Movie Review 1998
◇Movie Index

IN&OUT('97アメリカ)-Nov 18.1998
[STORY]
小さな町で教師をしているハワード(ケヴィン・クライン)はエミリー(ジョーン・キューザック)との結婚式を3日後に控えていたが、かつての教え子キャメロン(マット・ディロン)がオスカー受賞式で「先生はゲイだ」と言ったことから町は大騒動になる。
監督フランク・オズ(『リトルショップ・オブ・ホラーズ』)
−◇−◇−◇−
今回は感想を書くのが難しいので箇条書き。

・受賞式シーンに大爆笑!意外なスターが登場するし、キャメロン主演の映画もバカっぽくていい。
・ハワードのダンスシーンは最高!可愛いし腰つきがいいぞ!
・婚約者エミリーめっちゃ可愛い。怒った時の肌の色の変化に注目だ。
・バーブラ・ストライサンドってアメリカじゃゲイに人気な人なのね(日本の松田聖子みたいなもんか)

と、まあ普通に書けるのはここまで。以下ネタバレなので未見の人はご遠慮下さいな。で、見た人にはぜひとも読んで欲しいっす。
(ここから)いや〜実際のところこの映画「ゲイ疑惑があるが、それを払拭して最後は結婚して幸せになる話」だと思ってました。それが見事に裏切られて本当に先生がゲイだとはね〜。驚いた。「僕はゲイだ」とハワードが言った時、教会のみんながポカンとしてたけど、客席もみんなポカンとしてた感じ。まじ?ホント?嘘だろー?こういう展開なのか!ってね。ただ、ハワードは元々ゲイだったのか、それとも今回の件でゲイに目覚めちゃったのかよく分からない。ゲイなら恋人とかいただろうけど、でもそんな気配は全然なかったし。ゲイなら何で結婚するんだ?とも思ったけど、これはまぁ母親の為らしいというのは分かる。結婚すればゲイじゃなくなるかも、なんて思ったのかもしれない。だからあんな男らしくなるためのHow to本とか持ってんのか?(笑)しかし何でゲイだってキャメロンは知ってたんだ?・・・疑問が多すぎるですよ。

ゲイという人間を描くことがテーマじゃなくて、ゲイ云々かかわらずカミングアウトすることが大切だってことがテーマらしいから、あとのことはどうでもいいのかもしれないけど、もうちょっとハワードについて教えてくれてもいいじゃないのさ。見てるこっちが戸惑ってるうちに終わっちゃったって感じがした。

余談だけど、ハワードとゲイのTVレポーターが2人で蝶タイを結び直してるシーンを見て「この2人が結婚すんのか?」とドキドキしちゃった自分がちょっと恥ずかしい。
(ここまで)
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ぼくのバラ色の人生('97ベルギー=フランス=イギリス)-Nov 13.1998オススメ★
[STORY]
7歳の少年リュドヴィック(ジョルジュ・デュ・フレネ)は大きくなったら女の子になるのが夢。しかしまわりは彼を奇異の目で見る。彼の理解者は祖母とTVアイドルのパムだけだった。ある時、父ピエール(ジャン・フィリップ・エコフェ)の上司の息子にリュドが恋をしたために、事態は思わぬ方向へと進む。
監督アラン・ベルリネール(長編デビュー作)
−◇−◇−◇−
女の子になりたい少年が巻き起こす騒動を面白可笑しく描いたコメディーかと思っていたら、とても切なくて真剣な作品だった。どちらかというと「親は子供をどう育てていけばいいのか?」というのにウエイトが置かれてるかな。

TG(トランス・ジェンダー)については日本でも最近ようやく理解されはじめていて、そういう人には性転換手術も施すようになってきている。リュド少年が本当にTGなのかは分からない。もしかしたら少年期における一時的な気まぐれのようなものか、自己防衛の一種、もしくは空想癖が強すぎるだけなのかもしれない(事実、リュド少年はパムと一緒に遊んだり空を飛んだりいつも空想している)ただ、自分の子供がそうなってしまった時、親はどう対処すればいいのだろう?と、もう子供を持ってもおかしくない年齢になっちゃってるせいか、リュド少年の気持ちも十分分かるけれど、親の気持ちにもなってしまう。残念ながらリュド君の両親は、最初は彼を病気だとして治療しようとし、そして彼を理解できなくなり、拒絶までしてしまう(も〜このあたりで号泣っす)また、リュド君が好きになっちゃう少年の両親は、息子に対して偏見を植え付ける。だから少年はリュド君と喋ると地獄に落ちるから喋らない、と言ってしまう(これにも号泣)自分の子供の周りにちょっと違う子がいた場合、自分はどう子供に説明するかも問題だ。偏見や差別するような子には育てたくないけど、自分の子に影響があったら、と思うと放ってはおけないもの。リュド君の気持ちにどっぷり漬かってオイオイ泣きながらも、一方では冷静に親の気持ちを考えつつ見てしまった。

パムが登場するシーンはとても幻想的で可愛い。色粘土で作った庭にプラスティックでできたドールハウスの中で踊ったり空を飛んだり(この時かかる曲もいいんだ)実から空想の世界へ移るシーンに違和感もなくていい。だけどどっか物足りなさを感じたのは、上映時間が短かった(1時間28分)せいかもしれない。もっと長くても構わないのに。
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アルナーチャラム 踊るスーパースター('97インド)-Nov 6.1998オススメ★
[STORY]
タミル人の富豪、アンマイヤッペン家の長男アルナーチャラム(ラジニカーント)は、妹の結婚式のためやってきた親戚の娘ヴェーダヴァッリと恋仲になるが、アルナーチャラムは実はアンマイヤッペン家の子でなく孤児だったことが明らかになる。彼女を諦め、家を出てマドラスへやってきたアルナーチャラムは、偶然自分の出生の秘密を知った。
監督&原案スンダル・C
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『ムトゥ 踊るマハラジャ』に続くスーパースター主演の超娯楽大作。いちはやく東京ファンタ(レポートはこちら)で見てきた。

この『アルナーチャラム』では共演のヒロインは違うけれど『ムトゥ』に出演した俳優が何人かやっぱり出演していて(最後に坊さんになっちゃう通称ズラオとかね)それぞれにいい味を出してるし、スーパースターのアクションもダンスもスバラシイ!またねぇ〜笑ったりウインクしたりションボリしたりする1コ1コの表情がたまらないんだ〜。オロオロしてるところを見て思わずカワイイッ!と身をよじってしまったし、ラストは感動して思わず涙がこぼれちゃいました。もったいないから書かないけど、アクションも会場から「おおっ」とか声が上がったり、拍手が起きたり大爆笑で沸いたりすごいすごい。

また、いつもの民族衣装っぽい出でたちだけでなくジーンズや皮ジャン、スーツ姿も拝めるし、おなじみの自分の父親役もやってます(笑)それに前回は馬車だったけど、今回はパワーアップしてトラクターを運転しながら農業にいそしんでるです。ステキですぅ(笑)荒唐無稽さは一緒だけどストーリーはこちらのほうが面白くて好きだ。

そのスーパースターと共演したヒロインは今回2人。1人はミーナちゃんに似た感じの子で、もう1人はどちらかというと西洋人系。でも2人がかりでもやっぱりミーナちゃんのほうが可愛いと思った。体型はおんなじようにおへそのあたりがプルプルしてていいんだけど(ニヤリ)今回も唐突に衣装換えしながらのダンスと歌が盛りだくさん。男女に別れてクイズを出し合う歌などがあって面白いけれど、これも『ムトゥ』のほうが好きだ。やっぱA・R・ラフマーン、イカス!『ボンベイ』のサントラも買っちゃおうかなぁ(ちなみに今これを書きながら『ムトゥ』のサントラ聴いてるっす)一般公開がいつになるか分からないけれど、公開されたらまた絶対見たい。

というわけで公開してまた見に行ってしまった → 2回目の感想
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サンセット・ハイツ('97イギリス)〔未公開〕-Nov 4.1998
[STORY]
近未来のイングランド。国は分断され、自警団たちが町を支配していた。自警団は2つあり、それぞれが対立していた。息子を児童連続殺人犯に殺されたブラッドレー(トビー・スティーブンス)は、その両方の自警団に協力を求め、ついに犯人を射殺する。しかし死んだ筈の犯人が犯行を繰り返し・・・。
監督&脚本コルム・ビラ(長編デビュー作)
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サンセット・ハイツというと、のどかな町のアパートとかマンションをつい想像してしまうんだけど、ハイツというのは丘のことで、この映画でのサンセットハイツというは自警団の処刑場のことだった。おそらく以前はストーンヘンジと呼ばれる場所(これは近未来の話だからね)だったのだろう、巨大な石が円を描くように置かれていて、その真ん中に犯罪者たちが並ばされ撃たれるのだ。それが至極ステキなロケーションでイヤ〜な気持ちになったかと思えば、ラストまでずっとその変な緊張感を強いられた。

パンフで『ユージュアル・サスペクツ』っぽい話と書いてあったし、上映後のteach inでもそのことについて言及している人がいたが、私はそうは思わなかった。確かに『ハイツ』は本当の犯人は誰か?そして『ユージュアル』もカイザー・ソゼは誰だ?という謎をそれぞれ観客は追っていくけれども『ユージュアル』が全体的に人を食ったようなストーリーと演出でどちらかというと軽く、あくまでも娯楽だったのに対し『ハイツ』は重かった。2つの自警団の争いは、現在問題になっているアイルランド(カトリック)とイギリス(プロテスタント)の争いを踏まえているという。また若者の犯罪についても厳しい。そして日本でいう因果応報「死には死を持って償え」という考えとモラルについても強く訴えてるようだ。こういう抹香臭い感じはあんまり好きじゃない。だからラストもそれほどいいと思わなかった。アンハッピーではないけれど、どこかモヤモヤとした気持ちが残る。

映画を通して何かを訴えることは嫌いではないしむしろ好きだけれど、ちょっと詰め込み過ぎで辻褄が合わないんじゃないか?というところもあったので、もっとすっきりさせて欲しかった。2つの自警団の争いと事件の設定は面白いんだから、もっとスタイリッシュにしても面白かったかも。でもこういうどよ〜んとした雰囲気の映画ははっきり言って好きだ(笑)日本での公開は結局見送られたみたいで残念。

コルム・ビラ監督のティーチインもあった英国映画祭 → レポート
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従妹ベット('97アメリカ)-Nov 4.1998
[STORY]
1800年代の上流階級。ヒューロット家では当主ヘクターの放蕩三昧で借金がかさんでいた。ヘクターの妻の従妹ベット(ジェシカ・ラング)は、妻が死んだことで後妻の座につけるかと思いきや、遺された娘ホルテンスの世話を言いつけられる。おまけにせっかく若い恋人が出来たというのに、彼をホルテンスに取られてしまう。ベットはヘクターの愛人でダンサーのジェニー(エリザベス・シュー)の助けを借りて復讐に乗り出した。
監督デス・マカナフ(舞台演出家)
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バルザックが原作と言われてもバルザックってナニ?(笑)なので、原作との違いとかはどうでもいいんですが、やはり現代風にアレンジはされてるだろうな、と思った。この時代の女性にしてはみんなかなり積極的でしたたかなんじゃないかな。エラが張ってて片眉吊り上げてニヤリと笑うベットを筆頭に、プライドが高くて男を弄ぶジェニー、昔のケイト・ウィンスレットに似てるホルテンス(太っちゃイヤ〜ン)だって強引にベットの男ウィンセスラスを奪って結婚しちゃう。おまけに結婚前に妊娠発覚ですよ。そんでもって死ぬ間際にまで嫌味なベットの従姉もヒドイもんだ。男は男でみんな若くて美人の女が大好き。女だって若くてハンサムな男が好きだからどっちもどっちなんだけど(でもウィンセスラスはボテッとしててカッコイイとは思えなんだ)やっぱり人間顔が命らしい。そして後なって顔がいいだけの男の本質が見えてくる。お決まりだけどこういうところが面白い。

でも見ていてどの人物にも心底怒りが沸くことはないし、特別ベットを応援しようという気持ちにもならなかった。みんながみんな道化だと思ったから。ただ、ラストで(ちょとネタバレします)ベットが不能になったヘクターを我が物にしたつもりでいるが、当のヘクターの目は若くて可愛いメイドに注がれている。ほんの短いシーンだけれど、これを見た時「ああ、やっぱり人間死ぬまで変われないのね」と妙に納得させられた。多分ホルテンスの子供も、将来ベットが思うような子供には育たないだろう。(ここまで)この時ばかりはベットが哀れに思えた。
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