Movie Review 2002
◇Movie Index

わすれな歌('02タイ)-Oct 27.2002
[STORY]
貧乏な青年ペン(スパコン・ギッスワーン)は、地主の娘サダワ(シリヤゴーン・プッカウェート)に猛アタックし、ついに結婚する。しかし幸せは長くは続かなかった。ペンが兵役に駆り出されてしまったのだ。遠く離れた場所からペンは毎日サダワに手紙を書き続けるが、ある時、歌謡コンテストに合格してしまったことから軍隊を勝手に除隊してしまう。
監督&脚本ペンエーグ・ラッタナルアーン(『6ixtynin9』
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第15回東京国際映画祭アジアの風部門出品作品。一般公開は初冬の予定。

前作は、面白いところもあったけどもう少し整理すればさらに見栄えがよくなっただろうな、という作品だった。それから3年、ずいぶんうまくなったよなぁ(←偉そうだな)前作はちょっと奇をてらいすぎだったけど、今回は分かりやすいストーリーながら、主人公の、愛する人と故郷への想いをしっかりと伝えている。ところどころ笑わせながらね。ペンがサダワにプレゼントした水色のブラウスの使い方もベタだけどいい。

ペンはバカだ。どうしようもないくらいバカでアホでマヌケだ。私がサダワならボコボコにしても足りないくらい憎いだろう。でもね、憎めないのよ〜これが。運とツキは最初からない男だけどさ、バカ正直ゆえに騙されたりハメられたりで、サダワとの距離がどんどん遠くなっていくのがもどかしいやら切ないやら・・・。どんどん彼がボロボロになっていくにつれて、また最初に見せたようなおバカな笑顔が見たくて応援しながら見た。でも最初の彼の顔と最後の顔は全然違ってたね。かなり役作りしたんじゃないかな。しかも歌がうまいんだ。柔らかくて伸びのある声がますます切なかった。
ところで本作の中で上映していた映画はラッタナルアーンが出演していた『怪盗ブラック・タイガー』ではなかったか?

サダワ役の人は、つみきみほをふっくらさせたような可愛らしさでいいのだが、彼女のことももう少し描いてほしかったな。特に『怪盗ブラック・タイガー』の後ね。ちょっと唐突だったな。

シンガポールスリランカ中国、そしてタイ、と今回映画祭でアジアの映画を見てきて、こう言っては何だけど映画になってないような作品が多かったせいか、本作がえらくまともで見やすい作品だったのも確かだが、次回作はさらに期待できそう。
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恋人('02中国)-Oct 27.2002〔2003年公開〕
[STORY]
広西省の山村に、口のきけない少女・玉珍(ドン・ジエ)が兄を探しにやってきた。しかし村人の老炳の銃の暴発事故に出くわし、犯人扱いされてしまう。誤解が解けた玉珍だったが、失明してしまった老炳が心配になり、そのまま彼の家で暮らすようになる。老炳には幼い頃に聴覚を失った青年・家寛(リィウ・イエ)がおり、彼は村の少女・朱霊に恋していた。玉珍は家寛を応援するが・・・。
監督ジャン・チンミン(『ひまわり』)
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第15回東京国際映画祭コンペティション出品作品。一般公開は2003年の予定。

オープニングクレジットに“Team Okuyama Presents”と出た時からイヤな予感はしてたんだけどね・・・まさかこんなおかしな展開だとはよぉ。ファンタジーだと思えば納得できないこともないが、でもあれはないでしょう。

ビジュアルは悪くない。山の頂上に建てられた家や人々の暮らし。女の子のカラフルな洋服と、それを着ている女の子に対しては思い入れたっぷりだ。でも肝心のストーリーを伝える表現力が全然ないと思った。制作側からすれば重要なシーンなのかもしれないが、見てるこっちにはとても重要とは思えずダラダラ流してるだけに見える。銃の暴発シーンから、玉珍が家寛たちと住むようになるまでの序盤だけでも既に分かりにくい。序盤はイラつき、中盤では流し見、そして最後に脱力と・・・。なんかもうどうでも良くなった。
しいて挙げれば、家寛と朱霊、そして朱霊が恋する医者との関係はこのままでもいい。でもそこに玉珍をもっと深く絡めなきゃちっとも面白くないじゃないか。とにかく玉珍というキャラクターはもっと深く詰めるべきだった。・・・ところで兄探しはもうやめたのですか?

ドン・ジエはすごい可愛い。もうね、彼女の顔くらいしか見ドコロはなかったですね、ワタシ的に。リィウ・イエは元SMAPの森くんに似てますな。特に坊主になった時そっくりだと思った。
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この翼で飛べたら('02スリランカ)〔未公開〕-Oct 26.2002
[STORY]
スリランカ南部。自動車工場に勤めながら妻と暮らしている男がいたが、ある時、頭を打って病院に担ぎ込まれる。そこで男が実は女であるとバレてしまい、医者から言い寄られてしまう。
監督&脚本アソカ・ハンダガマ(『マイ・ムーン』)
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昨年、同じく第14回東京国際映画祭にて『マイ・ムーン』でスペシャルメンションを受賞した監督が、再び今年の第15回東京国際映画祭アジアの風部門に出品した。一般公開は未定。主演女優のアノマ・ジャナデリは監督の妻でもある。

撮影の技術に関しては稚拙なところがあるし、一番大事なシーンで何でこんな暢気な音楽なんだろう?などと気になるところはあるんだけど(偉そうでごめんね)登場人物たちのキャラクター設定とストーリー展開がとてもユニークで新鮮だった。スリランカ映画を見るのは初めてだけど、監督の前作も見たくなるほど。

ここからはネタバレを多く含みます。
主人公は性同一性障害なのかと思ったら実はそうではなく、過去に男性から相当酷い目に遭い、それで女であることを捨てたのだということが分かる。しかし周囲に女であることがバレてしまったことで、せっかく掴んだ幸せが逃げてしまう。不幸なのは彼女だけではなく、登場するすべての女性が男に虐げられているのだが。女性に対する扱いの酷さを考えると彼女はきっと・・・。フィクションと分かっていても、見終わってガックリきました。

そんな悲劇的な話ではあるけれど、思わず笑ってしまうシーンも多い。女性から毎日愚痴を聞かされている中絶専門の医者が彼女に言い寄れば、仕事仲間も彼女に好きだと告白する。2人からのアプローチに困り果てるシーンが笑える。さらにこの同僚というのは、彼女が女だと知ってて惚れてるのではなく、実は“そちらの人”なのだ。「そういうことなの?!」と思わず心の中でツッコミ入れちゃったよ(笑)ストーリーも途中経過をわざと描かずに省略部分を作ることでうまい表現ができている。感心しました。
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僕、バカじゃない('01シンガポール)〔未公開〕-Oct 26.2002
[STORY]
テリー、コクピン、ブンホクの3人は落ちこぼれ学級EM3に入れられた。そのことで同級生からはいじめられ、コクピンは母親に責められ続けていた。ある時、テリーの父親の会社が危機に立たされ大々的にCMを打つことを決めるが、広告代理店の担当者は何とコクピンの父親リウ(ジャック・ネオ)だった。しかし彼らは初対面から喧嘩になり、CM話は決裂してしまう。
監督&脚本もジャック・ネオ(『That One No Enough』)
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第15回東京国際映画祭アジアの風部門出品作品。一般公開は未定(公開されなさそう・・・)

シンガポール映画なんだけど『フォーエバー・フィーバー』と同じく中国系の人々が描かれている(リウの敵役がアメリカ人なんですね)学歴ですべてが決まってしまう国の政策に疑問を投げかけるテーマは理解できるが「中国人なのに中国語をないがしろにして英語を勉強しろ!という国の政策はおかしい」というのはちょっとね。シンガポールは中国系の人ばかりではなく、マレー系やインド系、アラブ系の人たちもいるわけで、中国系の人たちだけで仕事をすると決めているならそれでもいいけど、もっと大きな仕事をしようと思うなら、共通の言語が必要だと思う。自分の能力を生かせないかもしれないからね。・・・まぁ英語喋れない自分も偉そうなことは言えないんだけど。

そんな国の政策に、教師も母親たちも躍起になり子供たちが頭ごなしに責めつづけられる。子供の考えや一切無視で、親の都合ばかりを押し付ける。でもこの子たちはいい子なんだよね。グレないもん(笑)しかもちゃんと子供たちを観察し、能力を見抜くことができる先生がいれば、落ちこぼれることはないということを描いていく。こういう展開はお約束だけど面白かったね。

ただ子供の演技はワンパターンだし、親の演技はヒステリック。ここぞというところで人がコケたり、卵をぶつけあったりと、しつこいギャグにうんざりする。シンガポールではここで大爆笑が起こってるんだろうが。しかも話を詰めこみすぎて回りくどく整理されてないから気持ち悪い。自分でシーンを並べ替えしたくなっちゃった(笑)でもオープニングとエンディングのコメントはなかなかいいアイデアだと思った。邦画のコメディでもこういうことやってみてほしいな。
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MON-ZEN('99ドイツ)-Oct 13.2002
[STORY]
4人の子供の世話をすべて妻に押し付けていたウーヴェ(ウーヴェ・オクセンクネヒト)は、妻子に家出されてしまう。動転したウーヴェは弟のグスタフ(グスタフ=ペーター・ヴェーラー)の家で愚痴をこぼすが、グスタフは日本の禅寺に行く予定だったため、彼を突っぱねる。だが酔っていたウーヴェは自分も日本へ行くと言ってきかない。こうして2人は日本へやってくるが、いきなり東京で迷子になってしまう。
監督&脚本ドーリス・デリエ(『アム・アイ・ビューティフル?』
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中年のドイツ人兄弟が、日本へ禅を組みにやってくる。さまざまなトラブルに見舞われながら、新宿から石川県の総持寺(実在のお寺。ホームページもあり)で座禅体験をするお話。

東京でのシーンは見なれた風景ではあるけれど、猥雑さが強調されていて、みっともなくて恥ずかしい。ドイツ料理店のシーンもきっと向こうでは笑われてるんだろうなぁ。それにしても、さっきまで新宿にいた人が次のシーンでは渋谷にいたりして、地理が分かるだけにこれも笑える。

そこから一転、寺でのシーンは日本人から見ても驚きの連続だろう。チベット密教かと思いました、ちょっとだけ。水垢離し、座禅を組み、掃除をして、経を読む。食事をする時も器の並べ方から箸の置き方まですべて決まっている。これらを毎日繰り返す。これじゃあ余計なことを考えるヒマはないだろうなぁ。目の前のことをやるだけで精一杯だ。そして座禅や掃除を通して、自分を見つめ直していく。といっても、やっぱり笑えるシーンがいっぱい。それにお寺のお坊さんたちも休憩の時は和やかで、若いお坊さんなんてかなりお茶目で可愛いのだ。寺でのシーンはすごく良かった。

だから東京でのシーンがやっぱり引っかかる。トラブルも無理矢理作ったような気もするんだよねぇ。コメディと言ってしまえばそれまでだし、きっと舞台が日本でなければ素直に笑っていたかもしれない。複雑だなぁ・・・。
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