Movie Review 2007
◇Movie Index

タロットカード殺人事件('07アメリカ)-Oct 28.2007
[STORY]
アメリカ人学生のサンドラ(スカーレット・ヨハンソン)は休暇でロンドンの友人宅に来ていた。ある日、マジックショーでマジシャンのシドニー(ウディ・アレン)に指名され、人が消える箱に入れられる。すると何と新聞記者ストロンベルの幽霊が出てきて、彼からロンドンで起きている“タロットカード殺人事件”の犯人を教えられる。その犯人とは貴族のピーター・ライモン(ヒュー・ジャックマン)だというのだ。ジャーナリストになりたいサンドラは、シドニーと協力してピーターに接近する。
監督&脚本ウディ・アレン(『マッチポイント』
−◇−◇−◇−
ロンドンを舞台にした作品の第2弾。今回は本人も出演のコメディタッチのミステリーで幽霊や死神も登場する。ちなみに次回作はスペインのバルセロナが舞台で、再びヨハンソンの出演を希望しているとか。

前作が初のロンドン作品だったわけだが、アレンが出演しなかったので途中でアレン作品だということを忘れてしまった(笑)そして本作ではアレンが出演しているので、これが初の作品という感じがして、かなり意識して見てしまった。いや、でも街中を歩くシーンはちゃんと風景にハマっていて悪くないし、浮いていると感じたところはしっかり笑いに持って行ってて楽しめた。

ただ、ストーリーはあんまり面白くなかったな。連続殺人は言葉で出てくるだけで具体的なシーンを見せることはないので、いまいちピンとこないまま話が進んでいってしまう。殺人事件がメインの映画じゃないからしょうがないんだけど(原題は『Scoop』だからいいけど、邦題を見て期待した人はガッカリかも)
ピーターの家の中を探索するところで「バレたらどうしよう!」とドキドキできるところがサスペンスかな(笑)だけど、犯人かもしれないピーターが「セクシーすぎてどうしよう!」ということは全くなかった(笑)むしろこの役はジャックマンでなくても別に良かったんじゃ・・・と思いました。ジャックマン出演の映画はほとんど見てるけど、ワタシ的に今までで一番色気のない役だったな。うーん。

前作のヨハンソンの役があまりにもヒドかったので、アレンは彼女のことが好きだけど嫌いというか、複雑な感情を持ってるんじゃないかと思ったんだが、連続起用ということはやっぱりお気に入りなんだろう。でも、会った男とすぐ寝てしまったり、相手を好きになってしまったから事件を追うのをやめてしまう(その間にアレンが事件を調べて活躍)という今回の役も、やっぱりヒドくないか?
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

インタビュー('06アメリカ=オランダ)-Oct 27.2007
[STORY]
政治記者のピエール(スティーヴ・ブシェミ)が、なぜかテレビドラマ女優カティア(シエナ・ミラー)のインタビューを取る仕事を任される。しぶしぶ待合せのレストランに向かうがカティアに1時間も待たされ、その怒りを彼女にぶつけて怒らせてしまう。ピエールはインタビューを中止にして帰ろうとするが怪我をしてしまい、カティアは治療するため自分の部屋に連れて帰る。
監督&脚本スティーヴ・ブシェミ(『トゥリーズ・ラウンジ』
−◇−◇−◇−
感想は後日。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

迷子の警察音楽隊('07イスラエル=フランス)-Oct 25.2007
[STORY]
1990年代初め。エジプト警察のアレキサンドリア警察音楽隊はがイスラエルにやってきた。アラブ文化センターでの演奏を頼まれたからだ。しかし空港には迎えがおらず、団長のトゥフィーク(サッソン・ガーベイ)は大使館の助けを借りずに自分たちだけで目的地へ行こうと決意する。そして最年少の団員カーレド(サーレフ・バクリ)に目的地までの行き方を調べさせるが、バスを降りてみると文化センターなどない小さな町。見かねたカフェの女主人ディナ(ロニ・エルカベッツ)は彼らを一泊させることにする。
監督&脚本エラン・コリリン(TVドラマなどを経て映画監督デビュー)
−◇−◇−◇−
第20回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。最優秀作品に贈られる東京サクラグランプリを受賞。そのほかカンヌ国際映画祭の“ある視点”部門など多数の映画祭で上映された。

エジプト人がイスラエルにやってきて迷子になるということで、イスラム教とユダヤ教で対立し口論が起こってしまうのではないかとヒヤヒヤしながら見たんだけど、少なくとも見えるところでは全くそういうことはなかった。めったに人が来ない田舎町に突然エジプト人たちがやってきた戸惑いと、言葉が通じないのでぎこちない会話しかできないもどかしさ(やっぱり共通の言語というと英語なのね)で重い雰囲気なだけなんだなって、見てる間はそう思ってた。だけど見終わって公式ホームページにある映画の背景を読んで、そうじゃないんだと分かった。映画の冒頭で、1990年代初めのことだとわざわざ言い、そういう交流があったことを覚えている人はもういないかもしれない、なんて言葉も付け加えている。中東の歴史を知っていたら、すぐにピンときただろうに。相変わらず不勉強で困るなぁ自分。

でも言い訳になっちゃうけど、全く知らなくても面白い映画であることには間違いない。決してハードルの高い映画じゃない。トゥフィークの頑固で不器用なところがもどかしくて切なかったし、音楽がきっかけで距離が縮まっていくところは自然と顔がほころんでしまった。ユダヤ人の男がデートで失敗しちゃったのをカーレドが助けてあげるシーンでは大爆笑。この場面はもう一度見たいなぁ。ただ、カーレドとディナが・・・のところは私は気に入らなかった。なんでそういう展開にしちゃったのかなぁ。今までのトゥフィークとディナのシーンを嬉しそうに見ていた私って一体・・・な気分。ここがなければ私はお気に入り映画になっていたかも。

一番びっくりしたのは、音楽隊って演奏だけかと思ったら歌つきなのね。しかも歌うのは指揮者のトゥフィーク(吹替で、サッソン・ガーベイは歌ってない)なのだ。エジプト警察音楽隊おそるべし。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ワルツ('07イタリア)-Oct 24.2007
[STORY]
ホテルで働くアッサンタ(ヴァレリア・ソラリーノ)の元に、ルチア(マリーナ・ロッコ)の父(マウリツィオ・ミケリ)が訪ねてくる。実は既にホテルを辞めてしまったルチアの代わりに、アッサンタがルシアのふりをして刑務所にいた彼女の父に手紙を書いていたのだった。それを打ち明けると彼は激怒し、ルチアの行方を尋ねる。仕方なく、アッサンタはルチアがホテルを出て行くまでの話をしはじめる。
監督&脚本サルバトーレ・マイラ(『Amor nello specchio』)
−◇−◇−◇−
第20回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。最優秀芸術貢献賞を受賞した。
オープニングからエンディングまでがワンカットという映画――ということで見てみたけど、かなりいろんなことにチャレンジしていて、技術的な部分を見るだけでも価値はあったなぁと思った。

まず冒頭でいきなり驚かされる。何とアッサンタたちが走っている車の中で会話をするところから始まるのだ。カメラは車の前に設置してあったようで、車が止まったところで自然とカメラも動き出し、アッサンタと一緒にホテルの中に入っていく。基本的にはホテルの中で従業員や宿泊客たちが歩きながら話をする様子をカメラが追いかける形式なんだけど、途中で服装や髪型を変えて回想シーンを盛り込んだりもするのだ。これにもビックリ。その回想シーンへの挿入のしかたは舞台っぽいと感じたけど、途中でワンカットだということを忘れてしまうほど、ごく自然に場面転換するところもあった。

さらにストーリーも1人だけを追いかけていくのではなく、アッサンタやルチアたちの物語と、ホテルで打ち合わせをするメディア関係者の物語の2つを同時進行させていく。ここも驚かされる場面の1つだ。よくこんな難しいことをやってのけたなぁと本当に感心した。その2つの物語は途中で交わり、そしてまた分かれていく。ここでルチアがホテルを辞めてしまった理由も明かされる。

だけどワンカットであることを抜きにして純粋にドラマとして見た場合、すごく面白いストーリーではなかったなぁというのが正直なところ。最後は強引に纏めてしまったように見えたし、メディア関係者たちの会話が抽象的すぎてあまり頭に入ってこなくて、眠気を誘われたりもした。ルチアがいなくなった理由も複雑な話ではないので、そこまで緊張感を漂わせて回りくどくしなくても良かったんじゃないかなぁなんて、単純な私は思うのだった。もっと緊張感が必要なサスペンス映画なんか、こういう形式で撮ったらさらに良い効果が出て面白いものができるんじゃないだろうか。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

MAD探偵 7人の容疑者('07香港)-Oct 24.2007
[STORY]
窃盗犯を追跡していた2人の刑事のうち1人が失踪し、その刑事が所持していた銃で連続強盗殺人事件が発生する。この事件を担当することになった捜査官ホー(アンディ・オン)は、元刑事で人間の内面が透視できるというバン(ラウ・チンワン)に協力を依頼する。バンは窃盗犯を追跡していたもう1人の刑事コウに目をつける。
監督ジョニー・トー&ワイ・カーファイ(『ターンレフト ターンライト』
−◇−◇−◇−
第20回東京国際映画祭「アジアの風」アジア中東パノラマ特別上映作品。第64回ベネチア国際映画祭でサプライズ・フィルムとして上映。

本作の前に見た『ダージリン急行』といいこれといい、カタカナと漢字の組み合わせが何だか気持ち悪い邦題だが、かえってインパクトがあるタイトルなのでそこが狙いなのかも。ちなみに原題は『神探』で、このタイトルバックが出た瞬間に笑いが起きていた。(常連のラム・シューが出た時もさらに大きな笑いだったけど)映画祭でジョニー・トーのファンばかりだったのか、ノリが違って戸惑った。

それはさておき、内容は良かった。ただ、冒頭から描写不足というか説明しないままにどんどん話を進めてしまうので、理解できるようになるまでは置いてけぼりを食らったような気分になる。バンには特殊な能力があって、彼にだけは“鬼”というものが見えるという設定なんだけど、その“鬼”を観客にも最初からはっきり見せている。でも説明がないから“鬼”じゃなくて普通の人間に見えるわけ。“鬼”だという説明があるまではバンが一体何をやっているのか?周りのおかしな反応は一体なに?と混乱してしまうのだ。そこさえクリアできればあとは大丈夫。面白くなっていく。

優秀な刑事だったバンが、いろんなものが見えすぎて心を病んでしまう。事情を分かっていなければはっきり言って怖い人だ。ちょっと『ビューティフル・マインド』のジョン・ナッシュに似たところがあると思ったけど、バンのほうがはるかにピー(放送禁止用語)だ。だが、彼の能力を知り、見えるがゆえの苦しみが分かっていくうちに、怖いだとか薄気味悪いという気持ちが消えていく。人一倍、敏感なだけだと。でもそんな彼の能力を当てにした人間たちにいいように利用され、新たな“鬼”を生み出してしまう皮肉。ラストは切なく、新たな怖ろしさを植え付けられた。

上にも書いたけど説明不足な点が気になったことと、7人の“鬼”がいるという設定が活かされてなかったところなど、いくつか気になる部分はあったけど、ラストが秀逸だったので満足だ。この作品もハリウッドがほっとかないだろうなぁ。
home