Movie Review 1998
◇Movie Index

ドレス('96オランダ)-Dec 2.1998
[STORY]
インド人が着ていた服の柄を盗作して作ったドレスが、次々と持ち主を変えていく――。
最初にドレスを買った老婆から画家の恋人を持つ女へ渡った時、ある車掌(アレックス・ファン・バーメルダム)が彼女のドレス姿を見て欲情し、彼女をストーキングしはじめた。
監督&脚本もA・V・バーメルダム(『アベル』)
−◇−◇−◇−
変態映画というからもっとスゴイ映像を期待してたんだけど(←どんな期待だ)全然そうじゃなかった。きわどいシーンもなく、これならR指定にもならないというのも分かった。確かにドレスを見た男がその女を付け回したり勝手に家に入って来ちゃったりと犯罪行為なんだけど、どこかおかしみがある。男の要求が強引かつマヌケで、おまけに男の下着姿がヒドイ!ラクダ色のランニングに同じ色のだぶついたパンツ。最悪だ(笑)そして「俺はノーマルだ!」と叫ぶ。ノーマルじゃないヤツほど自分のことを分かってなかったりするもので、逆にノーマルなヤツが「俺はヘンタイだ」と言ったりする(「ヘンタイだ」と言うことで相手から「ノーマルだよ」って言って欲しいという)場合もあるものだから人間て面白いんだ。そう、ドレスを通して人間の性質や性癖を表現した作品なのかもしれない。ただし、そういうストーリー展開を人間のように執拗でなく、淡々と乾いた映像で、なおかつ真剣に綴っていて飽きない。だけど欲を言えばもっといろんな女性にあのドレスを着てほしかったな。

そういう面白さもあるし、ドレスが作られていろんな女に袖を通され、最後に燃え尽きるまでの過程も面白い。しかも燃え尽きた後でもさらなる展開があってこれがまた面白い。鮮やかな青地に枯葉がデザインされたドレス(というよりワンピースですね)は、劇場にも2着飾られていたが、ライトを当てたりするからなのかな?その青色はどちらかというと水色だったし、葉っぱも黄色に近い色だった。でもちょっと欲しくなってしまった(もわ〜)やっぱり前売券を劇場で買っとくんだった(そうすると限定でドレスの生地が貰えるハズだった)
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アイ・ウォント・ユー('98イギリス)-Oct 25.1998
[STORY]
14歳のヘレン(レイチェル・ワイズ)とベッドにいるところをヘレンの父親に見つかり、マーティン(アレッサンドロ・ニヴォラ)は父親を殺してしまう。9年後、マーティンは出所しヘレンがいる町に帰ってきて彼女の前に現れた。
監督マイケル・ウィンターボトム(『バタフライ・キス』
−◇−◇−◇−
オープニングでいきなり『バタフライ・キス』を見た時と同じようなある種の「予感」を感じさせてくれた映画だった。フィルターを通して映した港町は、そのまま人々の心を映したようで寂しげだ。『バタフライ〜』では砂塵の舞うハイウェイが中心で、それはそのまま作品の荒さと力強さを象徴していたようだった。登場人物も激しかったし。今回はもう少し穏やかな映像で浜辺や町が映される。そして登場人物のヘレンとマーティンはどこか抑圧されたよう。しかしそれは噴火前の火山で、ある時一気にそれが爆発する。と、同時に今まで見てきたストーリーに違和感があったのが即座に氷解する。だからああでこうなったのか〜というように。そんでもって、ここで劇中ひんぱんに流されていた「I WANT YOU」っていう歌が活きてくるのだ。次に曲が流された時、急に切ない気持ちになった。

この2人に関わるようになる少年ホンダ(日本人じゃないっす)は、口のきけない代わりに盗聴したテープを聞いたり聞かせたりするちょっと悪い子。彼はヘレンに恋心を抱き、彼女を守りたいと思うようになるんだけど、それは純粋なものじゃなくてどこか屈折してていい。昔、自分の母親の自殺を見てしまったホンダは確かにマザコンの気があるんだけど、ヘレンに対して母性を求めているのか、それとも女として見ているのか微妙なところだし。

全体的に見るときれいにまとめすぎたかな、と思う。うまいんだけど観客に強くアピールするような感じではないからかも。粗削りな『バタフライ〜』のほうが印象深い。でもやっぱりウィンターボトム好きだ。

単に映画を流しただけだったけど英国映画祭→レポート
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ブギー・ナイツ('97アメリカ)-Oct 25.1998
[STORY]
1977年ロサンジェルス。ナイトクラブでバイトしていた17歳の少年エディ(マーク・ウォルバーグ)がポルノ映画監督のホーナー(バート・レイノルズ)に俳優としてスカウトされた。エディはダーク・ディグラーと名乗り、瞬く間にスターにのし上がったが・・・。
監督&脚本ポール・トーマス・アンダーソン(『ハードエイト』)
−◇−◇−◇−
70年代から80年代の時代背景とか映画界ポルノ界について全然知らないので、ダークが何であんなに急に金持ちになったり転落したりするのかがよく分からなかった。ポルノってあんなに儲かる商売だったのか。そんでもって80年代にはポルノが嫌われるような時代だったのか?詳しい人からは事前に勉強しろ!と怒られてしまいそうだけど(笑)素人にももうちょっと分かりやすく、その時代のエピソードなどを挿入して欲しかったっす。

2時間半以上ある映画の中で、スターダムにのし上がったところから転落してドラッグに溺れるところまでを描くからそれくらい長くなってしまうのかな、と思ったんだけど、そういうシーンはそれほど長くない。長いのがホーナーの家で行われるパーティーシーン。当時の衣装や音楽を楽しみつつ登場人物たちのやってることを見るのは楽しい。パーティーで将来の伴侶に出会ったり、悪い仲間に出会ったり、はたまた死を決意するようなことまでが起こる。1つのパーティーでさまざまな人間模様を見ることができる。ちょっと長すぎるかなぁとも思うけど、撮影時は私とほぼ同い年だったという監督が撮ったとは思えない。

ダーク役のウォルバーグって元ニューキッズだったのか(笑)今時の流行りとはちょっと違う顔ですごいピッタリだと思ってたんだけど、やっぱり。昔のアイドルちっくな髪型が妙にしっくり似合っていた。それに若くしてスターダムにのし上がったから故の傲慢さもうまく出してた。地位から転げ落ちてもまだ気が付かないところも。またレイノルズはもちろん、彼の妻でポルノ女優役のジュリアン・ムーアを、今回初めてイイなと思った。

ポルノ映画を撮っているシーンでもそれほど過激な映像はないし、ダークが裸になった時にはそれ自体を見せるのではなくて、見ている人達の表情を映すことによって彼がいかにスバラシイかを教えてくれて面白い。特に女性よりも男性が見て「う、羨ましい」といった顔をするのには爆笑した。ゲイのスタッフの表情やしぐさも最高にうまい。・・だけどあそこでボカシ入れるのはダメでしょ!あれが大事なんだからさ〜!!(うひゃひゃ)ホンモノじゃなくて作り物なら尚更だ。

でも率直なところ、全体的に見ると散漫な印象だった。1つ1つは面白いんだけれども。
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マイ・スウィート・シェフィールド('98イギリス)-Oct 24.1998
[STORY]
北イングランドの町シェフィールド。失業中のレイ(ピート・ポスルスウェイト)が見つけてきた仕事は距離にして24キロもある鉄塔を3ヶ月間で塗ることだった。仲間を集めて仕事を始めたレイたちの前にオーストラリア人のジェリー(レイチェル・グリフィス)が加わった。次第に惹かれ合うレイとジェリーだったが・・・。
監督サム・ミラー、脚本サイモン・ボーフォイ(『フル・モンティ』
−◇−◇−◇−
ポスルスウェイト(打ち難いので以下コバヤシ)はやっぱり肉体労働者、失業者が似合う。寂れたバーで酒を飲んだり汚い車を走らせたりがぴったりと町に馴染んでいる。恐竜追っかける謎のハンターとかやってる場合じゃないですよ。実物も赤ら顔で陽気なオッサンで「さっきそこでジョニーウォーカー飲んでただろっ」ってツッコミ入れたくなる。

ストーリーをほとんど知らなかったので、コバヤシとコンビを組んでるスティーヴという若者と娘っ子が恋に落ち、コバヤシはそれを父親のように見守る役かと思っていた。が、何と娘っ子はコバヤシを好きになるのだ。コバヤシもいい気になって「まだまだ俺も現役だもんね」とばかりに全裸で娘っ子と水と戯れてる姿は見てるこっちが赤面する(娘っ子も若いくせにとんでもなく胸が垂れてるのでさらに赤面します)本人も上映後のインタビューで「これがホントの『フル・モンティ(すっぽんぽん)』ぢゃ!(意訳)」ってオヤジギャグ言ってたし、ホントにしょーもないんだけど愛らしいぞ〜コバヤシ。

ストーリーは失業者たちが鉄塔を塗る話だが、全て塗り終えた後の爽快感とか達成感を味わえると思ったら裏切られる。失業者仲間のたわいもない会話と歌を聞き、これからの人生について悩む様を見て、ほろ苦さや青臭さをたっぷり感じ取ることになるだろう。ここらへんは感傷的すぎてあまり好きにはなれない。青春映画っぽくするのは、この物語ではちょっと違うんじゃないかな、とも思う。だけどラストに映る鉄塔を見るとジワ〜っとする。

おちゃめなコバヤシ写真もある英国映画祭→レポート
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鳩の翼('97イギリス)-Oct 24.1998ステキ★
[STORY]
1910年のロンドン。ケイト(ヘレナ・ボナム・カーター)は貴族と結婚するよう叔母に強要され、ジャーナリストのマートン(ライナス・ローチ)との結婚を反対されていた。そんな時、ケイトは富豪のアメリカ人ミリー(アリソン・エリオット)と出会い友人になるが、ミリーはマートンに一目惚れした。
監督イアン・ソフトリー(『バック・ビート』)
−◇−◇−◇−
うっ・と・り(もわ〜)
(さぁ、ここから先しばらくは戯言が続きますので読みたくない人は飛ばしましょう(笑))

やっぱいいっす!ライナス・ローチは。やんちゃなユアンとか貧乏チックなカーライルも好きなんだけど、実はこういうノーブルな顔立ちな人に1番弱いんですの、あたくし(笑)『司祭』の美しい姿を見て1秒で惚れてから3年。ちょっと痩せて老けてましたけどそのハンサムぶりはまだまだ健在でした。嫌味がなくて演技もうまいしね。ソフト帽ヨシ、ヨレたスーツ姿ヨシ、めがねヨシ、タキシードヨシ、セーターヨシ。特にタキシードでパーティ会場に現れた彼を見てミリーが惚れちゃうのも分かるっすよ!さらに知的さが増すんだな〜これが。胸毛も彼の場合は上品で繊細に見えるから不思議だわ〜(←誰かコイツを止めてやれ)

さて(笑)
ケイトはマートンと結婚したいと思ってるんだけど、貧乏暮らしすることに不安があるし堕落しちゃった父親のためにも躊躇っている。そこでミリーと出会い、彼女がマートンに惹かれていると知ってケイトはある策略を巡らす。そして3人の男女がヴェニスへ旅してさらに複雑化していく。自分とマートンが結婚するために、一時的にマートンを彼女に譲る形になったが「彼がミリーを愛し始めたら」と嫉妬にかられてしまうケイト。カーターは好きじゃないけどこのあたりの表現力は巧みだし共感できる。一方、マートンに惹かれながらもケイトと彼の関係が気になるミリー。そしてケイトを愛しているが彼女の行動に疑問を持ち、ミリーに惹かれ始めるマートン。バックにはヴェニスの美しい風景。これぞ古典的メロドラマの決定版!てな感じなんだけど、あまり古さを感じさせない。時代や設定が変わっても、人間は変わらないからかな。今の時代よりも慎ましやかだけど内に秘めた想いは一緒なのね。

そしてラストがあざやかだ。『鳩の翼』というタイトルの意味とともに、ケイトの仏頂面とミリーの優美な笑顔が交錯し、ラストで見せるマートンの目は何を見ているのか。解き放たれたと同時に何かを背負った2人はもう元には戻れない、そんな余韻を残している。

英国映画祭にゲストで登場したA・エリオット写真もあり→レポート
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