Movie Review 2000
◇Movie Index

チューブ・テイルズ('99イギリス)-Aug 11.2000
[STORY]
地下鉄にまつわる9つのストーリーを有名俳優らが監督したオムニバス映画。
会社帰りの女性がナンパされてるのを見て怒った上司は彼女を無理矢理車に乗せるが・・・「ミスター・クール」
地下鉄に乗ってきた露出の激しい女を見て中年の男は感じてしまい・・・「ホーニー」など
監督ユアン・マクレガー、ジュード・ロウ、ボブ・ホスキンス、スティーブン・ホスキンス、チャールズ・マクドゥガル、エイミー・ジェンキンズ、メンハジ・フーダ、アーマンド・イアヌッチ、ギャビー・デラル
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コメディからファンタジーからお下劣まで、あらゆるジャンルの小噺(笑)がロンドンの地下鉄をテーマに描かれている。一作品がだいたい10分くらいなので、どれも飽きることはないけど、好みは大きく分かれると思う。

結論からいうと、私が一番好きだったのは一番最初にやった「ミスター・クール」というお話。実に単純で面白い。よくハガキを投稿するバラエティ番組があるけど、ああいうので「今週の大賞」に選ばれる作品っていうのは、この作品のように単純明快なものが多いと思う。分かりやすいけど笑いのツボをきちんと押さえたもの。単純だから無駄なものがないわけだ。これを一番目の作品としたのは大正解。まずは掴みはオッケイ!ってところでしょう。

しかーし、こういう話がどんどん続くのかと思えばそうじゃなく、どっちかっていうと盛り下がっちゃったかな。中には「んんん?」というのもあった。監督した9人の中でちゃんと知ってるのはユアンとジュードとホスキンスくらい。この3人に関してはイメージ通りだったかな。ユアンの「ボーン」は『ブラス!』に出演したせいかトロンボーン奏者の話だったし、ジュードの「手の中の小鳥」は詩的だった。「パパは嘘つき」を撮ったホスキンスは乾いた映像の中で、ある事件を目撃した父と息子のやりとりをリアルに描いている。面白さはないけど、このホスキンスの作品はすごくうまいので、この設定で長編作品にしてもいいんじゃないかな、とさえ思う。

電車の中ってたくさんの見ず知らずの人が乗り合わせるものだから、ストーリーを作る上でイメージを膨らませやすいと思うけど、もう少し日常的な作品があっても良かったかな。どっちかっていうとファンタジー系が多かったので。にしてもロンドンの地下鉄って汚らしくて、あんまり乗りたいと思わないなあ。
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ハンネス、列車の旅('98ドイツ)-Aug 2.2000
[STORY]
ハンネス(ヨハヒム・クロム)はビール配達の仕事をする傍ら、列車の時刻表を眺めている鉄道マニアだ。フィンランドのイナリで開催される「時刻表国際大会」に参加予定のハンネスは、休暇申請を出していた。しかし新しい上司はそれを認めず、彼をクビにしようとする。怒ったハンネスは上司を殴って旅立ってしまう。
監督&脚本ペーター・リヒテフェルト(初監督作)
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いち早く目的地に着くことが一番だと思っている鉄道マニアが、イナリへ向う途中で様々な人たちと出会い、風景を楽しみながらのんびり行く旅の良さを知るロードムービー。もちろん途中でロマンスあり。さらに会社の上司を殴ったあと、その上司が死体となって発見されてしまったことから、警察にも追われてしまうというサスペンスもあり。

でも上司が殺されてしまったエピソードは、ストーリー上ほとんど活かされてなかったな。犯人が誰か?とかどうでもいい感じだったし、殺された理由などもきちんと最後まで描いてなかったもの。ただ、ハンネスを追いかけるファンク刑事が、先回りしようと時刻表と格闘しながら、いつしか自分も時刻表にハマっていくところがこの作品の1つの見所であり、そこが面白くもあった。

それにしてもハンネスって、見る前の私の予想では、時刻表以外に興味のない善良なオタクだと思っていたけど、見てみるとけっこう抜け目ないヤツだった。ハンブルクの寝台車で出会った車掌と仲良くなるが、この車掌がヤバい仕事をしていて、それに気付いたハンネスは彼からおこぼれをちょうだいしてしまうのだ。またシルパというフィンランド人の女性に恋をするのだが、彼女への愛を時刻表大会中に伝えるシーンは、想像していた通りだとはいえ、彼のようなもさっとした男がやるにしては洒落ている。私はこのシーンがやっぱり一番好きだった。

どの登場人物もどこかで見たことあるなぁと思ってたんだけど、ハンネス役のクロルは『悦楽晩餐会』に出ていたし、ヒロインのシルパは『浮き雲』に出演していた。刑事は『キラーコンドーム』でも刑事役だった(笑)さらに『浮き雲』で夫婦役だったカティ・オウティネンとカリ・ヴァーナネンが、この作品でもハンネスと出会う夫婦役で出演している。もともと監督はカリウマスキへ捧げる意味もあってこの映画を作ったという。

これは仕方ないことなんだけど、ドイツからフィンランドまでの列車や船を使った旅のルートが、見てても全然分からないところが悔しい。どこで乗り換えて何に乗るとか説明されてもピンとこないもんね。これが日本ならもう少し分かるんだが。でも日本で時刻表といえばミステリになっちゃうんだな(苦笑)
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ツイン・フォールズ・アイダホ('99アメリカ)-Jul 29.2000
[STORY]
シャム双生児のブレイク(マーク・ポーリッシュ)とフランシス(マイケル・ポーリッシュ)は、生き別れになった母を訪ねるため街へ出る。2人は自分たちの誕生日を祝うために娼婦をホテルに呼び出すが、やってきた娼婦ペニー(ミシェル・ヒックス)は彼らを見て驚いてしまう。しかし身体の弱いフランシスの面倒を見るうち、ペニーは彼らと親しくなっていく。
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映像も綺麗だし、穏やかで静かな雰囲気も好きだが、ストーリーを理解するまでにちょっと時間が掛かった。彼らが何のために街へ出たのか、また今まで何をしてきたのか、ということが少しずつしか見えてこなくて、少々じれったくなった時もあり。

また、ブレイクとフランシスの2人の性格にそれほど違いが見られなくて、チラシに“ペニーは陽気なブレイクに恋心を抱くようになる”と書いてあるものの「どこが陽気なんだろう?」と首を捻った。身体の弱いフランシスがぐったりして寝てばかりなので、身体だけは元気なブレイクがペニーとお喋りできるだけであって、決して彼自身が陽気ではないのよね。チラシは本人たちが書いてるわけじゃないから仕方ないが、なぜペニーはブレイクに惹かれたのか分からなかった。

3人以外の登場人物の配し方もあまり上手ではないと思った。ペニーの娼婦仲間や医者を登場させても3人に深くは絡まず、ストーリーの進行上で特に問題を起こすこともなく、とても中途半端だった。彼らの母についても同じ。下手に感動させようとするあざとさがないのは好感が持てるが、淡々としすぎてて、気持ちが入れにくかった。もっと切なくなれると思ったのになあ。

不満は多かったが、彼らがそれぞれの片手を使って服を着るシーンはとても良かった。動きに無駄がなく滑らかで美しい。何度も練習したんだろうな、と思うよりも前に、生まれた時からずっと彼らはそうしてきたんだな、と思わせる説得力がある。
ブレイクとフランシスのファッションもいい。2枚のシャツを繋ぎ合わせ、微妙に色やデザインの違うネクタイをそれぞれ締めてて、とてもオシャレだ。ペニーも娼婦らしい服ながら着こなしがうまくて、ちっとも下品に見えなかった。さすがモデルだ。
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フォーエバーフィーバー('98シンガポール)-Jul 29.2000
[STORY]
世界中で映画『サタデーナイトフィーバー』でヒットしていた1977年。シンガポールでもディスコブームが到来していたが、スーパーに勤めるホック(エイドリアン・パン)は、ブルース・リーの映画ばかり見ているカンフー好き。しかし、たまたま見たダンス映画『フォーエバーフィーバー』に心を奪われ、ダンス教室に通うようになり、ついには大会にまで出場することになるが・・・。
監督&脚本グレン・ゴーイ(初監督作)
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毎日遅刻ばかりしながらスーパーで働き、家では小言を言われ、夜は仲間たちと飲みに行く。バイクが欲しいと思っているが、手が届かなくて見ているだけ――そんな生活を送っていた青年が、ダンスと出会って人生が大きく変わる。サクセスストーリーの王道を突っ走るような作品で、普通ならあんまり見たいと思わない作品なんだけど、シンガポール映画は実は見たことがなかったので今回は見てみることにした。

喋っている言葉は(アクセントがヘンだけど)一応英語だが、香港や台湾の映画と言われても分からないかも。特に主人公は中国系だし。それと、私も見るまでは勘違いしてたのだが、ホックたちが見る映画は『サタデーナイトフィーバー』ではなく『フォーエバーフィーバー』という別の映画なのだ。だから映画の中で踊ってるのもトラボルタではなく、彼によく似た(つーか全然似てねーのこれが(笑))俳優なのだ。その彼が映画の中から飛び出して、ホックにいつもアドバイスしてくれる。このパチモノっぽさも香港らしいな、と私は思ったのだが。

主人公ホックがジャッキー・チュン(≠チェン)似っつーかナンチャン似なのよね。でも得意のカンフーをダンスに取り入れるあたりはウッチャンか(笑)ウリナリの社交ダンス部みたいな気がしないでもない。ダンスシーンはすごく面白い。特にホックが初めてディスコで踊るシーンは良かったなー。とっても楽しそうで、ダサいけどちょっとカッコいい。

でも、思ったよりもハマれなかった。テンポがいいところもあれば良くないところもあって、流れが悪くてガタガタしてたからかな。特にホックの弟のエピソードは唐突だし後半は飛躍しすぎて戸惑った。あと、ところどころで挿入される、いかにも笑いドコロなギャグがサムくてこそばゆかったのだろうか。
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クローサー・ユー・ゲット('00イギリス)-Jul 23.2000
[STORY]
アイルランドのドゴニールという小さな村。妙齢の女性たちのほとんどは村を出ており、残っているのは適齢期を過ぎた男たちばかり。そこで肉屋のキーラン(イアン・ハート)は兄のイアン(ショーン・マッギンレイ)らとともに、新聞に広告を出すことを思いつく。毎年恒例の聖マルタ祭にアメリカ人女性を招待しようというのだ。早速手紙を新聞社に送ろうとするが、村の女たちもそのことを嗅ぎ付け・・・。
監督アイリーン・リッチー(長編初監督)
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『フルモンティ』を手がけたプロデューサーが、今度はアイルランドの男たちを主人公に“遠くにあると思い込んでいたが、実は身近にあった恋”を描いている。

嫁不足のアイルランドを描いた作品といえば『恋はワンダフル!?』がある。これは本作品と違って、きちんとしたお見合いツアーを企画しているため、女性達はちゃんとアイルランドにやってくる。しかし、この作品の男たちは掲載する新聞記事に「美人で健康的で体力のある20歳〜21歳のアメリカ人女性」なんて高望みするもんだから、誰1人としてやってこない。ここからしてバカ丸出し(笑)ま、話としてはそれで面白いんだろうが、ワタシ的には生理的に受け付けない男ばっかりで途中でウンザリしてしまった。どの男も応援したくなるようなキャラクターじゃなくて。

ストーリーも見てて途中でかったるくなってしまった。テンポがあまり良くない。アイルランドの風景と同じようなまったり感ならすんなり入っていけそうだが、そういうわけでもなく、単に表現力がないというか。映画の冒頭で18歳の男の子のモノローグが入ったので、きっと彼から見た村の騒動を描くのだろうと思っていたら、いきなり視点に統一感がなくなってしまった。あれれ?と戸惑っていると、最後にようやく男の子のモノローグが復活し、視点も男の子に戻った。モノローグが多過ぎるのは好きじゃないが、こんな風に最初と最後だけやられてもイヤだな。こうすることでうまく話を纏めたつもりだろうが、騙されないぞー。

色々不満はあったけど、1番良かったのは神父様。他の男たちと違って清潔感あるし、真面目なのにエッチな映画を教会で独りこっそり見たりもする。他の男たちが女にガツガツしてる脇でマイペースに振る舞い、いつもニコニコしている。村で結婚式をやりたいと願って、司祭の服を着て嬉しそうに踊ってるところもキュート。しかしそれが物語とうまう絡み合ってないところが残念。意気地のない男を励ますシーンではそれなりにいい働きをしているが、どうせなら恋のキューピットとして、あのキャラクターを存分に生かして大団円に導いてほしかった。
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