Movie Review 2005
◇Movie Index

描くべきか、愛を交わすべきか('05フランス)-Jun 18.2005
[STORY]
山の麓の街で暮らしていたウィリアム(ダニエル・オートゥイユ)とマドレーヌ(サビーヌ・アゼマ)夫妻は、偶然出会った盲目の村長アダム(セルジ・ロペス)に紹介された丘の近くの一軒家を購入する。そしてアダムと同棲しているエヴァ(アミラ・カサール)も加わり4人は親しくなっていく。ある時、アダムの家が火事で全焼してしまい、ウィリアムたちは2人を自宅に住まわせることにする。
監督&脚本アルノー&ジャン=マリー・ラリユー(『運命のつくりかた』)
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早い話がス○ッ○○グっす。まったくフランス人てやつはよぉ〜〜〜と呆れてしまうのだが、フト考えさせられる部分もあった。

アダムとエヴァ(!)というカップルに何故か夫婦が振り回されてしまう。これは障害者だから守ってやらなければならない、世話してあげなければならない、という優しさ(思い込みでもある)からくるもので、健常者から見ると当たり前の行為をしているように思えるが、それは障害を持つ人の行動を縛っているのかもしれない。障害者からすると過保護にされなくても自分でできることはやる、他人に迷惑をかけずに自由に行動できるならする、それだけだろう。この両者の気持ちがかみ合わないと、本作のようにアダムに差し出した手を取ってもらえなかったウィリアムたちのように、戸惑ったり余計に疲れたりするのだ。2人の慌てっぷりはおかしいけど本気で笑えない。
逆に盲目だから真っ暗な夜道でも怖がらずに感覚だけで歩くことができるアダムが、ウィリアムたちの手を取って森の中を歩くシーンがあるんだけど、ここが一番面白かった。すっかりアダムのペースにハマって、2人はますます彼らと仲良くなりたいと思うようになるのだ。

だけどそこから何故ス○ッ○○グに繋がるのか私には理解不能(笑)しかも終いには(ネタバレ)ウィリアムとアダム、マドレーヌとエヴァという組み合わせまで・・・だよね?あれはきっと(ここまで)フランス人だから、と思うしかない。

内容以外で見所はなんと言っても美しい村の風景だ。2人が買った家がこの風景を見るのに抜群のところに建っていて、2人じゃなくても住みたくなってしまう。テラスにあるテーブルにロウソクを灯してワインを飲む・・・最高だろうな(←単に飲みたいだけだろ)
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レミング('05フランス)-Jun 18.2005
[STORY]
エンジニアのアラン(ローラン・リュカ)と妻のベネディクト(シャルロット・ゲンズブール)は、ある晩、社長のリシャール(アンドレ・デュソリエ)と妻のアリス(シャーロット・ランプリング)を夕食に招くが、リシャールの浮気を知ったアリスはアランたちがいるにもかかわらず怒りをぶちまける。その日の深夜、アランは家の台所でレミングという北欧にしかいない動物を見つける。この日からアランとベネディクトの関係がおかしくなっていく。
監督&脚本ドミニク・モル(『ハリー、見知らぬ友人』
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。第58回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門のオープニングを飾った。脚本は2003年のフランス映画祭で上映された『誰がバンビを殺したの?』を監督したジル・マルシャンが共同で書いている。

ポスターを見た時には、若いベネディクトにちょっかいを出す中年女アリスの醜い嫉妬話だと思っていた。映画が始まってからは社長夫妻のゴタゴタに部下夫婦が巻き込まれるような話だと思っていた。しかしレミングが見つかり、アリスがあんなことになり、こんなことになり、どんなことになってんだよ!となり(笑)ホラーなんだかスリラーなんだかオカルトなんだか分からない、予想からことごとく外れたところに話が転がっていく非常にヘンな映画だった。普通の人ならこんなストーリー書かないだろう。

はっきり言っちゃうと面白くはないです(笑)ただ珍妙だったので印象には残るけれど。まぁちょっと面白いなぁと思ったのは、フランス映画で(ここからネタバレ)死んだ人の霊が生きている人間に乗り移る(ここまで)という話を、私は初めて見たってところかな。邦画では使い古されたネタだけど、フランス映画だとまた違った雰囲気が出るものだね。でもレミングというタイトルをつけた割には本筋とレミングがうまくリンクしてないし、レミングを出さなくてもじゅうぶんストーリーを進めていける、むしろ出さないほうがシンプルで面白かったんじゃないかと思った。レミングを出したからオリジナリティ溢れる作品になったんだけど(笑)でも同じ監督の作品なら『ハリー』のほうが出来が良かったなぁ。モルとマルシャンの共同脚本の映画はまた見てみたいが・・・。

ランプリングは出演時間が短くてもったいないと最初は思ったけど、見終わった後も一番印象に残った。特に最後の写真は本当に彼女の若い頃のものを使ったのかな?綺麗だったな。あとはリュカとゲンズブールがシャクレ夫婦だなーとか、デュソリエはやっぱりイイ声してるなーとか、そんくらいです(何だこのやる気なしな感想は)
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ルパン('03フランス)-Jun 18.2005
[STORY]
泥棒だった亡き父の言葉通り、自らも怪盗となったアルセーヌ(ロマン・デュリス)は、警察に追われる中、幼なじみのクラリス(エヴァ・グリーン)に助けられ、身分を偽り幼い頃に住んでいた公爵家で暮らすことになる。ある晩、公爵が出かけるのを不審に思ったアルセーヌは後をつけ、カリオストロ伯爵夫人(クリスティン・スコット・トーマス)を助け、彼女とともに王家の財宝を探そうとするが、謎の男ボーマニャン(パスカル・グレゴリー)が立ちはだかる。
監督&脚本ジャン=ポール・サロメ(『ルーヴルの怪人』)
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。秋に一般公開が予定されている。
原作はモーリス・ルブランの『カリオストロ伯爵夫人』をベースになっていて、監督が『ルパン ビギンズ』と冗談で言っていたが、アルセーヌ・ルパンの少年時代も描かれている。
日本人としてはルパンというとやっぱり三世のほうを真っ先に思い浮かべてしまうし、クラリスやカリオストロという名前は宮崎駿のアニメしか分からない。ルブランの小説も『奇巌城』くらいしか読んでないし、それもあんまり面白くなかったんだよね。

正直言ってショボイ映画だと思ってたので、意外とお金掛かってるなぁー(日本円で製作費35億円)と驚いた。カルティエの協力もあってか装飾品も見事。それを豪華客船の中でアルセーヌが盗むシーンでは、ちょっと瞬きしてる間に女性たちの首や耳から消えてしまう、というもので面白い。その後、見つかったアルセーヌが走って逃げるところでは、走るフォームのDNAが確実に三世に受け継がれているなぁと感じ、思わず笑ってしまった(笑)

しかし素直に面白いのは前座のここまで。本編のカリオストロ伯爵夫人が出てくるところからは、『ヴィドック』みたいな現実から離れすぎた話になってしまって、ちょっとついていけなかった。もともとアルセーヌ・ルパンって理詰めの本格ミステリじゃなく、奇抜(悪く言えば強引)な話が多くて、そこが小説を読んでいても好みじゃない理由なんだけど、映像で見るとさらに滑稽に感じたりするわけ。例えば宝が見つかるところなどは小説なら想像力でいくらでもワクワクできるけど、映像で見ちゃうとちゃちでコントみたい。ハリウッドだったらツッコミ入れる隙を与えないようなものを作りそうだけど、これがフランス映画での限界かなぁ。まぁ本作はフランスで作るからこそ意義があるのだが。

一応物語は終了するけど続編を匂わせる、というんじゃなくて、明らかに続編をやらないとおかしいというところで物語が終わっている。個人的にはもうお腹いっぱいなので続編はあまり見たくないんだけど、やるんだったら見ないと気持ちが落ち着かない。作るなら早くして下さい。
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35歳とサムシング('04フランス)-Jun 17.2005
[STORY]
幼なじみの3人組はともに35歳。フロランス(アンヌ・パリロー)はコピーライターで、実業家の夫と子供とともにリッチな生活をしている。医者のマリー(ジュディット・ゴトレーシュ)は優しい夫と子供たちに恵まれているが、画家の夫は絵を売ろうとしない。ジュリエット(マティルド・セニエ)は独身で弁護士。男運がなく、ストレス解消に赤字になるまで買い物をしてしまう。そんな3人に転機が訪れる。
監督&脚本セシル・テレルマン(初監督作)
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。

ストーリーが思ってもみない方向へ飛んでしまうフランス映画が多い中で、本作は真っ当というか予想を外さない映画で逆に新鮮だった。見終わった後も気分がいい。これは是非とも日本で一般公開してほしいし、ハリウッドリメイクしても面白くなりそうな、そんな映画だった。

見てる間ずっと疑問だったのが、35歳という設定の3人の女優の実年齢だった。どう考えてもパリローは35歳じゃないだろーと首をひねり、ヤボだと思いつつも検索したら案の定、1960年生まれでした。ちょっと無理しすぎ(笑)もう少し若い人はいなかったんだろうか(でもニキータ復活かと思うようなアクション(笑)を見せてくれる)セニエくらいがちょうど35くらいだろうと予想してたらやはり1968年生まれ。ゴトレーシュは若そうと思ったらやっぱり1972年生まれ。パリローと1まわりも違うので並ぶと年齢差がはっきり分かってしまうのだが、製作者たちはあまりそういうところを気にしないのかな。私は気になりまくりでしたのに(笑)

ジュリエットのパートはちょっと『ブリジット・ジョーンズの日記』っぽいんだけど、3人のシチュエーションの中で一番面白かった。男運がなくて「運命の人に出会えない」と嘆いているわけなんだけど、「いるだろうすぐそこに!ほら目の前に!」といちいち心の中でツッコミ入れながら見てました。その相手、真面目な銀行員シモン(パスカル・エルベ)がイイ男なんです。カッコイイんです。惚れます。今後要チェックです(つーか去年の映画祭で来日してたのねー見たかったー)

マリーとフロランスは既婚者としての立場からの話なのだが、両者とも離婚の危機に直面する。ここで違う展開になるのも面白い。しかし夫も妻も誠実で互いの愛を確認して離婚を回避するカップルのほうは、夫側の気持ちも分かる丁寧な描写だったのに対し、修復できず離婚してしまうカップルのほうは妻側の方しか描かれなかったのが気になった。確かに夫は浮気してたので彼のほうが悪いに決まってるのだが、妻のほうも気持ちが冷めていたわけで、でも浮気が分かったら取り乱し、別れ話では彼女のほうが一方的に言うばっかり。こちらも夫側の気持ちが知りたかった。

でも私が今年見たフランス映画際の中では一番の作品でした。
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モン・アンジュ('04フランス)-Jun 15.2005
[STORY]
娼婦のコレット(ヴァネッサ・パラディ)は、見知らぬ女から電話を受け、息子を孤児院に迎えに行ってほしいと頼まれる。断れなかったコレットはビリー(ヴァンサン・ロティエ)という少年を引き取り、母親との待ち合わせ場所へ行くが一向に彼女は現れない。実は彼女は組織の大金を隠し持っていて、その鍵をビリーに預けていたのだった。
監督&脚本セルジュ・フリードマン(『橋の上の娘』『歓楽通り』の脚本を経て監督デビュー)
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第13回フランス映画祭横浜2005上映作品。タイトルの『Mon ange』とは英語でMy Angel、つまり「私の天使」という意味。コレットから見てビリーは天使ということかと思ってたけど、ビリーから見てコレットは天使という意味もあるな、と見終わって思った。

嫌々ながら少年とともに組織の男から逃げる娼婦と、彼女に恋するようになる少年、このシチュエーションはいい。でも逃避行が中途半端。組織の追い方が生ぬるい。『グロリア』バリのアクション(チラシより)はどこに行ったのさ?ラストはファンタジーみたいだし。ハリウッド的でもいいから、ちゃんと悪い奴との決着はつけなさいよ。

そんでもってパラディが怖すぎ。常に眉間にシワを寄せていて、見てるこっちまでしかめっ面になってしまうし(最後はその内容に顔をしかめたけど)好きな男を繋ぎとめるために、誰でもいいから男と関係を持って妊娠しようとするヤバイ女なのである。そこに一途な可愛らしさでもあればいいのだが、そんな魅力はゼロ。ドン引きです。ルコントみたいに女性を巧みに描写できる人なら、こんな設定の女でも見入ってしまうけど、そこまでの演出力はない。使われた音楽も音が大きすぎてうるさいだけだった。
ただビリー少年は、コレットに恋するうちにだんだん大人びた顔になっていく。こちらの変化はなかなか面白かった。舞台挨拶の時も照れちゃって可愛かったな。

一般公開はしないほうが・・・というか無理そう。いくらパラディが出ててもこれはちょっとね。公開するとしても、私が騙されたようにフランス版『グロリア』と宣伝するのはやめてほしいな。
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