Movie Review 2006
◇Movie Index

ゲド戦記('06日本)-Aug 4.2006
[STORY]
竜が人間の住む世界に現れ共食いをするなど、アースシーに異変が起こりはじめていた。大賢人ゲド(声:菅原文太)は世界の均衡が崩れた原因を探す旅に出ていた。その途中、父王を刺して逃げる途中のエンラッドの王子アレン(声:岡田准一)に出会う。2人はともに旅をすることになり、ホートタウンという町に辿り着く。アレンはそこで魔女として捕らえられそうになっている少女テルー(声:手嶌葵)を助けるが、彼女は何も言わずに逃げてしまう。
監督&脚本・宮崎吾郎(初監督)
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原作はアーシュラ・K・ル=グウィンの5巻と外伝1巻からなる同名ファンタジーで、映画は第3巻『さいはての島へ』と宮崎駿の絵物語『シュナの旅』を原案としている。

私は(『シュナ』は読んでたけど)『ゲド戦記』は未読なので、アースシーについてやゲドの過去、テナー(声:風吹ジュン)との関係など最初はさっぱり分からなかった。原作を読んでいることが前提なんだろうと思ってたら、原作ともかなり離れているらしい。ま、映画が面白ければ原作が変えられてたっていいんだけど、面白くないんですわこれが(笑)監督の頭の中では「ここはこういうイメージ」というのが出来ていたとは思うんだけど、見事にそれが映像化されていません。結局、今までの駿アニメの出来の悪い劣化コピーになってしまっていた。しかも中途半端に絵や演出が似てるもんだから、だんだん腹が立ってくるのよ(笑)どうせなら絵もまるっきり違うものにすれば良かったのに物真似するんじゃない、って(でも彼が色紙にサインするのを見たら、あの絵をスラスラ描いてたので変えようがないのかも)

上で原作違うらしいと書いたけど、それならばアースシーの世界や置かれている状況などを、アニメなんだから絵で表現するべきだった。登場人物たちがセリフで「世界の均衡が崩れつつある」や「人間の頭が変になってる」と説明するが、実際の映像で見ると竜が共食いしてるシーンや町で奴隷売買やドラッグが売られてるとかそんなのだけ。何しろ狭い世界しか描いていない。移動距離はエンラッドからホートタウンまでだし、町の中とテナーの家と城くらいしか出てこない。監督がいっぱいいっぱいなせいかなぁとも思ったんだけど、冒険心が足りないし臆病なんだろうな。比べちゃ悪いが彼の父ならば、アースシーの世界中を駆けずり回らせただろう。例えばアレンが捕まって奴隷として売られるシーン。父ならそのまま見知らぬ土地へアレンを連れて行き新しい経験をさせるだろう。しかし息子は簡単にゲドに魔法を使わせ、アレンを助けてしまう。走るシーンにしても、父なら何度か転ばせるだろうに(やりすぎという感もあるが)息子はただ下半身が動いてるだけ。テルーが歌を歌うシーンも棒立ち。アニメなのに躍動感がないのだ。これなら紙芝居でもいいくらい。

厳しいことを書いたけど、初監督なんだよなぁ。でも公開規模やら大宣伝を見てるとつい忘れてしまうし、監督が影薄いし(笑)むしろ題字を担当した方への批判だね。最後の「終。」の字にもガックリ。はっきり言って私はあの人が前に出るようになってからジブリはおかしくなったと思ってるので、今後もとても心配だ。
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パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト('06アメリカ)-Jul 23.2006
[STORY]
海賊船ブラックパール号を奪い返したジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)の前に、“深海の悪霊”ディヴィ・ジョーンズ(ビル・ナイ)が現れる。13年前、ジャックはブラックパール号の船長となるため、彼と「血の契約」を交わしていた。その契約が切れたため、ジャックの魂を奪いにやってきたのだった。
一方、ウィル(オーランド・ブルーム)とエリザベス(キーラ・ナイトレイ)はジャックを逃がした罪で逮捕される。そして釈放の条件は、ジャックが持っている羅針盤を手に入れることだった。
監督ゴア・ヴァービンスキー(『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』
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ディズニーランドのアトラクション『カリブの海賊』を映画化し大ヒットした『呪われた海賊たち』の続編。パート3『アット・ワールズ・エンド』も同時撮影され、2007年5月公開予定。

パート1は一応1本で成り立っている作品だったけど、パート2はそのままパート3へ雪崩れ込むようなラストになっていて、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のパート2から3への流れとそっくり(こちらも2と3は同時撮影)また、ストーリーや登場人物たちの設定などが『スターウォーズ』のエピソード456に似ているという指摘も多い。え!ってことはウィルとエリザベスは兄妹?!(なんつって)

というわけで、すでにイベントムービーと化していて真剣に感想を書く気がなくなってるんだが、映画は真剣に見ないと置いて行かれてしまう。続編と言ったって前作はスッキリ終わってまた新しい冒険が始まるんでしょ〜、なんて高を括っていたら大間違い。きっちり前作の終わりから始まっていて、ええと前の話は何だっけ?この人は誰だっけ?と思い出すのが大変だった。忘れちゃった人は前作を見ておくべきだ。パート3は来年だから大丈夫そうだけど。

これでもか!とサービス精神たっぷりな割には相変わらずダラダラしたシーンや同じようなシーンの繰り返しが多く、せめて140分くらいにしてほしかった。海賊だからしょうがないんだけど、船の上でのシーンが多いのも飽きる理由だ。たまに島に上陸するとホッとするんだよね。自分が泳げないからかしら(笑)原住民にとっ捕まったジャックが逃れようとするところや、ウィルが水車の上で戦うシーンはすごく面白かったし、エンドクレジット後のオマケシーンも相変わらず良い。前作のオマケシーンは本作と繋がっていたので、今回もパート3への布石かもしれない。どう絡んでくるのか楽しみだ。

劇中、クラーケンという巨大タコが出てくるんだけど(タコに限らず巨大な海の怪物をクラーケンと呼ぶそうだ)これが意外と旨そうなのよ(笑)外国じゃデビルフィッシュなんて呼ばれてるし劇中でも恐れられていたけど、日本人だったら間違いなく捕まえて食べようとするだろうね。タコ焼き何人分かなーなんて思わず考えてしまって、見た後でタコ焼き買って帰りました。タコ船長ディヴィ・ジョーンズだって先っぽなら食べられそうな気がします(笑)
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トランスアメリカ('05アメリカ)-Jul 22.2006
[STORY]
男性から女性になる性転換手術を間近に控えたブリー(フェリシティ・ハフマン)の元に1本の電話が掛かってくる。それはブリーがかつて男性だった時に一度だけ関係した女性との間にできた息子トビー(ケヴィン・ゼガーズ)が、窃盗の罪で拘置所に入っているという知らせだった。ブリーはニューヨークへ向かい彼を保釈させるが、自分の正体を明かさないままトビーをトビーを継父が暮らすケンタッキーへ送り届けようとするが・・・。
監督&脚本ダンカン・タッカー(長編監督初)
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フェリシティ・ハフマンの夫で俳優のウィリアム・H・メイシーが製作総指揮。 第78回アカデミー賞の主演女優賞(ハフマン)と歌曲賞(ドリー・パートン“Travelin' Thru”)にノミネートされた。

ハフマンはTVドラマ『デスパレートな妻たち』のリネット役でさんざん見てきているハズなのに、本作では女装をしている男にしか見えず、女優が演じてるってことをすっかり忘れて見入ってしまった。見る前までは、男優が演じたほうがリアルだったんじゃないの?と思ってたんだけど謝ります。特に立ちションするシーンが最高でした(笑)これでオスカー取れないなんてねぇ・・・残念だなぁ。

トランスセクシュアル、幼児虐待、アル中、元犯罪者――など、事情を抱えた人々を登場させ、描きようによってはとてつもなく暗く重くなりそうな事柄を扱いながらも、本作はそこをメインテーマにしていない。息子に自分が男だと打ち明けられなかったり、家族に偏見を持たれ悲しまれたり、というエピソードは確かにあるんだけど、根底にあるのは親子関係や家族のあり方という普遍的な問題なのだ。それを軽やかに、そして爽やかに描いたロード・ムービーだった。

ブリーについてはハフマンの演技も手伝ってか、行動や心情に一貫性があって、父親らしいナイーブな愛情と母親らしい包容力とを両方を併せ持った暖かな眼差しがとても良かった。
でもトビーについてはところどころ違和感があったし、もう少し彼の心を知りたいと思う箇所があり惜しい。例えばブリーが実家に戻って、家族にトビーが息子だと告げた後のシーン。ブリーの両親の対応がコロッと変わって孫だと大騒ぎしているのにトビーが気付かないのは鈍感すぎるでしょ。あとブリーの家を飛び出した後、彼が父親にうちてどう折り合いをつけ、どう向き合おうと考えたかは、もう少し見せて欲しかったな。だけど彼が過去は過去として、今現在とこれからのことを考えて前向きな選択をしたのにはホッとした。選んだ人生を見て思わずのけぞってしまったけどね(笑)血は争えないっつーか、何というか・・・。本人が良ければそれでいいのだが「君にはブロンドは似合わない!」それだけはダメ出ししたい(笑)
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幸せのポートレート('05アメリカ)-Jul 16.2006
[STORY]
ニューヨークでキャリアウーマンとしてバリバリ働くメレディス(サラ・ジェシカ・パーカー)は、クリスマスに恋人エヴェレット(ダーモット・マルロニー)の実家に招かれる。しかし神経質で堅物のメレディスを見て、家族は一様に眉をひそめる。特に母シビル(ダイアン・キートン)は祖母から受けついた指輪をメレディスに渡したくなかった。嫌われていると分かったメレディスは妹のジュリー(クレア・ディンズ)を呼ぶが・・・。
監督&脚本トーマス・ベズーチャ(『Big Eden』)
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全米で『ラブ・アクチュアリー』の記録を超えたハートウォーミング・ドラマという宣伝文句と、予告を見たところ『あなたが寝てる間に…』のような要素もありそうで(同じくクリスマスの作品で、恋人の弟が絡んできそうなところが似てるかも?と)どちらも大好きな作品なので楽しみにしていた。

でも全然違った。堅物のメレディスに最初は戸惑うけど実はそうじゃないってみんなが理解して仲良くなる話だと思ってたのに、メレディスの性格は生真面目とかそういうのを通り越して人格障害に見えてしまったし、エヴェレットの家族の排他的なところが酷すぎて見てられなかった。そして何より一番ムカついたのはエヴェレット。彼はメレディスがああいう性格だって分かってて結婚しようとしてたんじゃないの?自分の家族が彼女を拒否することだって分かってたハズでしょ。それでも連れてきたわけだ。だったらもっと気を配りなさいよ。彼女が間違ったことを言ったなら諭す、家族が偏見を持っているなら理由を話して理解させる。それをせずにメレディスを晒し者にし、追い詰められている彼女を見殺しにした。挙句の果てにメレディスの妹に一目惚れ。最低だ。彼が最後笑うシーンがあるんだけど、本当に気持ち悪かった。お前は『ベスト・フレンズ・ウェディング』の時から何も変わってねぇな!(って怒りのあまりゴッチャになってるぞ)

結末は一応ハッピーエンドだけど、これで納得できる人はなかなかいないのでは。まぁ本人たちが幸せならいいけどさー、見てるこっちはちっとも心が温まらずエアコンで冷えた身体を抱えたまま劇場を後にするしかなかったよ。良かったのはメレディスがクリスマスプレゼントを渡すシーンだけ。ほんと、そこだけが良かった・・・。
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笑う大天使(ミカエル)('05日本)-Jul 15.2006
[STORY]
母を亡くして天涯孤独となった17歳の司城史緒(上野樹里)の前に、兄だと名乗る一臣(伊勢谷友介)が現れる。実は司城家は旧・伯爵家の家柄だったが、父親が亡くなった後、母はお腹に史緒を宿したまま姑に追い出されたのだった。兄は史緒を引き取り、超お嬢様学校の聖ミカエル学園に入学させる。しかし根っからの庶民派の史緒には息苦しい毎日だった。そんなある時、あることをきっかけに更科柚子(平愛梨)、斎木和音(関めぐみ)と仲良くなる。
監督&脚本・小田一生(『うずまき』などのVFXを経て監督デビュー)
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原作は川原泉の同名漫画。私は川原泉が大好きで今までの著作すべて持ってるほどなんだけど、20年くらい前の漫画なのに今ごろ映画化というのに驚いた。でも“和製チャーリーズ・エンジェル”みたいな映画になると聞いて納得。つまりあの部分をフィーチャーするわけか、と。それならそれで割り切るしかないけど酷い映画になりそうだと嫌な反面、これで新しく漫画の読者が増えるのもいいかなぁと嬉しい気持ちもあったりして、ファンとしては複雑でした。

映画はやはりお嬢様誘拐事件がメインで、チャーリーズ・エンジェルもどきアクションをそれこそ飽きるほどたっぷり見せてくれる。史緒たちが強いのは原作通りだが、敵も強すぎだろう(笑)ちょっとクドかった。でもここまでは予想通り。意外だったのは、原作の『夢だっていいじゃない』のエピソードが入ってたこと。私の大好きな話だけど、水っぽい話はすべて入れないと思ってた。史緒が関西弁を話すというのに最初違和感あったけど、このエピソードでは史緒の独白がホロリとさせられた。さらに史緒の母の形見が実は・・・というオリジナルエピソードも良かった。 また、史緒や和音のボケを拾うナレーションが広川太一郎で、独特の間をうまく表現しているところもあり面白かった。ここは褒めてあげよう(何様?)

しかし、原作と切り離してみてもどうしても許せないことがある。それは

衣 装 と ヘ ア メ イ ク が ヒ ド す ぎ る っ !ことだ。

ひさびさにフォントを大きくしてみました(笑)もうね、まず制服が酷い。ワンピースでベレー帽なのはいいけど、襟ぐりが空きすぎ。特に背中は見せすぎで下品。体操着はもっと酷くて、制服をノースリーブにして短パンにしたようなデザインなんだけど、脇が空きすぎ。お嬢様にそんなに肌を露出させるな。お茶会での衣装も中世のお嬢様ファッションではなくて単なるコスプレだし可愛くない。白薔薇の君・紫の上・桔梗の宮・静姫・沈丁花娘と、とりわけ美しいお嬢様が登場しても彼女たちを丁寧に撮ることなく十把一絡げ。一番可哀相だったのは一臣のお見合い相手である桜井敦子様(菊地凛子)だ。お見合いの席での服とヘアスタイルはまるでキャバクラ嬢。お茶会でのドレスでは乳首ボッチン・・・ありえない。こんなの敦子様じゃないよー!なんつーか、この監督ってVFXにはものすごく力を入れてるけど、女の子を綺麗に撮る気はなかったんだろうか。女の子あんまり好きじゃないのかな・・・(って今度は小文字かよ)
女の子萌え〜な映画だったらそれはそれで作品に似つかわしくないし気持ち悪いけど、お嬢様と毛色の変わった3人の怪力娘との差はやっぱり出してほしかったな。

ま、ワタシ的には映画はアレでも、新作漫画『レナード現象には理由がある』が面白かったのでいいのさー(って映画に不満を持つファンのために出した?)
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