Movie Review 2004
◇Movie Index

LOVERS('04中国)-Aug 28.2004
[STORY]
唐の時代の中国。皇帝や政治に不満を持つ叛乱勢力「飛刀門」は、前の頭目を朝廷に殺され復讐の機会を窺っていた。捕吏の劉(アンディ・ラウ)は前頭目の娘らしい盲目の踊り子・小妹(チャン・ツィイー)を捕らえるが、小妹をわざと逃がして飛刀門のアジトを見つけようと考える。そして同僚の捕吏である金(金城武)が小妹を助け出して逃がしてやる役を受け持つ。最初は警戒していた小妹だったが、次第に金を信頼していく。しかし朝廷からの追っ手が2人に襲い掛かっていく。
監督&脚本チャン・イーモウ(『HERO』
−◇−◇−◇−
『HERO』のスタッフチームがふたたび集結し制作された作品。今回音楽を担当したのは『花様年華』の梅林茂。

HEROは個人的な感情を捨て、大義のために命を捧げた男の物語だったが、本作は任務を捨てて愛す者を選択するという、HEROとは対極にある物語だ(対になるよう作られたのかな)今の時代で大義のためと言われてもピンとこないけど、個人的な感情を選ぶというこちらの映画のほうが物語としては理解しやすいし、どちらかといえばこの映画のほうが好きだという人のほうが多いんじゃないかなーと思う。

アクションとにかく小妹が踊るシーンが本当に凄い!ツィイーはあまり好きじゃないが、このために相当努力したようで、素直に拍手したい。ワタシ的にはもうこれだけで元を取ったぞ!という感じだった。・・・ええつまり後のシーンはもうどうでも良かったわけなんですけどね(笑)はっきり言ってしまえばどのシーンもクドイの。いいと思った小妹が踊るシーンでさえ長くて、最後のほうはツライと感じたほど。私が2度3度見てしまう映画というのは、あともう少し長ければなーと思う映画が多くて、その絶妙な匙加減に惹かれてしまうのだ。腹八分目というやつね。だから本作のように、おなかいっぱいになるほど出されるとうんざりしてしまう。竹の上で戦うシーンだって『グリーン・デスティニー』でさんざん見たし、そろそろこの手の映画も潮時なのかな・・・という気がします。

ストーリーも感情移入しにくかった。役者たちは熱演していると思うんだけど、わざとなのか真面目なのか分からないが、思わず失笑してしまうシーンがたくさんあって、物語そのもの集中しずらかった。胸に(捕)とか、竹を削りまくりとか「抜かずにそのままで行け」とか笑いを堪えるのにもう必死(笑)バカ映画ギリギリってところだった。
あとはアニタ・ムイが亡くなってしまったことで、中途半端なクライマックスとラストになってしまったのが残念だ。彼女がちゃんと出演していたら、一方では愛のために戦うシーンを、もう一方では飛刀門と朝廷との戦いを、そしてそれぞれが死を全うする感動的なシーンが見られたんじゃないかと。ま、この映画が彼女の遺作になるのはどうかと思うが(すんません)home

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NIN×NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE('04日本)-Aug 28.2004
[STORY]
伊賀の里で修行を積む忍者・服部カンゾウ(香取慎吾)は、父から江戸へ行って主を決め、主以外に姿を見られてはいけないという最後の修行を命じられる。東京にやってきたハットリくんは、小学3年生の三葉ケンイチに仕えることになった。ケンイチはいじめられっ子で友達がいなかったが、ハットリくんに励まされて勇気を出していく。そんなある時、ケンイチの学校にハットリくんのライバルだったケムマキ(ゴリ)が担任として現れ、また同じ頃、忍者のしわざかもしれない怪事件が次々と起こる。
監督・鈴木雅之(『GTO』)
−◇−◇−◇−
原作は藤子不二雄(A)の漫画『忍者ハットリくん』脚本は元ジョビ・ジョバのマギーが担当した。

映画としての出来や面白さはあまり期待していなくて、ワタシ的には伊東四郎の「ニン!」だけで1000円以上の価値はあったわけだが(笑)前半は意外と笑えるシーンが多くて楽しめた。私はちょうどアニメ放映していた頃の世代だけど、映画を見に来ている子供たちはハットリくんなんて知らないだろうに、すぐに映画の中に入りこんで(それともアニメを知らないから良かったのかな?)ハットリくんがケンイチの家で騒動を起こすたびにケラケラと笑い声が響いた。

ただ後半は途端につまらなくなる。次々と怪事件が起こってクライマックスで機動隊出動を出動って、『ゼブラーマン』と一緒じゃない。もういいかげん飽きたよ。何も急にシリアスになることもないと思うんだよね。前半のウケ狙いのトーンをそのまま後半に持ち込んでもいいじゃない。せっかく黒影がマトリックスのネオのような格好してるんだからさ、手裏剣をよけるシーンであのポーズを取らせるとか、ハットリくんが分身の術で100人スミスみたいになるとかさ(あ、そうするとハットリくんが悪役になっちゃうか(笑))黒影との対戦に全く忍術を使わないなんて勿体ないっつうの!無理に感動シーンに持っていかなくたって、笑いという感情で観客を乗せていれば、最後にケンイチがパッと手裏剣を投げるだけで拍手喝采なハズだよ。ベッタリしたテンポの悪い演出はいいかげんやめてもらいたいもんだ。

あ、黒影といえば彼に一言もの申す!(笑)
あんたね、人をどうこう言う前に、自分の服装を見てみろ!そんな忍者がいるかーーー!お前もクビーッ!by香取部長

デカイのに、香取慎吾はこれ以上ないぐらいハットリくんがハマり役。口がアニメのハットリくんと同じなのよ!キャラクター的にアニメのほうは真面目な優等生で実はあまり好きじゃないんだけど、実写のハットリくんのほうが茶目っ気があって好感が持てる。ただシリアスなシーンは途端に演技の下手さが目立ってしまい、上に書いたクライマックスのダメさをさらにダメにしていた。ゴリが一切ウケ狙いするような演技をしなかったのはウザくなくて良かったような物足りなかったような・・・。その分、刑事役の東幹久やゲスト出演した甲賀忍者たちが笑わせてくれたけどね。ただ漣ちゃんは本当に手裏剣投げられるんだからさ、是非やってほしかったなー。

ところでハットリくんの赤フン姿は普通に見れたんだけど、ケンイチのパンツ姿は直視できず思わず目をそらしてしまった。微妙にサイズが合ってなくてユルユルなのが余計に卑猥というかなんつーか・・・。そんな自分にそこまで変態じゃなかったかと、実はホッとしました(笑)
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華氏911('04アメリカ)-Aug 21.2004
[EXPLANATION]
2000年のアメリカ大統領選挙で裁判沙汰にまでなったゴア氏との一騎打ちに勝利したジョージ・W・ブッシュ。しかしワシントンポスト紙によると大統領に就任してから8ヶ月の間で42%が休暇だったという。そして2001年9月11日アメリカ同時多発テロ。以前からテロの危険性があったにもかかわらず、ブッシュは対策を怠っていた。なぜならブッシュは父の時代からサウジアラビアの富豪ラディン一族と密接な関係にあったからだった。
監督&脚本マイケル・ムーア(『ボウリング・フォー・コロンバイン』
−◇−◇−◇−
第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門パルムドール受賞。選挙前であることを理由に製作元であったミラマックスの親会社ディズニーが公開しないと決めていた作品だが、配給権を傘下にあるミラマックスに売却したためアメリカ国内でも公開されることになった。

映画としての出来は『ボウリング』に比べるとあまり良くないと思った。前作はライフル協会に属していながら銃とアメリカの歴史を客観的に見ているなぁと感心したが、本作は前半と後半のバランスが悪い。前半はとにかくブッシュを前作と同じようにテンポ良く見せる。しかし後半では、戦争によって一部の人間だけが富を築き、貧しい人々が戦場で命を落とているというところを、ムーアは情緒に訴える方法を使ってまで全部ブッシュに被せようとしているように見えて嫌な感じがした。こういう構図は何もブッシュに始まったことではなく、アメリカはそうして大国になってきただけじゃない。何を今さら。アメリカ国内にいると分からないものなんだろうか。ブッシュ批判から始まってもいいが、そこからアメリカの歴史や構図を伝えるようにしてほしかった。たとえブッシュが選挙に負けても、それだけじゃ変わらないってことをアメリカ国民に教えるべきじゃないの?そこまでする気はないのかな。

また前半でも、ブッシュが小学校で同時多発テロ情報を聞いて呆然とするのだが、ここのムーアのナレーションはブッシュの心を代弁しているようには見えないし、ネタにしても面白くも何ともない。実は私はこの映像を見て、正直ホッとしたのだ。ブッシュやCIAは最初からテロがあることを分かっていて、見て見ぬフリをした――なんて陰謀説まであったから、実際のところどうなんだろう?と思ってたのだが、あの映像を見て少なくともブッシュは知らなかったんだなと。あそこで迅速に動いてこそ大統領だとムーアは批判するが(確かにそうだろう)でもあの茫然自失な顔は、1人の人間らしい正直さが見えた。だからあの映像で叩くのはいやらしいと思う。・・・突っ込まれないようしっかりしてほしいとも思うが(笑)

映画の中で一番印象に残ったのは同時多発テロのシーンを映像ではなく音だけで伝えたところ。あそこは鳥肌が立った。映像で見るよりもずっとリアルで、自分がテロに遭遇してしまったような感じがした。ここは素直にムーアを賞賛したい。

この映画はブッシュが負けたところで完成品になる映画なんだろうが、ブッシュが負けるとムーアがますます権威ある人物として(特に日本で)扱われそうなので、ここはブッシュに勝ってもらいましょう。ムーアには適度にイタイ人でいてもらいたいんで(笑)

ところでこの映画を日本の一部の議員が見たようですが、総理大臣になるのを諦めた人たちなんですかね?しかも現役総理にも見ろと奨めるとは。たとえブッシュが負けてケリーが大統領になっても、信用されないだろうね。そんでもってこういう人たちに限って、アメリカ以外の国の大統領や首相をバカにする映画ができたら、日本で上映させない運動をするんだろうなぁ。
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リディック('04アメリカ)-Aug 17.2004
[STORY]
脱獄と殺人で指名手配中のリディック(ヴィン・ディーゼル)は、5年前に逃れてからは氷の惑星でひっそりと暮らしていた。しかし賞金稼ぎに捕まりヘリオン第一惑星に連れて来られ、エレメンタル族の使者エアリオン(ジュディ・デンチ)から、次々に惑星を征服するロード・マーシャル(コルム・フィオーレ)率いるネクロモンガーを倒すのはリディックであると告げられる。リディックは取り合わなかったが、そこへネクロモンガー艦隊がヘリオンに攻撃を仕掛けてきた。
監督&脚本デヴィッド・トゥーヒー(『ピッチブラック』
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『ピッチブラック』の続編にあたる作品だが(といっても日本では続編であることを宣伝していない・・・いつものことだ)低予算だった前作と違って本作は制作費170億円と破格でビックリ(日本では劇場公開してくれるのかと心配したほどだったのに、前作より宣伝もスゴイ)
主演のヴィン・ディーゼルがプロデューサーに名を連ねている。

はっきり言ってネクロモンガーの話はつまんなかった。ロード・マーシャルは存在感ないし、甘えんぼ司令官と嫁さんのパートも盛り上がらずにグダグダ。ライナス・ローチの美貌もすっかり影を潜め(しかも頭にシャコ乗っけてんスよ)出番も少ない。でも彼のラストシーンは綺麗で良かった、甘えんぼ司令官よりずっといい、と自分を慰めましたよ。
かといって『ピッチブラック』での生き残りたちとの話もいまいちで、イマムとの会話もおかしいし、刑務所でのキーラとのセリフのやりとりも青臭くて恥ずかしくなるほど。凶暴凶悪だからこそリディックはカッコイイのに、人のために働きすぎだった。

面白かったのは刑務所からの脱出シーン。太陽が昇る前に船にたどり着かないと焼け死んでしまうというこのシーンは、前作らしさが出ててハラハラした。これがメインでも全然構わなかったのになー。リディックが感覚でトンネルの距離を当ててしまうところや、刑務所で暴れる怪物を手なずけてしまうところもありがちだが好きだ。彼は刑務所でのほうが生き生きしているのかも(笑)

でもネクロモンガーのパートも最後は嫌いじゃない。ラストシーンで思わず笑いそうになってしまった。家で1人で見てたら「うはは」と声に出して笑ってたかもしれない。これで続編見てみたいんだけど、どうするんだろう・・・。ちょっと想像してみよう。(ネタバレ)一匹狼のはずのリディックがいきなり大家族のおかん状態。どこへ行くにも兵士がぞろぞろついてきて涙目になるリディック。(ここまで)なんかすっごい見たくなってきた!(笑)
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ドット・ジ・アイ('03イギリス=スペイン)-Aug 4.2004
[STORY]
スペインからイギリスにやってきたカルメン(ナタリア・ヴェルベケ)は、裕福なイギリス人バーナビー(ジェームズ・ダーシー)と知り合い婚約する。そして独身最後に女性たちだけで行うヘン・ナイト・パーティーで、婚約者以外との男性と最後のキスをするゲームをすることになった。カルメンは店にいたブラジル人のキット(ガエル・ガルシア・ベルナル)を選ぶが、彼に惹かれてしまう。
監督&脚本マシュー・パークヒル(長編監督初)
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2003年のサンダンス映画祭で上映され絶賛された作品。

映画の随所に仕掛けというか伏線があるのでうまく感想が書けないのだけど、映画の日に1000円で見るなら十分お得感のある作品だったと思う(1800円だったら損したと思うかもね。上映時間も短いし)ストーリーはかなり私好み。伏線も親切に全部拾い上げてくれるので、それがご都合主義と取られてしまうかもしれないが、伏線そのままほったらかしの映画(伏線ですらなかったのかよ!な映画も含めて)よりも見ていてすっきりした。

ただ演出がイマイチだなぁ思うところがけっこうあったな。例えば(ここからネタバレ)カルメンが踊る店でキットとバーナビーが会話するシーン。ここで「えっ2人は実はグルだったの?!」と観客に思わせるか、カルメンとキットのことがバーナビーにバレてしまったのか?と思わせないとおかしいのに、そのどちらでもなくそのシーンが終わってしまうのだ。そりゃないよ。(ここまで)

面白いと思ったのはオープニングクレジット。ここに実はヒントがあるわけだ。見終わった後にもう一度オープニングだけ見たいと思った(劇場が入れ替え制でなければそのまま見たかも?)あとエンドクレジットにもおまけシーンがあるので、終わったらすぐに席を立たないように。
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