Movie Review 2002
◇Movie Index

エトワール('01フランス)-Apr 13.2002
[EXPLANATION]
300年以上の歴史を持つバレエの殿堂、パリのオペラ座。その舞台裏を初めて撮影したドキュメンタリー。カメラはオペラ座の頂点“エトワール”を目指すダンサーの素顔や、付属のバレエ学校で厳しい指導を受ける生徒たち、引退するエトワールなどの姿を映し出していく。
監督ニルス・タヴェルニエ(長編初)
−◇−◇−◇−
監督は『田舎の日曜日』などを監督したベルトラン・タヴェルニエの息子であり、『主婦マリーがしたこと』や『ミナ』で俳優として出演ののち、いくつか短編の監督を経て、本作で長編を初監督し、パリで、そして日本で大ヒットを飛ばしている。

正直言ってバレエはよく分からんのですけど(唯一見たのがトロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団というワタクシ)話題になってるし毎日満席だという噂を聞いて、ものすごいミーハーな気持ちで行ってきた。休日だったので早い時間に行って午後の予約を取ったが、時間になって劇場に行ったらすでに夜の回まで満席だった。ホントにすごい人気なんだな。

ド素人なのでもちろん出演したダンサーたちもよく分からない。知ってたのは化粧品のCMをやっていたミテキ・クドー(工藤美笛)だけ。東洋人で初めて団員に選ばれたという藤井美帆という人も初めて知った(牛乳のCMやってたみたいっすね。何度か見たけど顔まで覚えてなかった)
他のダンサーについてなのだが・・・バレエ好きからは石投げられそうだけど、やっぱり言いたい。ウィルフリード・ロモリという男性のダンサーを見て、田中要次ソックリだなぁと思ってしまった。ごめんなさいごめんなさい。

さて、内容について語る前にオペラ座の階級について、自分の頭を整理する意味でも書いておこう。上から順番に(...より後ろは映画に登場したダンサー)

◆エトワール...マニュエル・ルグリ,ローラン・イレール,ニコラ・ル・リッシュ,オーレリ・デュポン,エリザベット・プラテル
◆プルミエ・ダンスール(女性はダンスーズ)...ウィルフリード・ロモリ,マリ・アニエス・ジロ,クレールマリ・オスタ
◆スジェ...ミテキ・クドー
◆コリフェ...アメリー・ラムルー
◆カドリーユ

この階級についてはかなり興味深かったけれど、エトワールに抜擢される基準が映画では説明されてなかったようで、それが知りたかったな。プルミエ・ダンスールからエトワールになれるのではなく、スジェからいきなり抜擢されることもあるそうな。振付師が独断で決めるというその基準とは一体何なんだろう?
そういえば宝塚のトップも演出家が決めるんだっけ。ジャニーズJr.から「ユーは明日から嵐ね」って決めるジャニーさんもそうか(またそんな石を投げられそうなボケを・・・)

投げられついでにこれも書いてしまうが、もっとダンサー同士の熾烈な争いがあるのかと思ってたのね。スポ根モノにありがちな意地悪だとか貶し合いやら落とし込みやら。でも(ホントは知らないけど少なくともカメラの前では)そういうことは一切なく、兎にも角にもバレエに対する情熱を自分自身にのみ注ぎ込んでいて、踊れる幸せに満ち溢れた顔、一切無駄のない体、バレエに捧げる心、すべて美しいと思った。うっとり。そして薄汚れた自分の考えに反省。

ただmこれほどの世界を伝えるにしては撮影も語り口も単調で、もっと見せてくれよ!と個人的には少々物足りなかった。いろいろ制約があったんだろうか。もっと奥まで追いかけて欲しかったぞ。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

光の旅人 K-PAX('01ドイツ=アメリカ)-Apr 13.2002
[STORY]
ニューヨーク。自分のことをK-PAX星人だと言い張る不審な男(ケビン・スペイシー)が逮捕され、マンハッタン医学協会へ運ばれた。彼はプロートと名乗り、K-PAX星についてやどうやって地球にやってきたかをすらすらと答えた。妄想にしては理路整然としているため、担当となった精神科医師のパウエル(ジェフ・ブリッジス)は彼が本当に宇宙人なのではないかと思いはじめる。
監督イアン・ソフトリー(『鳩の翼』
−◇−◇−◇−
プロートという男が宇宙人なのかそうでないのか、それが物語の軸になっており、また、彼と関わったパウエルや他の患者たちに変化が訪れるというお話。構成がなかなかいい。まずプロートが語るK-PAX星について興味を持たせ、彼は本当に宇宙人なのかもしれない、と思うようにさせる。しかしその一方で、やはり彼は人間かもしれないと思うようなエピソードも出てくる。それは映画が終わってからもなので、明確な答えを求めるような人には向かない映画だろう。

たぶん見た大多数の人が私と同じ考えなんじゃないかと思うんだけど、これについての私のまとめ(ネタバレ)彼の中身は宇宙人(プロート)で、彼の身体は人間(名前ド忘れ)きっとド忘れした人が川に落ちて身体が動かなくなってしまったところに、プロートが入り込んだのね(ここまで)

けっこうよくできた作品だなぁと思ったんだけど、感動まではしなかった。自分的にちょっと気になったのが、プロートと接したパウエルや患者たちが変わっていくところね。ここらへんがうまく噛みあってない感じがした。脚本というより演出かなぁ。特に、次々とプロートの言うことを信じていく患者が出てくる中で、たった一人、心を閉ざしたままの女性がいるんだけど、彼女とのことをもっとしっかり描くべきだったのでは。でないとその先の展開で気持ちが入りにくいと思うんだよね(きっとこうなるんだろうなぁっていう結果は十分予想できたけれど)そういう細かいところまで描ききれていたら、もっと好きになっていたかもしれない。

エンドクレジットのあとにちょっとだけ映像が出るので、途中で席を立たないように。これがあって映画が引き締まったように思う。ところで公式ページを見たら、アメリカですでに出ているDVDでは別バージョンのエンディングが入っているそうだ。それが気になる。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

友へ チング('01韓国)-Apr 6.2002
[STORY]
1976年プサン。ヤクザの親分の息子ジュンソク、貧しい葬儀屋の息子ドンス、優等生のサンテク、お調子者ジュンホの4人の小学生はいつも一緒だった。1981年。別々の中学に通っていた4人が同じ高校に通うことになり、また一緒に遊ぶようになる。しかしサンテク(ソ・テファ)が他校の生徒に殴られているのを助けたジュンソク(ユ・オソン)とドンス(チャン・ドンゴン)が退学処分となり、2人はヤクザへの道を歩むようになるが・・・。
監督&脚本クァク・キョンテク(『億水湯』)
−◇−◇−◇−
「チング」とは「親旧」と書いて「長く親しい友」という意味だそうだ。
韓国で、あの『シュリ』『JSA』が持つ観客動員記録を抜いた作品として鳴り物入りで日本公開となった本作だけど、いきなりで申し訳ないがワタシ的には前記の2作品を超える映画ではなかったなぁ。

まず小学生の4人の名前と顔が全然覚えられなくって。ジュンソクとジュンホって名前は似てるし、顔もサンテクとジュンホが似てていきなり混乱。高校生になった時にようやくちゃんと区別がついたけど、いい大人の彼らが詰襟姿で出てくるもんだから、思わずプッと笑っちゃいそうになったし(←失礼だわね)

まぁ一番は私の苦手なヤクザ系な人がいっぱい出てきたからなんだけどね。目を覆うほどじゃないけど暴力シーンが多すぎたし、それに力を入れ過ぎてかえって薄っぺらい感じもした。4人のうちジュンソクとドンス、ジュンソクとサンテクの関係は描かれているが、それ以外の関係は希薄で、ジュンホなぞはただのお笑い担当だったのか?と思わざるを得ない。例えばジュンホがドンスから多額の借金してたとか、ジュンソクとサンテクにしても、せっかくジュンソクの妻がサンテクの初恋の人なんだから、ここで一気に三角関係に持って行ってこじれさせても良かったのに!とまで思った私はいけませんか?(笑)

でも最後はちょっとウルッときたし、ユ・オソンが良かった(制服姿には一番無理があったけど)この人どっかで見たことあるなぁと思ったら『アタック・ザ・ガス・ステーション』でムデポという単細胞な男を演じてた彼だったのね。全然キャラが違う!それとソ・テファは個人的にちょっと好み(笑)静かな佇まいが良い。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ビューティフル・マインド('01アメリカ)-Mar 30.2002
[STORY]
1947年、ジョン・ナッシュ(ラッセルクロウ)は、プリンストン大学の大学院生になった。彼はマサチューセッツ工科大学の研究所に入るために論文を書こうとするがなかなか進まない。しかしある時「ゲーム理論」を完成させ、念願叶って研究所へ入所することができた。そこで聴講生のアリシア(ジェニファー・コネリー)と出会い恋に落ちるが、一方で諜報員のパーチャー(エド・ハリス)から暗号を解くスパイとしての任務を命じられていた。
監督ロン・ハワード(『身代金』
−◇−◇−◇−
2002年アカデミー賞の作品賞、監督賞、助演女優賞、脚色賞の4部門受賞。

後々の経済学に大きな影響を与えた「ゲーム理論」の土台を完成させるが、心の病に陥り、やがてノーベル賞を受賞するまでの47年を描いたジョン・フォーブス・ナッシュJrの同名伝記を元に作られたストーリー。映画は全て事実ではなく、いくつかフィクションも混じっているそうだ(ちょっと知ってるけど読んでないから書かない)

ナッシュの半生を、途中驚くようなシーンを織り交ぜながらも最後はしっかり感動させる状態まで高めていて、まるで職人業のような作品づくりをしているな、と関心させられた。ごめん、かなり斜に構えて見ちゃった(笑)客観的に描いてくれれば入り込めたかもしれないけど、ここまで綺麗すぎちゃうと逆に一歩引いちゃうんだよね。悪く言えばあざといという。

あざとくてもハマれる時はハマれるんだけどね。一番引っかかったのは実はその驚いちゃうシーンだったりする。これが実在の人物ではなく、架空の人物の話ならば素直にビックリもしただろうし、演出として面白いので、この映画好き!って思ったかもしれないが、実在の人物の描き方としてこれはどうなんだろう?と疑問に思ってしまったのだ。ナッシュ本人がいいのならいいんだけどさ・・・。

あとね、大事なところで・・・嗚呼(ネタバレ)ナッシュがノーベル賞受賞のスピーチで、アリシアに対して感謝の言葉を言うんだけど、その中のセリフに
「君がいて僕がいる」
吉本新喜劇かよ!チャーリー浜かよ!でもラッセル・クロウの顔は嶋大輔そっくりなんだよ!
などと思わず心の中でツッコミ入れてしまい、そこから先、ほとんど物語に集中できませんでした。すみませんすみません。
ちなみに元のセリフは「You are all my reason.」らしいです。なんでこんな訳になっちゃったんでしょうか?
(ここまで)

クロウは素直にうまいと思った。数学者にしてはガタイが良すぎるのでは?と思ったが、ナッシュ本人もかなりマッチョだったみたいだし、彼が病にかかった時にはその身体が浮腫んで見えたのでOK。
オスカーを手にしたコネリーの演技はそれほどではなかった、かな。言い方は悪いがこれはとっても“おいしい”役だと思うのね。でもそんな役を手に入れたということも彼女の実力っつうことで。
また、ナッシュの大学院の仲間たちだが、優秀者ばかりという設定の割にはみんなボンクラで、頭良さそうに見える人が全然いなかったのがちょっとなぁ。でも親友チャールズを演じたポール・ベタニーはちょっと光ってたな。これから注目かも。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

シッピング・ニュース('01アメリカ)-Mar 23.2002
[STORY]
NYの新聞社でインク係として冴えない毎日を送っていたクオイル(ケビン・スペイシー)は、ある時ペタル(ケイト・ブランシェット)という自由奔放な女と出会い、結婚する。やがて2人にはバニーという女の子が生まれるが、ペタルはバニーを連れて別の男と駆け落ちしてしまう。その後、警察から連絡があり、ペタルは事故死、バニーは養子として売り飛ばされていたことが分かる。そんなクオイルに、叔母のアグニス(ジュディ・デンチ)は故郷のニューファンドランド島へ行くことを提案する。
監督ラッセ・ハルストレム(『ショコラ』
−◇−◇−◇−
ちょっと辛口なので、これから見るという人はご注意下さい。

ハルストレム監督の作品は好きなものばかりなんだけど、この映画はダメだった・・・。まず第一にこれスペイシーがやるような役じゃないっしょ(いきなりそれか!)
ダメ男を演じていてもちっともダメ男にみえないから共感できない(『ペイ・フォワード』の時はちゃんと内気な人ができてたと思ったのに・・・あれはやっぱりメイクのおか・・・ゲホゲホ)これでも彼のファンなんだけど、今回ばっかりはダメ出し。

また、クオイル以外の登場人物たちそれぞれが持つ“心の傷”の描き方がどれも中途半端だったように思う。映画が終わるまでに全員癒されてなきゃ嫌だなんてことはぜんぜん思っていないが(そうなったらそれは御伽噺だ)未だ傷が癒えないのであれば、それをきちんと映して欲しい。ただ傷口だけ見せられあとは無視、というのはとても気持ちが悪い。クオイルのトラウマはきちんと描かれてたけど、上記のような理由でハマれなかったしなぁ(しつこい?)

いつもながら風景と人とのバランスだとか、色使いなんかは好みなのだが、問題はやっぱり脚本なのかな。原作は未読だけど、きっともっと丁寧に人々が描かれていたのだと思う。それが端折られ、ツギハギにされたのが目に浮かぶようだ。そんな脚本でも監督や演技派を揃えたキャストの魅力で押し切れると思ったのかもしれない。でも肝心のスペイシーがアレだったので(もういいって(笑))

えー見どころはブランシェットの絵に描いたようなビッチぶりでしょうか(笑)演じるのがとても楽しそうに見えたのは私だけかな。Tバック姿も拝めます。
home