Movie Review 2002
◇Movie Index

サイン('02アメリカ)-Sep 27.2002
[STORY]
グラハム・ヘス(メル・ギブソン)は牧師だったが、最愛の妻を事故で亡くし信仰を捨てた。 農夫となったグラハムの元には、野球選手だった弟のメリル(ホアキン・フェニックス)も一緒に住むようになり、 グラハムの2人の子供とともに4人の生活が始まった。そんなある朝、とうもろこし畑に巨大なミステリーサークルが 出現した。この“サイン”にどんな意味があるのか・・・。
監督&脚本M・ナイト・シャマラン(『アンブレイカブル』
−◇−◇−◇−
なんつーか、とっても微妙な映画でございました(笑)キリスト教徒なら理解できる話だろうし、9.11を経たアメリカで大ヒットしたのも分かる。冒頭から気味悪いくらい緊張感があって、ストーリーがどんな風に転がっていくのか全く読めなくて、怖い!と思ったシーンもたくさんあった。でも最後の最後でガックリきた。

(ここからネタバレ)水に弱いって何?!しかもホントに弱いし。手だけ、足だけ、あのビデオ映像(あれって実際の映像なんだっけ?)やブラウン管に反射して見えたシーンには鳥肌まで立ったのに、本物が出た瞬間笑ってしまった。あれ、サミュエル・L・ジャクソンに似てません?『アンブレイカブル』からゲスト出演かと(失礼)あのショボイ大団円さえどうにかなれば・・・と思うんだけど、これ、文章にしてみると理解できるんだよ。
つまり、妻の遺言が宇宙人をやっつけるヒントになり、娘のクセが宇宙人を死に至らしめ、息子は喘息だったために宇宙人の毒を吸わずに済んだ。これらをすべて“偶然”と片付けず、グラハムは“奇跡”と受け取り、再び信仰を深めた、と。理屈はよぉく分かるんだ。でも映像で見ると脱力してしまう。やっぱり宇宙人の設定かな。水がなぁ。聖水ってことなんだろうけど、水かよっ!って(しつこい)でもまぁこの宇宙人らは日本には来ないだろうね。雨は多いし、あんな巨大なミステリーサークルも作れるところ少ないだろうし。なら、いいか(何が?)
(ここまで)

メルギブは可もなく不可もなく。というか、主役の存在感はあるのに見終わって印象に残ったところがなかったが、いつもあんなだったっけ。ホアキンは今まで一番クセのないマトモな役で新鮮だった(笑)グラハムの息子はむくんだマコーレー・カルキンで(弟だって)、娘は将来キルスティン・ダンストみたいになりそう(つまりニホンザルだと?←おい)しかし一番笑ったのはやはりシャマラン本人出演だろう。今まで一番出番が多いし重要な役なんですが、どうなのよ?(笑)演技うまくないじゃん。今後は出てもいいけどもっと出番を減らすように。
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まぼろし('01フランス)-Sep 15.2002
[STORY]
マリー(シャーロット・ランブリング)とジャン(ブリュノ・クレメール)は結婚して25年になる夫婦。休日には海辺の別荘で過ごすのが習慣になっている。その年も2人で別荘にやってきた。しかし泳ぎに行ったジャンが姿を消してしまった。捜索隊も出動するが、結局ジャンは見つからなかった。
1人でパリに戻ったマリーは普段通りの生活を始めるが、彼女の中ではまだジャンとの生活が続いていた・・・。
監督&脚本フランソワ・オゾン(『焼け石に水』
−◇−◇−◇−
“変態美形監督”と勝手に命名してるフランソワ・オゾンですが、本作はいつもの変態ぶりが鳴りを潜め、往年の名監督が撮りました、もしくは女流監督が撮りました、って言われたらそのまま信じてしまいそうな作品だった。失意の中年女性に時には同化し、時には冷たく突き放す。夫が行方不明になって1人になってからも、夫に対する深い愛情と、長い間一緒に暮らしてきたことを繊細な演出で見せている。

でも気になる、というかここの演出はこれで良かったのかなぁと引っかかるところがあった。(ここからネタバレ)それはパリの自宅に、マリーだけに見える夫を観客にも見せてしまったところね。夫を登場させなくても、彼女の言動だけで夫がいるように見えるのに、どうして出してしまったんだろう?って。そこが気になっちゃって。でもここで夫を見せないとラストの海辺でのシーンが全く活きてこないわけで・・・。私はこのラストにびっくりし、すごい!と思ったので、これがなくなっちゃうのは嫌だ。気になるけどしょうがないのか。(ここまで)

シャーロット・ランブリングは“的確な演技”って感じかな。上手いし圧倒されたけど、グッとくるものはなかった。でも彼女なしにはこの映画はありえなかっただろう。
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ズーランダー('01アメリカ)-Sep 14.2002
[STORY]
デレク・ズーランダー(ベン・スティラー)は、3年連続最優秀モデルに選ばれているスーパーモデル。しかし今年は急成長してきたハンセル(オーウェン・ウィルソン)に負けてしまった!おまけに受賞式で恥もかいてしまう。しかし傷ついたズーランダーの元に、業界ナンバーワンのデザイナー、ムガトゥから声が掛かる。喜んで仕事を引き受けるズーランダーだったが、実はある暗殺計画に彼が利用されようとしていた。
監督&脚本もベン・スティラー(『リアリティ・バイツ』)
−◇−◇−◇−
『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』に続くベン・スティラー&オーウェン・ウィルソン祭り第2弾(←勝手に命名) 出演者も豪華で、ほんのチョイ役にとんでもない人がキャスティングされている。これもスティラーの人徳なのかな。また、デレクのエージェント役には実父のジェリー・スティラー、ジャーナリスト役に妻のクリスティーン・テイラーが出演。家族も動員されてます(あれ?クリスティーン・テイラーとはこの作品がきっかけで結婚したんだっけ?)

よくもまぁこれだけ下らない映画を作れたなぁと感心した(←誉め言葉)ストーリーはあってないようなもんだし、ところどころサムいところもあるけど、おバカネタをこれでもかと積み上げられて最後はもう爆笑するしかなかった。勘弁して下さい(笑)特にデレクとハンセルのスーパーモデル対決は最高。映画館じゃなかったら大きな声で笑ってたかもしれない。でもこれって、本物のモデルをかなり茶化してるよねえ。歩き方だとかキメ顔だとか、グラビアやカレンダーネタも笑った。そういえば日本のCMに出演してるシーンも一瞬映ったね。細かいカット割りだったので、もっと小ネタがあったかもしれないけどあとは分からなかった。。

ワム!の『ウキウキ・ウェイク・ミーアップ』やフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『リラックス』など80年代のヒット曲がたくさん使われていて、使われてる箇所だけ抜き出せばプロモビデオにもなりそう(というか、ワム!のほうは明らかにプロモ風。ものすごいオチもあったけど)・・・やばい、サントラちょっと欲しくなっちゃった。
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ディナー・ラッシュ('01アメリカ)-Sep 14.2002オススメ★
[STORY]
ニューヨーク、トライベッカ。イタリアンレストラン“ジジーノ”のオーナー、ルイス(ダニー・アイエロ)のビジネスパートナーが2人組のマフィアに殺された。実はルイスは賭けの胴元として地域に君臨していたのだが、マフィアたちは“ジジーノ”ごと乗っ取とろうとしているのだった。
そしてルイスにはもう1つ悩みがあった。それは息子ウード(エドアルド・バレリーニ)が店を変貌させてしまったこと。腕は確かだが批評家に気に入られる料理ばかり作っているのだ。そしてスーシェフのダンカンはギャンブル中毒でマフィアに借金がある。そんな店にマフィアたちがやってきてしまった。
監督ボブ・ジラルディ(『ウォンテッド・ハイスクール/あぶない転校生』)
−◇−◇−◇−
監督はマイケル・ジャクソンの『ビート・イット』のミュージックビデオなどを手がけていて、映画は上記作品からは実に14年ぶり。本作に登場するレストラン“ジジーノ”は実在のイタリアンレストランで、この店のオーナーがジラルディなのだ。撮影もセットではなく、このレストランで撮影されたという。しかも、映像で見るよりも実際はもっと小さな店のようで、料理もウードが作るようなヌーヴェル・キュイジーヌではないそうだ。そして映画には“ジジーノ”のシェフも出演していて、映画の中で登場する料理も作ってるらしい。ひょっとして、1人だけちょっと年配の黙々と料理してた人かな?

オープニングのタイトルバックや、ルイスのパートナーが殺されるシーンがいまいちだったので「ひょっとしたらこれは期待ハズレなのかな?」って始まって早々に不安になったのだけれど、レストランでの一夜が始まってからはもう面白くて楽しくて、すっかり自分もレストランの中にいるような気分。従業員や客のキャラクターもしっかりしていて飽きない。特に私のお気に入りは、客から出された難しいクイズにすべて正解してチップを稼ぐバーテンダーと、カウンターで彼と雑談を交わす客の金融マン。2人とも会話がスマートでカッコイイ。2人だけでなく、どの人物の会話もほんの一言二言でキャラクターを見せてしまうところがすごかったな。

そしてさらにすごいのがクライマックス。こんな展開だったなんて!ちょっと気を抜いてたところだったのでビックリした。はぁ〜痛快だった。ここは何度も見たいシーンだ。いやあ、やられた。この夜の“ジジーノ”でぜひ食事がしたかった(笑)

でもね、ここまで楽しめたのは予告編をちゃんと見なかったからなのだと思う。これから見るつもりの人に注意!実はこの映画を見た後、他の映画館で本作の予告を見たんだけど、ネタバレしすぎじゃないですか!私は元々見るつもりでいたので予告をしっかり見たことはなかったんだけど、しっかり見てみてびっくりしたね。というか寒気がしました。これから見るつもりの人は、予告は適当に流し見ること。できれば目をつぶってたほうがいい。配給会社はもっと考えて欲しいね。
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インソムニア('02アメリカ)-Sep 11.2002
[STORY]
アラスカ州ナイトミュート。太陽が沈まない白夜の町に17歳の少女の死体が発見された。ロスのベテラン警部ドーマー(アル・パチーノ)と相棒のハップ(マーティン・ドノバン)が派遣され、地元の刑事でドーマーを尊敬するエリー(ヒラリー・スワンク)の出迎えた。さっそく警察署へ赴き死体を見たドーマーは、早くも犯人像を特定する。そんな有能なドーマーも悩みを抱えていた。実は警察の内務調査が始まっており、しかも相棒のハップが彼を裏切ろうとしていた・・・。
監督クリストファー・ノーラン(『メメント』
−◇−◇−◇−
1997年に作られたノルウェーの同名映画のリメイク。製作総指揮にはスティーブン・ソダーバーグとジョージ・クルーニーが携わっている。

前2作がトリッキーな作品だったので本作も・・・と期待する人が多いと思うけど、これはそういう映画ではない。全くないわけではないけど(ネタバレ)冒頭の血をぬぐうシーンが、証拠隠滅を図るフィンチだと思っていたら、証拠を捏造しているドーマーだった(ここまで)というところくらいかな。勘のいい人ならすぐ分かるんだろうけど、私はやっぱり騙された・・・(笑)

今回のこの映画はノーランにとって、こういう正攻法の映画も撮れるんだという証明のための映画、という感じがしました。奇をてらったアイデアを出すことなく、役者の演技と演出による心理描写を中心に描こうという姿勢が見える。確かにドーマーがストレスによる不眠症に蝕まれていくシーンはとても丁寧で、(またネタバレ)ホテルの従業員レイチェルがドーマーの部屋の電気をつけるシーンや、クライマックスでの運転シーン(ここまで)などの演出はとてもいい。そうやって1つ1つ見ていけばいいところはたくさんあるのだけれど、全体通してみると平凡であまり面白くない話になっている。

それはやっぱり、ノーランに対して期待してたものと違ったから、というのが一番大きいのかな(でも前2作と同じような感じだったら、それはそれで文句言ったかもしれないが)タイトルにもなっている不眠症になる理由が、今回の事件とは直接関係がなく(むしろ内務調査で眠れない)そして、不眠症によってドーマーが幻覚を見たり、意識のない時に覚えのないことをしていたり・・・というわけでもなかったわけだし(だから最初にそういう映画じゃないって自分で書いてるじゃん)正攻法なら脚本をもっと詰めて欲しかった。

そして犯人フィンチを演じたロビン・ウィリアムスがものすごく不満。これほどまでに中途半端な犯人とは思わなかった。頭がいいのか悪いのか、狡猾なようでいて鈍そうだし、フィンチという役を掴みきれてないようでとにかく気持ち悪かった。私はフィンチがドーマーから逃げるシーンでケビン・スペイシーの顔がチラチラ浮かんでしまった。恋?いやそーじゃなくて(笑)『セブン』でブラッド・ピットがスペイシーを追いかけたシーンとダブって見えたからなんだけど、意外性はないけど彼が犯人だったらもっと緊張感みなぎるシーンになったんじゃないかって見ながら思ってしまったんだよね。
まぁフィンチというキャラクターが見えてくるうちに、これはスペイシーがやる役じゃないということが分かったけど。でもね、やっぱりロビン・ウィリアムスじゃない。今度はウィリアム・ハートの顔がチラチラ浮かんでくるようになったのだ。知性的でスマートすぎるかもしれないけど、彼が犯人だったら駆け引きするシーンがもっと面白かったんじゃないかってね。・・・ロビン・ウィリアムスにはそれらがなさすぎた。

アル・パチーノは演技そのものはいつもと同じだと思うんだけど、顔で合格(笑)上まぶたは落ち窪み、下まぶたはダルダルのまさに不眠症顔だ。キャスティングした人エライ。

で、この映画のオリジナル版『不眠症』(←ビデオ、DVD版タイトル)を見た。主人公は『キス★キス★バン★バン』のステラン・スカルスガルドが演じている。
リメイク版では主人公に後ろ暗いところがあるのだが、オリジナル版では全くない。この違いだけで映画の主軸が違うもののように感じる。ストーリー的にはリメイク版のほうがよくできてるけど、主人公が衝撃を受けて次第に精神的に参っていく様子がじわじわと伝わるのはオリジナル版だ。不眠症に陥る主人公の辛さがダイレクトに伝わるのはやはりアル・パチーノなんだけどね。
そしてクライマックスからラストまでの展開はオリジナル版の勝ち。これを見てやっぱりハリウッド版ていうのは、後味をあまり悪くしないんだなぁと思ったよ。こっちのほうが余韻が残るなぁ。
それと、オリジナル版の犯人役の扱いがとても軽いので、リメイク版でのウィリアムス起用に伴うキャラクターの掘り下げには苦労しただろうな、と思った。上でウィリアムスを酷く書いてしまったけど、これは企画、脚本の段階でもう少しオリジナリティを出すべきだったのでは。
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