Movie Review 2002
◇Movie Index

模倣犯('02日本)-Jun 9.2002
[STORY]
豆腐屋を営む有馬義男(山崎努)は、夫と別居状態になった娘の真知子、孫の鞠子の3人で暮らしていたが、10ヶ月前から鞠子が失踪し、真知子は精神的に不安定になっていた。そんなある時、公園で女性の右腕とショルダーバッグが発見された。そして犯人からTV局宛に犯行声明が届き、メディアを大混乱に陥れる。しかし事件は急展開する。何と犯人が交通事故で死んでしまったのだ!これで事件は解決したかにみえたが、犯人の1人は無罪であり、真犯人は別にいると主張する網川浩一(中居正広)という男が現れた。
監督&脚本・森田芳光(『黒い家』
−◇−◇−◇−
原作は宮部みゆきの同名小説で、私は映画化が決まる前から読んでいて、しかも夢中になった本だ。だから原作と比べるなと言われてもそれは難しい。でも原作の通りじゃなきゃダメだなんて思ってない。あの分厚い本を2時間程度の映画に纏めるのははなから無理な話であるし、表現方法が小説と映像では全く違う。だから“オレ解釈”入るのは全然OK。それで映画として、原作とはまた違った良さや面白があるのなら何の文句もない。

でもはっきり言っちゃうと、いいところはほとんどなかった(ははは)あれから3年も経つというのに、全然進歩がないです森田芳光。やってることは『黒い家』と同じで、あまりのワンパターンぶりに呆れました。前半はほぼ原作のダイジェストで進行し、後半はポップでキッチュで(笑)最後にドカーンという。見た人が唖然するという例のアレも『黒い家』のクライマックスで飛んだボーリングのボールと同じですよ。さらにそれより脱力度は高いけど。あれじゃ木村佳乃も泣くよな(違うって)

コンセプトに関しては私が予想した通り、アナログvsデジタルを描いた部分があり、携帯で実況だとか、ネットの書き込みも出てきたりするんだけど、それが『(ハル)』並に古い。ちっとも“今”を描いてない。オヤジが無理やり背伸びして(いや、この場合は無理やりしゃがみこんでか?)作ってる感じ。TVのワイドショーシーンにしても劇中流れるCMにしても、普段TV見てないでしょ?と言いたくなるような古臭さでちっともリアルじゃない。これを見て現実とダブることなんてありえない(←そういう宣伝文句があったので)

オヤジが無理やりといえば、犯人の1人を演じた津田寛治である。高校生を演じた阿部サダヲとどっちが見てて恥ずかしいかと聞かれると迷うほどに恥ずかしい。中居正広もだが、2人ともデジタルな人間には全く見えないのね。中居を起用した時点で正直言って「うーん」と思ったが、バラエティなどで見る“カメラ抜かれたらとりあえず笑っとけ”みたいな笑顔を見るにつけ、こういうピースもありかも、と思うようになっていた。アイドルスマイルでメディア露出をしながら、裏では何も考えずに人を殺している怖さが出ればな、と。でもそんな期待さえ打ち砕かれたよ。オデコ出したりメガネかけたりって、なんで作りこんだの?それがリアリティをなくしてむしろギャグだし、老けて見えるから尚更デジタルから遠かった。

山崎努でさえ映画のコンセプトからは外れているように見える。有馬は一見豆腐を作る以外に取り得のない平凡な老人に見えなければならないわけで、それが山崎という時点ですでに一筋縄ではいかないことは明白。さらにビールのCMでCGまみれになっているのを見てるせいか、アナログ人間にも見えない。決定的だったのは、犯人から呼び出されて高級ホテルのバーで待たされるシーン。あそこは周りから浮いてみえなきゃいけないのに、堂に入ってて違和感ないです(笑)若い女の子しかいないカフェを待ち合わせ場所に指定すれば羞恥プレイになったのに(笑)あ、でもラストシーンの演出は、山崎本人にとって究極の羞恥プレイかもね。お気の毒です。
山崎を除いては演技力云々よりもまずその人が持つキャラクターやタレント性で起用している場合が多いわけだから、作るほうもそちらに合わせたほうがいいと思うんだな。そういうところに“オレ解釈”を使うべきじゃないだろうか。

また、プロデューサーやスタッフは森田と意見交換できてるんだろうか?というのも見ながら思った。(ネタバレ)カズが実は寝てなかったシーンで、睡眠薬を歯茎に挟んだと言ってたが、ピースたちは睡眠薬を錠剤で与えたの?気付かれないようにするなら液体とか粉末にして飲み物に混ぜない?サプリメントなどと偽って与えたならそういうシーンを入れるべきでは。ただの脚本ミスかと思ってしまう。また背の高い女の拉致に手間取るシーンで、女が背が高いからやめろって、伊東美咲はデカくないんですかね?さらにマスコミを恐れて逃げてきた由美子の化粧がケバすぎやしないか?とか真一は演技云々の前に髪を切れ!とか、誰か気付いてフォローしてやれ(泣)(ここまで)

最後に、解明されないいくつかのエピソードがありましたが、これを“謎”と称してそれこそネットで議論してくれれば儲けもの、という小賢しい狙いがミエミエなので、私は流すことにします。ザバザバー!
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少林サッカー('01香港)-Jun 1.2002オススメ★
[STORY]
人気サッカー選手だったファン(ン・マンタ)は、八百長試合をしたことがきっかけて大怪我をし、今は元チームメイトで現在サッカー界を牛耳るハン(パトリック・ツェー)の雑用係をしていた。しかしハンが八百長試合を仕掛けた張本人だと知り、彼を見返すために自らサッカーチームを作る決意をする。そして街でシン(チャウ・シンチー)という少林拳の達人と出会う。彼のキックに驚愕したファンは、シンにサッカーチームを作ることを持ちかけた。
監督&脚本もチャウ・シンチー(『食神』)
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涙出るほど笑った!とにかく何も考えず「それはおかしいじゃないか」などと無粋なツッコミを入れずに素直に楽しむべし。

・・・と言いながら、実はサッカーチームができるまでのシーンで、どこが面白いのかなぁ?と思ったところがいくつかあった。笑いの取り方がしつこいというか・・・泥臭さもあいまって、ちょうど吉本新喜劇にハマれる人とそうでない人がいるように、ちょっと引いてしまうところがあった。特にビール瓶で何度も頭を殴るのは笑えなくて嫌だったな。でも卵のシーンは好きだったりする(笑)

これでもか!というくらいCGの使い方がド派手で、こういう映画では使い方は間違ってないと思いますよ。最近は「えっ?これがCGなの?」というくらい自然な使い方が多いけど、どう見てもCG、っていうのがこれほど笑いが取れるものとはね。まるでアニメ、いや少年マンガのようなパワー溢れる映像で、これは何度でも見たい。でもあとで知ったんだけど、缶ビールがめり込んだ壁や、風で髪の毛が吹っ飛ぶところもCGだとは気がつかなかった。分かるCGと分からないCGをきちんと使い分けてるとは!

で、気になったんだけどさ、饅頭屋に登場する作曲家志望の男、あれはフルCGキャラなんすかね?(ジャージャピングスとかゴラムみたいな・・・違うの?!(笑))
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愛しのローズマリー('01アメリカ)-Jun 1.2002
[STORY]
ハル(ジャック・ブラック)は「若くてセクシーな女だけがこの世のすべてだ」という父の遺言を守り、外見のいい女ばかりを追いかけていつも失敗している。しかしある時、精神治療の専門家と偶然出会い、 心の綺麗な人の外見まで美しく見えるようになる催眠術をかけられる。そして街で見かけた美しいローズマリー(グウィネス・パルトロウ)に一目惚れするが、実際の彼女は体重が136キロもあった!
監督&脚本ボビー&ピーター・ファレリー兄弟(『メリーに首ったけ』
−◇−◇−◇−
父親の遺言がトラウマとなり、ルックスのいい女しか目に入らないブサ男が、ある日突然とんでもなく太った女に恋をするコメディ。ファレリー兄弟なので、もっとお下品でキツいオチをかますのかと思っていたら、意外に正統派でした。しかも途中で感動して泣いちゃいました。ちょっと恥ずかしかった(笑)

グウィネスが美女なんですか?っていうツッコミがあるかもしれないが、ローズマリーはハマリ役だと思った。戸惑いながらのはにかみ笑いがとても可愛らしいし、スカートがまくれ上がって下着まで見せちゃうところもすごいと思った(笑)

そしてハルを演じたジャック・ブラックを見るのは私は初めてだったんだけど、最初はもう「あんた女の好みを言う前に鏡見ろ!」と突っ込まずにはいられないくらいウザイ男だったのが、だんだんいい顔に見えてきて驚いた。彼はもちろん特殊メイクしてたわけじゃない。ローズマリーと出会ったこと、そして催眠が解けて全てを理解したことで、彼の内面が変わった。それが顔にも表れたわけだ。だからここで矛盾してしまうのだけど、性格って顔に出ると思うんだよね。たとえ美形でなくても、仕事やプライベートが充実してるとすごくいい顔に見える。だから映画だから誇張されてるとはいえ、催眠をかけられていた時に見えていた顔と、解けた時の顔がまるっきり違うなんてありえないと思うんだよね。根本的なところを突っ込んでしまってごめん・・・。でも逆に言えば、ハルにとって父の遺言が催眠だったかもしれない。ルックスのいい女以外は見えないようになっていたのでは。

一歩間違えると非常に不快な作品になりそうなところを、笑わせたり感心させたりすることでうまくバランスを取っていて、何度見ても面白いと思うだろう。でも素直に大好き!って言えない空気も醸し出してる作品ではある。ホントに微妙なんだな。それはやっぱりルックスだとか障害が関係してくるわけで・・・(以下省略)
でもエンドクレジットは最後まで見ましょう。おまけ映像あり!
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パニック・ルーム('02アメリカ)-May 25.2002
[STORY]
マンハッタンの高級住宅地に離婚したばかりのメグ(ジョディ・フォスター)と娘のサラが引っ越してきた。この家には“パニック・ルーム”という緊急時の避難用スペースがあり、前に住んでいた大富豪が作ったものらしい。その日の夜、その大富豪の親戚だったジュニア(ジャレット・レト)は、バーナム(フォレスト・ウィテカー)とラウールと共に、パニック・ルームに隠されている遺産を盗み出そうと、家に侵入してきた・・・!
監督デビッド・フィンチャー(『ファイト・クラブ』
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一言で言うと“普通”(ひょっとしてこれが一番の貶し言葉?)
鑑賞後はちょうど『ゲーム』を見終わった時と同じような脱力感のみが残る。満足感はあまり得られない。

オープニングのタイトルバックは面白い。文字がマンハッタンの街に実際に浮かんでるように見えるもので、これでプリントTシャツ作ってほしいなぁと思うほど(笑)また、メグたちが住む家の中を、クレーン使ったりCGで繋いだりしながら縦横無尽に走らせるカメラワークもよい。これを見せられて期待しないわけがないでしょう!・・・でも脚本がひどすぎました。

一番の失敗は強盗3人がバカ過ぎること。特にジュニアは最悪で、ジャレット・レトが気の毒。彼は『ファイト・クラブ』でも顔をボッコボコにされ、今回も酷い目に遭っているが、監督は彼が好きだけど嫌いなのだろうか(笑)バーナムは人殺しをしたくないといいながらパニック・ルームにガスを送り込むようなヤツだし(これは別の人がやるべきだったのでは?)いくら脅すだけとはいえ、命にかかわる危険性大。やってることは一番鬼畜ですよ。そして目出し帽姿が無気味で凶暴に見えたラウールは、それを取った途端に性格変わってますがな。
「ジョー・ペシが・・・」というセリフにもあったように、この映画はフィンチャー版『ホーム・アローン』なんだろうけど、強盗のレベルまで一緒でなくてもいいのに。

またメグの行動もおかしい(ここからネタバレ)警察への電話が繋がった時、もっと冷静に状況を伝えていれば、すぐに警察が来たんじゃないかなぁ。すぐに電話を切って元夫に掛けたのが腑に落ちない。同じように警察が訪ねてきた時に、どうせ声は聞こえないんだから警察に喋っても良かったんじゃないかな。娘の命を考えてというが、あとで平気で監視カメラ割るくらいの大雑把な性格のくせに(苦笑)あれじゃあ元夫が気の毒。まぁメグ的に彼に復讐できたからよし?(ここまで)

ジョディは今回も手堅い。この人の演技は上手いというより手堅いという印象があり、あまり好きではないのだが、あとで撮影時に妊娠中だったと聞いてビックリ。だから胸が(笑)彼女の娘役の子は最初男の子かと思うほどキリッとした顔立ちで、誰かに似てるなぁと思ってたんだけど、まさにマコーレー・カルキンに似てません?(『ホーム・アローン2』の頃のね)・・・私だけかな(笑)
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ノー・マンズ・ランド('01フランス=イタリア=ベルギー=イギリス=スロヴェニア)-May 25.2002
[STORY]
1993年。ボスニア軍の兵士達が霧の中で道に迷い、セルビアの領地まで入りこんでいた。攻撃を受けた兵士たちはほとんど殺されてしまい、唯一生き残ったチキ(ブランコ・ジュリッチ)はボスニアとセルビアの中間地帯の塹壕“ノー・マンズ・ランド”に辿りつく。セルビア軍は生存者を確かめるためにベテラン兵士と新人のニノ(レネ・ビトラヤツ)を塹壕へ送る。2人は死んだボスニア兵の身体の下に地雷を仕掛け、引き上げようとしたが、チキが2人を撃ち、ニノは怪我をし、ベテラン兵は死んでしまった。そして地雷を仕掛けられたボスニア兵が実は生きていて、彼が動けば地雷が爆発してしまうという事態に・・・!
監督&脚本ダニス・タノヴィッチ(ドキュメンタリー作品を経て長編デビュー)
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ひょんなことからどちらの領地でもない塹壕に取り残された1人のセルビア兵と2人のボスニア兵。そのうちの1人は身体の下に地雷を仕掛けられ、3人は動くに動けない状況になる。そこにやってくるのが、あくまでも中立の立場の国連防護軍。そして事態を嗅ぎ付けたマスコミまでが群がってくる――。

戦争映画というと派手なドンパチを見せ場にしながら兵士たちの心情を描いたものや、戦いに巻き込まれた一般市民たちの心情を描いたものなどが多いけれど、この作品はどれにも当てはまらない。まず第一に主役がいないのだ。最初はチキが主役で彼の視点で描かれるのだろうと思った。次にチキとニノの2人が主役であり、次第に彼らが壁を取っ払って友情を深めるのだと思った。でもそれらはことごとく裏切られ、誰に感情移入することもなく、というかさせてもくれず、まるでただ傍観者としてそこで見てろと言われてるかのよう。そして最後に、あのラストを見せられるのである。こんなツライ映画はない(苦笑)

しかも笑えるのだ。笑ってはいけない深刻な問題を扱った映画であるのに、ちょっとしたセリフが面白い。思わず笑ってしまう。それは戦争を皮肉った笑いだったり、さまざまな国の人々が一同に会したところで交わされる会話や民族性だったりする。こんなシチュエーションが紛争と関係なければもっと笑えただろうに、彼らが集まった理由を考えればやっぱり笑えないのである。こんなツライ映画はない(苦笑)

セルビアとボスニアがなぜ争っているのかちゃんと分かってないし、説明されてもいまいちピンとこなくて(やっぱり宗教?)日本人の自分には、正直言って遠い話だし関係ないとさえ思うことがある。でも全く気にならないといえばそうではない。世界中で起こっている紛争が、いつか自分と直接関わりになるのではないかという心配はある。自分勝手かもしれないけどこれが本音。直接関わりが出てくるまでは、できれば傍観者でいたい。でも傍観者でいるということのも非常にツライ立場なのだと、この映画を見て分かったような気がする。
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