Movie Review 2008
◇Movie Index
レッドクリフ Part I('08アメリカ=中国=日本=台湾=韓国)-Nov 1.2008
[STORY]
西暦208年。魏の曹操(チャン・フォンイー)は皇帝を操り、80万の大軍を率いて劉備軍に攻撃を開始した。劉備軍はかろうじて逃げ延び、軍師の諸葛孔明(金城武)は隣国の呉に赴き、同盟を結んでともに曹操と戦おうと進言する。だが皇帝の孫権(チャン・チェン)は降伏を唱える臣下たちの間で揺れていた。そこで諸葛孔明は孫権が兄と慕う総司令・周瑜(トニー・レオン)と面会。音楽を通じて2人は心を通わせるようになり、ともに戦う事を決意する。
監督&脚本ジョン・ウー(『ペイチェック 消された記憶』
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中国の歴史小説『三国志演義』を元に、曹操軍と孫権・劉備連合軍の間の戦いである“赤壁(せきへき)の戦い”を中心に描いた作品。当初は1作のみの予定だったが、5時間を超える作品となってしまったため2部構成となった。

面白かった。けど、想像してたのとちょっと違ったかな。予告の感じではもう少し真面目で小難しい映画かと思ってたんだけど、ムダも笑いもお色気もしっかりありました(笑)『三国志』を知らなくてもちゃんと楽しめるように作っている。さらに日本版では本編の前に赤壁の戦いに至るまでのあらすじや人物紹介の映像が入ったり、本編内でも人物が登場するたびに字幕で人物名を教えてくれるという親切ぶり。正直ここまでしなくても・・・と思ったけど、そこまでやらないと最近の観客はあれだから・・・。

戦うシーンはどっかで見たことあるよーな(『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』とか『300<スリーハンドレッド>』で)という既視感は否めなかったが、それらの作品での明らかにCGくさかった人の動きが、本作では人員を大量動員して製作したと分かる映像で、そこはさすが中国だなーと。たまにサボってる感じの兵士がいるのもまた一興(笑)前編でのクライマックスである八卦の陣の戦いは大変満足しました。エンドクレジットでは人民解放軍の協力も書かれてましたな。

ストーリーは冗長に感じるところがあり(そこがジョン・ウーらしいっちゃらしいんだけど)Part IIを見てみないと分からないが、145分もかけた割には物足りなさが残る。人間関係やキャラクター描写に深みがあんまりないせいもあるのかなぁ。残念ながら周瑜はまだ本格的に動いてないし、劉備(ユウ・ヨン)も孔明も上から見てゴチャゴチャ喋ってるシーンばかり。そんなんだから張飛(ザン・ジンシェン)関羽(バーサンジャブ)趙雲(フー・ジュン)の3人にどうしても目が行ってしまう。すごい働き者で、めちゃくちゃカッコ良くて魅力的なのだ。特に張飛は顔つきも素晴らしい!後編でも彼らの戦いに期待しますか。
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8月のランチ('08イタリア)-Oct 26.2008
[STORY]
ジョヴァンニ(ジャンニ・ディ・グレゴリオ)は無職でアパートの管理費が払えず、年老いた母の世話をする毎日を送っていた。そんなある夏の日、アパートの管理人から自分の母親を1日預かってくれたら管理費をタダにすると持ちかけられる。世話などしたくなかったが、仕方なく預かることを承諾するが、当日何ともう1人老女を預かることに。さらに医者の母親まで預かることになり、一度に4人の老女の面倒を見るハメになってしまう。
監督&脚本ジャンニ・ディ・グレゴリオ(初監督作)
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第65回ベネチア国際映画祭の批評家週間に出品し、でパシネッティ賞(国際映画記者賞)、ルイジ・デ・ラウレンティス賞(新人監督賞)、ISVEMA賞(デビュー作または2作目までの作品に贈られる賞)の3賞を受賞。第21回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。

映画祭作品、特にコンペティション部門作品は簡単なあらすじと写真1枚しか情報がないので、どれが当たりかは賭けみたいになってしまうんだけど、昨年度の『迷子の警察音楽隊』は当たりだった(グランプリも取ったしね)本作も良さそうな雰囲気が出ていたので見てみたが、やはり当たりだった。結局、本作は無冠に終わったけど個人的には『迷子』より好きだなぁ。

『マルタのやさしい刺繍』に続き本作ということで、私の中で老女ブーム(?)が来ているみたい。 ガンコなところもあるけど、元気で若い者には負けないパワーを持っていて、そんな彼女たちが(彼女たちから見れば)若者を巻き込んで騒ぎを起こすところが面白い。時に少女のような笑みを浮かべるところが可愛いし、派手な服でも着こなしちゃうところも魅力だ。
本作に登場する老女たちはみな素人だったらしいけど、彼女たちの普段のまま、演技でも何でもないところをそのまま見せてもドラマになってしまうんだろうな。よく素人の子供を起用してありのままに見せたりする映画があるが、あれと同じかもしれない。

そんな老女たちに振り回されるのが監督・脚本・主演のジャンニ・ディ・グレゴリオ。彼女たちに自然な振る舞いをさせるために、自分もフレームの中に入って彼女たちの良さを引き出そうとしているように見てとれた。彼が隙あらばワインを飲むのは、ジョヴァンニ役としてのキャラクターなのか、はたまた単に飲みたい時に飲んでるだけなのか(笑)そこも気になるところだった。

8月15日はイタリアの祝祭日。聖母マリアが他界した日でフェラゴストといい、ラテン語で“8月のお休み”という意味があるのだとか。だから原題が『PRANZO DI FERRAGOSTO』なわけね(PRANZOはイタリア語で“昼ごはん”)この日にバカンスを楽しむ人は多く、都市部では人がまばらになるそうだ。
監督は母親を介護した経験や、母親を預かってほしいと頼まれた経験から映画の着想を得たらしいが、実際に困っている人は多いのかもしれない。映画のように、老人たちを1箇所に集めて世話をする施設、日本のデイサービスみたいなところがもっとあるといいんだろうな。また、手取り足取り世話するんじゃなく、老人たち同士が助け合うように促すのもいいことだろう。映画の中には、そういう現実に生かせそうなヒントもたくさんちりばめられていたように思う。
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ハッピー・ゴー・ラッキー('07イギリス)-Oct 21.2008
[STORY]
ポピー(サリー・ホーキンス)は30歳になる独身の小学校教師。いつも上機嫌で楽天家だ。ある時、自転車を盗まれたことから車の免許を取ることを決意するが、冗談ばかり言うので教官のスコット(エディ・マーサン)からは不真面目だと叱られ、なかなか上達しない。また、フラメンコを習ったり飲みに行ったりと気ままな生活をしているため、結婚し妊娠中の妹からはもっと将来のことを考えるよう諭される始末。だがポピーはそんな生活を改める気は全くなく――。
監督&脚本マイク・リー(『ヴェラ・ドレイク』
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第58回ベルリン国際映画祭で主演女優賞を受賞。第21回東京国際映画祭ではWORLD CINEMA部門で上映された。

いつもヘラヘラして誰にでも気さくに話しかけては相手をドン引かせる。クラブで踊り酒を飲み、朝まで女友達とダラダラ過ごす。ルームメイトと一緒に工作して遊ぶ。そんなハッピー・ゴー・ラッキー(のんき)な主人公を見て「一体何なの?!この人」と眉を顰めたらマイク・リーの術中にハマっていると言えるだろう(それは私だ!)

のちに彼女は小学校教師だということが分かる。そこで一瞬「おっ!」なるが、プライベートになるとやっぱりふざけている。フラメンコを習いに行ってもヘラヘラ、車の免許を取るための講習でもヘラヘラ。もっと真面目にやれ!と何度思ったことか。教官のスコット(エディ・マーサン)は粘り強く頑張ったと思うよ。アンタは悪くない!エンラハ〜。

だが、見ていくうちにポピーが何故ヘラヘラするようになったのか、それが垣間見える場面がやってくる。マイク・リー作品でいつも感心するのは、役者と一緒になってキャラクターを作り込むのでリアリティがあるところだ。劇中で描かれていること以外の、例えば登場人物の生い立ちや映画のラストからその先のことが想像しやすいところにある。

本作ではポピーが三姉妹の長女で、次女は結婚して妊娠中。妊娠でナーバスになっていると言うが、神経質なのは生まれつきだろう。三女はいつも不機嫌で投げやりだ。両親は出てこないが、おそらくそれほど裕福でないから3人を育てるのに相当苦労しただろう。フルタイムで共働きし、家ではクタクタ。家族揃って夕食を取る場面ではギスギスした雰囲気なのが想像できる。そんな中で、ポピーは場を和ませようとヘラヘラするようになったのではないだろうか。誰もが黙々と食事を取る中で、その日にあった出来事や友達のことなどを面白おかしく喋るポピー。食べ終わった妹たちは早々に部屋に引き上げ、両親は深い溜息をつくだけ。それでも諦めずに毎日お喋りを続けるポピー――。
上記はあくまでも私の想像です(笑)が、そんな感じがするのよね。

そう思うと、次第にポピーがいじましく見えてくるんだけど、彼女が良かれと思ってやってることって、ちょーっとズレてるんだよなぁ(苦笑)まぁでもそんな彼女を理解してくれている人もいるわけで、これからも変わらずハッピー・ゴー・ラッキーに生きていくのだろう。それでいいんじゃない、と思わせる映画だった。
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マルタのやさしい刺繍('06スイス)-Oct 21.2008トテモヨイ★
[STORY]
スイスの山間にある小さな村。夫に先立たれて生きる意欲を失った80歳のマルタ(シュテファニー・グラーザー)は、裁縫の仕事を頼まれたことから若い頃の夢を思い出す。それは自分がデザインしたランジェリーの店を開くことだった。そんな彼女に友人のリージ(ハイジ・マリア・グレスナー)が協力し、ついに店をオープンさせる。だが、保守的な村人たちからは非難され、牧師の息子からは店のものをすべて片付けられてしまう。
監督ベティナ・オベルリ(『ひとすじの温もり』)
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2006年度のスイス観客動員数1位を記録し、2007年度アカデミー賞外国語映画賞のスイス代表になった作品。
大阪ヨーロッパ映画祭2007では『遅咲きの乙女たち』のタイトルで上映された。

これは面白かった!小さな村に住む老女が周りを巻き込んで新しいことに挑戦するという物語で、『カレンダー・ガールズ』が好きな人は間違いなく好きになるだろう。ただ、人が亡くなる場面があるので、痛快!と言い切れないのがちょっと残念。さらに欲を言うと、刺繍好きなワタシ的にはもう少し刺繍を映して欲しかった。伝統的な柄というのがどんなものなのか詳しく見たかったな。

マルタは結婚前に下着を作る仕事をしていて、結婚を機にやめてしまう。けれど最近の下着を見て、その縫製やデザインの悪さに憤り、再び自分で作ることを思いつくのだ。だが、マルタの息子で牧師のヴァルター(ハンスペーター・ミュラー=ドロサート)は大反対。ま、息子が反対するのは分かる。でもマルタと同じ年代の女性たちも反対するのが、最初は理解できなかった。じゃあ彼女たちは下着をつけてないの?って。それだけ保守的な村だったということに気付いたのはかなり後のことだった。やっぱり自分基準で考えちゃうからなぁ。例えば反対する女性たちの下着をチラッとでも見せてくれたら、もっと早く理解できたかもしれないんだけどな・・・(それを求めるのはわがままかな)

みんなの反対を受けて一度はあきらめるマルタだったが、注意する側にも後ろめたいことがあったり、自分の問題を棚に上げて批判する男たちの実情を知り、負けるもんかー!と再び立ち上がる。さっすが母は強し!ここで高齢化や介護の問題なども提示され、ただ面白いだけのコメディにしてないところがまたよかった。老人ホームにいる老人たちにも下着作りやネット販売を手伝ってもらったりするシーンもあり、これも実際の老人ホームで行われそうないいアイデアだと思った(実際こういうところってあるのかな?)こうして、生き甲斐を見つけて元気に暮らしていけたら幸せだろうなぁ。

劇場では、劇中に登場するマルタが作った旗の本物が飾られていた。映像を見ただけでは分からない凝った作りで、実物を見ることができて良かった。
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P.S.アイラヴユー('07アメリカ)-Oct 19.2008
[STORY]
ホリー(ヒラリー・スワンク)は、アイルランド人の夫ジェリー(ジェラルド・バトラー)を脳腫瘍で亡くした。それからしばらくホリーは悲しみのあまり引きこもり状態になる。そんな彼女が30歳の誕生日を迎えた日、ジェリーからバースデイケーキとテープレコーダーが届く。テープには、明日から様々な形で手紙を届けるので内容に従って行動してほしいというものだった。ホリーは手紙の指示に従って行動を始め、親友たちと共にジェリーの故郷アイルランドを訪ねることになる。
監督リチャード・ラグラヴェネーズ(『フリーダム・ライターズ』)
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原作はアイルランドの元首相の娘、セシリア・アハーンの同名小説。
亡くなった夫から手紙が届くという予告が魅力的で(例によって前売券特典も四葉のクローバー球根だったのも魅力的だった)見てみた。

うーん、ちょっと長すぎたなぁ。126分もいらなかったでしょ。あと15分は削ってよかった。夫が亡くなってから1年間の出来事だから、時間を掛けたいのも分かるんだけどさ。湿っぽくさせずカラッとしていたのは良かったけどね。

冒頭はホリーとジェリーのケンカから始まる。ここで2人の性格を観客に見せ、いくつかの伏線も張っているのだが、もうこの時点で長いな〜と感じる(苦笑)その後、ジェリーが亡くなりホリーは引きこもってしまうんだけど、そこも長い(苦笑)そしてジェリーから手紙が届くたびに、2人の出会いや思い出が描かれていくんだけど、この出会いのシーンもまた長いんだよね(苦笑)出会ってに急速に恋に発展するもんじゃないけど(そのわりにキスなんかしてるが)もう少し省略を使ってほしかった。

その長さを差っぴけば、ストーリーはそこそこ面白く、ところどころで泣かせてくれて悪くはない映画だけど、登場人物に共感はしづらいと思う。親友のデニース(リサ・クドロー)には間違いなく共感できまい(笑)思い返せばジェリーが一番いい人だったかも。死んでしまった人だから余計にいいところしか思い出されなってのもあるけど。
あと、ホリー役のスワンクの顔が、やっぱり怖いわけであり・・・。眼光鋭くと口元がグワッとしてるので、笑うと口が怖いことになるし怒れば本気で怖い(笑)悲しみを乗り越える役だから、彼女のように演技力のある人が演じるのは正解だと思うんだけど、やっぱり愛嬌のある顔の女優さんのほうが、もっとキュンとなっただろうなぁ。

それから、エンドクレジットで日本版主題歌っつーのが流れるんだけど、日本語吹替版で流すならまだ許せるが、字幕版でこれはやめてほしいね。徳永英明に罪はないけど、クレジットの途中で席を立ちたくなってしまった。
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