Movie Review 2002
◇Movie Index

鬼が来た!('00中国)-May 4.2002
[STORY]
1945年、第2次世界大戦末期、日本軍占領下の中国華北地方の寒村。深夜、マー(チアン・ウェン)の家に“私”と名乗る男がやってきて、麻袋を2つ置いていく。1つには日本兵の花屋小三郎(香川照之)が、そしてもう1つには通訳の中国人が入っていた。村人たちは“私”が彼らを連れ戻しに来るまでの間、村に匿うことを決めるが・・・。
監督&脚本もチアン・ウェン(『太陽の少年』)
−◇−◇−◇−
2000年カンヌ国際映画祭グランプリ作品(ちなみにこの年のパルムドールは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でした)

予告を見た時に泣いてしまい、これは是非とも見なくては!と思って見てみたが・・・予告ほどは泣けなかったというのが本音だったりする。というのも、花屋と村人たちが次第に心を通わせる話なんだろうと予告を見た時は思ったんだけど、実はそうでもなかったからなのだ。実際、花屋と村人たちが喋るシーンはさほど多くはない。一番多いのは、花屋をこのまま匿うのか?それとも殺してしまおうかと村人たちで延々話し合うシーンなのだ。まぁそういうシーンも笑いドコロではあるんだけど、言葉の通じない者同士の噛みあわない会話のほうがやはり面白かった。こっちをもっと見たかったよ。
しかしこれだけ笑わせておいて、後半にとんでもないシーンを持ってくるんだから、見てるこっちの落ち込みようったらない。

ここからはちょっとネタに触れるので注意。
ホントに落ち込みました(苦笑)自分が日本人であることが嫌になったかな。うん・・・。映画は、そういう展開なってしまったことに対して日本人を責めてはいない。日本人の気質や、受けてきた教育、集団心理などを踏まえた上で、結果的にこうなってしまっただけだよ、という描き方をしている。けれどその描き方が上手すぎて、逆に落ち込んじゃったと言ってもいいくらい。日本人を単なる悪者に仕立てあげてくれたほうがよっぽども落ち込まずに済んだかもね。それが狙いだったら怖いけど。それにしても日本兵の心理まで表現できてるのは凄いと思った。チアン・ウェン恐るべし。

香川照之はやっぱり上手かったけれど、実はこの映画を見る前に『KT』を見まして、それにも自衛隊員として出演してたんですよ。そのせいか「あーさっきとあんまり変わってないなぁ」と思っちゃいました。同じ日に見るべきじゃなかったかな。

ところで、麻袋を置いていった“私”とは何者なんだろうか?という疑問が出てくると思うんだけど、結局、それは分からず終いだ。でも分かる人が見れば分かるという。それで調べてみたんだけど、どうやら“私”というのは中国共産党の八路軍ではないかという見方が強いそうだ。でも私には「ふーん、それで?」だった。分からない人には教えてもらってもやっぱり分からない、ということですね。もうちょっと勉強します。
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KT('02日本=韓国)-May 4.2002
[STORY]
1971年。朴正熙は金大中に僅差で勝ち、大統領となった。しかし金の存在は政府にとって邪魔な存在であったため、彼は常に命を狙われていた。よって日米間を行き来しながらの亡命生活を強いられていた。
1973年。自衛隊の陸幕二部に所属する富田満州男(佐藤浩市)は、北朝鮮のスパイ監視の任務中に韓国大使館一等書記官の金車雲(キム・ガプス)と出会う。そして彼から金大中暗殺の手助けをして欲しいと頼まれる。
監督・阪本順治(『顔』
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ちょうど私が生まれた年に起こった事件であり、私は金大中氏が大統領になって初めて(というか大統領がとても日本語がうまいのはどうしてなんだろう?って思った時から)拉致事件があったことを知った。この映画は実在の人物もたくさん出てくるが、あくまでもフィクションであるという。それでもどんないきさつがあって事件が起きたのか知りたくて見てみた。

映画は金氏の拉致よりも前のことから延々と描いていく。でも肝心の、富田がなぜこの計画に加担しようと考えたのかがいまいちよく見えない。一応理由を言うシーンはあるのだけれど、それがなぜ金大中を殺す理由に繋がるのかが分からないのだ。彼自身も、自衛隊員として、国のために自分が何をしているのか分からなくなっていたんだろうけどね。そうなるとこの“時代”というのも絡んでくるわけで、それが理解できないと、この映画も理解できない、かな。

また正直言ってしまうと、いま現在、金大中氏は生きているわけですから、どんな暗殺計画が立てられようが、彼が狙われようが、それに対しては全然ドキドキしないわけですよ。だから、その前まではけっこう緊張しながら見てたんだけど、彼が拉致されてからは案外普通に、というかむしろ安心しきって(笑)見てしまった。描き方も、それまでのシーンと比べても一番の見せ場に思えなかったし、富田よりも金車雲メインだったからねえ。

さて、ラストシーンについてだけど、私はこう思います(ネタバレ)あの銃声みたいな音は車のパンク。猛スピードで手紙を出しに来たあの車のです。ってことで(投げやりだなぁオイ)(ここまで)

73年当時の車はもちろん、服装や風景にもきちんと気を配って撮影されていたと思う。ホテルの調度品やフロントも映画用に用意したんだろうね。そういうシーンでは人物よりも背景ばかりに目が行ってしまった。
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キューティー・ブロンド('01アメリカ)-May 1.2002オススメ★
[STORY]
エル・ウッズ(リーズ・ウィザースプーン)は、金持ちでスタイルが良く、大学の社交クラブの会長も務めるほどの人気者。そんな彼女は弁護士から議員を目指す恋人ワーナーからのプロポーズを心待ちにしていた。しかしデートの日、金髪娘は議員の妻にふさわしくないと振られてしまう。ショックを受けるエルだったが、それなら彼にふさわしい女になろうと、ワーナーと同じハーバードのロー・スクールに入学しようと猛勉強を始める。
監督ロバート・ルケティック(劇場用映画初)
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単純に面白かった!軽くて安っぽいタイトルに引いちゃう人もいるだろうけど、この映画の主人公エルと同じで、第一印象に囚われないでほしい。軽いといえば軽いけど、軽薄ではなく軽快。強引な展開もこの軽さゆえに全く気にならない。元気をもらった映画だった。

とにかくエルがキュート。“スタイルがいいだけの中身のないバカ女”という世間の思い込みとは違い、頭の回転はいいし、ポジティブシンキングだし、人とは違う発想ができる子だということがだんだん分かっていく。そのつかみは彼女が振られる前にもちょこっと見えるんだけど、私はこのシーンを見て「あ、この子はただのバカな子じゃないわね」と思ったのだった。単純だけど、これを見て「この映画はイケるぞ」と確信したのでした。

エル以外の女性キャラクターたちも皆いい。特にワーナーの婚約者でエルに意地悪するヴィヴィアンが、ただの意地悪キャラでは終わらないところがポイント高い。逆に男性キャラがどれも類型的すぎるのが難点かな。原作も脚本家も女性だからかなぁ(監督は男性だけどね)ちょっと都合のいいように描かれすぎな感じで印象薄い。ぶっちゃけ、カッコイイ人がいなかったんだよー!(笑)

リーズ・ウィザースプーンはハマり役。ちょっとメラニー・グリフィスに似てるような(というかメラニーが若かったらこういう役やりそうだよね。『ワーキング・ガール』のイメージもあり)濱田マリにも似てるような、エルが飼ってる犬にも似てるような(笑)とにかく彼女の演技に惹き込まれて、彼女が褒められればこっちも嬉しくなってしまったし、苛められてるのを見て涙ぐんだりしてしまった。ファッションも一歩間違うとビッチなんですが、あの明るすぎる笑顔のせいかギリギリで着こなしてました。

続編『キューティ・ブロンド/ハッピーMAX』の感想はこちら
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バーバー('01アメリカ)-Apr 27.2002
[STORY]
1949年。サンタ・ローザの床屋で働くエド(ビリー・ボブ・ソーントン)は、平凡な毎日に不満を覚えていた。ある日、妻ドリス(フランシス・マクドーマンド)が働くデパートの支配人であるデイヴとその妻を夕食に招いた時、エドはドリスとデイヴが不倫関係にあると気付く。そして床屋にやってきたセールスマンが話していた儲け話の資金を得るため、エドはデイヴを強請ることを思いつく。
監督&脚本ジョエル・コーエン(『オー・ブラザー!』
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全編モノクロなんだけど、非常にクリアで見やすく、戦時中という状況やエドのモノローグともピッタリで、相変わらず好みの映像だ。ストーリーも、無口で平凡な男が今の生活を変えようと起こした出来事がとんでもない事件へと発展するもので、先が読めるけれども無駄も隙もない展開に、ただただ感心するばかり。

でもどこか物足りなかった。というのも、全編エドのモノローグで話が進むんだけど、画面に出てくるのもエドの憮然とした表情ばかりなのだ。「だから何?」と言われると困っちゃうんだけど、どこに自分の感情を乗せたらいいのか全然分からないのだ。自分が思っていた通りにコトが進まなくなってしまって焦る主人公――だったら主人公に感情を乗せることができる。でもあんまり焦っちゃうシーンがないのね(笑)では、誰か別の人から見たエド――だったら「何を考えてるのかさっぱり分からない気味の悪い人」っていう感じで、他人の目を通して自分を乗せることができたと思う。でも全部エドに本人の気持ちを説明されちゃうのでこれもできない(笑)結局ただ見てるだけになり、逆に疲労感たっぷり。見るのにとても苦労しました。というか、映画にしろ本にしろ、そういう楽しみ方をするクセがつきすぎていたのかもしれないなー。

ビリー・ボブ・ソーントンはホントに見るたびに別人でカメレオンな役者だ。声質まで違うように感じるのが気のせいかな。あの深い皺がエドの全てを表してるようで、どんなに無表情でも、あの皺の下に隠れたギラギラした野望を見逃すものか、と目を逸らすことができなかった。ものすごい存在感だ。
あと個人的にはトニー・シャローブ演じる敏腕弁護士が好き。また、エドの心のよりどころになる少女バーディを演じたスカーレット・ヨハンスン、彼女をどこかで見たことあるのに全然思い出せなくて、家に帰ってようやく『ゴーストワールド』のレベッカだと分かりました。最近忘れっぽいよ。年か(泣)
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ロード・オブ・ザ・リング('01ニュージーランド=アメリカ)-Apr 20.2002オススメ★
[STORY]
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監督&脚本ピーター・ジャクソン(『乙女の祈り』)
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第二部『二つの塔』映像目当てで見に行ってきた。さすがに三度目になるとちょっと飽きるシーンがあるけど、逆にヘンなところで笑っちゃいそうになったり。でも小ネタもまた発見できて面白かった。あやふやなところも含めてそのあたりをまた列挙してみる。

◆三度目の正直でハリー・シンクレアがイシルドゥア役と目で確認(エンドロールもチェックできた)
◆冒頭の戦いにレゴラスがいた?
◆メリーはフロド達が何か理由があってホビット庄を出て行かなきゃいけないことを察していたかも?
 (後半も察しの良さを発揮。ピピンはメリーについていってるだけみたいだが(笑))
◆休憩シーンでガンダルフが髪を後ろにまとめている
◆サルマンの杖とオルサンクの塔が同じデザイン
◆ウルク=ハイ誕生シーンを見たオークがビビッて後ずさり(あんたらも十分怖いって)

以下3つはネタバレ
イシルドゥアが殺された時、胸に矢を三本受けていた
ボロミアも胸に矢を三本受けて殺された
ボロミアの手袋?手甲?を形見としてアラゴルンが身に付ける

吹替えやネット上で英語のスクリプトを見たりしてたので、なるべく字幕を見ないようにしてみたけど、やっぱり目についちゃうんだよね。しかも訳が思いっきり間違ってたりすると急に我に返ってしまうというか(泣)ビデオやDVDになる時に直ってるといいんだけどな。でないと買う気しないよー。

そして待望の『二つの塔』映像(ネタバレ)
白のガンダルフ登場。髪の色はともかく超サラサラなのはなぜ?
エオウィン登場。フランス語訛りの英語だったらやだな(んなことない)
ファラミア登場。ボロミアにどことなく似てる。いいぞー!
蛇の舌登場。コワイ。髪の毛ヌラヌラ
セオデン登場。イメージより若いけどカッコイイ
ファンゴルン!まんま木だ
フロドのシーンが少ない。原作もアレだけどさ
ゴラムは背骨しか分からなかった。暗すぎる
◆これは『二つの塔』ネタじゃないけど、エンヤの主題歌に日本語訳がついてました(でも訳がヘン)

公開は来年春と書いてあった。春って、春って何月何日から?!
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