Movie Review 2000
◇Movie Index

犯罪の風景('00フランス)〔未公開〕-Jun 23.2000
[STORY]
マリーという少女が突然失踪した。残されていた旅行パンフレットに血がついていたことから事件に巻き込まれた可能性が高く、刑事のファビアン(シャルル・ベルリング)とゴメズ(アンドレ・デュソリエ)は捜査を開始する。数日後、マリーと思われる死体が発見されるが・・・。
監督&脚本フレデリック・シェンデルフェール(長編初監督)
−◇−◇−◇−
フランス映画でミステリは見るけど、サスペンススリラーを見るのは初めてかもしれない。扱う事件はアメリカ映画と同じようだが映画のトーンはまるで違っていて、死体がゴムっぽかったのはご愛嬌としても(笑)寒々しくて空虚な雰囲気が新鮮だった。予定調和なハリウッド作品と違って、このまま事件が解決しないのかも?と不安に思ったほど。

オープニングの映像にまず驚いた。ヘリで森の中を俯瞰でとらえていたカメラがそのまま線路をたどり、マリーの家へ向かい、下着姿の彼女がいる2階を捉え、そのまま彼女の部屋の中に入ってしまうのだ。あれ?これってどうなってんの?!確かワンカットのはずなのになんで!・・・と混乱してしまった。監督のティーチ・インの時にこのシーンの質問が出て、ネタばらしをしてくれたので納得できたけど(あえてここでは書かない)これは大成功でしたね。初っ端でこういうことやってくれるとものすごく惹き付けられるし、次の展開を大いに期待しちゃう。・・・実はちょっと期待しすぎて息切れもしたんだが(笑)ここだけでもこの映画見て得した気分になった。

しかし途中で過去の事件が浮かび上がり、死体もどんどん発見されるようになってから混乱してしまい、話についていくので精一杯。これは私のアタマが悪いのがいけないんだけど、ちょっと疲れてしまった。またファビアンとゴメズ、二人の刑事のプライベートも詳しく描いてはいたが、事件を描くのと同じようなトーンで表現してたので、いまいち彼らに感情移入できなかった。彼らは私にとって単なる事件の捜査官止まり。だからラストを見ても何の感慨もなかった。

最後に(ここからネタバレ)犯人が判明し、ファビアンがヤツの家を訪ねるシーンを見て、その家の場所が占い師の言っていた場所とぴったり一致しててビックリした。占い師の事情聴取をしたのはゴメズだったので、おそらくファビアン自身は知らなかっただろうが、これは“観客だけが知ってる驚くべきこと”なのかな。なかなか面白い。(ここまで)
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趣味の問題('00フランス)-Jun 22.2000
[STORY]
資産家のフレデリック(ベルナール・ジロドー)はあるレストランでウエイターのニコラ(ジャン=ピエール・ロリ)に目を付ける。彼は料理の説明を的確に説明できたからだ。フレデリックは早速ニコラを試食係として採用し、食事のことだけでなく何から何まで教えこんでいった。
監督&脚本ベルナール・ラップ(『私家版』
−◇−◇−◇−
『私家版』でもテレンス・スタンプ演じるエドワード卿の仕掛けた罠に作家ニコラが嵌まっていく様子を巧みに描いており、この作品ではフレデリックがニコラ青年(両方とも原作のある作品なので名前が同じなのは偶然)を意のままに操るようになる様子が描かれている。が、前作よりも面白味に欠けた。

前作はエドワードが仕掛けた罠によって作家ニコラが追い詰められ、それによって取った行動に説得力があったと思う。でも本作品ではそこまでの説得力が感じられなかった。また、作家ニコラがエドワードの思う通りの行動をするかどうかというのが一種の賭けでもあり、そこがサスペンスフルだった。

フレデリックにもっとカリスマ性があり、特に彼の仕事や今までの功績がニコラ青年にとって尊敬に値するようなものならば、と思う。もしくはニコラ青年がフレデリックの思う通りに行動せざるを得ない状況を作り出して欲しかった。二人のキャラクターも今一歩足りない。最後まで掴みどころがなく、最後の××シーンはかなり戸惑った。いや、そうなるだろう、と予測はしてたのよ。だけどそこに至るまでの過程で、見てるこっちにもっと納得させるものが必要だったはず。

でも、フレデリックとニコラの間に起こったらしい“何か”について、ジャン=ピエール・レオー演じる審査員が調査を重ねる映像が所々挿入されており、これが観客を物語内へと引き込むことに成功していると思う。二人の関係がどう変化していったのか?それを常に頭の中に置きながら見るのは楽しかった。

それにしても見る前のあらすじを読んだ時点では、もっとコミカルな作品だと思ってた。何せ「試食係」だもん(笑)可愛らしいじゃない。監督の名前を見た時点で気がつくべきだったが。
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ミラクル・ペティント('98スペイン)-Jun 17.2000
[STORY]
ペティント少年の夢はたくさんの子宝に恵まれた大家族のお父さんになること。ある時「子供はタラリン・タラリンとサスペンダーを引っ張ればできる」という間違った情報を信じ込む。大人になったペティント(ルイス・シヘス)は幼馴染みで盲目のオリビア(シルビア・カサノバ)と結婚し来る日も来る日も「タラリン・タラリン」とを繰り返すが一向に子供が出来ず、あっという間に50年が経ってしまった・・・。
監督ハビエル・フェセル(長編初監督)
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どっちが年長なのか知らないけど、監督の兄か弟であるギジェルモ・フェセルが脚本を担当している。

予告を見る限りでは、もっとノーテンキでおバカ全開なストーリーだと思っていたけど、一歩間違えばイヤな話になっちゃいそうだと思った。一歩間違えずとも見てる人のコンディションによっては、面白いと思えない話かもしれない。

小耳に挟んだ情報をずっと信じ続け、来る日も来る日もサスペンダーを引っ張り続けるペティント老人の姿は、アホといえばアホだけど哀れだ。そして宇宙人をコウノトリが運んできた子供だと信じて育てたり、精神病院から逃げてきた男をアフリカからの養子だと信じてやっぱり育ててしまう。善良な夫婦と言うにはあまりにもイっちゃってて恐いとさえ思える。つーかオリビアばあちゃんヤバいよ(笑)

この手の話は基本的には大好き。でもこの作品の場合は「面白い映画を作りたかった」なんていう素直さだけじゃない、底意地の悪さみたいなのを感じるのだ。あざといわけでもないし、狙い過ぎてる風にも見えないけど、麻痺させる毒はしっかり入ってるという感じ。

一見破綻しているようなストーリー展開なのに、最後にちゃんとうまくまとまってる、いや、まとまりすぎてて腹立つんだな(笑)1時間半以上も見た時にはこっちはすっかり毒が回ってて「もう何でも来やがれ!」ってカタストロフィさえ期待してる状態になってるところに、キチッと着地されても対応に困る。この気持ちはどこにぶつければいいのよぉ(苦笑)でもホントよくできてる。クヤシイ!

上にも書いたけど1番強烈なキャラクターはオリビアばあちゃんだ。リリー・フランキーの似顔絵以上にステキ。肝心のペティントじいさんは熱心で純粋すぎることを除けば(それがヤバいのか?)普通の人だと思う。他がみんな濃すぎるのからなあ。ポスターなんかを見た限りではもっと強烈だと思ってたので残念。
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プランケット&マクレーン('99イギリス)-Jun 16.2000
[STORY]
18世紀ロンドン。酔って暴れたために投獄されたマクレーン大尉(ジョニー・リー・ミラー)は、牢獄に泥棒に入ったプランケット(ロバート・カーライル)と出会う。いつのまにか二人は意気投合し“紳士強盗”として貴族たちから次々と金品を巻き上げていく。しかし二人を捕まえようとチャンス卿が執拗に追いかける。
監督ジェイク・スコット(初監督作)
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製作総指揮は俳優のゲイリー・オールドマン。監督のジェイクはリドリー・スコットの息子で、プロモビデオ等の経験を持っている。

実在した強盗の活躍を現代風にアレンジして大活劇を展開させている――ハズなんだけど、いまいち盛りあがりに欠けた。始まりからして陰気で汚らしくて『スウィーニー・トッド』を見た時と同じような気持ち悪さを感じてイヤな予感がしたんだが、その後は何とか盛り返し、二人の活躍で面白くなってきた、と思ったのにまた失速。結局はラストが一番エキサイティングで、この出来には満足してるけど、それだけじゃ物足りないって。

強盗して稼いでるわりに地味だったり、悪党なのにカッコイイ!とは全く思えず、この手の作品で(いい意味で)ありがちな描写がなかったのが致命的かな。世間を轟かすような、人々の話題をさらうようなヒーローに仕立て上げてくれたほうが映画として面白いはず。妙にみみっちい感じがした。どこまで史実に忠実なのか知らないけど、使ってる音楽が現代的なんだから、もっとぶっ飛ばしてくれても良かったはず。

二人のキャラクターも想像してたのとちょっと違った。カーライルはいつものブチギレを見せてくれるかと思ったら、割と堅実なの(笑)やんちゃ坊主なマクレーン(←私コイツ嫌いだった)の世話なんかしちゃって、そんな彼もス・テ・キ(←アホ)だけど、彼らよりもさらに強力なキャラクターの前には霞んだね。

それはこの人!『アイズ・ワイド・シャット』でキュート(?)なホテルマンだったアラン・カミングでっす!この映画でも化粧の濃いバイセクシャル貴族を演じてて、雰囲気から喋りかたから何からまるで篠井英介さんみたいだった。女形は民族を超越するんだなぁ。この人がクネクネしながらたびたび登場するんだけど、実はこの作品で一番オイシイ役だったりする。最後なんてマジでカッコ良過ぎる!一気に惚れちゃった。この時ばかりはカーライルの貧乏顔を忘れてしまいました。許してカーライル!浮気してごめん(←またまたアホ)
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クロスファイア('00日本)-Jun 14.2000
[STORY]
女子高生が残虐に殺される事件が多発した。犯人は未成年のグループらしいが、証拠もないので警察も手が出せない。ある時、多田一樹(伊藤英明)の妹・雪江が同じ犯人に殺されてしまう。事件直前まで雪江と一緒にいた青木淳子(矢田亜希子)は自分が念力発火能力―パイロキネシスであることを告白し、犯人たちに制裁を加えることを一樹に持ちかける。
監督・金子修介(『ガメラ』シリーズ)
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原作は宮部みゆきの『燔祭』とその続編『クロスファイア』で、映画では『燔祭』のエピソードにもかなり時間を掛けて描いていた。その分『クロスファイア』のほうのエピソードが疎かになっていたように思う。特に後半がね・・・原作を読んでない人には(木戸浩一登場あたりから)いきなり流れが違ってきておかしいと思ったかも。でも原作とは違うラストは私はこれで良かったと思う、映画として。

淳子の操る炎によって人が焼き殺されるシーンは、もっとグロテスクでホラーっぽくなるかと思ってたけど、そういう風に感じることはなかった。でも顔が燃えてても目だけがいつまでたっても燃えずに淳子を見てるのが気持ち悪かったなー。炎自体はいろんなバリエーション(笑)があって、さまざまな燃え方を工夫してくれている。不思議だよね、ボーボー燃えてると恐ろしいのに、ロウソクにポンと灯ってると綺麗で儚くてさ。ちゃんと淳子の意思を“炎”として伝えていた。

それにしても登場する女の子がみんな可愛く撮られている。演技はともかく、矢田亜希子は地味で控えめながら炎を操る時は目ヂカラアップ(笑)で引き込まれたし、拙さを無口な少女という設定でカバーさせた倉田かおり役の長澤まさみ@東宝シンデレラ。一樹の妹・雪江を演じた浜丘麻矢、藤谷文子&中山忍@ガメラシリーズもゲスト出演していた。
そのかわり男優たちがみんなダメなのだった。美形を揃えたわりには、伊藤英明は時たまイノッチに見えたし(私だけ?)原作ではもっとキーになる人物の原田龍二や吉沢悠は扱いが適当だ。肝心の永島敏行も迫力なさすぎ。

製作側のポイントと、見ている私のポイントが微妙にズレていたように思う。映画として、この作品でウエイトを占めているのは演技やストーリーよりも、映像そのものだったんだろうな。そういう意味ではこれはこれで納得せざるを得ない。

それから寮祭でウクレレを奏でる2人組にもぜひ注目して下さい!
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