Movie Review 2001
◇Movie Index

猿の惑星 PLANET OF THE APES('01アメリカ)-Aug 13.2001
[STORY]
2029年。宇宙ステーションでチンパンジーの訓練士をしているレオ(マーク・ウォルバーグ)は、上官の命令に背いてワームホールの偵察をしていたところ、時空の歪みに飲み込まれてある惑星にたどり着く。そこは猿人が支配する世界で、人間が奴隷として扱われていた。
監督ティム・バートン(『スリーピー・ホロウ』
−◇−◇−◇−
1968年に製作された『猿の惑星』のリメイク、ではなくバートン曰く“リ・イマジネーション(再創造)”したのがこの作品。68年版はその後全部で5作品も作られたが、私は1作目しか見ていないんだな。本作もすでにパート2があるとかないとか・・・。

リメイクではないということで、ストーリーは宇宙船に乗った人間が猿が支配する惑星に降り立つ、という設定は同じものの、そこから先は全然違うものだった。なぜ猿がこの惑星を支配するようになったのか?という理由が分かったあたりは面白かったけど、よくよく考えるとラストのアレへの繋がりとか、深く考えると訳が分からなくなってくる(パート2に解明されるのか、または単なる洒落と取ったほうが面白いのかな・・・)

ところどころバートンらしさは出てるけど(人間除け猿案山子←勝手に命名 の造型なんか特に好きだわ)猿と人間の戦闘シーンなんかは全然迫力なくて、凝ってるところとそうでないところのムラがありすぎたように感じた。特にクライマックス後の纏め方がなぁ。かなりいいかげんじゃない?中途半端で気持ちが悪い。

猿を演じたのはティム・ロス、マイケル・クラーク・ダンカン、そしてヘレナ・ボナム=カーターと有名どころ(68年版のチャールトン・ヘストンもカメオ出演)が名を連ねていて、最初は「この人が演じてるのね」と意識して見てたけど、だんだんそれを忘れてしまって、猿として見るようになってしまった。ヘレナ・ボナム=カーターは好きじゃないけど、はっきり言って猿の時のほうがカワイイと思ったね(←すげー失礼)
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千と千尋の神隠し('01日本)-Aug 7.2001オススメ★
[STORY]
郊外へと引っ越すことになった両親と千尋(声:柊瑠美)は新しい家へ向かう途中で道に迷い、不思議な町へたどり着いてしまう。両親はそこで町の掟を破り豚にされてしまった。残された千尋は町を支配する魔女の湯婆婆(声:夏木マリ)に頼んで湯屋で働かせてもらおうとするが・・・。
監督&脚本・宮崎駿(『もののけ姫』
−◇−◇−◇−
見終わって「これじゃ4年も待たされるわけだよ!」と思った。もちろんこれは誉め言葉ね(笑)

先月、旅行帰りの飛行機の中でディズニーの『ラマになった王様』を流し見したんだけど、これと比べると本当に絵の持つパワーが違う。特に最近のディズニーって、良く言えば合理的、悪く言えば手抜きでちょっとねえ・・・と思ってるんだけど(まぁそれはここで書くべきことじゃないかもしれないかな)
本作の、1コマ1コマに対する熱の入れようというか、たったこれだけのシーンなのになぜこんな細かいところまで描くんだろう、と驚いてしまったわけだ。でも、ここまで描いてくれたからこそ映画の中の世界の広さが伝わってきたわけで、アニメって素晴らしいなぁと、ものすごく素直な感想が自然と出てしまいました(笑)

登場する魔女や妖怪や神様の中には、完全な悪者は出てこない。そしてストーリーもいくつかのヤマはあるが、激しいクライマックスはない。さらにラストは「これで終わりなの?」と思う人もいるだろう、という終わり方で、125分もある作品なのに、なんとなくまだ物足りないような気さえしてくる。過去の作品からして、そういう物語を作れないわけじゃないだろうから、これは作戦(?)なんだろうなぁ。『もののけ』は一度だけでもう“おなかいっぱい”だったけど、この作品は“腹八分目、いや六分?”くらいなので(笑)もうちょっとしたら、もう1回見に行きたいなぁと思っている。というわけで、感想も六分くらい出しておこう(え?)

声に関しては夏木マリ最高(笑)ってことで。千尋の声は、実はあの顔と合ってない感じがするのだが、声の震え具合がなかなかリアルでいいと思う。ヒドイのは千尋の両親(内藤剛志と沢口靖子)。トータルでは出番があまりないから助かったけど、初っ端でいきなりあんな声で喋られて辛かった。ほかにいなかったのかよ〜。
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渦 Maestrom('00カナダ)-Aug 7.2001
[STORY]
ブティックを経営する女優の娘ビビアン(マリ・ジョゼ・クローズ)は、店の経営不振と中絶手術を受けたことによって情緒不安定になっていた。ある時、クラブで酔いつぶれたビビアンは、そのまま車を運転し引き逃げ事件を起こしてしまう。
監督&脚本デニ・ビルヌーブ(長編2作目)
−◇−◇−◇−
カナダ映画だけど、ケベック州なのでフランス語だ。そのせいかとても不思議な雰囲気がある。フランス語でもフランス人が喋る言葉とは微妙に発音が違うように感じるし、かといってカナダらしいのかというとそんな風にも見えないし(っていうか行ったことないからよく分からんけど←いいかげん)

冒頭、捕まえられたグロテスクな魚が、調理される前にビビアンに起こった話を始める。そして物語の途中にはイメージ映像か?(笑)と思わせるような水飛沫のシーンだとか、ビビアンがシャワーを浴びるシーンだとか、雨が降ったりだとか、水にまつわるシーンがいくつも挿入される。
また、人間関係や出来事もまるでタイトル通り“渦”のように(といってもゴウゴウ激しい渦ではなく、ゆっくり回転してる渦だね)ある人物の起こした行動が巡り巡って自分のところに返ってきたりと、なかなか面白い。

でも上に書いたような、ビビアンのシーンとも魚が語るシーンとも関係のない水飛沫映像を入れるのは、なんだかとてもセンスが悪く見えた。そんなのなくても十分に“水”を感じることができる映画なのに。
また最初の頃、ビビアンの気持ちを表現するのにサイレント映画みたいに文字での説明(喋りもあり)が入ったのが違和感たっぷり。これに加えて魚の語りも頻繁に挿入されるのでかなり集中力を欠いた。後半になってこれがなくなった上に魚語りも減り、ストーリーも面白い方向に展開していったので集中できるようになったけど。それと選曲がおかしい(たぶんわざとなんだろうけど)音も異様に大きくて映像から浮きまくってた。これも集中力を見事に削いでくれたね。
けれど次回作も公開になったら見てみたいと思ってる。普通とはちょっと違う視点でものを見られる人のようなので楽しみだ。

ビビアン役のクローズは顔のアップがすごく綺麗。特に彼女のファーストカットは思わず見とれてしまったね。ただカメラが引いて顔全体が見えた時に「あれ?」ってなってしまった。ちょっと顔の骨格が(以下自粛)
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キシュ島の物語('99イラン)-Aug 4.2001
[STORY]
イランのキシュ島で撮影された3つの短編映画。
海岸に流れ着いたダンボール箱を集める夫と、それに恐怖を感じる妻を描いた――『ギリシャ船』
監督&脚本ナセール・ダグヴァイ(日本公開初)
島へやってきた青年が、工場で働きながら魚を釣ったり貝殻を集めたりしてお金を稼ぐ――『指輪』
監督&脚本アボルファズル・ジャリリ(『ダンス・オブ・ダスト』)
全財産のドアを担ぎ砂漠を歩く男と仔ヤギを連れた娘に郵便が届く――『ドア』
監督&脚本モフセン・マフマルバフ(『サイレンス』)
−◇−◇−◇−
キシュ島の観光局が、イランを代表する巨匠たちにお願いして作ってもらったという映画。“島で撮影すればあとはお任せ”というアバウトな注文のせいか、島の美しさを全面に押し出すような作品はなかったね。唯一『ドア』が白い砂漠と青い海を映しているが『ギリシャ船』なんかはヒドイもんである。出てくるのはゴミばっかり(笑)でも不思議とちょっと行ってみたいかも・・・と思わせるのだから、これはこれで成功なのかもしれない。
(イラン人と結婚したKさんは新婚当時この島に行って、頭にスカーフ、ロングコートを着たまま水上バイクを楽しんだそうだ(笑))

個人的には『指輪』が一番良かった。あまり内容に触れると面白くないので書かないけど、この主人公の青年の行動に対して常に疑問符がつくのだが、その意味が1つ1つ分かっていくところがまず面白いし、さらに青年の目的が分かったところで「うわぁいい話だ!」と思える。普通に描いてもそれなりに感動できる話になるだろうが、ありがちだっただろう。それをあくまでも淡々と、ありがちな話とすぐに分からないように撮ってるのがいい。思わず青年に惚れそうなったさ(きゅん)←バカ

『ドア』はオチも好きだが、まずこの父娘に驚くね。ドアを担いだ父はせっかく届けてくれた郵便を「持ってくるお前が悪い」などと言って受取らなかったり、その娘も息も絶え絶えになって座り込む仔ヤギを無理矢理引っ張って歩かせるという、何とも無体な家族なのだ。仔ヤギは助演男優賞(?)でもあげたいくらいの熱演(じゃなくてマジなんだが)で、普通なら動物愛護団体から抗議殺到モノでしょう。よくがんばったよ(泣)

『ギリシャ船』は楽器を叩くシーンでトランス状態(睡魔に襲われるとも言う)になってしまいちょっとキツかったが、ラストシーンはニヤリとさせられた。
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ゴーストワールド('01アメリカ)-Aug 4.2001
[STORY]
イーニド(ソーラ・バーチ)とレベッカ(スカーレット・ヨハンスン)は高校を卒業しても大学進学をすることなく、悪態をつきながら毎日を過ごしていた。ある日、新聞に載っていた人探しの記事を見て、2人はいたずらで男を呼び出すことにした。そして表れたのは冴えない中年男(スティーブ・ブシェーミ)だった。2人はさらに男を尾行することに・・・。
監督テリー・ツワイゴフ(『クラム』ドキュメンタリー作品)
−◇−◇−◇−
原作はダニエル・クロウズの同名コミック。俳優のジョン・マルコヴィッチが製作している。

“ダメに生きる”というコピーに惹かれて見に行ったけど、私が想像していたダメさと違ってた(なんかもう人間として最低、っていう人だと思ってたよ←どんなだよ?)ここに出てくる人っていうのはダメではないでしょう。ともすると誰しもが陥りやすい悩みを抱えた人々の話だ。世の中の流れについていけない、ついていくことを拒否している人なだけ。その防衛手段として、自分の世界に閉じこもったり、世の中を見下したりする――それが見ててすごくよく分かった。特にイーニドはだんだん痛々しくなっちゃって、誰か助けてあげてって思った。でもそれは自分で乗り越えなきゃいけないことだからね。

そんな彼女たちを意外と真面目に描いてて、結末も真面目というか、青春映画って感じで(いや、実際そうなんだろうけどさ)ちょっとこそばゆく思った。今時の映画にしてはなんか昔の型通りのような展開で、私はそこがしっくりきてない。原作コミックは読んでないけど、あっちはどういう展開なのかな。すごく気になるので読んでみるつもりだ。

ソーラ・バーチは『アメリカン・ビューティー』でケビン・スペイシーの娘役で注目された人だけど、なんかもう第2のクリスティーナ・リッチ驀進中って感じでいいね。役の幅はそんなに広くなさそうだけど、普通の女優とは違う、面白い方向に進みそうで楽しみ。

それとエンドクレジットが終わった後に、おまけの映像が流れるんだけど、これがすっごい面白い。あるシーンの別テイクって感じ(どんなのか言いたいけど我慢する)こういうお遊びは大好きだ。絶対に最後まで席を立たないように。
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