよりも劇画みたい(へったくそな字のテロップが出たりする)傍から見たら非常に下らないことを大真面目に演じているところがそこそこ笑える。でも石井監督らしさもちゃんと出てるので、すごいギャップを感じることはなかった。そんな感じです。以上(笑)←いつもの半分の上映時間なので感想も半分にしてみた(っつーかこれ以上書くこともないんですけど)
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パズル('99スペイン)-Jul 7.2001
[STORY]
聖週間を控えて賑わっているセビリア。クロスワードパズル作家のシモン(エドゥアルド・ノリエガ)の元に、1本の脅迫電話が掛かってくる。日曜の新聞のクロスワードに“敵対者”という言葉を入れろという命令に対し、シモンは言われた通りにする。同じ頃、街では謎のテロリストによる殺人事件が次々と起こっていた。
監督&脚本マテオ・ヒル(長編初監督)
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監督は『オープン・ユア・アイズ』では脚本と助監督を担当。そして『オープン〜』の監督アレハンドロ・アメナーバルが本作で音楽を担当している。

2000年の東京国際映画祭で上映になった作品で、その時に見ようと思ってたのに、チケット完売で見られなかった作品だ(その時のタイトルは『ノーバディ・ノウズ・エニバディ』)
やっぱりみんな『オープン〜』みたいな作品じゃないかと期待してたんじゃないかな。でも見てみて全然違うことに驚いたんじゃないでしょーか。

タイトルが『パズル』になっちゃったからかもしれないけど(そんなタイトルを付けた配給会社がいけませんね)クロスワードパズルが事件の主軸になるのかと思っていたら(パズルを解くと事件のヒントが見つかる、とかね)それは最初の部分だけで、あとは全然関係なくシモンがどんどん事件に巻き込まれていくだけでした。しかも日本で実際に起きた某大事件の模倣事件が起きたあたりから雲行きが怪しくなり、逃げるシーンでは「なんだこりゃ?!」とのけぞってしまった。そしてその時、これは真面目に見ちゃいけない映画だなと悟ったんですけど(笑)あまりにも荒唐無稽で笑えました。

絶対ありえないことでも、うまい具合に捻じ曲げてそれなりの説得力を持たせてしまうハリウッド向きの映画かもしれない。ただ宗教が絡んでいるので、やっぱりスペインでなきゃ意味がないか。こういう話をスペインで撮るということに意義があるんだろうね。だとしたらもう少し脚本を整理しなきゃ。
そういえば(ネタバレなので色変えます)神父殺しの時、神父が犯人の顔見知りみたいだったけど、あれのフォローは?殺したのはあのピアス男じゃなくてカエルだったのか?(ここまで)

オープニングの空撮は掴み十分でカッコ良かったんだな。あとクライマックスも緊張感があり、なおかつ綺麗で、斬新ではないけどいい見せ場だったと思う。
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