Movie Review 2001
◇Movie Index

ザ・セル('00アメリカ)-Mar 25.2001
[STORY]
若い女性が誘拐され、次々と惨殺され捨てられる事件が起きていた。しかし手がかりが発見され、スターガー(ヴィンセント・ドノフリオ)という男が浮上する。早速FBI捜査官のノバック(ヴィンス・ヴォーン)らが彼の家を包囲するが、スターガーは意識不明の重態となっていた。ノバックは現在誘拐されている女性の居場所を探すため、他人の脳の中に入り込めるという心理学者キャサリン(ジェニファー・ロペス)を訪ね、スターガーの脳に入り込むよう要請する。
監督ターセム(初監督作)
−◇−◇−◇−
映像美を楽しむために見に行ったから細かいことにはこだわりたくないけど、その映像自体にあまり魅力を感じなかったので、ついストーリーにも文句を言いたくなった次第(以下ネタバレも含みます)

スターガーの脳の中映像が思ったよりも面白くなかったな。っていうかその前に漂白された死体と、痛々しい宙吊り(←これはマジですごい!思わず目を覆った)を見ちゃったので、かえって普通じゃん、と思ってしまった。衣装は良かったけどね。てゆーかロペスのシャツ一枚姿はサービスショットなの?(笑)

結局、ただ作りたい・見せたい映像を見せてるだけなのだ。スターガーの病気については、ちゃんと調べたり医者のアドバイスなどを元に脚本にしたんでしょうか。こういう罪を犯すようになってしまった理由や病気の原因もよく分からないし、生い立ちの描き方が安易すぎないか?脳の中を見せることによって彼という人間の複雑な心理を表現するのかと思いきや、これではセリフで「彼には虐待の過去があった」と説明されてるのと何ら変わりない。

まぁ、誘拐された女性の居所を探る、というのが第一の目的なわけで、犯人の心理など二の次なのかもだけど・・・ぶっちゃけた話、わざわざキャサリンが脳の中に入った意味さえなかったんですね(笑)そこにガックリきて脱力。こういうことをする前にもっとちゃんと調べろ警察&FBI!って感じっす。脳の中にさまざまなヒントが隠されていて、パズルのように1つ1つ組み合わせていくと女性の居場所が分かる、なんていう展開を期待してた私がバカだったか?しかも途中で様々なトラップが仕掛けられていて・・・なーんてこれだとTVゲームみたいか(笑)

でも彼女が少年時代のスターガーを救おうと奔走し、安らかに眠らせてあげるシーンは綺麗で切なかったな。極悪非道な殺人者でも、どこかにピュアな心があったのだ――ということなのね、と纏めてみようと思ったけど、これもまた安易だなぁ。
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ギター弾きの恋('99アメリカ)-Mar 20.2001
[STORY]
1930年。ギタリストのエメット・レイ(ショーン・ペン)は、ギターの腕は“世界で二番目”だが、酒飲みで女好きで金遣いが荒く、気まぐれで演奏をすっぽかしたりする自堕落な男だった。ある時、エメットは口のきけないハッティ(サマンサ・モートン)をナンパし、最初は遊びのつもりだったがいつしか同棲するようになる。しかしまたもや気まぐれに彼女を捨ててしまう。
監督&脚本&出演ウディ・アレン(『世界中がアイ・ラヴ・ユー』
−◇−◇−◇−
*ネタバレというわけではありませんが、先入観を持ちたくない方は読まないほうがいいでしょう。

私はこの映画を見る前に、予告は見たけれども解説や批評などは何も読まなかった。で、映画が始まっていきなりアレンやジャズ評論家などがエメットについて語り始めたので「エメット・レイって実在のミュージシャンだったんだー」と、それまでは架空の物語だと思っていたのにすっかり騙されてしまった。映画の作りもドキュメンタリー風だし、アレンもまるで懐かしむかのように語るんだもん。見終わって、ホームページや批評を読んで「やられた」と思ったよ。ジャズに詳しい人ならエメットなる人物がいないことなど最初から分かってるだろうが、なんの知識もない自分はアレンにとって格好のお客さんだったかもしれない。でも私はかえって騙されて良かったなぁと思っている(負け惜しみじゃないっすよ)

てなわけで、見てる最中はペンやモートンは再現VTRの役者として登場しているように思えてならなかったが、オリジナルキャラクターだとすると見方が変わってくるな。エメットの性格設定はありがちだけど、あのギターの弾き方を見て「本物のエメットの模倣してるんだな」などと思っていたので、何人か本物のギタリストを参考にはしただろうがそれをアレンとペンが作り出したのかと思うと本当にビックリしてしまう。身体の揺らし方とかリズムの取りかたが独特で、彼が弾いてる姿は見ていて飽きない。実際、ペンはちゃんと曲が弾けるほど練習したそうだ。

ちょっと切ない物語だけど、ベタベタしてなくてコミカルで後味は悪くなかった。かえってあっさりしすぎてて、もうちょっと何かあって欲しかったなぁと思うほど。すっかり騙されてたからさ、エメットの消息が不明だからこれ以上描けないのか、などと納得してたんだけどね(笑)

前記の通りペンはギターを弾く姿とダメ男っぷりがハマってたし、モートン演じるハッティのパクパク食べるシーンがすっごく可愛いくて、思わずぎゅーっとしたくなった。けど、エメットと結婚するブランチ役のユマ・サーマンはあんまりピンとこなかったな。ハッティだけ別格として描いてたからだろうが、他の人が演じても構わないような印象。
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サトラレ('01日本)-Mar 17.2001
[STORY]
幼い頃に両親を飛行機事故で亡くし、祖母キヨ(八千草薫)と2人暮らしをしている里見健一(安藤政信)は“サトラレ”という、周りの人々に心の声がすべて聞こえてしまう特殊な能力を持っていた。しかし彼は自分がサトラレであることを知らない。サトラレは天才的な知能を持っているため国家の財産として徹底的に保護されているのだ。そんな彼を医者から新薬開発員へと転職させるため、精神科医の小松洋子(鈴木京香)が派遣された。
監督・本広克行(『スペーストラベラース』
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前半はサトラレの特徴と法律の説明をし、里見健一が暮らす環境や置かれている立場を丁寧に描いていく。が、この描き方がヘタだなーと思った。映像を見ているというよりも説明書か何か読まされてる感じがして非常にしつこい。このしつこさは他のシーンでもちょこちょこ感じてたんだけど、丁寧にやらないと観客がついてこれないと思ったんだろうか。
しかし、健一に好きな女性(演じるのは内山理名)を諦めさせようとする計画部分では本領発揮。本広テイストが存分に出ていて面白い。ワタシ的にはここが一番の見せ場だったように思う。後半は泣けるものの、それは監督の手腕というより役者のほうに部があったと思うんで。

サトラレという存在と、彼らを守る法律と、サトラレの心の言葉が聞こえることでストレスを感じる周囲の人間たち。サトラレがいる世界を一見うまく纏めているように見えるが、はっきり言えばテーマを消化しきれていない。深く掘り下げようとすれば、2時間程度の映画では決して全てを描くことはできないものだ。ラストを迎えても実は一番解決しなければならない問題を避けて、うわべの綺麗な部分だけを見せて(イヤな書き方だけど)感動させようと仕組んでいる。でもこの映画の流れやテンポを考えると、ここは素直に騙されておくのが得策なんだろう。映画の続編は多分ないだろうしねぇ。でもそうなると無人島のダークなシーンがしこりみたいになっちゃうんだな。難しい。どこで線を引くかずいぶん悩んだんじゃないかな。ま、これで納得できない人は原作マンガを読んでさらに深い世界へと入っていくべきだろう。

登場人物で特筆すべきはやはり八千草薫だ。何でこの人は歳をとってもこんなに上品で綺麗なんでしょう。上品といえば鈴木京香も。浴衣はもちろんだけど水着姿でもどこか品がありますな。それに比べて内山理名はダメだ(元々この人苦手なんだけど)浴衣姿が洋服の時よりブチャイクなんすよ。びっくりしました。しかしサトラレ君はそんな彼女を見て「カワイイ」と心の中でつぶやく(周りにいる全員に聞こえてる)んだが、はっきり言って「趣味悪いぞー」と彼の心にツッコミ入れたくてしょうがなかった。
小木さんは相変わらずカッコイイっす。職務に忠実なSPでありながら、肝心なところでは情にもろくて素敵だ。某ドラマですっかり有名になった田中要次もシブくていい味を出している。
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キング・イズ・アライブ('00デンマーク=スウェーデン=アメリカ)-Mar 17.2001
[STORY]
エメラルド・シティを目指して砂漠を走るバス。しかしコンパスが壊れ、ガソリンも切れたため、乗客たちは廃墟となった村で助けが来るまで待つこととなった。その間、乗客の1人ヘンリーはシェイクスピアの「リア王」の脚本を書き、ほかの乗客たちと稽古を始める。
監督&脚本クリスチャン・レヴリング(初監督作)
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"ドグマ95"の第4作。バスの乗客ジーナを演じたジェニファー・ジェーソン・リーが、本作で東京国際映画祭の主演女優賞を受賞したが、主役といっていいのかね?これは、という感じ。演技がどうこう言うんじゃなくて、誰が主演とか助演とかそういう位置付けができない、みな平等なポジションにあった映画だったと思うのだが。彼女も副賞の真珠ネックレスを見て首を傾げたかもしれない(笑)

廃墟で立ち往生してしまった乗客たちには、手持ちの水と村に残っていた古いニンジンの缶詰しかない。これを巡って争うのかと思いきや(ヘンリーがそうナレーションしてたからさぁ)意外とサバイバルさは希薄で、本能的な争いよりもむしろ精神的なせめぎ合いが描かれていた。そこが面白いと思える箇所もあったが、生き延びるということへの執着心を見せつけられるほど恐ろしいものはないので、このあたりがメインでなかったのはむしろ拍子抜けだったな、私は。その分、気持ち的に楽になっちゃったのかなぁ、途中でかなり退屈してきてしまった。

あと『リア王』という話をほとんど知らないからいけなかったんだろう。彼らが芝居としてやっていることが、現実の彼らとシンクロしていくんだろうな、とは思ったけど、元の話が分からないんだから面白いハズもなく、そんな悠長に芝居なんかしてていいの?などと心配までしてしまったほど。だってセリフなんか喋ったら体力は消耗するし余計に喉が渇いちゃいそうじゃない。・・・こんな風に考えてる私がこの映画を理解できるわけねーんだよぉー!(ついに逆ギレ)
ま、何を伝えたいかは分かったんですけどね。

しかしこういう作品を描くのに、自然光を利用しデジタルビデオカメラを使うといったドグマのやり方は合ってる。女優も適度に汚く見えて映像的にリアルだった。
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小さな目撃者('99オランダ=アメリカ)-Mar 15.2001
[STORY]
アメリカの製薬会社に勤めるウォルター(ウィリアム・ハート)は、妻キャスリン(ジェニファー・ティリー)と娘メリッサ(フランチェスカ・ブラウン)を連れてアムステルダムにやってきた。3人はホテル・ヨーロッパにチェックインしたが、この日は有名なロック歌手も滞在していて大騒ぎ。そんな中、病気のせいで口がきけないメリッサは、ホテルの中で迷子になり偶然にも殺人事件を目撃してしまう。
監督&脚本ディック・マース(『アムステルダム無情』)
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長崎ハウステンボスにあるホテル・ヨーロッパの本家本元で繰り広げられるサスペンスと聞いて、内容的には全然期待してなかったんだけど、ホテル見たさに映画を見た。・・・長崎のホテル・ヨーロッパ、すっごく綺麗だったんだよね。泊まりたかったさ(私はその時ホテル・デンハーグに泊まった。ここもいいホテルでしたが)でも映画で見てみて、長崎のほうがやっぱり綺麗だったかも(築年数違うからしょうがないけど)と思った。

そんな邪な理由のみで行った映画だったのに、ストーリーもけっこう面白くてかなり引き込まれた。思わぬ拾い物をしたな、という感じ。耳は聞こえるが喋ることができないメリッサが殺人現場を目撃し、犯人から追いかけられる。この犯人が異常にしつこくてね、そのしつこさが災いしてもっと悪い方向へと進んでってしまう。これ言ったらおしまいだけど、もしメリッサを追いかけてなければ、たった1人殺しただけで済んだのにね。けど映画的には最高でした(笑)

展開からすると『ホームアローン』なんだけど、こちらのほうが恐いしハラハラするし、メリッサの賢さには感心するばかり(カルキン少年の場合は“ずる賢く”て好かんかった)しかも何度も彼女はヒドイ目に遭っちゃうんだもんな(カルキン少年の場合は無傷だったので好かんかった)←こればっか(笑)
また「逃げる・追いかける」という軸のまわりにアムステルダムの風景や治安の悪さをうまく見せていて、行きたくないけど行ってみたい街だなーと思わせる。オランダ人だからこその複雑な思い入れがよく分かる。なんか誉めてばっかりだけど「なんかへんだぞ」と思うところもちょこちょこあった。でも引っかかってもすぐに流せるくらいの勢いがありました。

ハートとティリーのキャスティングに関しては「なんで?」って感じだけど、ハートがカート・ラッセルばりの頑張りを見せてくれたのがすごい笑えた。いつどこであんな力を身に付けたんだろう(笑)そこがこの映画を気に入った理由の1つでもある。
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