Movie Review 2006
◇Movie Index

親密すぎるうちあけ話('04フランス)-Jun 18.2006
[STORY]
税理士のウィリアム(ファブリス・ルキーニ)は父親から受け継いだオフィスで税金の相談を受ける毎日。ある日、約束もなしにアンナという女(サンドリーヌ・ボネール)がウィリアムを訪ねてくる。そして夫とうまくいっていないと話し始めた。彼女は同じフロアのモニエ医師の診療室と間違えていたのだ。しかし、ウィリアムはそのことを言うタイミングを逃し、彼女の話を聞いてしまうのだった。
監督パトリス・ルコント(『歓楽通り』
−◇−◇−◇−
第54回ベルリン国際映画祭出品作品。
ボネールは『仕立て屋の恋』以来15年ぶりのルコント作品出演だそうだが、私はルコント映画の中で『仕立て屋』が一番好きなんだけど、ヒロインは一番嫌いだった。本作の役も同じくらいムカつく役かも、と腹立たしくなったら嫌だと思う反面、主人公がどれくらい振り回されるのか楽しみでもあった。

そしてやはりアンナは自分勝手な女だった(笑)勝手に勘違いして勝手に喋りまくり、ウィリアムが税理士と分かると勝手に怒って勝手に出て行く。そして今度は税理士と分かっていながら勝手にやってきては勝手に喋る。案の定、ウィリアムは振り回されてっぱなしだった。それを何だかんだ言っても楽しんでいた私。

アンナが相談する夫の話はすべて本当なのか?それともすべてデタラメで嘘なのか?夫が本当にいるのかも分からない。喋る内容がコロコロ変わるのでどれも信じられなくなってくる。それに過去のルコント作品を見ている人なら当然疑うでしょう(笑)ただ話をしているだけなのに謎に引き込まれてしまい、ミステリ映画を見てるようだった。

そんな謎の女の対応に困りつつもほっておけないウィリアムは、アンナが本来カウンセリングを受けるはずだった医師に相談をする。しかしさすが精神科医、これもカウンセリングだと言ってちゃっかりウィリアムに受診料を要求する。ええっ?!と思いながら払ってしまうウィリアムの人の良さがいい。アンナはそんな彼だから話しやすいのだろう。彼の元妻だって何かあるとウィリアムのところに来るし、頼りないけど落ち着ける人なんだな。でもお人よしだからこそ悲惨なことにならなきゃいいなぁと映画ながらすごく心配してしまった。過去のルコント作品を見ている人ならやっぱり心配してしまうはず(笑)

まぁ結局そんな心配は取り越し苦労だったわけで(おっとネタバレだわ)悲しい話はイヤと思ってたのに、そうでないと物足りないと思ってしまうのは欲張りかなやっぱり(笑)でもラストシーンが綺麗だったので概ね満足。地味だったアンナが花柄のワンピースを着るようになり、ウィリアムの部屋も彼女に似合うインテリアの部屋になるところは、やっぱりおしゃれでフランスらしい。エンドクレジットの表示のしかたといい、すべて計算した上で作っているというのがよく分かった。
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インサイド・マン('06アメリカ)-Jun 11.2006
[STORY]
NYのマンハッタン信託銀行で強盗事件が発生。犯人グループは銀行にいた50人もの人々全員に自分たちと同じ服を着せ、人質と見分けがつかないようにした。捜査を担当することになったNY市警のフレイジャー(デンゼル・ワシントン)は、何とか突破口を見つけようとするが、犯人グループのリーダー、ダルトン(クライヴ・オーウェン)は常に冷静で膠着状態が続く。そこへ弁護士のマデリーン(ジョディ・フォスター)がやってきて、犯人グループに会わせるよう要求してくる。彼女は銀行の会長ケイス(クリストファー・プラマー)からあることを依頼されていた。
監督スパイク・リー(『25時』)
−◇−◇−◇−
スパイク・リーというと人種問題や政治を扱った作品が多くて、今までは触手が動かない監督だったんだけど(唯一見たのは『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』の「ゴアVSブッシュ」だけ)本作は話が面白そうだったし、クライヴ・オーウェンも出てるしってことで見てみました。

ハリウッドの娯楽サスペンスというスタンスで見ていると足元をすくわれる作品だった。私は最初なかなか映画に集中できなくて(斜め前にいた男が携帯をパカパカやりやがってたせいと、字幕の誤字(?)「野次馬」だったり「弥次馬」だったりでどっちなのよ?と戸惑ったせい)人質になった人々の顔をロクに覚えないまま話が進んでしまって後で後悔した。人質も重要だったのだ・・・これは見てない人にはヒントだわね。

犯人たちの意図を警察だけでなく観客にも隠し、悟られないよう気をつけて演出しているので、見ているほうは非常にもどかしく一度見ただけで理解するのは難しいだろう。見終わってからも分からない箇所があってスッキリはできない。「これ以上は言わないけど、あとは察して下さい」という表現も多いので説明不足と感じる人も多いだろう。

私もすべて分かっているわけじゃない。でも私は安い人間なので(笑)
(ここからネタバレ)
最初のダルトンの独白は独房じゃなくて壁の奥で喋ってたんだ!
「トイレが掘れた」ってジョークかと思ったら本当だった!
犯人が4人じゃなくて5人だった!(ここが一番オドロキ(笑))
しかも最初から銀行にいた奴も犯人だった!
タイトルの意味ってこういうことか!
(ところでこのタイトル、二重三重の意味があって、ひょっとして警察の中にもInside Man(内通者)がいたかも?と思わせるシーンもあるね)
(ここまで)
と、いちいちビックリし感心し、楽しませてもらった。警察の作戦をことごとく見破る犯人たちの頭の良さや、彼らの動機が二転三転するところも面白かった。

強盗だけでなく、フレイジャーやホワイトも正義感溢れるキャラクターじゃないところが良かった。2人とも正義より自分の利益になるほうを選択する野心家だ。特にフォスターはハマってたな。男から罵られても鼻で笑える女のほうが本来の彼女に合ってるんではないかなーなんて思ったり。あとオーウェンはやっぱりステキだった(はぁと)

オープニングとエンディングにインド音楽が流れる。すごく聴きやすいので『ムトゥ 踊るマハラジャ』の人(A・R・ラフマーン)っぽいと思ったらやっぱりそうだった。映画『ディル・セ〜心から〜』(未見)のテーマ曲“チャイヤ・チャイヤ・チャイヤ”だそう。オープニングで聞いた時には何でこの曲を?と思ったけど、エンディングで聞いた時にはピッタリだと思うようになった。さまざまな人種が暮らすNYが舞台の本作と、インド音楽といっても古来の楽器などではなくシンセや打ち込みを多用するラフマーンの曲が合ってたんだろうなぁ。監督本人のチョイスか分からないけどセンスあるな。

ところで『TRICK 劇場版2』とよく似た(というかほぼ同じ)ネタがあったんだけど偶然でしょうか。日本での公開日が一緒なのも偶然でしょうか。
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TRICK 劇場版2('06日本)-Jun 10.2006
[STORY]
相変わらず家賃が払えない貧乏マジシャンの山田奈緒子(仲間由紀恵)の元に、物理学教授の上田次郎(阿部寛)がやってくる。10年前、富毛村という小さな村から少女が行方不明になったが、最近になって筐神島というところにいることが分かった。その少女を救い出せば謝礼が貰えるというのだ。そこで2人は筐神島へ向かうが、その島には筐神佐和子(片平なぎさ)という霊能力者が信者とともに暮らしていた。奈緒子は彼女の起こした“奇跡”がすぐにおかしいと気付く。
監督・堤幸彦(『TRICK 劇場版』
−◇−◇−◇−
2000年7月から放映された人気テレビドラマシリーズの劇場版で、今回がパート2。順番としては、テレビドラマのパート1とパート2、劇場版、テレビドラマのパート3、2時間スペシャル、そして本作となる。どうやら今回で最後、らしい。

私はこのシリーズが好きで毎回欠かさず見ているけれどDVDで何度も見返すほどではなく、忘れてしまっている話も多い。それでも本作の設定を見て、どこかで見たことがあるような気がしてならないなぁ・・・とずっと思っていた。家に帰ってきて調べてみたらやっぱり今までにやった作品のネタが数多く含まれていたようだ。最後だから集大成の意味なのか、それともネタ切れなのか。
こうして調べてみると、宗教団体の女性教祖に男性の側近がいて、というパターンが多いね。本作もだけど、記念すべきパート1の第1話(母之泉)と、パート2と(100パーセント当たる占い師)そして2時間SPもそうだった。特に2時間SPと本作はよく似てると思った。
それにしても(終わるのが本当だったら)終わる前に奈緒子の父親のことをやってほしかったな。それと主題歌はやっぱり鬼束さんじゃなきゃダメだなー。SPと本作で同じ歌が使われてたけど全く印象に残ってない。鬼束さんの情念をこめた歌が懐かしい・・・。

あとは前作と同じくツボネタを箇条書き。
 ●ブックオフ(セリフの中では一番面白かった)
 ●片平なぎさの白手袋脱ぎ(ヒロシ〜)
 ●ゴムボート引き上げの一連のシーン(笑いが止まらず)
 ●そして上田の白ブリーフ(ごめん、ときめいて星が出た)
 ●貞子(これ最高)
 ●ゾーーーーン!(なつかしい)

連呼されまくってた「よろしくね!」はちょっとしつこかった。「イナバウアー!」も寒かったし、目に“真実”もいまいち。『ワンピース』は読んだことないのであのネタもよく分からなかったな。

前にラブはいらん、と書いたけど最後の2人のやりとりを見てアリだと思った。というかくっついてヨシ。早く長野に行ってきなさい。
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プルートで朝食を('05アイルランド=イギリス)-Jun 10.2006
[STORY]
1970年代のアイルランドの小さな町。 生まれてすぐに教会の前に捨てられた赤ん坊パトリックはブレイデン家に養子となるが、ドレスや化粧が大好きで、自分を“キトゥン”と呼ぶようになる。ある日、義母とケンカをしたキトゥンは実の母親を探しにロンドンへ向かう。そしてミュージシャンやマジシャンと出会ったり、テロの容疑者になったりとさまざまな経験をする。そしてストリッパーになったキトゥンの元に、彼が捨てられた教会の神父(リーアム・ニーソン)が訪ねてきて母親の居場所を知らせる。
監督&脚本ニール・ジョーダン(『ことの終わり』
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原作はパトリック・マッケーブの『ブレックファースト・オン・プルート』。マッケーブは本作の脚本も担当している。
映画はキトゥンが書いた36章からなる物語風日記を再現している形式で、今までも『おわらない物語―アビバの場合』『僕の大事なコレクション』など同じ形式の映画があるが、章の数が多くてエピソードがすぐに切り替わってしまうのが私は好きじゃなかった。さまざまな人々と出会うのはいいんだけど、別れのほうがロクに描かれないまま章が変わってしまうので「このあとどうなったの?」と気になってしまって、なかなか新しい章へ気持ちを切り替えることができなかった。それに作るほうもぶった切ったほうがラクだろうなーなんて意地悪な見方をしてしまった。

とはいえ、他の作品もそうだけど章立てになっているだけでファンタジーな雰囲気になるものだね。トランスジェンダーであることで非難されたりIRAのテロに巻き込まれたりと、描きようによっては悲惨な話になるのに、キトゥンの前向きな性格と、甘え上手!(見習いたいと思った(笑))なところも手伝って可愛らしいファンタジーになっている。キトゥンに空想癖がある設定も大きかった。そういえば『ぼくのバラ色の人生』も空想癖のある女の子になりたい男の子が主人公だったな。自分の中にある違和感をぬぐい去れずに現実逃避してしまうのかも。ここは自分の居場所じゃないって。キトゥンも自分の居場所とアイデンティティを確認したいためもあって母親を求めていたんだろう。
途中、IRAのテロリストに間違えられた時、独房が落ち着くのでずっといさせて欲しいと刑事に訴えるシーンがある。ここは切なかったな。現実から逃れたいと思う気持ちが強くなればなるほど、誰とも関わらない場所を求めてしまうのかもしれない。最後は居場所を見つけることができて本当に良かったな。

キリアン・マーフィーは『バットマン ビギンズ』で一番印象に残る役を演じていたけど、本作ではまた別人のようだった。彼のことを知らなかったらホンモノかと思ってしまったかも。すごい美人に見える時もあれば、ROLLY?!(旧ローリー寺西)な時もあって、それが魅力的だった。オープニングとエンディングで流れるルーベッツの「シュガー・ベイビー・ラブ」がキトゥンのテーマ曲という感じでピッタリ。今までは男子シンクロのテーマ曲って思ってたけどね(笑)
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ステイ('05アメリカ)-Jun 3.2006
[STORY]
ニューヨーク。精神科医のサム(ユアン・マクレガー)は、病気になった前任者からヘンリー(ライアン・ゴズリング)という患者を引き継いだ。ヘンリーは未来を予告する能力があるらしく、天気を言い当てたり自分が3日後の21歳の誕生日に自殺すると予告する。過去に自殺未遂経験のあるサムの恋人ライラ(ナオミ・ワッツ)は、サムから話を聞いてヘンリーが気になり始めるが・・・。
監督マーク・フォースター(『ネバーランド』
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宣伝の“この映画の謎は、頭で考えても決して解けない”と“あなたの感覚を試す感動のイリュージョン・スリラー”という言葉に引っかかって初日に張り切って見てきました。ちなみに劇場で前売りを買ったのでイリュージョンキューブ(ルービックキューブ)も持ってます(笑)

たしかに頭で一生懸命考えるような謎じゃなかった。あ〜そういうことでしたか、で終わってしまう。別に推理が必要な話じゃないのだ。公式サイトにはご丁寧に鑑賞した人向けのページがあって、本編終了後に出てくるキーワードを入れると謎の答えが出てくる。でもこれも見たからといってどうなるもんでもないし、むしろ親切すぎて想像したり考える余地を与えなくなってしまうじゃないの、と思った。それ以上広げようがない。だから、なるほどね〜で終わってしまう。

例えば、ナオミ・ワッツ繋がりになるが『マルホランド・ドライブ』も不可思議な出来事が起こる作品だったけど、あれは映像や小物からいろいろ想像を膨らませることができた作品で、なおかつ悲しみが伝わってくるので後を引く映画だった。
この映画も悲しいストーリーの映画なのだが、映像からはそれが伝わってこない。役者の演技は悪くないんだけど、映像に凝りすぎているので役者にあまり目が行かなくなってしまうのと、演出もわざとか分からないが常に冷静で距離を置きすぎていると感じた。映像そのものは面白いんだけどね。ドアや階段の使い方が上手いと思ったし、窓越しの眺めも計算されていて感心する。ただ双子を出すのはやりすぎだったかな。

この監督は見るたび違うジャンルの映画を撮っているが、職人的な監督なのかな?それとも本来撮りたい作品(が何なのか分からないけど)の合間に依頼されたものを監督しているのか?これだけ違う色が出せるとは、これからも楽しみだ。ただ、今のところどれもいま一歩足りない感じがするんだな・・・。
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