Movie Review 2004
◇Movie Index

クリムゾン・リバー2 黙示録の天使たち('04フランス)-May 29.2004
[STORY]
フランス、ロレーヌ地方にある修道院で、壁から血が流れ出すという奇妙な事件が起こる。ニーマンス警視(ジャン・レノ)らが駆けつけ調べてみると、男が生きたまま壁に埋め込まれたことが判明する。被害者の身辺を調べていくうち、彼には密教徒の仲間たちがいることが分かり、仲間もまた殺されていた。ニーマンスはその中の1人、自らをキリストと名乗る男を探しはじめる。
一方、麻薬捜査官のレダ(ブノワ・マジメル)は深夜、傷を負ったキリストにそっくりな男を助けて病院に運ぶ。翌日、彼の様子を見に行くと、黒いマントの僧侶が病室から逃げていくのを見かける。レダは僧侶を追いかけるが、人間とは思えないスピードとジャンプ力を持っており、取り逃がしてしまう。
監督オリヴィエ・ダアン(『リトル・トム』)
−◇−◇−◇−
前作『クリムゾン・リバー』は小説の映画化だったが、本作は(一応、原作者に続編を依頼したものの書きあがらなかったため)リュック・べッソンがオリジナル脚本を書き上げた。でも前作でジャン・レノとコンビを組んだヴァンサン・カッセルはこの脚本が気に入らなかったようで、出演を断ったのだそうだ。すでにパート3の制作も決まってるようだが・・・マジ?

続編とはいえ前作を見ていなくてもストーリー的には問題なく、犬嫌いだったニーマンスのその後が少し語られるくらいだ。ただ、前作との共通点というか構成は同じで、別々の事件を追っていたニーマンスと若い刑事が出会いコンビを組むところ、レダが前作のマックスと同様に激しいアクションシーンを見せるところ、前作では雪攻めだったのが本作で水攻めだったり(笑)掴みの部分は魅力的なのにラストで・・・なところまで同じだった。そこまで真似すんなよと(笑)

キリストの再来と次々に殺されていく12人の使徒たち。黙示録の天使と呼ばれる謎の僧侶と修道院に隠された秘密――これらのキーワードを見て『薔薇の名前』のようなミステリーを期待するも・・・いや、期待した自分が悪かった、と思わず反省しました。前作もミステリ的には反則だけど、推理するのがけっこう楽しかった。だけど本作は推理とかそれ以前の問題だった。使徒たちが猟奇的に殺される意味がまるでないし、第七の封印というのに結局何の意味があったのかと。てゆーか最初の壁から血が出た事件、なぜ警察に通報したんでしょうねえ(それが一番謎だ)

まぁワタシ的にはマジメルのアクションが意外にもハマってたので、またアクション系の映画に出てほしいなぁと思ったのと、宗教専門の刑事を演じたカミーユ・ナッタがとても綺麗だったので今後注目です。
それから人間とは思えない動きをする僧侶のビジュアルが『ロード・オブ・ザ・リング』のナズグルのようだし(でも中身はヤマカシ)出演者にはサルマンを演じたクリストファー・リーもいるので、指輪ファンならちょっと楽しめるかも?!
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トロイ('04アメリカ)-May 26.2004
[STORY]
紀元前12世紀頃。スパルタの王メネラウスは、宿敵であったトロイの王子ヘクトル(エリック・バナ)と弟パリス(オーランド・ブルーム)を和解の宴に招いていた。しかしパリスはメネラウスの妻ヘレンと恋に落ち、彼女を連れてトロイへ帰ってしまう。怒ったメネラウスは兄でミュケネ王のアガメムノンとともに千艘もの船を出し、トロイへ向かう。その中には無敵の戦士アキレス(ブラッド・ピット)もいたが、彼はアガメムノンを軽蔑していた。
監督ウォルフガング・ペーターゼン(『エアフォース・ワン』
−◇−◇−◇−
ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩『イリアス』の中のトロイア戦争を脚色したストーリー。映画を見てて混乱しないようにと少々物語を齧ってから見たんだけど、オリンポスの神々を一切登場させず、死なない人が死んでしまったり、死ぬはずの人が生き延びたりと、かなりアレンジしてありました。

10年も続いた戦争の話だからカットしたりアレンジしたりは当たり前だとは思うが、その脚色の仕方があまり好きじゃなかった。神々を出さなかったのはかえって良かった。でも伝記の映画化やリメイク作品でよく言われる“現代風にアレンジ”というやつがねえ。今現在のことを意識したようなセリフ、例えば
「この(トロイア)戦争は歴史に残る」とか(はいはい、残ってますね)
「俺(アキレス)は歴史に名を残す」とか(歴史っつーかアキレス腱を知らない人はいないし)
などといちいちうざったい。あと反戦メッセージみたいなセリフも随所にちりばめられていて、そのたびに現在のイラク戦争をどうしても思い出してしまって集中できなかった。戦争はそりゃあ良くないですよ。でも映画って現実を忘れさせてくれる娯楽だと思うんで、現実を意識させるものは排除してもらいたかった。

でもブラッド・ピットのアキレスは思ったよりも良かった。アキレスというキャラクター設定に魅力がないのが気の毒だったけど、身体と身のこなしが綺麗で、ハンドボールのシュートを打つみたいに相手の首の動脈を一気に断ち切るシーンにビックリした。相当努力したんだねえ。
そして戦争の原因を作ってしまうヘタレ王子オーランド・ブルームは、演技があまり上手くないせいもあり最初から最後まで脱力させられるが、トロイの木馬を目の前にしての一言だけは唯一正しかった。でも普段の行いの悪さからか彼の言葉を全員が無視してて、さらにトホホな人であった。
得をしたのはエリック・バナでしょう。ポスターなどで一応大きく名前が書いてあるものの日本ではまだ知名度が低くて地味だけど、この映画で好感を持った人は多いはず。ヘタレな弟を庇いつつ、父である王の忠実なるしもべであり、剣の達人であり、よき夫でよき父親でもある。完璧ですよ。アキレスとの一騎打ちシーンは、間違いなくこの映画のクライマックスだ(正直言って肝心のトロイの木馬シーンは失笑してしまいました。)
さらに素晴らしかったトロイの王プリアモスを演じたピーター・オトゥール。アキレスに許しを乞うシーンは思わず泣いてしまった。まさかこの映画で泣かされるとは思ってもみなかったよ。ちょうど疲れてダレ気味だったところが一気に引き締まって、ここだけ格調高い映画になったように見えた。さすが!の一言です。脱帽。
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ビッグ・フィッシュ('03アメリカ)-May 15.2004
[STORY]
エドワード・ブルーム(アルバート・フィニー)はおとぎ話を面白おかしく人に聞かせる人気者だ。しかし息子のウィルだけはそんな父が嫌いで、結婚してからは疎遠になっていた。そんなある時、母サンドラ(ジェシカ・ラング)から父の病気が思わしくないと告げられ、ウィルは妻を連れて帰郷する。ベッドに横たわる父は相変わらず作り話ばかりしてうんざりするが、ウソだとばかり思っていた話の証拠を見つけて愕然とする。
監督ティム・バートン(『猿の惑星 PLANET OF THE APES』
−◇−◇−◇−
原作はダニエル・ウォレスの同名小説。バートンの父親が亡くなり、死について考えている時にこの映画の話が来たので受けたという。また、本作にも出演しているヘレナ・ボナム・カーターとの間に男の子が生まれたことも影響しているのかもしれない。

本作より少し前に公開された『みなさん、さようなら』とよく似た設定の映画なんだけど、『みなさん〜』で消化不良を起こしていた私は、本作で溜飲が下がりました。そうよ!こういう映画が見たかったのよ!息子が父を理解し、和解し、父のパーソナリティを受け継ぐところは涙なしには見られない。素直に感動してボロボロ泣いてしまった。

ただ、そのクライマックスと比べると序盤はかなりかったるい展開だった。最初エドワードが、一体何を伝えたくて話しているのか掴みづらくて戸惑ってしまったせいもあるだろう。それにホラ話の中に真実が隠されている――という設定のせいか、エピソードがこじんまりとしてしまったと思う。ワクワクするような展開の話はなかったし、続きが見たくなるようなものでもなかった。あ、だから何度も聞かされてきたウィルがうんざりしたのか(笑)大切な人のためにエドワードは頑張ってきた、辛かったことはそのまま話したくなかったし、照れくさい話をそのまま話すのはもっと照れくさい、というわけで話をするたびに軌道修正して今のかたちができあがったんだろう、というのは十分理解できたんだけど。 でもアルバート・フィニーがとても魅力的で、彼が嬉しそうに話している顔を見ると多少面白くなくても彼自身が楽しいんだからいいか、という気にもなったり(笑)

気になったのは若き日のエドワードを演じたユアン・マクレガーを筆頭に、エピソードに登場する役者たちの演技だ。まるで操り人形みたいに見えたのは、わざとそういう風に見えるよう演出したのかな?その中でカーターが演じたジェニーだけは生々しくて違和感あり。これもわざとかな?魔女の時は人形っぽかったからねえ。実は何だかんだ言ってエドワードにうしろめたいことが(以下略)
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スイミング・プール('03フランス=イギリス)-May 15.2004オススメ★
[STORY]
イギリスの女流ミステリー作家サラ・モートン(シャーロット・ランプリング)は出版社の社長ジョンの勧めで南フランスの別荘へやってくる。ロンドンとは違い天気がよく、美しい風景が気に入ったサラは執筆活動に入るが、そこへジョンの娘ジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)が現れ、彼女の自由奔放な振る舞いにサラは苛立つ。しかし一方でジュリーの行動に目が離せなくなったサラは、彼女をモデルに小説を書こうとする。
監督&脚本フランソワ・オゾン(『8人の女たち』
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ともにオゾン監督作品経験済の2人の女優が共演した作品。ミステリー映画・・・なんだけどトリッキーなものではなく、どちらかというと(ネタバレっぽいかな)叙述ミステリー(ここまで)って感じですかね。謎なところは謎のままなので、謎が全て解明されないと満足できない人は見ないほうが賢明かもしれない。

私は途中で作品の趣旨が分かったので(気付く人は気付くでしょう)物語の進むままサラとジュリーという2人の女を見守ることにした。とにかくサラを演じるランプリングに目が離せなくて、『まぼろし』の時の彼女も絶賛されていたけど、私は本作の彼女のほうがいいと思った。地味なコートを纏った気難しい作家から、赤いワンピースを着た表情豊かな1人の女性へと変わっていく姿を、ランプリング自身も楽しみながら演じているように見えて、思わずこちらの顔もほころんでしまったほど。

対するサニエは『焼け石に水』の時よりも引き締まった見事な肢体を披露。少しハスキーで舌足らずな喋りも役柄に合っていて魅力的だった。それにしても、もう一度この映画を見る時には彼女に対しての見方が変わってしまうだろうな。(ネタバレ)ジュリーはサラが作り出した想像の産物なんだからね。ナイスバディで小悪魔的だが、実は出生の秘密があり繊細で傷つきやすい女の子――と書くと随分ステレオタイプなんだな。映画を見てる最中には全く気付かなかったけど。(ここまで)

主役はこの2人の女性だけではない。別荘のプールもちゃんと主役として堂々と鎮座していた。使われずに黒いカバーが掛かっているところから、枯葉で覆われてしまっているところ、波打つところ、夜のシーンでは真っ黒で不気味な姿を見せつける。予告や写真で見た時よりもずっと小さなプールで、映画の最初に出てきた時にはびっくりしたけど、こちらも見事な存在感だった。

オゾン作品は今まで欠かさず見てきたけど、特に素晴らしいと思う作品というのは今までなくて(オススメ★を付けてないし)でも「次はすごい作品を撮るはずだ」と期待させる監督だったから、本作で自分的に当たりが出て本当に嬉しい。時間があったらもう一度劇場で見たいな。
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ロスト・イン・トランスレーション('03アメリカ)-May 2.2004
[STORY]
ハリウッドスターのボブ・ハリス(ビル・マーレイ)が日本のCM撮影のために来日した。言葉が通じない場所で1人過ごすことに違和感と不安を覚え、夜になってもなかなか寝付けない。一方、カメラマンの夫とともに来日したシャーロット(スカーレット・ヨハンスン)もまた、夫が仕事に出ている間に孤独と不安を感じ、仕事で疲れて眠る夫の隣で眠れない夜を過ごしていた。そんな2人が知り合い、次第に心を通わせていく。
監督&脚本ソフィア・コッポラ(『ヴァージン・スーサイズ』)
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日本でオールロケを行い、スタッフのほとんども日本人という作品。ソフィア・コッポラが20代の時に来日した時の印象を脚本に活かし、第76回アメリカアカデミー賞のオリジナル脚本賞受賞した。ソフィアの父フランシス・フォード・コッポラが製作総指揮に携わっている。

日本で言語が英語の映画を見ている時、喋る言葉が英語の時は日本語字幕が入る。そしてたまに他の言語が入る場合には日本語字幕と一緒に英語字幕が併記される場合が多い。日本に住む外国人にも分かるようにという配慮からだろう。でもこの映画の場合、日本語を喋るシーンに英語字幕がつかない。つまり日本語を理解できない外国人が見た場合、ボブやシャーロットと同じ気分を味わうことになるのだね。調べてみたら、アメリカで上映された時も日本語部分に英語字幕をつけなかったというじゃないですか。ということは英語部分を字幕で理解し、なおかつ日本語部分も分かってしまう人はこの映画の意図するところを楽しむのは難しいわけですな。かくいう私も日本の描写を見て「なるほどねー」と感心するだけで、それ以上の感覚を得ることはできなかった。残念・・・なのかな?(あまり悔しくはないんだけど)
ところでDVDに日本語吹替版をつけるとなるとどうなるんだろう?日本語部分が英語になったりするのか?(そのほうが楽しめそうな気がするが)

ただボブとシャーロットの孤独感は強く感じることができた。言葉の通じない国にいて、言葉の通じる人とは気持ちが通じていないということ。そう感じている者同士が惹かれ合う描写は自然で良かった。でも正直鼻についたね(笑)だってあんなに豪華な部屋に泊まって夜になるとバーで過ごす――金銭的には何の不自由もないのに何て贅沢なんだろう。勝手に悶々としてなさいよ、と。一般人にはこういう悩み、分からないわよね〜的な嫌らしさまで感じてしまったのは、私の被害妄想なんだろうか。

さらに鼻についたのがシャーロットの友達連中。いかにもな日本人たちの登場に、ああこの映画はここまでだ、と頭の中でスッパリ切ってしまいました。あそこはアメリカ人の友人にして、すっかり日本に馴染んじゃってる彼らにますます孤独感を募らせるボブとシャーロット・・・ではいけなかったんですかねえ?ま、この映画で一番空気を読んでいた日本人はマシュー南(藤井隆)と待合室のおばあちゃんみたいなおじいちゃんだけでしたね。
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