Movie Review 2004
◇Movie Index

スクール・オブ・ロック('03アメリカ)-Apr 29.2004
[STORY]
ロックバンドのギタリストを務めるデューイ(ジャック・ブラック)は、ライブ中の行き過ぎたパフォーマンスでメンバーたちに嫌われ、バンドをクビになってしまう。おまけにルームメイトのネッド(マイク・ホワイト)からもこのまま家賃を滞納するなら出て行けと言い渡される。そんな時、ネッドに掛かってきた代用教員依頼の電話を取ったデューイは、彼になりすまして金を稼ごうと企む。そして小学校5年生の担任となるが、彼らの音楽の授業での演奏を聞いて、バンドを組もうと思いつく。
監督リチャード・リンクレイター(『恋人までの距離』)
−◇−◇−◇−
脚本はネッド役のマイク・ホワイト(ジェニファー・アニストン主演の『グッド・ガール』の脚本も手がけている)で、デューイ役は初めからジャック・ブラックのイメージで書いたそうだ。そのJ・Bは2003年度のゴールデン・グローブ賞のコメディ部門主演男優賞にノミネートされた。

クラブシンガーが真面目なシスターたちに歌う喜びを教える『天使にラブ・ソングを・・・』1作目のロック版な趣き。この手の映画が大好きなので、本作ももちろん楽しめたんだけど、序盤から中盤まではあんまり面白くなかったな。つーか、家で見てたら席を立つか早送りしたかも。デューイがやっぱりウザ過ぎた。『愛しのローズマリー』の時と同じく、最低野郎から最高のロッカーへと変貌していくのだから彼の演技は間違ってない。ただ最低野郎モードの時はやっぱり生理的に苦手なんです。

ストーリーにおいても細かいところが気になってしまった。合唱なら全員が参加できるけどバンドだと限られた生徒だけが参加になるから、裏方に回された他の生徒たちが気の毒になってしまったし(後に裏方でも活躍するけどね)生徒たちも優秀な割にはデューイのことを本物の先生だと疑わず、彼のおかしな提案に素直に従ってしまうのも不思議だった。いくら子供だってデューイがやろうとしてることが普通じゃないことくらい分かるでしょー。デューイに対して疑問に思ったり反発したり、親や先生たちに暴露しようかと迷うものの、次第に彼のペースに嵌ってロックに目覚めていくっていう展開ではいけなかったのかなぁ。

でも子供たちのキャラクターや役割が見えはじめてからは面白くなった。ジョーン・キューザック演じる校長が本音を漏らすシーンもいいし、デューイが自分に才能がないことを認め、生徒たちを誉めるところはホロリときた。もちろんライブシーンも最高。オーディエンスと一緒になって「スクール・オブ・ロック!」と叫びたい衝動にかられたほど(笑)欲を言えば、全員デューイと同じ制服が良かったなぁ。あれ可愛い。エンドクレジットの最後の最後まで楽しめる作品だった。
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キル・ビル Vol.2('04アメリカ)-Apr 24.2004
[STORY]
Vol.1の続き。
5人のうち2人を倒したザ・ブライド(ユマ・サーマン)は、ビル(デビッド・キャラダイン)の弟バド(マイケル・マドセン)の元へ向かう。今は殺し屋を辞め、トレーラーハウスで酒浸りの生活を送るバドだったが、ザ・ブライドの殺気に気付き、彼女を捕まえる。そして彼女が持っていた日本刀をエル・ドライバー(ダリル・ハンナ)に売りつけようと呼び寄せる。
監督&脚本クエンティン・タランティーノ
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2部構成の第2部。1部はアクションシーンが中心だったが、本作ではビルとの関係や過去が明らかになる。日本公開版のタイトルに“ザ・ラブ・ストーリー”とか“KILL is LOVE”って付けられて、また配給会社得意の釣りか?と思ったんだけど、見終わって確かにラブに間違いはないなと思いました。いろんな意味でラブ・ストーリーでした。

Vol.1が好きだった人はVol.2はいまいちで、Vol.1がいまいちだった人はVol.2のほうが好きだろう、という噂を聞いていたのだが、まさにそうだった。私はこっちのほうが断然面白かった。前作で感じた水増し感が本作では感じられなかった。長ったらしいアクションよりも、長ったらしい会話のほうが飽きなかったよ。下らないことを喋ってるのに適度に緊張感があって、いつ立ち上がって戦いが始まるのかとやきもきさせられた。また、ユマ・サーマンのカッコ悪いアクションも少なめだったのが良かったんだろうな。前作はダメなところでハラハラしちゃったので。

ストーリーの構成も前作よりいいと思った。ザ・ブライドがバドに捕まった時に挿入される過去のシーン。何でこれを細かくやっていくんだろう?と疑問に思ったが、それが後のシーンの伏線になっていて、彼女の窮地を救うのだ。そしてビル、バド、エルのキャラクターも深く描かれていて面白かった。Vol.1ではオーレンの過去をアニメで延々と説明したが、なぜか薄っぺらく感じたんだよね(日本語で延々語らせることができなかったから、ああいう形になったんだろうが)前の3人は喋らせることでキャラクターに奥行きが出たんだと思う。何度か見直してみると、あの喋りにも何か意味があるのかもしれない・・・。

この2部構成の映画がもし1本だったら――と想像してみたが、やっぱり想像つかないな。これだけ両方とも長いと、いくらVol.1のアクションを削ろうが、Vol.2の会話を削ろうが、やっぱり無理だったと思う。2本にしたのは正解ということか。でも1本の『キル・ビル』もやっぱり見てみたいなぁ。
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みなさん、さようなら('03カナダ=フランス)-Apr 24.2004
[STORY]
ロンドンの証券会社で働くセバスチャンは、カナダにいる母から電話が掛かってくる。大学教授の父レミ(レミ・ジラール)の具合が悪いので帰ってきてほしいという。父とは両親が離婚してからはほとんど会っておらず、社会主義者の父はセバスチャンの仕事にも否定的だった。会いたくないと一旦は断るものの、母のために仕方なく婚約者を連れてカナダへ戻ってくる。しかし父の病が手遅れで、死が近いことを知ったセバスチャンは、病室を移らせたり父の友人たちを呼び寄せる。
監督&脚本ドゥニ・アルカン(『アメリカ帝国の滅亡』)
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2003年アカデミー賞外国語映画賞受賞。同年のカンヌ映画祭でも脚本賞と最優秀女優賞(ナタリー役のマリー・ジョゼ・クローズ)を受賞した。カナダ映画だけど、ケベック州モントリオールが舞台なので、言語はフランス語だ。

予告の父子の会話でドッと泣いてしまって、期待して見に行ったんだけども・・・なんかちょっと違いました(笑)意外とシニカルな内容だったな。これはこれで面白かったけれども。

常に毒舌で資本主義に異議を唱え、ワインを愛し、何人もの愛人を作ってきた50代半ばの大学教授。その男が末期ガンで余命いくばくもない。そんな父に息子は最高の最期を作ってあげるのだ。始めレミは社会主義だの何だの文句を言いつつも、結局はセバスチャンが与えるものすべてを享受するダメオヤジとなってしまう。セバスチャンの金の使い方がまた汚いんだ。カナダの病院事情までも皮肉ってて怖かったくらい。さらに金だけじゃない。ガンの痛みを和らげるのにヘロインを使うというアドバイスをするのはアメリカの医者だし、レミが航海中の娘のビデオメールを見るのはSONYのVAIOだ(笑)レミ本人からしたら最大の屈辱を死に際に受けているのである。本人は気づいていないか、もしくは気づいていても気にしないのか?自分にとって一番いい死に方ができれば、ポリシーなんてもう関係ないだろ?ってことを言いたいのかもしれない。いや、死ぬのにもやっぱり金が掛かるんだぞってことを言いたいとか?(笑)いや、これは本当の話だよね。お金掛かります。

フランス語圏のカナダ人で、レミと同年代の人が見たらものすごく面白い映画なんだろうなーというセリフやシーンがたくさんあって、日本人の自分には理解できない、正直言って退屈と感じる部分が多くて残念だった。レミの生き方にも共感できる部分も少なかったしね。
ただ収穫(?)もあった。レミが人間が犯してきた殺戮の歴史をシスターにまくし立てて神の存在意義を問うのだが、それに対して彼女は「だからこそ人間を許す神が必要なのでしょう」と言うのだ。シンプルな言葉だが深い。レミがいくら小難しいことを並べ立てても、この一言には敵わない。複雑そうな世の中の仕組みの、一番ベーシックな部分かもしれない。このシーンが一番印象に残っている。メモしときたい言葉だ(笑)
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ディボース・ショウ('03アメリカ)-Apr 14.2004
[STORY]
L.A.で一番と言われる弁護士マイルズ・マッシー(ジョージ・クルーニー)は離婚訴訟の専門家。そこへ浮気現場を押さえられた不動産王が泣きついてきた。彼は慰謝料を払わずに妻のマリリン(キャサリン・ゼタ=ジョンーズ)を追い出したいというのだ。マイルズはマリリンの美貌に参りながらも、弱みを握ろうと彼女を食事に誘う。
監督ジョエル・コーエン(『バーバー』
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カリフォルニア州では結婚している間に築いた財産は、どちらが多く稼いだとかに関係なく共有財産になるんだそうだ。離婚する時も財産は半分ずつ分ける。だから財産目当てで結婚する者が少なからずいるという。そんな者たちから財産を守るため、婚前契約“プリナップ”を結んで自分の財産を守るんだそうだ。そんなややこしいことをする前に、自分の相手が財産目当てなのかどうか自分の目で判断しなさいよ、と言いたくなるんだけど分からないものなのかしらねえ。

『オーシャンズ11』を見た時に、ジョジクルの相手役ならジュリロバよりゼタだろ、と思ったが、やっぱりこの2人めちゃくちゃお似合いだ。まるでアワビとフカヒレの姿煮みたいなカップルですよ(←ヘンな喩え)お色気満載の2人の会話とゴージャスな衣装やセットにうっとりしすぎて、コーエン兄弟の映画だということを、マイルズの上司が出てくるまですっかり忘れてしまったほど。彼らの映画特有の変人脇役が出てなければオシャレラブコメといっていい作品かも。コーエン兄弟映画ファンからすると物足りないと思うかもしれないが・・・。

確かに物足りない部分はある。ジョジクルはまたしてもダテ男役だけど、『オー・ブラザー!』の時よりもいまいちノリきれてないように感じた。マイルズのおマヌケぶりに納得いってない部分があるのでは?と思ってしまったのは考えすぎだろうか。またマリリンがなぜこんなにもお金に貪欲なのかをもう少し描いても良かったんじゃないかな。別に深刻な理由(生い立ちとか)は必要ないけど、理由が分かってれば彼女の行動をもっと面白く見れたと思う。ああ、でも2人並んだシーンはホントに素敵だった。まるでアワビと(以下略)
しかし本作の一番の功労者はビリー・ボブ・ソーントンですな。訛りのきっついテンガロンハット姿から、○○姿まで、実にこの映画の趣旨に沿って忠実に演じていて、なおかつ彼自身をしっかりと見ているほうに印象づけた。いい仕事しました(笑)
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ドラムライン('02アメリカ)-Apr 14.2004
[STORY]
ニューヨークの高校を卒業したデヴォン(ニック・マイルズ)は、ドラマーとしての才能を買われてアトランタのA&T大学の特待生として入学する。そしてマーチング・ドラム部に入部するが、傲慢な態度が災いして上級生とトラブルを起こす。また、リー監督(オーランド・ジョーンズ)に認められてドラムラインのメンバーに選抜されるが、ライバル校と揉め事を起こして監督を激怒させてしまう。さらにデヴォンの意外な弱点が発覚してしまい・・・。
チャールズ・ストーン三世(監督2作目で本作は日本公開初)
−◇−◇−◇−
アメリカでは、スポーツ競技のハーフタイムにマーチング・バンドが演奏とパフォーマンスで相手チームと競い合い、観客たちを楽しませる。チア・リーディングもすごいけど、こちらもこんなにすごいものとは思わなかった。演奏しながらダンスを踊るというよりも、ダンサーが演奏をしてるって感じ。チューバやバス・ドラムみたいな大きな楽器の演奏者でも、飛んだり跳ねたり転がったりと、本当に演奏できてるの?!って思うくらい。演奏パフォーマンスはとにかく素晴らしいので、そこだけは必見。ドラマ部分は悪いけどどうでもいい。

主人公のキャラクター設定はもう少しどうにかならなかったんだろうか。母親思いの優しい子で、別れた父親に反抗、自分の才能に溺れた傲慢さを見せつつ、一目惚れした女の子には甘えん坊。ことあるごとに揉め事ばっかり起こして、ドラマを進めるために彼にわざとトラブルを起こさせているみたいで全然面白くない。入部した部の方針が理不尽で、納得できないから反抗したっていう設定なら分かるよ。最初っから何で彼はあんなに偉そうだったのかホントに分からない。おまえ何しに来たの?って言いたくなったわ。楽器を持たせれば、ドラマ部分もスポ根みたいで面白かったんだけどね。楽器を持ってないシーンはホントに酷かった。

私は音楽はさっぱりなので素人の感想なんだけど、クライマックスの戦いについてこう思った。 (ネタバレ)相手校のラッパーとの共演は、ラッパーばかり目立っててダメだと思ってた。 A&Tのほうが綺麗に纏まってたし。同点だったのはどうしてか分からない。で、ドラムラインは相手校のほうが 良かったような気がする。結局スティックをたくさん持ってるほうが勝ちってことなのかしら(いや違うだろ)(ここまで)

デヴォンが主人公じゃなく、かつドラマがしっかりしていれば、続編というかシリーズとしてもう1本作ってもらいたいな。これ1本だけじゃ勿体無い。あ、リー監督とライバル校の監督はそのままで。彼らの第2ラウンドとして是非とも(笑)
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