Movie Review 2000
◇Movie Index

パリの確率('99フランス)-Jun 25.2000
[STORY]
1999年の大晦日。アルチュール(ロマン・ディリス)は恋人リュシーと友人宅へ年越パーティーに出掛ける。そこでリュシーから「あなたの子供が欲しい」と言われるが、全くそんな気のないアルチュールは彼女と喧嘩してしまう。動揺しながらトイレで用を足していると、天井から砂がこぼれていることに気付く。上ってみると何とそこは2070年のパリだった。そしてアルチュールにアコと名乗る老人(ジャン=ポール・ベルモンド)が「お父さん」と声を掛けてきた・・・!
監督&脚本セドリック・クラピッシュ(『家族の気分』
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クラピッシュ作品は好きなんだが(『青春シンドローム』だけは未見)前作『家族の気分』がワタシ的にあまり面白くなかった。でもこの作品は笑わせてもらった。

トイレの天井を上っていったら砂に埋もれた未来のパリだった!という設定も面白いが、一番面白いのは若いディリスの息子があのベルモンドってことでしょう。写真を見せるシーンでは、息子であるはずのアコの写真のほうが古くて(おそらくベルモンド自身の写真)会場中から笑いが起こっていた。

未来のパリの風景はまあまあかな。ま、どっかで見たような世界ではある。文明が発達してるような後退してるような微妙な世界で、人々の衣服やメイクもどこかで見たことがある。ここに独自のこだわりや世界観があればもっと引き込まれたんだけど、それを見せるための作品じゃないのでこんなもんなのでしょう。

でもぶっちゃけた話、アコが一生懸命にアルチュールに「子供を作れ」ってお願いするだけの話なのよね(苦笑)未来の世界でアルチュールが何か大きなトラブルに巻き込まれたりしないのよ。たいていの映画では、いちど未来の世界に行ってしまったら、なかなか現在には戻ることができない。どうすれば戻れるんだろう?って奔走するのがストーリーに盛り込まれるが、そんな危機感は全くない。この作品では何ともお手軽に現在と未来を行き来できる(トイレの天井を上ったり下りたりするだけだもんね)むしろ危機感を持ってるのはアコたちだけで、アルチュールは今時の若者的なマイペースさだ。それがこの映画の良さでもあるんだけど、もうちょっと何かあっても良かったんじゃない?また、だんだん本筋から逸れて、この設定で遊んじゃってて、まとまりのない印象も受けた。ラストは好きだけどね。

未だにすごく気になってるのは、ヴァンサン・エルバス演じるアルチュールの友人(名前忘れちゃった!)の彼女が、ずっとアルチュールに何か言いたそうだったのに、結局何も言わなかったこと。彼女は一体彼に何を言いたかったんだろう。アルチュールのことが好きだったのか?それとも・・・。そこのところをクラピッシュに聞いてみたかった、と今更ながら思う。
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ふたりの教師('00フランス)〔未公開〕-Jun 25.2000
[STORY]
幼なじみのアレクサンドル(ジャン=ユーグ・アングラート)とイポリット(イヴァン・アタル)は同じ学校で教師をしていた。しかし次の校長の座を巡って、また教育に対する考え方の違いから次第に二人は対立していく。
監督&脚本アレクサンドル・ジャルダン(『恋人たちのアパルトマン』)
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でぇ〜〜んせ〜つ〜のぉ〜、きょぅしぃ〜はオ〜レ〜ェだぁ〜〜〜♪

ドラマ『伝説の教師』もふたりの教師が対立(?)する話だったんで、ちょっと歌ってみたかったの。失礼。いやぁドラマのほうはおバカ全開の下らなさが見てて楽しかった。説教垂れるシーンで本音を言ってみたり、理屈があるようでいて全然なくて「こういう考え方もあるやね」で済んじゃうところがいい。いかにも「私は正しいんです!」と熱弁ふるわれると、つい信じ込んじゃうから恐い。一種のマインドコントロールでしょう。自分が学生だった頃はそれで(言葉は悪いが)けっこう騙されたと思う。今はそういう教師を見ていると冷静に、結局それはアナタの理想でしょう?自分の理想論を生徒に押し付けるな!と思える(あ、教師全員がそういうわけじゃないので念の為)

アレクサンドルはまさに私の嫌いなタイプ。生徒のためというより自分のために授業をやっているような気がしてならなかった。生徒を見てるようでいていて全く見てないじゃん、自己満足してるぞコイツって。彼と対立するイポリットは生徒を進学させるための教育方針を打ち出しているが、そっちのほうがよっぽども正直者だ。アレクサンドルを見ているとつい「偽善者!」と言いたくなる。

しかしそんなたいそうな教育論をぶち上げてる割には、アレクサンドルにマサカズ的恋愛(田村正和出演ドラマのようにいい歳して20代の女の子と恋に落ちちゃうこと)をさせているのが納得いかん。最近のアングラート@45歳はいつもマサカズ的で、若い子といちゃついててもあんまり違和感ないんだけどさ。教育と恋愛の隔たりがありすぎて、これまたトホホだった。

監督のジャルダンは、人間が持つ二つの要素をふたりの教師に振り分けていて、どちらも正しいと言っている。ま、そうだろうね。でもあまりにも類型的過ぎる。『恋人たちのアパルトマン』もそうだったけど、この人って頭で考え過ぎなんじゃないかな。作家だからかもしれないが、文章で書くのと、映像にするのとでは全然別なのに、映像でもそれを引きずってる。自分の小説を他人に映画化されるのが嫌で自分で監督するようになったというが、それは本職に任せたほうがいいと思う。偉そうで悪いけど(笑)
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女がいちばん憧れる職業('00フランス)〔未公開〕-Jun 24.2000オススメ★
[STORY]
田舎町で美容院を経営するイヴォン(ジェラール・ジュニョ)は娘のレティシア(ベレニス・ブジョ)と二人暮らし。イヴォンは娘に高級サロンの美容師になってもらいたいと考えているが、彼女は女優になるのが夢。父に内緒でオーディションを受け、見事主役に選ばれる。それを知ったイヴォンは阻止しようとするが・・・。
監督&脚本もジェラール・ジュニョ(『パリの天使たち』)
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私が今回見た映画祭作品の中で一番好きな作品だった。笑って泣けるいいお話。フランス人の観客もいるとまたノリも違うのよね。ワタシ的にはそれほど面白くもないシーンでも笑い声が起こって、それにつられて笑ってしまったりする。だから一般公開された時に見ればまた違った印象になるかもだけど。とにかくジュニョが素晴らしい。公開された是非見てほしい作品だ。

イヴォンは“ヅラ”をしている。ジュニョのことを知らなければヅラだと分からないかもしれないが、上映前に挨拶した時点で頭が涼しげなのは分かってるわけで、本編上映直後にまず笑いが起こった。そして彼がレティシアを過剰に心配し、彼女の出演する映画の現場にまでついていく。このへんもコメディの王道というか、ドタバタ続きで飽きさせない。しかし、やることなすこと娘の反発を買い、娘への愛情が深ければ深いほど、娘との距離がどんどん広がっていく。イヴォンの気持ちも分かるけど、レティシアの気持ちも分かる。だってホントにうざったいくらいに心配性なんだもん。そして案の定、ついに決裂。この時ばかりはイヴォンの切ない表情にたくさん泣かされてしまった。

こんなに娘への思いを表現できるなんて、きっとジュニョ自身が普段から娘に対して思っていることを表現したに違いない、と思っていたら、何と彼には娘がいないらしい!!これにはビックリした。しかし息子がいて、本作品にもちょこっと出演しているという。なぁんだ〜とがっかりしながらも、いなくてもこれだけステキな作品が作れるのだから、彼の才能ってスゴイと感心する。

イヴォンが毎晩レティシアに作ってあげるホットミルクがいい小道具になっている。ここにも愛情が溢れてる。もちろんヅラもいい働きをしてます(かわいい)あとレティシアに恋している地元の男の子の髪の毛の伸び具合にも注目だ。
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愛しのシビル('98フランス)〔未公開〕-Jun 24.2000
[STORY]
銀行に勤める30歳のシビル(コリーヌ・デボニエール)は列車の中でヴィクトル(ジョナサン・ザッカイ)という年下の男に声を掛けられる。シビルはヴィクトルを家に連れて行き、彼はそのまま家にいついてしまう。そして結婚し、シビルの両親と同居するが・・・。
監督&脚本アンヌ・ヴィラセック(初監督作)
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タイトルとチラシに書いてあったあらすじを見た限りでは、ぶちゃいくな女の子と若くてカッコイイ男の子の可愛いラブストーリーだと思ってた。それがぜーんぜん違うんだもん。なんか騙されたって感じ。見る前から先入観を持っちゃいけないけど、まさかまさかそんな映画とはよぉーっ!(遠吠)ちょっとたまってたのでここで吐き出させてもらいました。

30歳になるまで両親に過保護に育てられたシビルがヴィクトルと結婚するが、結婚後もやっぱり親がかりでヴィクトルとの関係もうまくいかなくなっていく。このヴィクトルのバックグラウンドが語られないので、彼が何にイライラしてるのか、昼間何をしているのか、誰と会ってるのか、全く分からない。ヴィラセックは登場人物たちに自分の行動の説明をさせないように心掛けたそうだが・・・これが正直言って面白くないのよね。オチのない話を延々聞かされてるようなもんです。確かに説明的過ぎる話も困るが、全くないのはもっと困る。説明的にならずにうまく表現できる人はたくさんいる。でもそれは何作か監督してみてだんだんできることであって、初監督作で(ドキュメンタリーは何本か撮ってるらしいけど)これはまだ無理だったんじゃないかな。

開発されたばかりの閑静な住宅地で、同じ形の家が何軒も並ぶ一軒にシビルの家がある。家屋は日本の住宅とさほど変わらない広さだが、庭は日本よりずっと広くてシビルの母が熱心に木を植えている。このあたりは『アメリカン・ビューティー』に通じるものがある。家は綺麗なのに住んでる者は・・・というのも一緒。ただ、こちらの作品では自分たちが幸せであると信じきっている。このへんの描写は興味深かった。でも面白くはない。

半ば飽きてきたので、見ながらつい“いつもの癖”が出てしまった。これを日本人でやったらどういう配役にするか、ってやつね(笑)このシビルが片桐はいりさんにすごく似てんのよ(来日したデボニエールは似てなかったが)ということで決定!ヴィクトル役は浅野忠信。美容師のお母さんは鰐淵晴子かなー。お父さんは竜雷太でしょう・・・なんてな。
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ムッシュ・カステラの恋('00フランス)-Jun 23.2000
[STORY]
会社社長のカステラ(ジャン=ピエール・バクリ)は部下から無理矢理英語を習わされることになり、教師としてやってきたクララ(アンヌ・アルヴァロ)を適当にあしらう。しかし、妻と一緒に見に行った芝居に彼女が出演しているのを見て恋をしてしまう。また、社長のボディガードをしているモレノ(ジェラール・ランヴァン)は運転手デジャンの紹介でウェイトレスのマニ(アニエス・ジャウィ)と出会い恋に落ちる。
監督&脚本&出演アニエス・ジャウィ(初監督作)
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監督作品は初めてだけど『家族の気分』『恋するシャンソン』の脚本家として有名。本作品も公私ともにパートナーのジャン=ピエール・バクリと共同で脚本を書いている。

『恋するシャンソン』でも、どこかで繋がりのある登場人物たちの、それぞれの恋を描いた作品だったけど、これもそう。軸になるのは社長のカステラと舞台女優のクララ。この社長さんが不器用で健気なの。舞台は何度も見に行くし、英語はがんばるし、クララの劇団仲間との演劇論にも加わって、そこで恥をかいてもおかまいなし。また彼女に恋したことで、会社のことしか分からなかった男が芸術の分野にも目覚めるようになり、絵を買ってみたりもする。『恋するシャンソン』でも中年オヤジのシモンが異様に可愛かったけど、この作品でもおじさんがとても可愛い。ま、実際こんなおじさんに好きになられちゃったら誰だってちょっと引くよね。クララの引き具合とカステラの無神経さが絶妙で、しっかり笑わせながらもどこかペーソスがあり、つい彼に肩入れしたくなる。

このメインの話でかなり満足しちゃったんだけど、実はほかの人たちは描きかたは物足りないと思う。マニとモレノの恋もだし、デジャンとアメリカに行ってしまった恋人との関係、またカステラの妻ベアトリスと義妹との関係も。中途半端すぎてかえってウザかった。そんなのはどうでもいいからカステラとクララのシーンをもっとやってくれ、と思うほどで、申し訳ないがこちらにはほとんどハマれず。私にとっては息抜きシーンとなってしまった。

どうでもいいことだが、モレノ役のランヴァンってちょっとトミー・リー・ジョーンズに似ている。そんでもって若い頃の川谷拓三っぽくもある。分かるかなーこのニュアンス(笑)
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