Movie Review 2003
◇Movie Index

踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!('03日本)-Jul 26.2003
[STORY]
警視庁警視副総監誘拐事件から5年。湾岸署のあるお台場は次々と道路が作られ、ビルが立ち並び、観光客が溢れるようになっていた。刑事課強行犯係の青島(織田裕二)は、女子高生が被害に遭う事件やスリなど、小さな事件ばかりにうんざりしていた。そんなある時、殺人事件が発生し、青島は再び警視庁の管理官である室井(柳葉敏郎)と顔を合わせるが、今回の事件の指揮は女性のキャリアが担当し、室井はサポート役をすることに・・・。
監督・本広克行(『サトラレ』
−◇−◇−◇−
私は前作の映画のビデオが出た頃からこの作品にハマった。何で映画がヒットしたのか全然理解できなくて、それなら見るしかないとドラマ全話とSPと映画を順番に見た。・・・こりゃハマるわ。突飛なストーリーもあるんだけど、警察というお役所の体制と、それに疑問を感じて時に反発し時に屈する捜査員たちの、軽快かつ熱いドラマだった。

で、待望の最新作は劇場で見ることになった。正直言って前作の大ヒットに浮かれてやしないかと(お調子者のフジテレビがね)心配だったんだけど・・・やっぱりだ。浮かれっぷりは青島にまで伝染していて、被害に遭った女子高生に対して掛ける無神経な言葉に眩暈がした。あんた、雪乃さんやすみれさんの事件を忘れたんか?まぁなんか今回は全体的に女性の扱いがひどかったような。沖田(女性キャリア)、すみれ、雪乃がそれぞれ追いこまれて男性陣が助けるという構図。私はどっちかっていうとフェミは嫌いなんだけど、今回はちょっと気になりましたです。

青島のセリフの数々もまた気になった。前作の「事件は会議室で起こってるんじゃない!」がウケちゃったせいか、ことあるごとに青島に決めゼリフっぽいセリフを言わせてるの。でもそれが分かるから全く心に響かない。逆にそれまで集中して見てたのに決めセリフモドキが出るたびに冷めまくり。だんだん腹立ってくるのよこれが(笑)それを救ってくれたのはやっぱり和久さん(いかりや長介)だった。沖田に詰め寄るシーンでのセリフで泣きそうになった。他の登場人物たちに違和感を覚えてる中で、この人だけはやはり揺るぎ無いっすね。病室のシーンはアレなんだけど・・・でもそれは脚本がそうだからなぁ。その中でベストの演技を見せてると思う。それと唯一この5年間で成長した真下(ユースケ・サンタマリア)のカッコ良さにワクワクし、カッコ悪さに笑わせてもらった。この人はなんか、得な人だね。

全体的に見てパート1のほうが纏まりがあって私は好きだ。本作はファンサービスと思えば悪くないし、ネタ集だと思えば面白いと思う。今回の本筋というかテーマは、室井が最後に決断したことだと思うし、そのシーンはとても良かった。オープニングの映像が伏線にもなってたんだよねー。でも余分なシーンをたくさん詰め込み過ぎたし、事件そのものは雑な作りだった。だけど本作も前作を上回るペースで動員が増えてるみたいだから、フジはもっと調子に乗ってしまいそう・・・。もうこれ以上、作品の良さを壊すのはやめて〜!
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

セクレタリー('02アメリカ)-Jul 20.2003
[STORY]
リー・ホロウェイ(マギー・ギレンホール)は自傷癖があり、精神病院に入院していた。退院後、タイプの資格を取り、秘書の 募集をしている弁護士事務所を訪ねる。中に入るとちょうど前の秘書が辞めていくところで、弁護士のエドワード・グレイ (ジェームズ・スペイダー)はすぐに彼女を採用した。翌日からリーは働きはじめるが、グレイは次第に彼女に厳しく 注意するようになる。そしてリーはその要求に応えようと必死になることに快感を覚え始める──。
監督スティーブン・シャインバーグ(『ダブル・ロック/裏切りの代償』)
−◇−◇−◇−
サンダンス国際映画祭で特別審査員賞を受賞し、主演のマギー・ギレンホールはゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。
ちなみに『ドニー・ダーコ』の主演ジェイク・ギレンホールは実弟で、彼女もまた同映画で姉役を演じていた・・・らしい。お姉さんがいたのは覚えてるけど、顔まで覚えてないなぁ。『セシル・B ザ・シネマ・ウォーズ』にも出てたらしいけど、これまた全然覚えてない。この映画で初めて認識したけど、彼女のおかげでこの映画は成り立ってると言っていいと思う。オドオドしたり、いたずらっぽく笑ったり、挑発行為に出る時の生き生きした顔といい、表現力がすごい。これから公開になる作品も見てみたくなる女優さんになった。

サド上司とマゾ部下の変態映画風、なんだけど見てみたら展開的にはストレートな恋愛映画だった。やってることは変態チックなのに、リーに感情移入して思わずキュンとしちゃったり涙ぐんじゃったりしちゃったよ(笑)父親のことで頭がいっぱいになるとつい自分を傷つけてしまう。でも基本的にはお茶目で明るい子なのね。ダサかったのが、次第に洗練されていくところもお約束だけど面白かった。そしてグレイという男も、私生活がほとんど見えない設定だったけど、シャイで繊細で不器用なところを隠すために、時に大胆な行動を取るってところが可愛くもあり。この2人、嗜好はグレイがSでリーがMだけど、精神的にはリーが彼を支配してるのね。彼女が仕掛ける数々の罠を見て、本当は彼女のほうがSなのかも?!なんて思ったり。終盤がちょっと気に入らないんだけど、十分楽しかった。

スペイダーはこれ以上ないくらいハマり役だったけど、やっぱり老けたというか、全体的に緩んじゃった感じ。40過ぎてるからしょうがないけどね。今現在の沢田研二とちょっとかぶるなぁ・・・。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

永遠のマリア・カラス('02イタリア=フランス=イギリス=ルーマニア=スペイン)-Jul 19.2003
[STORY]
コンサートで声が出ず、大富豪オナシスとの恋にも破れたマリア・カラス(ファニー・アルダン)は、パリで孤独に暮らしていた。イギリス人プロモーターのラリー・ケリー(ジェレミー・アイアンズ)は、そんな彼女にオペラ映画『カルメン』への出演を持ちかける。声の出ない彼女は一旦それを断るが、現在の彼女が演じるカルメンに、全盛期に録音された声を被せるものだと言われ、承諾してしまう。
監督フランコ・ゼフィレッリ(『ジェイン・エア』)
−◇−◇−◇−
マリア・カラス生誕80周年を記念して製作された作品。かつてカラスのオペラを演出し、親しい友人でもあったゼフィレッリが、今までもカラスの自伝的映画製作をいくつも持ちかけられたが断り続け、あえてフィクションである本作を選んだ。脚本は『ベント〜堕ちた饗宴』『カーテンコール』の脚本も手がけたマーティン・シャーマン。

予告やチラシをちょっと見ただけであまり事前に情報を仕入れずに見に行ったんだけど、もっと高級感溢れるというか芸術的な作品かと思ってたら、オープニングの軽快な音楽やポップなクレジット表示にのっけからビックリ。しかもジェレミー・アイアンズがゲイ役だし(それもかよ)想像と違って一瞬戸惑ってしまった。そしてラリーがカラスに提案する企画に釈然としないものを感じながらも物語は進んでいき、想像通りの結末を迎えた。

うーん。どうなのかなーこれ。カラスへの愛と敬意はものすごく伝わる。細心の注意を払ってると思った。でも、彼女が生きていた当時にこの企画が持ちあがったとしてだよ、本物のマリア・カラスに同じ依頼ができたと思う?そして彼女が(映画のように悩みながらも)承諾したと思う?どっちもノーだと思う。これはフィクションだからって言われればそれまでだけど、彼女をああいう形で表舞台に出させようとすることに対して、最後まで受け付けなかった。

監督がカラスの自伝的映画を断ったのは彼女の私生活やスキャンダルを追ったものばかりだったからということだが、だからといってこういう映画を作ったことに疑問を感じる。ならば、彼女の歌に対する思いや、どんな人物だったのかのみを描いた自伝的映画を作ればいいだけじゃない。私はそっちのほうが見たいぞ。

でも劇中劇の『カルメン』はとても良くて、ずっと感じていた気持ち悪さを切り離してくれた。ファニー・アルダン演じるカルメンに惚れ惚れ(←アルダン=カラスにはどうしても見えなかったので、あえてこう書かせてもらう)そしてカラスの歌声にも震えた。歌声すべて吹替のインド映画と同じような感覚で見たというべきかな(違うか)アルダンがとても50代には見えない。30代、時に20代にも見えるほど。相手を挑発する視線、恋する視線、目の演技だけでここまで見せるんだからさすが。この劇中映画は全編見たくなるなぁ。それと学生たちに見せた『トスカ』の一場面も、短いシーンとはいえカルメンよりもさらに印象深いシーンだった。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

ターミネーター3('03アメリカ)-Jul 16.2003
[STORY]
スカイネット計画を潰し、審判の日を回避させたサラとジョン母子。あれから10年、ジョン(ニック・スタール)は1人、身元を隠すように生きていた。審判の日はもう来ないと分かっているのに、嫌な予感がずっとつきまとっているのだ。そしてその予感は現実のものとなる。未来からT-X(クリスタナ・ローケン)という最強のターミネーターが送りこまれたのだ。そして同じ頃、ジョンを守るためにT-850(アーノルド・シュワルツネッガー)が送りこまれてくる。
監督ジョナサン・モストゥ(『ブレーキ・ダウン』
−◇−◇−◇−
前作から12年。本作はジェームズ・キャメロンが関わっておらず、出演者もジョン役がエドワード・ファーロングからニック・スタールに代わった。

前作から比べるとずいぶんシンプルな映画だった。時間も短いせいもあるだろうが、ジョンたちが逃げる→T-Xが追いかける→カーアクション満載、という流れが繰り替えされるだけだからな。見てて「またですか?」とうんざりする部分もあった。ただカーアクションそのものは迫力あって素晴らしい。カメラがいろいろな角度から撮られていて臨場感たっぷり。さすが『ブレーキ・ダウン』を撮っただけのことはある。でもワタシ的には『ターミネーター』の面白さはそこじゃないからなぁ。

何が一番見たいかって、タイトルになってるターミネーターそのものでしょ。『1』のシュワちゃんはもちろんだけど、『2』のT-1000ほど恐ろしい敵はいませんよ、他の映画と比べても。あれは当時、ものすごい衝撃だった。あの怖さと強さを、今回のT-Xでは全く感じなかった。T-1000よりT-Xが強いって設定に説得力なし。あ、でもちょっとフォローすると、『2』当時はたくさん映画見てたわけじゃないし、他にスゴイ映画もなかったし、何より自分自身が若かった(笑)今はたくさん見てるし、他にもスゴイ映画がたくさんあるし、歳も取ったんで(笑)今の時代、いろんな意味でものすごい映画を撮るのって大変なのかも・・・。
ま、T-Xもストーカーなら至上最強ですな(笑)なんか追いかけっこシーンや、シュワちゃんとのガチンコバトルシーン見てると、シュワちゃんが好きで追いかけてるように見えてしょうがなかったっす(笑)うまくいけば最強カップルなのに。なんてね。

そういうシンプルな映画だから、ラストもきっとこうだろうってある程度予想してたんだけど、それは見事に裏切られた。なんかもうここだけですよ、この映画見て良かったー!って思ったのは。最後、泣きそうになったもん。膝も震えちゃった。こういう映画だったんだね。これでようやく始まったわけか。次回作がものすごく楽しみではある。でもジョンたちがねぇ。ジョンと一緒に行動を共にするようになるケイトという女の子が出てくるんだけど、この役がすっかり老けちゃったクレア・デーンズなんですね。ニック・スタールと並んで立っててショボイの何のって(失礼)この2人でパート4、パート5を本当にやるの?って聞きたくなるほど。ファーロングがダメ人間になっちゃったから仕方ないとはいえ、他にいるでしょう?もう少し良さそうな人材が。・・・いないのかな。
home

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

デブラ・ウィンガーを探して('02アメリカ)-Jul 16.2003
[EXPLANATION]
女優ロザンナ・アークエットは40歳を過ぎ、女優業を引退することを考えていた。彼女は既に引退した憧れの女優デブラ・ウィンガーに会って、なぜ女優を辞めたのか聞いてみたくなる。そして総勢34人の女優たちにカメラを向け、仕事のこと、家庭のことを聞き出していく。
監督ロザンナ・アークエット(初監督作)
−◇−◇−◇−
第55回カンヌ映画祭特別招待作品。その前年、第54回のカンヌで妹パトリシア(『ヒューマンネイチュア』に出演)をインタビューしたシーンもある。また撮影は『グラン・ブルー』で共演したジャン=マルク・バールが担当している。

ホントは見るつもりなかったのに成り行きで見ることになってしまった映画だったけど、でも見て良かったな。内容的にはちょっと物足りなかったけど、テーマはすごくいいし、大勢の女優たちの顔をじっくりと鑑賞できる映画として面白かった。実のところ、この映画を見るまで、ハリウッド女優が40歳くらいになると使われなくなっていくってことに気が付いてなかった。日本の女優は30歳過ぎると扱いが悪くなっていくよなぁとは思ってたけど、アメリカでまさかそんな〜って。でも思い返せば確かに、40歳過ぎた女優で映画のトップクレジットを飾り、なおかつ評価されている人って少ないやね。フランス映画ではもっと年上の女優が主役を張ってる(監督にチャレンジする女優も多い)
そんな中で、この映画の中にも名前の出てくるジュリアン・ムーアやスーザン・サランドン、メリル・ストリープなんかはやっぱり立派なんだわ。

映画に登場する女優でも、成功している人はやっぱりとてもいい顔をしている。ホリー・ハンター然り、あと還暦過ぎてるのにヴァネッサ・レッドグレーブがすごく綺麗でびっくりした。皺のつきかたも醜くなくて上品。それから夫が監督業をやっいるロビン・ライト・ペンやフランシス・マクドーマンドも余裕が見える。夫婦関係がうまくいっていれば、いい役をつけてもらえるもんね。引退したデブラ・ウィンガーやジェーン・フォンダもストレスから解放された余裕の表情だ。うーん、でもウィンガーはホント綺麗で、引退させておくにはもったいないなぁ。
逆にマーサ・プリンストンはただ愚痴をこぼしてるみたいでみっともなかった。だけどそんなシーンが一番面白くてニヤニヤ。またつい最近、離婚したばかりのシャロン・ストーンが夫について語ってるシーンにも思わず苦笑。この人も、演技はアレだけどやっぱり美人だわ。下手に演技派なんか目指さずに一生悪女役でがんばってほしいな。そして最後にカトリン・カートリッジに合掌。

物足りないと思ったのは、やはりロザンナ本人が、悩みや今までやってきた女優という仕事についてあまり語っていないこと。女優たちから話を聞くことがテーマとはいえ、彼女自身のこともきちんと話してくれないと、この映画から一体何を汲み取ればいいと?『愛の拘束』に出た時のこととか、ぶちまけて欲しかったんだけどな〜(笑)

若いうちは美貌だけでも何とかやっていける世界かもしれない。でもチヤホヤされてるだけじゃダメ。歳を取る前に演技に磨きをかけるなり、個性を出すなり、映画を作る側になるための勉強をするなりしなきゃ生き残れないってわけだ。これは映画界に限らず、どの世界でもそうなんだけどね。
これからも彼女には映画を撮って欲しい。次は監督業やプロデューサー業も兼業する女優たちに話を聞いてもらいたいな。そしてこれから自分が進むべき道が見えてくればいいな(なんて偉そうだな)
home