Movie Review 2003
◇Movie Index

女はみんな生きている('01フランス)-Nov 16.2003
[STORY]
平凡な主婦エレーヌ(カトリーヌ・フロ)は、会社を経営する夫ポール(ヴァンサン・ランドン)からはすでに女として見てもらえず、一人息子からは鬱陶しく思われている。ある夜、ポールとエレーヌは車で出かける途中で、助けを求めてきた娼婦を無視してしまった。翌日、気になったエレーヌは病院に問い合わせ、入院しているノエミ(ラシダ・ブラクニ)を見つける。彼女は一時危篤状態に陥り、現在も意識不明だった。エレーヌは彼女を必死に看病しはじめた・・・。
監督&脚本コリーヌ・セロー(『赤ちゃんに乾杯!』)
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第27回セザール賞に作品、主演女優、助演女優、脚本でノミネート。ブラクニが有望若手女優賞を受賞。フランスでは130万人を動員する大ヒットとなった。

女性による女性のための映画、といって差し支えない映画だと思う。笑いあり、サスペンスありで、男性が見てもじゅうぶん楽しめる作品だとは思うけれど、この映画に登場する男性がみんなダメ男ばっかりなので、ちょっとムカつくかもしれない(笑)でもすべての女を称えるようなフェミ映画でもない。夫や息子だけでなく、息子のガールフレンドもまたエレーヌに対して家政婦のようにしか思ってないことを言うシーンがあるんだけど、これには参った。非常によく練られた脚本に感心した。

マフィアたちによって暴行され、意識不明となったノエミをエレーヌが介護する前半と、彼女が目を覚まして何故マフィアに狙われているのかが明らかになる後半では全く別の映画を見ているかのようで驚かされる。前半はエレーヌが主役であり、後半はノエミが主役となるのだ。こういう構成だと知らなかったのでまたまた感心してしまったのだが、でも私はずっとエレーヌ中心で見てきたので、後半ノエミ中心になった時には正直戸惑ってしまい、ちょっとガッカリしてしまった。もともとカトリーヌ・フロが好きだっていうのもあるんだけど、後半大人しくなってしまったのが残念でならない。もっと活躍して欲しかったなぁ。
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キューティ・ブロンド/ハッピーMAX('03アメリカ)-Nov 9.2003
[STORY]
ハーバードを卒業したエル(リース・ウィザースプーン)は大手法律事務所の一員となり、エメット(ルーク・ウィルソン)との結婚準備にも追われていた。結婚式には愛犬ブルーザーのママも呼ぼうと探偵に居場所を依頼したところ、化粧品メーカーの実験動物となっていたのだ。エルは動物実験を禁止する法律を作ろうと事務所に提案するがクビになってしまう。諦めきれないエルはワシントンへ向かい、ラッド下院議員(サリー・フィールド)のスタッフとなる。
チャールズ・ハーマン=ワームフェルド(『Kissing ジェシカ』
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『キューティー・ブロンド』の続編。前作はアマンダ・ブラウンによる原作があったが、本作はオリジナルで監督も交代。キャストは同じだが、親友となったヴィヴィアン(セルマ・ブレア)は登場しない。製作総指揮はウィザースプーン本人が担当している。

前作は何度見ても面白くて大好きで、続編もアメリカじゃ人気があったというから楽しみにしてたんだけど、やっぱり裏切られた。何だこの映画は。やっぱり続編に当りナシかよ!安易に続編を作るとこうなる、という典型ですなぁ。

まず大学生の時よりもエルが子供っぽくてついていけなかった。おバカじゃなくて幼稚なの。それは本人だけじゃなく、議員たちも幼稚で見てられなかった。エルの友人たちがダンスする場面では席を立ちたくなったほど(ケチなので大抵どんな映画でもしっかり見るんだけど)おまけにエメットが優しいだけのつまらない男になってしまった。ただエルを励ますだけ。あとは彼女の言いなり。心なしかウィルソンの演技も手抜きに見えたのは気のせいだろうか。

面白いところもあることはあった。ベルサーチの会員カードのところや、ブルーザーの秘密とかね。そして議員事務所のメンバーたちが、いつのまにかバカしていたエルの味方になってしまうところ。どんなにエルのことを嫌っている人がいても、彼女自身は絶対に相手を罵ったり嫌ったりはしない。何不自由なく育ったお嬢様ゆえの大らかさなんだろうけど、やっぱりそこはスゴイと思う。
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グッバイ、レーニン!('03ドイツ)-Nov 9.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
東ドイツ、ベルリン。アレックス(ダニエル・ブリュール)の父が西側に亡命し、母(カトリーン・ザース)はそれを忘れるために東ドイツ愛国主義を貫いていた。しかし1989年、母が心臓発作で昏睡状態になっている間にベルリンの壁は崩壊し、東ドイツは瞬く間に資本主義の波にのまれて様変わりした。8ヶ月後、母は目を覚ますが、医者から強いショックを与えてはいけないと忠告を受ける。アレックスは母に崩壊のことを隠そうとする。
監督&脚本ウォルフガング・ベッカー(短編やTVドラマを経て長編デビュー)
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東京国際映画祭2003特別招待作品。2004年春公開予定。ドイツでは大ヒットを記録し、ドイツアカデミー賞で7部門を受賞した。アメリカのアカデミー賞でのドイツ代表映画となったので、外国語映画賞ノミネートもありかも?!

母親に東ドイツ崩壊を知らせないよう、息子アレックスは周りの人々を巻き込みながら奔走する。そんなの無理でしょう?と思うのだが、都合のいいことに(?)母は寝たきり。部屋を以前のように模様替えし、崩壊前の時に着ていた服に着替え、東ドイツ製の食料品を探して食べさせる。母のいる部屋だけ東ドイツに戻してしまうのだ。最初はそんなシーンに素直に笑ってたんだけど、だんだん必死にウソをついていくアレックスを笑えなくなってしまった。周りが迷惑だと思っていることさえ続けるのはヒドイな、と引いてしまったんだよね。そこがドイツ人らしい生真面目さなのかもしれないが。彼のお母さんはさらに輪をかけて生真面目な人だったので、親子2人のシーンは他に比べて重たかった・・・。

アレックスが友人のデニスくらい軽やかで可愛かったら、もっと彼を応援できたかもしれない(テーマとも外れるし主役らしくないけど)もうデニス最高です。母がテレビが見たいと言い出して困ったアレックスは、映画作りの夢を持つデニスに相談するんだけど、デニスはビデオを駆使して、時には彼自身がニュースキャスターやレポーターに扮していろんなニュースを捏造していく。このシーンは本当に面白かった。たぶん監督は、一番デニスに近い人なんじゃないかと思った(監督は西ドイツ生まれ)撮ってるときもすごく楽しかったんだろうなぁ。

そんなわけで大好き!と言える作品ではなかったんだけど、東西ドイツの統一という大きな歴史を、一家族のアパートの一室という小さなところから描いたアイデアが素晴らしかった。また、窓の外では否応なく西側の波が襲ってくる。それを巨大なコカ・コーラ広告や空飛ぶレーニン像で表現し、それと人間とを対峙させるシーンは映像的にもとても面白かった。見て損はない作品だ。
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10ミニッツ・オールダー イデアの森('02イギリス=ドイツ=スペイン=オランダ=フィンランド=中国)-Nov 8.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
『水の寓話』 監督ベルナルド・ベルトルッチ(『シャンドライの恋』
インド人青年は老人から水を汲んできてほしいと頼まれ川に行くが、そこでイタリア人女性と出会い、そのまま彼女と結婚してしまう。
『時代×4』 監督マイク・フィギス(『ワン・ナイト・スタンド』
『HOTEL』でも使われた4分割スクリーンに、10分ワンカットの映像が映し出される。
『老優の一瞬』 監督イジー・メンツェル(『つながれたヒバリ』)
94年に亡くなった俳優ルドルフ・フルシンスキーが出演した映画のシーンを10分に纏めた作品。
『10分後』 監督イシュトヴァン・サボー(『メフィスト』)
中年女性が夫の誕生祝い準備をしていると、友人たちに抱えられて泥酔した夫が帰宅し、大暴れする。
『ジャン=リュック・ナンシーとの対話』 監督クレール・ドゥニ(『ガーゴイル』)
哲学者ジャン=リュック・ナンシーが若い女性と列車の中で対話する10分間。
『啓示されし者』 監督フォルカー・シュレンドルフ(『ブリキの太鼓』)
過去の現在、現在の現在、未来の現在を、ある視点から描いた作品。
『星に魅せられて』 監督マイケル・ラドフォード(『イル・ポスティーノ』)
宇宙飛行士が80光年の旅から帰還した。彼自身は10分しか歳を取っていなかったが、地球は西暦2146年だった。
『時間の闇の中で』 監督ジャン=リュック・ゴダール(『愛の世紀』)
ゴダール自身の作品とパリゾーニやホロコーストの映像を交えて、愛や永遠など10のエピソードの最後の瞬間を描いていく。
−◇−◇−◇−
東京国際映画祭2003特別招待作品。世界的に有名な8人の監督がそれぞれ10分間の作品を制作したコンピレーション映画。

こちらも1つずつ感想を。

『水の寓話』
オチ(?)は最初から読める作品だが面白い。しかし元ネタであるインドの寓話がどんな話なのか、そちらが気になる。

『時代×4』
うーん。よくわかんない。ただ、『HOTEL』は見に行かなくて良かったなぁと(笑)

『老優の一瞬』
若くて美しい頃のフルシンスキーから、老けて太って痩せてシワシワになるまでの映像を繋いでいった作品。すごい面白かった。また編集がうまいんだ。若い頃は女性とのシーンを多用して、太った時には嫌な奴そうなシーンばかり。彼が出ている映画は1本も見たことはないんだけど、これを見ただけで敬意を持ってしまいそうになる。

『10分後』
10分後には何が起こるか誰も分からない、ということを描いた作品。しかし夫がなぜ泥酔するほど飲んだのか謎なのが気持ち悪くて仕方がない。

『ジャン=リュック・ナンシーとの対話』
理屈っぽくて流し見。ラストにオチ(?)があったからまだいいけど。

『啓示されし者』
これも理屈っぽい作品になりがちになるところを、シチュエーションと独特のカメラアングルで面白く見れた。オチ(?)にびっくり。

『星に魅せられて』
計15本の中で一番素晴らしいと思った作品。きちんと物語が構成されていて、役者の演技も良く、近未来のシーンがCG使いまくりじゃなくてレトロなSFの世界みたいなのも好みだった。最後ちょっと泣きそうになったしなぁ。

『時間の闇の中で』
「どこがいいのかさっぱり分からないけど、これがゴダールなんですね。ありがたく頂戴致します」とブランド負けしたような気持ちになる作品。騙されてるような気もするのだが、その迫力に圧倒された。

というわけで、ワタシ的には『老優』と『星に魅せられて』の2本がお気に入り。こちらのほうが好きかそうじゃないかがはっきりしてるというか、理解できたか理解できなかったかの違いがはっきりしていた。ちなみに本作では作品と作品の間でチェロの音が使われている。
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10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス('02イギリス=ドイツ=スペイン=オランダ=フィンランド=中国)-Nov 8.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
『結婚は10分で決める』 監督アキ・カウリスマキ(『過去のない男』
刑務所を出た男が、女にプロポーズをしてモスクワへ向かうまでの10分間。
『ライフ・ライン』 監督ビクトル・エリセ(『マルメロの陽光』)
1940年のスペイン。家族がみなそれぞれの仕事をしている昼下がり。そんな中、眠っている赤ん坊のお腹に血が広がっていく。
『失われた一万年』 監督ヴェルナー・ヘルツォーク(『神に選ばれし無敵の男』)
アマゾン奥地に住んでいたウルイウ族を描いたドキュメンタリー。
『女優のブレイクタイム』 監督ジム・ジャームッシュ(『ゴースト・ドッグ』)
撮影中の女優に10分間の休憩が与えられた。しかし彼女の元にはスタッフが入れ替わり立ち代りやってくる。
『トローナからの12マイル』 監督ヴィム・ヴェンダース(『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』
間違えてドラッグを大量に摂取してしまった男が12マイル先の診療所を目指して車を走らせる。
『ゴアVSブッシュ』 監督スパイク・リー(『サマー・オブ・サム』)
民主党の大統領候補だったゴアのスタッフたちが、2000年のブッシュとの選挙戦を振り返る。
『夢幻百花』 監督チェン・カイコー(『キリング・ミー・ソフトリー』
高層ビルが立ち並ぶようになった北京。運送屋はある男から奇妙な引越しを頼まれる。
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東京国際映画祭2003特別招待作品。世界的に有名な7人の監督がそれぞれ10分間の作品を制作したコンピレーション映画。

とりあえず1つずつ感想を。

『結婚は10分で決める』
『過去のない男』の撮影の合間についでに撮っちゃいました、ってのがまるわかり(違ってたらゴメン)なキャストそのままの物語。たった10分であろうとも、いつもの寡黙なカウリスマキ映画を貫いているところがさすがというべきか。

『ライフ・ライン』
光の使い方が申し分ない美しい作品。仕事をする人々を描写するシーンのゆったりとした時間の流れと、危機にさらされた赤ん坊を映す時間の流れ、同じ数分でもこんなにも違うものかと驚かされる。また危機が去った後の、忍び寄る戦争の影を描写することで物語をキュッと引き締めている。

『失われた一万年』
絶滅の危機に瀕した動物のドキュメンタリーはよく目にするが、民族(?)の映像は初めて見た。かつての生活を語るシーンでの、彼らの服装が印象的。生活が楽になったことは彼らにとって良かったのか、そうではなかったのか、10分では少々物足りない題材だったな。

『女優のブレイクタイム』
クロエ・セヴィニーがどんな映画に出演しているのかが気になった(笑)ダンサー?

『トローナからの12マイル』
個人的に一番感情移入して見た。少し前に会社で高熱を出し、家に辿り着くまでの状況と少し似てたからかも(笑)トリップした状態での映像ももう本当に苦しそうで、短いようでとてつもなく長い10分に疲れ果てた。

『ゴアVSブッシュ』
映画としては何の面白味もない作品であるが、現在のブッシュ政権の惨状を見ると、面白い(というのは語弊があるかな?)作品ではある。それだけ。

『夢幻百花』
他の作品に比べて幼稚というか稚拙な印象を受けたのは、やっぱり役者の演技なのか、それとも1作だけアジアから、というのに違和感があったからかな。でも物語自体は悪い話じゃないし、急激に成長する北京だからこそ作られた物語だと思った。

ワタシ的に良かったのは『ライフ・ライン』と『トローナ』の2本。作品と作品の間には流れる川の映像とトランペットの音色、そして監督のサイン映像が挿入されるんだけど、これがいちいちクドかったな。しかし「この監督の他の作品も見てみようかな?」と興味を持たせるには十分な映画でしょう。
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