Movie Review 2005
◇Movie Index

ふたりの5つの分かれ路('04フランス)-Aug 21.2005
[STORY]
離婚の手続きをすりマリオン(ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ)とジル(ステファン・フレイス)。そこから時間は遡り、1人息子と3人で生活した日々、マリオンの妊娠と出産、幸せな結婚式、2人の出会い――5つのエピソードで2人の愛がどう変化していったのかを綴る。
監督&脚本フランソワ・オゾン(『スイミング・プール』
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時間を遡るといっても『メメント』『アレックス』のようにラストから見るとキッチリ繋がるというわけではないので、DVDをリバース・シークエンス再生しても(その機能も多分つかないと思うが)意味がない作品だろう。マリオンとジルの出会いから離婚までの期間でエピソードを5つ抽出しているのだが、それらが離婚に至る決定的な原因や事件と言っていいのか、むしろエピソードにない部分のほうに何かがあったのではないかと想像が膨らむ作りになっている。

そんなわけで各エピソードを見ながらあれこれ考えてみた。
(ネタバレ)亀裂の一番最初はやはり結婚式の夜だろうが、マリオンはずっとそれを悔やんでいたんだろうか。兄との食事エピソードでジルが乱交したと告白するが、マリオンは自分の結婚直後の浮気をイーブンにさせるために彼をけしかけたのか、それとも出産時のジルの態度への仕返しなのか。(ここまで)

まぁ一生懸命考えてみても、フランス人の思考回路は理解の範疇を超えてる場合のほうが多いからなぁ(笑)他のフランス映画を見ていても「えっ、そんなことでケンカして別れちゃうわけ?」とビックリすることもしばしば。あんまり深く考えても無駄かもしれない(笑)

しかしマリオンはともかく、ジルの人物像は掴みづらい。彼の兄がゲイだということが、ジルに何らかの影響を与えているような気がするのだが、彼も本当はゲイ寄り(寄りってなんだ)なのか?マリオンが妊娠したあたりから彼が変わっていったのではないかと思うんだけど、子供の父親になることに対して、ためらいというよりも恐怖を感じていたように見えた。・・・やっぱりいろいろ想像してしまうな(笑)

こういう手法は面白いし好きだけど、映画なんだからもうちょっと分かりやすくしてくれても良かったのではないかとも思う。しかし2人の出会いから時間通りに見せられたらつまらない映画だろうな。
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スターウォーズ〜エピソード3/シスの復讐('05アメリカ)-Jul 26.2005
[STORY]
アナキン(ヘイデン・クリステンセン)とパドメ(ナタリー・ポートマン)の極秘結婚から3年、分離主義者同盟と共和国との戦いはいまだ各地で繰り広げられていた。そんな中、パルパティーン最高議長(イアン・マクダーミド)が分離主義者に誘拐される。オビ=ワン(ユアン・マクレガー)とアナキンによって議長は無事救出されるが、アナキンの能力の高さと恐怖心を読み取った議長は、アナキンを暗黒面に引き込もうとする。
監督&脚本ジョージ・ルーカス(『スターウォーズ〜エピソード2/クローンの攻撃』
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新三部作の完結編。ジェダイの騎士だったアナキンがなぜ暗黒面に落ち、ダース・ベイダーとなったのか? そしてアナキンとパドメの子供たちルークとレイアがなぜ離れ離れとなったのか?などの謎が解き明かされ、『EP4』へと繋がってゆく。
また、『EP2』から『EP3』の間には『クローン大戦』というアニメがあり(未見)『EP3』から『EP4』の間の20年間に起こった出来事についてはドラマ化するそうだ。

『EP1』も『EP2』も先行や公開直後に見たので周りの興奮とともに盛り上がったんだけど、今回は公開してから少し間が空いてしまったせいか、いまいち気持ちが乗らないまま終わってしまった。見る時期というのも大事なのかも。それと内容的にも解決して終わりでなく『EP4』への繋ぎの話だから、カタルシスがなくスッキリしない。だから見終わって、いくつかの謎が解けて「なるほどね〜」とか「こういうワケだったのね」という感想しか出ない。テンポも『EP1』と『EP2』に比べて悪くなったような気がしたのだが・・・ハッ!ひょっとしてこのダサさも旧作に繋げるための演出だったんでしょうか(考えすぎ?)

新三部作の中ではやっぱり『EP1』が一番面白かったな。レイ・パークが演じたダース・モールのアクションが好きだった。三部作でさまざまな戦いを見たけれど、ダース・モールは身体のキレがダントツに綺麗で、彼とヨーダの一騎打ちを是非見たかった。
あとアナキンがまだ小さかったからムカつかなかったというのもあるかも(笑)『EP2』の生意気で粘着質っぽいところが一番イヤだったんだけど、本作ではもうどうしようもないところまでイっちゃってたので、逆に哀れだった。しかしあんな子供っぽいウソで騙されるなよアナキン・・・。まぁジェダイはアナキンの苦悩を思いやれずにほったらかしだったし、シスの動きを読めずに考え込むばっかりでちっとも動けてなかったし、シスの暗躍は成るべくして成った――としか言いようがない。

とはいえ、『EP1』公開から7年余り(製作期間は10年掛かり)きっちり完成させた監督やスタッフ、出演者には拍手を送りたいし、VFX技術のさらなる進化には驚かされる。人物の後ろの映像が本当に存在するかのように見えるし、ヨーダがフルCGなのをすっかり忘れていた。グリーバス将軍の質感も素晴らしい。もっと新作が見たくなる。TVシリーズではここまで見せてくれるんだろうか。

今は物足りなさしか残ってないけど、6作品(+アニメ)を一気に見たらまた感想が変わるかもしれない。まだそこまでしようという気にもなってないのだけど。
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皇帝ペンギン('05フランス)-Jul 23.2005
[EXPLANATION]
南極の冬。皇帝ペンギンたちは海から遠く離れた外敵の少なく地面の硬い土地へ移動する。そこでパートナーを見つけ、子供を生む。卵はメスからオスへと託され、メスは子供に与える餌を蓄えるために海へ、オスはその間なにも食べずに卵を温め続けるのだった。
監督&脚本リュック・ジャケ(冒険ドキュメンタリーや動物ドキュメンタリーを数多く監督)
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南極で1年以上かけて撮影され、カメラはマイナス40度に耐えるカメラを開発して臨んだそうだ。撮影されたフィルムは何と8800時間で、そのうち映画として使われたのはわずか86分。うわーもったいない(笑)
字幕と吹替と両方あるんだけど、私はシャルル・ベルリングの声で見たかったので字幕にしました。他にはロマーヌ・ボーランジェと『ぼくセザール10歳半 1m39cm』のジュール・シトリュックが担当している。

まず一言「あんたたち何て面倒なことしてんの!?」とペンギンたちに言いたい。
安全な場所で子供を産むためだから、たとえ海から離れていてもその場所しかないんだろうけど、餌を取りに片道20日くらいかけて行って戻ってくるわけですよ。途中で疲れて動けなくなったり仲間とはぐれて迷って力尽きたりもするわけ。人間だったらそんな面倒なことせずに餌場の近くの土地を固めて住んでしまうんだろうな(笑)一体いつからこういうサイクルを続けているのだろう。

しかしこういう自然の動物たちを見ていると、よくできてるなぁと素直に感心する。過酷な状況下で、肉体の強い者、運の強い者が生き残る。これによって、より強い遺伝子が子孫に受け継がれていく。けれど最近は地球温暖化の影響で個体数が減っているらしい。映画ではものすごい数のペンギンたちが出てきて驚いたが、あれでも減ってしまっているのね。

いろんな種類のペンギンがいるけど、やっぱり皇帝ペンギンが一番美しいですな。特に頬から首にかけてオレンジ色になっている部分が綺麗。くちばしのピンク色のラインもいいアクセントになっている。赤ちゃんペンギンの仕草や歩き方は、映画に出てきたメスじゃないけど攫いたくなるほど可愛らしくて、だから親は命がけで守ろうとするんだね。ただやっぱり大人になりかけのペンギンは羽が生え変わる途中のせいか汚らしい。人間も思春期の頃が一番もっさりしているし、このあたりは同じ生き物なんだなーという感じがします(笑)映画はその大人になりかけるところで終わってしまうのが非常に残念。どれくらいであんな巨大な大きさに、そして美しく変化していくのか。そこまで見せてほしかった。

ナレーションは状況説明や解説ではなく、ペンギンの父と母と子の気持ちを人間(監督)が勝手に想像して喋らせているわけ。これにはガッカリでした。私はオスの解説でベルリング、メスの解説でボーランジェが、といった分け方をしているんだろうと思ってたので、こんな擬人化して話を作った映画とは思わなかった。子供が見るにはいいかもしれないけど、私から見たら余計なことするなよーと言いたくなる。そのセリフがアニメのようにわざとらしくはく淡々としているのでまだマシだけどね。英語版はモーガン・フリーマンが1人でナレーションを担当しているらしいが、こちらは解説だけなのかな。是非これもDVDに入れて下さい。
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ヴェラ・ドレイク('04イギリス=フランス=ニュージーランド)-Jul 17.2005
[STORY]
1950年ロンドン。ヴェラ・ドレイク(イメルダ・スタウントン)は、裕福な家の家政婦として働くかたわら、体の不自由な隣人たちを訪ねては身の回りの世話をしている。夫のスタン(フィル・デイヴィス)は、弟フランクが経営する自動車修理工場で働いている。夫婦には息子と娘がおり、貧しいながら幸せに暮らしていた。しかしヴェラには家族に言えない秘密があった。それは望まない妊娠をしてしまった娘たちの堕胎の手助けをすること。中絶手術は法律で禁止されており、病院で手術するにも庶民には到底払えない額だった。ヴェラは善意でそれを行っていたが、その行為が明るみになり・・・。
監督&脚本マイク・リー(『人生は、時々晴れ』
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第75回アカデミー賞3部門(監督賞・主演女優賞・オリジナル脚本賞)ノミネート。イギリスアカデミー賞では8部門でノミネートし、3部門(監督賞・主演女優賞・衣装賞)受賞した。

本作も過去の作品同様、俳優たちに自分が演じる役柄以外のことは知らせずに、即興によるリハーサルで物語を作っていったという。ヴェラの家族のキャストは、彼女の秘密を直前まで本当に知らなかったらしいし、彼女も家に警察がやってくるのを知らなかったとか。監督の手腕はもちろんだけど、どういうストーリーなのか知らなくてもしっかりキャラクターを作り上げ、どんな事実を知ろうがそれを演技に反映させることができる役者たちも素晴らしい。

ヴェラの人のいいおばちゃんぶりが好きにならずにいられない。彼女が人のために働くシーンを上映時間の半分くらい費やして描いていて、これを見てしまうと、いくら彼女が法に背く行為をしていても庇いたくなってしまう。あからさまに彼女を責めたり避けようとする者も出てくるが、夫のスタンはもちろん、フランクが優しい人だったので何だかとてもホッとした。そして彼女を逮捕する刑事たちもまた、粛々と任務を遂行しつつも、彼女への憐憫をにじませる。・・・たくさん泣きました。

そんな感動的な映画なんだけど、ラストは「おや?」となる。
(ネタバレ)刑務所に入ったヴェラが同じ罪で既に服役している女たちと話すシーンが出てくる。彼女たちは再犯で悪びれた様子もなく、半分の刑期で出所できるとヴェラに教えるのだ。彼女たちは明らかに商売として中絶を行っているようだ。裁判ではまるでヴェラが違法堕胎で逮捕された初めての人間のように扱っていたのにね。つまり彼女たちの行為は建前ではあってはならないが、なければ女も男も困る。世の中が回っていかなくなる、必要悪ということなんだろう。ヴェラも彼女たちの話を聞いて驚いたような顔をし、そそくさとその場を去っていく。ヴェラは仲介者のリリーがお金を取っていたことも知らなかったし、刑期を終える頃には素朴で無垢な彼女ではなくなってしまうかもしれない。小さくなっていく彼女の後姿を見て、そんなことを考えた。
その直後、ヴェラを待つ家族たちの食卓が映る。彼女が戻ってきたとき、この食卓は以前のように明るく楽しくなるんだろうか?
(ここまで)

『人生は〜』もそうだったけど、家族の愛を感動的に見せてくれるんだけど同時に一抹の不安も抱かせる作品になっている。罪を犯したヴェラを家族は赦し、彼女は罪を償う、というような美しい物語では終わらせない。最後に引っかかる部分を残すことで作品をより強く印象付けるのだ。ただ見てるこちらとしては終わってからあまり悶々としたくないので、もう少し爽やかにしてもらいたいんだけどね(苦笑)
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姑獲鳥の夏('05日本)-Jul 16.2005
[STORY]
昭和27年。小説家の関口(永瀬正敏)は、久遠時医院という病院の娘・梗子(原田知世)が妊娠して20ヶ月も経つのに出産せず、さらに梗子の夫・牧朗が1年半前に行方不明になっているという噂を聞く。関口が古本屋『京極堂』を営む中禅寺(堤真一)に相談したところ、牧朗は関口たちの旧制高校時代の先輩であることが分かる。牧朗の行方を心配する中禅寺は、関口に探偵の榎木津(阿部寛)に頼むよう促す。関口が探偵事務所に行くと、そこに梗子の姉・涼子(原田知世:2役)が牧朗捜索の依頼にやってくる。
監督・実相寺昭雄(『D坂の殺人事件』)
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原作は京極夏彦の同名小説。原作は随分ハマって読みました。当時どんなキャストで映像化するかで盛り上がったし。キャストが決まった時、関口に永瀬、榎木津に阿部ちゃんは私の予想通りでちょっと感動したもんだ。他のキャストもだいたいイメージを壊さない人選だったけど、木場が宮迫博之というのが許せないと思っていた。でも蓋を開けてみれば木場も違和感なく見ることができた(もし2作目をやるとしたらちょっと弱い気もするが)

逆に私は京極堂の堤が受け入れられなかった。京極堂はきっちり正座して何時間でも本を読んでいられる人というイメージがあるので、胡坐をかいたり干菓子を咥えたりするのを見て、何てだらしないんだろうとまず幻滅。セリフ回しも力が入りすぎてるし、ダダダダッとまくし立てているだけでちっとも内容が伝わってこない。愚鈍な関口君に懇切丁寧に説明してあげてるんですよ、という彼独特の意地悪さ(笑)や余裕がないのだ。
比べたくないが『陰陽師』の野村萬斎は、説得力のある魅力的な語りで、どんどん晴明の世界に入っていけた。彼は彼で喋りにクセがあり京極堂のイメージとは違うので彼に演じてほしいとは思わないが、あんな雰囲気が京極堂にもあったら良かったのに。堤にはもっと徹底的に作りこんでほしかったよ。しかし彼も最後の最後で椅子から落ちそうになるような酷いシーンを撮らされて気の毒であったが。

物語の展開や演出、映像についてはある程度想像した通りのものだった。まぁこんなもんでしょう。全く期待しておかなくて、むしろ駄目だと決めつけておいてよかった(←おい)文句をつけたらキリがないという出来です(←おい)セットは悪くないのに明るすぎて雰囲気が出てなかったり、音楽がうるさすぎたり、あのスポットライトは何だ!アレハ姑獲鳥ナンデスカ?鼻緒だけが赤くない(泣)火事じゃなくて雨だろー!などなど、余計なシーンが多くて基本的なところの説明が不足してゐる(笑)そうなったらもう生温かく見守るしかないのです(今川雅澄の水っぽい口調で)

それにしても原作者は出過ぎでぶ過ぎ。最初誰だか分かりませんでした。でも演技は達者なのよね。どうせなら脚本も書いてしまえば良かったのに。
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