Movie Review 2003
◇Movie Index

イン・ザ・カット('03アメリカ)-Nov 3.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
大学講師のフラニー(メグ・ライアン)は人と距離を置くことで自分を保っている。そんな彼女が唯一心を許しているのは腹違いの妹ポーリーン(ジェニファー・ジェリソン・リー)だけだった。ある時、彼女が学生と入った店で殺人事件があり、刑事のマロイ(マーク・ラファロ)が聞き込みにやってきた。フラニーはマロイに惹かれていくが・・・。
監督&脚本ジェーン・カンピオン(『ある貴婦人の肖像』
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東京国際映画祭2003特別招待作品。原作はロザンナ・ムーアのベストセラー小説。カンピオンは当初ニコール・キッドマン主演で脚本を書いていたが、メグ・ライアンが名乗りをあげ、キッドマンは製作に名を連ねることとなった。ライアンが本作で大胆なヌードにも挑戦しているのも話題になっている(って『ドアーズ』でも脱いでるじゃないっすか!)

物語はフラニーの視点で描写されているため、誰が殺人を犯したのか?というサスペンスの部分は全く面白くない。どちらかというと私はそのサスペンス部分に期待していたので、思いっきり肩透かしを食らった。普通のサスペンスならば駄作と言っていいだろう。でも事件に巻き込まれた1人の女性のフィルターを通して見てみると、事件によって日常が揺らいでいってしまったり、自分が保っていたバランスを崩してしまったりするところは、かなりリアルに伝わってくる。特にこれ以上ない衝撃と悲しみに遭遇した時の映像はすごかった。自分だったら発狂したかも・・・というくらい。

でもメグ・ライアンははっきり言っちゃうと、この映画には合わなかったと思う。フラニーはキッドマンのほうが良かったと思うんだな。うまく言えないんだけど、キッドマンのほうが「ビッチ!」って呼ばれるのが似合ってるっつうか(笑)やっぱり色気が足りないのかねえ。

前にも書いたけど、カンピオン映画に登場する男優は意外なキャスティングが多いと思う。今までの映画でも何故この人が?っていうのがあったけど、本作のマーク・ラファロなんて意外だと言う前に「てゆーかあんた誰?」って感じでした(笑)しかも本作に限ってはこの人に魅力さえ感じなかったという。だから余計に今回は映画そのものの面白味がなかったなぁ。これでもう少し魅力的な男性だったら映画に入り込めたと思うのだが。
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すべては愛のために('03アメリカ)-Nov 2.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
裕福な英国人と結婚したサラ(アンジェリーナ・ジョリー)は義父の慈善活動を称える豪華なパーティーに出席していた。そこへ突如乱入してきたのは、痩せ細った難民の少年を連れた医師のニック(クライヴ・オーウェン)だった。彼は慈善パーティーを非難し、エチオピアの貧困と病気に苦しむ人々の現実を訴えた。サラは強いショックを受け、私財を投げ打って援助物資を現地へ運ぼうと決意する。
監督マーティン・キャンベル(『バーティカル・リミット』
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東京国際映画祭2003特別招待作品。人妻と救援活動に力を注ぐ医師との10年に渡るラブストーリー。『トゥームレイダー』でカンボジアを訪れた時から活動に興味を持っていたというアンジェリーナ・ジョリーは、本作への出演がきっかけで国連難民高等弁務官事務所の親善大使になり、カンボジア難民の男の子を養子として迎えた。彼女に与えた影響は大きかったようだ。

飢餓に苦しむエチオピアの人々を救おうと物資を持って駆けつけたサラだったが、しかし彼女の支援など雀の涙ほどにしかならない、というエチオピアの人々を俯瞰で捉えた映像。カンボジアでの危機的状況での赤ちゃんの泣き声。人間は無力だ、と思い知らされ落ち込こんでしまう。それでも彼らを助けようと身を投げ出す人たちには本当に頭が下がる思いだ。

しかしこうした厳しい現実に心を痛めつつも、サラとニックとの10年愛ストーリーのほうが「・・・」だったので、結局中途半端な気持ちで見てしまった。原題が『BEYOND BORDERS』なのに邦題が陳腐だなぁと思ってたんだけど、最後まで見て、この邦題のほうが合ってると思いましたよ。ホント、最後は救援活動よりも愛のほうが勝ってたからね。
救援活動に従事してる人は清廉潔白でなければならない、とは思わないけど、サラとニックの行動はちょっとおかしいと思った。ニックは何人もの難民たちを救ったけれど、一方では大切な人たちを亡くすきっかけをいくつも作っている。サラはサラでとんでもないことをしてるし。(ネタバレ)ニックの子供ができた時点で旦那とは別れるべきじゃないの?何で普通に誕生会を楽しそうにやってんだよ。(ここまで)一番可哀相なのはサラの旦那だよなぁ。しかも何のフォローもなくてなぁ。今回のライナス・ローチはとても不憫だったわ。私は貴方の味方よ!と言いたいところだが、クライヴ・オーウェンもカッコ良くてねぇ〜。羨ましいぞサラ!(何だかんだ言って結局そういうオチですか)
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カレンダー・ガールズ('03アメリカ)-Nov 2.2003─東京国際映画祭2003オススメ★
[STORY]
イギリス、ヨークシャーの田舎町。町の婦人会では毎週退屈な講演会が開かれていて、クリス(ヘレン・ミレン)はそこでいつも問題を起こしていた。ある時、親友とアニー(ジュリー・ウォルターズ)の夫が白血病で亡くなった。彼女を励ますため、また病院に座り心地のよいソファを寄付するため、クリスは自分たちのヌードカレンダーを作って寄付金を集めようと思いつく。
監督ナイジェル・コール(『IN THE WILD〜野生への旅〜ジュリア・ロバーツ with オランウータン』など )
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実話を元に作られたアメリカ資本(ブエナビスタ)のイギリス映画。東京国際映画祭2003コンペティション作品であるが、2004年初夏に一般公開が決まっているそうだ。

寄付金集めのために文字通り一肌脱ぐオバチャンたちのコメディ。“女性版『フル・モンティ』”なんて表現をよくされているけど、『フル・モンティ』と同じくらい笑わせてもらった。一見慎ましく見えるオバチャンたちの、企んでいる時のいたずらっぽい含み笑いが最高!カレンダーができあがるまでのシーンは文句のつけようがないほど面白かった。ヌードとはいっても大事なところは隠している写真で、モノクロのせいか思ったよりもずっと綺麗で芸術的な写真に仕上がっているのもいい。日本でも発売したらすごく売れそうだ。

しかし一点だけ不満がある。(ここから少しネタバレ)ハリウッドに招かれてからのシーンでいきなりテンションが下がってしまったことだ。ハリウッドに行くシーンも、クリスの行動もアニーの言葉も必要なシーンだと思う。ただカレンダーが売れて良かったねーで終わらないところがこの映画の素晴らしいところだと思うのだが、あそこでハリウッドのシーンがプッツリ終わってしまったのは非常に残念だった。「英国の女をなめんなよ!」とばかりにハリウッドのエロオヤジたちをコケにして帰ってきてくれたらスカッとしたのになぁ。アメリカ映画だからダメだったんですかね。イギリス資本だったらひょっとしたら・・・。(ここまで)

この映画の監督ナイジェル・コールは、この映画の前に『Saving Grace』というブレンダ・ブレッシン主演のガーデニング映画を撮っていて、この作品がまたすごく面白いらしい。本作の公開を機に、こっちの映画も一般公開、もしくはビデオ化してくれないかなぁ。ぜひ見たいよ〜。
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謎の薬剤師('02フランス)-Nov 1.2003─東京国際映画祭2003
[STORY]
タンカーの原油流出事故を起こした船主が原油まみれの死体となって発見された。担当の刑事フランソワ(ギョーム・ドパルデュー)は、この事故の時にボランティアとして海の清掃をしたほどの環境保護論者で、たまたま出席した集会でヤン(ヴァンサン・ペレーズ)という薬剤師と知り合いになる。2人は意気投合するが、実は船主を殺したのはヤンであった・・・。
監督&脚本ジャン・ヴェベール(長編初)
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東京国際映画祭2003コンペティション作品。日本での公開は未定。
監督のジャン・ヴェベールは『メルシィ!人生』などを監督しているフランシス・ヴェベールの息子だそう。

一応サイコ・サスペンス・・・なのかな。でも妙に笑えるシーンがあったり、ヤンとフランソワの関係が微妙(笑)だったり、何だかとても不思議な映画だった。まぁはっきり言ってしまうと、一般公開はないだろうと(笑)映画祭だからこそ見られる映画という感じですな。貴重だ(それ誉めてんのか?)

しかしフランス人が猟奇的な映画を作るとどうしてこうもヘボくなってしまうんだろう。『シックスパック』と同じような匂いがすると言えば分かりやすいかな。いや、まだ本作のほうはちゃんと笑わせようとしてるし皮肉も効いてるし、アメリカのサスペンスとは違う独特の雰囲気を出そうとしてる分だけ良かったとは思う。ただラストは平凡すぎたね。甘すぎてオープニングとは別の映画みたいだった。ここが一番のマイナス。でも次回作もまたサスペンスを作って欲しいなぁ。そのかわりもう少し脚本は練ってから出してくれってことで(笑)

それにしてもペレーズは昔は本当に美しかったんだが、今の頬のたるみ具合だとかデコの成長具合を見ると時の流れって残酷だわ。でも今回の役は昔ならできなかったと思うし、フランス映画祭の時も思ったけど、今のほうが気さくでいい人に見えるので、私は今のほうが好きだな。
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キル・ビル Vol.1('03アメリカ)-Oct 26.2003
[STORY]
暗殺者集団のエージェント、通称ザ・ブライド(ユマ・サーマン)は、4年前、自分の結婚式の最中に かつてのボス、ビル(デヴィッド・キャラダイン)に襲われて昏睡状態となった。 奇跡的に目覚めた彼女は、夫や友人、そしてお腹にいる子供までも奪ったビルに復讐するため、 剣豪・服部半蔵(千葉真一)のいる沖縄へと向かった。
監督&脚本クエンティン・タランティーノ(『ジャッキー・ブラウン』
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2部構成の第1部。『ロード・オブ・ザ・リング』の時もそうだったけど、チラシやポスターに小さくVol.1とは書いてあるけどさ、意図的に隠してるところあるでしょ。上映終了後のざわめきが指輪の時と同じだったな。見るほうも少しは情報仕入れろよとは思うけど、できるだけ情報入れないで見たい人もいるだろうし、はっきりタイトル書いときゃいいのに。2回も見に行かなきゃならないのが面倒で止めちゃう人も取り込もうってことだろうが、そんな客は放っておけばいいさ。

とキツイことを書いてしまったが、映画そのものはあんまり面白くなかったなー(これもキツイか)1本を2本に分けて上映することになったことで、逆に映画が間延びしてしまったと思う。ワタシ的には3時間越えてもいいから1本に纏めて欲しかった。ザ・ブライドが昏睡から目覚め、アメリカから日本、そしてまたアメリカへと旅する復讐劇。超個性的な敵との戦いを一挙に楽しめる贅沢品になっただろうに、水増し感が否めない。特に日本のパートが冗長だった。

日本の描写がおかしいから気に入らないとか、そういうことは全然思わなくて、単にアニメが長すぎることと、青葉屋での殺陣が長すぎたことがつまらなかった原因だ。単調すぎて『マト・リロ』のネオvs100人スミスより飽きちゃった。日本刀を振り回すユマ・サーマンが全然カッコよくなかったのもいけない。日本人の殺陣と違うからじゃない。違ってたってカッコ良ければオールオッケイなんだけど、腰の位置が高すぎるのかねぇ。棒みたいでカッコ悪かった。栗山千明は思ったより良かったけどね。

噂によるとVol.2は1とは全然違うみたいなので、こちらに期待しておこう。ダリル・ハンナ演じるエル・ドライバーとの対決が楽しみ。

Vol.2の感想はこちら
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