Movie Review 2007
◇Movie Index

300<スリーハンドレッド>('06アメリカ)-Jun 10.2007スゲエ★
[STORY]
紀元前480年。ペルシア帝国はスパルタを次なる標的に定め、ペルシア王クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)は服従するよう迫ってきた。これに対しスパルタ王レオニダス(ジェラルド・バトラー)はペルシアと戦うことを決意するが、戦争を預言者から反対される。実は彼らはペルシアから賄賂を受け取っていたため反対したのだ。レオニダスは掟を破り、たった300人の兵士でペルシア軍を待ち伏せするのだった。
一方、スパルタでは王妃ゴルゴ(レナ・ヘディ)がこの戦争を議会で承認してもらおうと、議員のセロン(ドミニク・ウェスト)を懐柔しようとする。
監督&脚本ザック・スナイダー(『ドーン・オブ・ザ・デッド』)
−◇−◇−◇−
原作は『シン・シティ』のフランク・ミラーの同名グラフィック・ノベル。紀元前480年のテルモピュライの戦い(スパルタを中心とするギリシア軍とペルシア遠征軍の3日間にわたる戦い)を描いたストーリー。タイトルの『300』とは、スパルタ重装歩兵の数(ギリシアの部隊総勢5200、対するペルシア部隊は210000だったらしい――Wikipediaより)

まさに動く劇画、という映画だった(『シン・シティ』では動くアメコミと書いたな)いろんな意味で最初から最後まで楽しませてくれた。多勢に無勢、玉砕覚悟、というだけで半官贔屓の日本人魂が熱くなってしまう。海岸に何艘ものペルシア軍が上陸するのを、岩陰からスパルタ軍が見るシーンの構図が、『硫黄島からの手紙』でアメリカ軍を待つシーンと似ていると思ったのは私だけだろうか。

劇画というよりマンガらしさやゲームのような面白さもたっぷり。「This is SPARTA!!!!」っていうセリフと強烈な蹴りとか、クセルクセス王の異様なデカさとか、そんなクリーチャーな敵ありえねぇぇぇーーー!でもスパルタもっと強いーーー!とか、一番若い兵士に兄貴風ビュービュー吹かせる奴がいるとか、嬉しいくらいにマンガでした。それに今まで苦手だったけでマッチョもいいかなって思うようになりました(てへ)半裸のスパルタさんたちが走るたびに筋肉がユッサユッサするのを見て、ウハ〜とかムッハー!とか大忙し(←大丈夫か?)男性は腹が割れてなきゃイヤだとすら思うように・・・(重症だな)

ただ、いくらマンガらしいとはいっても、主演の役者を思慮の浅い人物に描いてしまってはダメだろう。戦士になることを拒否されたエフィアルテス(アンドルー・ティアナン)が恨んでペルシア側につくというのは分かりきったことでしょ。だからもっと上手い断り方しなきゃいかんよ王様〜。妻は妻でどう見ても裏切る気マンマンのセロンの罠にあっさり引っかかっちゃうし。このダメ夫婦!(おい)せっかく見た目は雄々しい王と美しく賢しい王妃なのに。原作がその通りだったとしても、役者の魅力まで半減させてしまう行動を取らせたのは残念だった。

あと「自由のために戦う!」とか「歴史に名を残してやろう!」とか、現在を意識したセリフがちょっと鼻につくのだが、立派に名前を残してますよレオニダス王。チョコレート屋の名前で(いやそれ違うから)
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プレステージ('06アメリカ)-Jun 9.2007
[STORY]
19世紀末のロンドン。ルパート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベイル)はマジシャン見習いとして同じステージに立っていた。ある時、アシスタントだったアンジャーの妻が脱出トリックに失敗し死んでしまう。原因はボーデンにあるとアンジャーは彼を責め、マジック中のボーデンに怪我を負わせる。ボーデンもまたアンジャーのステージをぶち壊すのだった。互いに譲らない2人は瞬間移動のマジックで競い合うようになる。
監督&脚本クリストファー・ノーラン(『バットマン ビギンズ』
−◇−◇−◇−
原作はクリストファー・プリーストの『奇術師(The Prestige)』原作では舞台は現代で、ボーデンとアンジャーの曾孫がボーデンの著書とアンジャーの日記を読むことで過去が徐々に明らかになっていくという設定。2つを読み比べることで、それぞれの思い違いや誤解が浮き彫りになっていく。ラストが角川ホラー文庫みたいだったけど(笑)これはこれで面白かった。

映画では現代を一切出さず、アンジャーとボーデンの確執を時間軸をバラバラにして描くという、ノーラン得意の演出で観客に大掛かりなイリュージョンを仕掛ける(怪我をしているかしていないかで時間経過が判断できるところは『フォロウィング』に似てる)アンジャーもボーデンも奇術師としての大きな秘密を持っており、私は原作を読んでいたから分かっていたけれど、読んでない人には特にアンジャーの秘密には戸惑うかもしれない。

かといって既読の人にはつまらないかというとそうではない。ボーデンがアンジャーを殺した罪で投獄されるという映画オリジナルのエピソードが本作の軸になっており、この軸を中心に2人の過去や確執が徐々に明らかになっていく。2人の奇術師としてのプライドを賭けた戦いは、たとえ命の危機に晒されても決して怯まない。ボーデンは投獄されても秘密を明らかにせず、アンジャーに至っては・・・。ボーデンが「アブラカダブラ」と呪文を唱えた意味が分かった時にはゾクリとさせられたし、カナリアを使ったマジックと後のアンジャーの瞬間移動マジックがシンクロしていると分かった瞬間には愕然とした。脚色が上手かった。

ただこれは原作もそうなんだけど、相手の心も身体も傷つけて復讐し合うというのがイヤな話で、それを映像で見せられると小説よりもさらにエグい。ラストがハッキリしているところは映画のほうがいいけど。あとニコラ・テスラ(デヴィッド・ボウイ)が作り出した装置を受け入れられるかどうかで、この映画の好き嫌いが決まる・・・ような気がする(笑)私も映画しか見てなかったら「ありえない!」って怒ってたと思います、たぶん。
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あるスキャンダルの覚え書き('06イギリス)-Jun 6.2007ヨイ★
[STORY]
ロンドン郊外の中学校教師バーバラ(ジュティ・デンチ)は、新任の美術教師シーバ(ケイト・ブランシェット)に目をつける。彼女こそ自分の友人になる女性だと感じたバーバラは、その日から毎日彼女のことを日記に綴るようになる。そんなある時、男子学生同士の喧嘩の仲裁に入ったバーバラがシーバに感謝され、彼女の家に招かれる。シーバには年の離れた夫リチャード(ビル・ナイ)と2人の子供がおり幸せそうだったが、不安や不満もあることをバーバラに打ち明ける。バーバラはシーバとの友情がさらに深まったと思っていた。しかしある夜、バーバラはシーバが15歳の男子学生と逢っているところを目撃してしまう。
監督リチャード・エアー(『アイリス』
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原作はゾーイ・ヘラーの『あるスキャンダルについての覚え書き』1997年に35歳の女教師が13歳の少年を強姦したとして逮捕された「ルトノー事件」がモデル。脚本を『クローサー』のパトリック・マーバーが手がけた。第79回アカデミー賞では主演女優賞(デンチ)、助演女優賞(ブランシェット)、脚色賞(マーバー)、作曲賞(フィリップ・グラス)の4部門でノミネートされた。

脚本も完成度が高かったが、何よりデンチとブランシェットの演技が素晴らしかった。終盤は演出のせいかありがちなサイコ・サスペンスみたいな雰囲気になったが、安っぽくなる前に映画が終わって良かった。また音楽もいいところで畳み掛けるようなメロディで盛り上げる。音量が大きすぎて耳障りなところもあったけれど、こっちまで気分が高揚し、次にバーバラはどうする?結末はどうなる?と急かされてしまった。90分という長さもちょうど良かった。

シーバとバーバラ、どちらの女性に感情移入するかで感想も変わってくるかと思うんだけど、私はどちらかというとやっぱりバーバラでしたね。相手のことを考えずに無理強いしたり追い詰めるところは全く共感できないし日記を付ける習慣もないけど(あ、ブログは適当なことしか書いてませんから(笑))シーバに対する羨望と嫉妬の感情、そして独占欲に駆られるところは理解できた。みんなに人気のあるシーバと一番の仲良しはこの私よ、って小中学校時代にありがちな幼い考えだ。彼女は教師としては成熟しているが、内面はまだ子供っぽいところがある。日記に星マークのシールを貼るなんてきっと学生時代からずっとやっているんだろう。よく結婚して子供を産んで初めて大人になれると言うが、これは当たってると思う。私も子供っぽいところが抜けないから。・・・将来バーバラのようになるんだろうか自分(気をつけよう)

逆にシーバは浮ついたところがあるけれど、子供っぽさは感じなかった。教師として妻として(人としてもだが)ダメだっただけ。2人は似ていないけれど、2人ともまた同じことを繰り返しそうではある。バーバラはそれを予感させるラストだったが、シーバのほうだってまた別の男を好きになる可能性が十分にある。モデルだったメアリー・ケイ・ルトノーだって・・・。
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パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド('07アメリカ)-Jun 2.2007
[STORY]
幽霊船フライング・ダッチマンを操る悪霊デイヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)の心臓を手に入れた東インド貿易会社は、彼らを支配下に置き他の海賊たちを次々と撃破していった。このままではいけないとキャプテン・バルボッザ(ジェフリー・ラッシュ)は自分を含めた伝説の海賊9人を召還して対抗するしかないと、ウィル(オーランド・ブルーム)とエリザベス(キーラ・ナイトレイ)の前に現れる。そして9人目であるジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)を海底から救い出すべく、海図を持っているシンガポールの海賊サオ・フェン(チョウ・ユンファ)を訪ねる。
監督ゴア・ヴァービンスキー(『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』 『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』
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シリーズ3部作の完結編。キャラクターやアクションは楽しいけれど映画としては大味で、過去2作とも夢中になるような作品ではなかったが、やはり最後まで見届けたいと思って見てみた。

相変わらず話があっちこっちに飛びまくりで大雑把、製作者の中でストーリーをきちんと理解してる人は一握りしかいないんじゃないかと勘繰りたくなった(笑)ちょっと話を広げすぎたんでは。上映時間も1作目が143分だったのに2作目で151分、そして何と本作は170分!その割に味わいも満腹感もない。劇場で配られた『読本』なる解説が大変分かりやすくて、これを読んでようやく胃が落ち着いたという感じ。

キャラクターについては前作でタコ男、本作ではシンガポールの海坊主にジャックの父ちゃんなどさらに濃い人物が出てきたおかげで、準主役のはずのウィルの影が薄く(つーか前半映ってた?)彼の目的が何だったかすっかり忘れてしまっていた。後半になってようやく海賊らしい活躍を見せはじめたな〜とぼんやり見ていたが、ラストの精悍な顔つきに思わずドキッとしてしまいました。私の中では“いつまでたってもヘタレ王子”だったのに(←失礼だな)不覚だ。ま、登場人物の中で一番の男前はエリザベスなんだけど。ただ彼女は可憐さとお転婆が混在してた1作目が魅力的だったのに本作では・・・(遠い目)逆に本作で一番オチャメさんだったのがバルボッザとサルのジャック。彼らの演技だけでも見て良かったと思います。

3作見終わって、思ったよりもグダグダじゃなく(もっとヒドイかと思ってた)一応きちんと終わってくれたのでホッとした。エンドクレジット後の映像も毎回楽しかったしね。でもやっぱり私には3作とも微妙な作品でした。これはしょうがない。世界的には大成功のシリーズであるのは間違いなく、ディズニーランドのカリブの海賊にもジャック・スパロウを登場させるらしいが、アトラクションそのものが映画の場面を取り入れたものに変わってしまうかもしれないね。クラーケンに襲われそうになるとか、乗ってる船が逆さまになるとか(それは危ないって)それはそれで面白そうだが、私は今のも好きなので、新しいのができたとしても今のも残して欲しいと思う・・・いらぬ心配かしら(笑)
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スパイダーマン3('07アメリカ)-May 9.2007
[STORY]
ニューヨーク市民のヒーロー、スパイダーマンことピーター・パーカー(トビー・マグワイア)は、恋人MJ(キルスティン・ダンスト)との関係も順調で、彼女にプロポーズと考えていた。そんな時、伯父を殺した男フリント・マルコ(トーマス・ヘイデン・チャーチ)が刑務所を脱獄したことを知り復讐心が芽生える。彼の心を察知したのかピーターに謎の生命体が取り憑き、スパイダーマンの赤いコスチュームを黒く染め、圧倒的なパワーを得るかわりに、ピーターの心まで黒く染めていく。一方、父をスパイダーマンに殺されたハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)は、グリーン・ゴブリンとなってピーターを襲う。
監督&脚本サム・ライミ(『スパイダーマン』 『スパイダーマン2』
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シリーズ3作目。ピーターの境遇に涙したパート2から一転、今回のピーターは嫌いになりそうだった(笑)自分はヒーローだと自惚れ、また伯父をころした犯人を殺したいという邪悪な心に蝕まれてしまう。この黒い時のピーターが見てて恥ずかしくなる。自分ではイイ男気取りなのに、道行く女性たちはみんな彼を見て「うげ〜」って顔で振り返るの。普通なら羨望の眼差しを送るような演出をするはずなのに、サム・ライミってやっぱり面白いなぁ。

そのかわり今回はハリーに涙させていただきました。記憶喪失になっただけでガラリとイイ奴になっちゃうのがまるでギャグで、もうちょっと何とかならないものかと思ったが、最後の男気が素晴らしかった。ハンサムなのに笑うとちょっとキモイなんて思っててゴメン(失礼だな)君のことは忘れないよ。

ハリーにしても、パート2のドクター・オクトパスにしてもサンドマンにしても、みんな根っからの悪人というわけじゃない。深い悲しみが恨みへと変わり、こうなってしまった運命を呪いながら怒りを爆発させる。本作のピーターだって彼らと同じだ。傷つけられた時、相手に復讐するか相手を赦すか、気持ちの持ちようで人は善人にも悪人にもなれる。私が『スパイダーマン』を好きなのは、こういうところをしっかり描くからだ。

ただ今回は一応第一部完?ということでいろいろ詰め込み過ぎたと思う。ファンサービスなのは分かるが敵が多すぎ(笑)原作ではピーターの3人目の恋人だったグウェン・ステーシー(ブライス・ダラス・ハワード)を登場させるも、何だか中途半端な扱いに・・・彼女を助けるシーンは面白かったけどね。

というわけで私は3作の中ではやっぱり『2』が一番好きだ。この先どうなるのかな。ホントにパート6までやるの?映像のクオリティは作品を重ねるごとに高くなっているので終わらせるのはもったいない気もするが、そろそろピーターとMJには飽きてきたかなぁ。公開になればもちろん見るけどね(笑)
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