Movie Review 2007
◇Movie Index

俺たちフィギュアスケーター('07アメリカ)-Dec 23.2007バカエイガ★
[STORY]
アメリカの男子フィギュアスケーター、チャズ・マイケル・マイケルズ(ウィル・フェレル)とジミー・マッケルロイ(ジョン・ヘダー)は互いにライバル心を燃やし、大会のたびに優勝争いをしていた。世界選手権で2人は同点1位となり一緒に表彰台に上るが大乱闘を繰り広げ、金メダルを剥奪され大会からも永久追放されてしまう。
それから3年半後、永久追放は男子シングルからであって他の種目では出場が可能ということが分かり、2人は前代未聞の男子ペアとして競技に出場しようと猛練習を始める。
監督ウィル・スペック&ジョシュ・ゴードン(『Culture』)
−◇−◇−◇−
当初は劇場公開せずにビデオのみだったが、急遽公開が決まった作品。アメリカでは2007年3月に公開されて初登場1位。その後も2週連続1位で興行収入は『オーシャンズ13』を上回っているとか。製作は俳優のベン・スティラー。

日本でも最近はフィギュアスケートが人気で劇場には小さい子たちも見に来ていたけれど、はっきり言って下ネタが多い。というかギャグのほとんどが下ネタなので親御さんも困っただろうなぁ。某国ネタも思いっきり笑ってしまったけど、テレビでは放送禁止かもしれない。なのでフィギュア好きでもとりあえず15歳くらいまではおあずけしたほうがよさそうだ。

ライバルだった男子スケーターの2人がペアを組むハメになり、最初はケンカばかりだったのが徐々に友情が芽生え、恋をしたジミーにチャズがアドバイスしたりと微笑ましい関係になっていく。途中、策略によって2人の仲は決裂するが、誤解を解きたいチャズがジミーに電話しまくるシーンは面白いシーンのはずなのに泣けてしまった。大事な、何事にも代え難いパートナーになっていたのだ2人は!あふれる下ネタの下に(笑)ちゃんとしっかりしたテーマを描いているところがとても良かった。

ただ、個人的には『少林サッカー』くらいありえない大技をもっと繰り出してほしかったかも。アイアンロータスだけじゃ物足りない。技が決まった瞬間には思わず拍手しちゃったけどね(笑)現在のペアだって相当すごい技をやってるし、衣装だって映画の衣装に引けを取らない。いや、むしろ本物のほうがもっとスゴイかも。映画のラストで2人が着た宇宙服のような衣装は、イギリスのカー姉弟の衣装に完全に負けてるし(彼らは髪の毛まで白くしてる)ジミーのクジャク衣装とアメリカのジョニー・ウィアーがトリノオリンピックで着た白鳥衣装はいい勝負って感じかな(ジミーのモデルってやっぱウィアーなのかな)

ハミルトン、ボイタノ、ケリガンといったかつての名選手が出たかと思えば、現役のサーシャ・コーエンもチャズのパンツに大興奮する役で出演。VTRで佐藤有香がチラリと映り、ペアの日本人選手名が「Suguri」だったりする。そういう細かいところを見つけて楽しむのもいい。
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ペルセポリス('07フランス)-Dec 23.2007
[STORY]
1978年イラン。9歳のマルジ・サトラピは両親と祖母に愛され何不自由ない生活を送っていたが、革命が起きて新しい政権が誕生する。それまで反政府主義者として投獄されていた伯父アヌーシュが戻ってきてマルジに大きな影響を与える。だが1980年にはイラン・イラク戦争も勃発。政府の締め付けが厳しくなる中、マルジはパンク音楽を聞いたり学校で反抗的な態度を取ったりする。心配した母タージ(声:カトリーヌ・ドヌーヴ)はマルジをウィーンへと留学させることを決意。
ウィーンで成長したマルジ(声:キアラ・マストロヤンニ)は友人もできるが、文化の違いにいつも悩んでいて、失恋とともに住むところを失い、イランへの帰国を決意する。
監督&脚本マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー(本作の原作者とイラストレーター)
−◇−◇−◇−
原作は監督マルジャン・サトラピの自伝的グラフィックノベル『ペルセポリスI イランの少女マルジ』と続編『ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る』で、第60回カンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞した。

タイトルの『ペルセポリス』とはギリシャ語で「ペルシャの都」という意味(ペルシャは現在のイラン)だが、Wikipediaを見るとペルシャの都という意味だけでなく「都市を破壊する」という意味もあるらしい。本編を見て、このタイトルにした意図が分かる気がする。マルジは1979年のイラン革命と翌年のイラン・イラク戦争を体験している。親しい人を亡くし、街が破壊されるのを目の当たりにして、1000年経っても変わらない人間の愚かさを嘆き、このタイトルをつけたのかもしれない。

アニメはモノクロでシンプル。可愛らしいけれど、革命や戦争の描写もあるし、マルジ本人もドラッグ中毒・ホームレス・鬱病・自殺未遂・離婚とつらい経験をする。実写で見たらキツイだろうなぁと思いつつ見ていたけど、時々実写で見るより怖いかも・・・という演出もあり、ストーリーを抜きにしてアニメだけ見ても凝ってて見ごたえがある。浮気した彼氏の顔がいきなりアホヅラになるところもアニメならではで面白かった。

マルジの家は裕福で両親は欧米的な価値観を持っている。だからマルジの過激な言動を押さえつけることなく、彼女を14歳でウィーンに留学させたわけだ。そして娘の行動力や賢さを誇りにしている。マルジが結婚を決めた時、母はあなたは外国に行くべきだと悲しむ。そして離婚してフランスに渡る時にはこの国に戻ってきちゃだめと念を押す。結婚して子供を産むのが娘の幸せって普通は考えるものじゃないの?すごい親だなぁとビックリしてしまった。マルジの祖母もすごい人だったけど、私はお母さんのほうが強く印象に残った。
きっとマルジが今こうして本を出版して映画を製作して、その映画が賞を取ったことを嬉しく感じているだろう。いや、マルジならこれくらい当然!と思っているかもしれない(笑)
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ナショナル・トレジャー/リンカーン暗殺者の日記('07アメリカ)-Dec 22.2007
[STORY]
ベン(ニコラス・ケイジ)とパトリック(ジョン・ヴォイト)の父子は、祖先のトーマス・ゲイツがリンカーン大統領暗殺を阻止しようとした英雄であるという講演を行っていた。だが、彼らの元へウィルキンソン(エド・ハリス)という男が現れ、トーマスが暗殺の真犯人であると記された証拠を見せる。ベンたちは祖先の無実を晴らそうとライリー(ジャスティン・バーサ)を呼び、そして最近ベンとうまくいっていないアビゲイル(ダイアン・クルーガー)にも協力を依頼する。
監督ジョン・タートルトーブ(『ナショナル・トレジャー』
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2004年の『ナショナル・トレジャー』の続編。日本ではそこそこ、って感じだったので続編があるとは思わなかった。パターンは1作目とほとんど一緒。ただしベンとアビゲイルの口論、パトリックと元妻エミリー(ヘレン・ミレン)の口論、その間でぶつぶつ言ってるライリーという図ができて、テンポは1作目より良かったかもしれない。でも悪役ウィルキンソンが1作目の悪役以上に中途半端で、最後はかわいそうになってしまった。あれはない、ほんとヒドイ。ああいう展開にするなら嫌になるほど悪い奴にしなきゃかえって後味が悪くなるじゃない。

中盤のカーチェイスはブラッカイマーらしく無駄に派手(笑)そして最後の宝も無駄に豪華(笑)ここまでされるとホントに興醒めしちゃう。だから逆にフランスの自由の女神を見に行くシーンなど、実際にある場所で細かい調べ物のほうが面白いと感じてしまう。ラシュモア山はその存在だけで圧倒され、チープな宝の山のセットよりもっとこっちを見せてくれと思ってしまった。

だけど一番面白いと思ったのはオープニング。ブラッカイマーフィルムのロゴ(木に落雷するヤツ)がそのまま本編の映像に繋がるのだ。こういうお遊びは大好きだ。ホントに本編と関係ないところだが(笑)

2作目までやったということは3作目も当然やるんだろうな。まぁここまできたら付き合いますか。
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やわらかい手('07ベルギー=ルクセンブルグ=イギリス=ドイツ=フランス)-Dec 19.2007イイ★
[STORY]
ロンドン郊外。マギー(マリアンヌ・フェイスフル)の最愛の孫オリーが難病で6週間以内にオーストラリアで手術を受けなければ助からないと宣告される。家まで売って何とかお金を作ってきたマギーだったが手術を受けるための費用はどうにもできない。働こうと決意するが年齢的にも雇ってくれるところなどない。そんな時、接客業の貼り紙を見たマギーは店に入るが何とそこは風俗店だった。オーナーのミキ(ミキ・マノイロヴィッチ)はマギーの手を見て、壁越しに手で男をイカせる仕事をあてがう。一度は逃げ出すものの、覚悟を決めてマギーは仕事を始めるが意外にも評判となり、たちまち売れっ子になっていく。
監督サム・ガルバルスキ(『THE RASHEVSUKI TANGO』)
−◇−◇−◇−
『あの胸にもういちど』以来38年ぶりにフェイスフルが主演した作品で、第57回ベルリン国際映画祭に出品された。原案と脚本を担当したフィリップ・ブラスバンは『トマ@トマ』の脚本なども手がけたイラン出身の人で、ちょっと変わった面白い話を書く人だなと思った。今後注目していきたい。

あらすじだけ読むとコミカルな作品に見えるけど、作品全体を覆う空気は暗くて重かった。イギリスの天気のせいもあるけど、一番重たくしていたのは音楽かな。すごく好きになった映画なんだけど、唯一好きじゃないと感じたのは音楽だった。ベルギーのロックバンドが音楽を手がけたそうだけど、なんつーか胃にきました(笑)
といっても重いばっかりの話ではもちろんなく爆笑してしまうところもあったし、やりきれなくてため息が出たかと思えば感動して涙も出た。そして最後はジワ〜っと温かくなった。1本の映画でこれだけいろんな感情を湧き上がらせてくれる映画って最高だ。

オリーの母親はそれまで苛立ちをマギーにぶつけてきたんだけど、マギーが身体を張って金を工面してきたことを知って、息子や孫に対する強い愛情を感じ取る。そして素直に感謝を表した。だが息子のほうは母親が風俗店で働いていたことにショックを受けて大激怒。マギーを売春婦だと罵倒する。あまりにも怒ってるんで逆に見てるこっちは笑いそうになってしまった。息子にとっての母親ってそういうものなのね。荒唐無稽なストーリーに思えるけど、シーンの1つ1つがリアルなので「これ嘘でしょ」って冷めたりしない。上手いわー。

店の構造は日本の風俗店を参考にしたというセリフは、日本人なら爆笑というより苦笑かな。あとポスターやチラシで使われている妙なアングルの写真は、本編を見ると分かります(笑)ぜひ見てー。
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ゼロ時間の謎('07フランス)-Dec 19.2007
[STORY]
テニスプレーヤーのギョーム(メルヴィル・プポー)は2番目の妻キャロリーヌ(ローラ・スメット)を連れて、夏休みに大金持ちの叔母カミーラ(ダニエル・ダリュー)の別荘に出かける。今年は前妻のオード(キアラ・マストロヤンニ)も招待されていて、キャロリーヌはオードに敵意をあらわにする。さらにそこへ昔からオードを愛している親戚のトマやキャロリーヌの友人フレッドまで現れ、事態は混迷の様相を深めていく。そしてついに事件が起こる・・・!
監督パスカル・トマ(『アガサ・クリスティーの奥さまは名探偵』
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原作はアガサ・クリスティの『ゼロ時間へ』で、評価も高くクリスティ自身も気に入っている作品。パスカル・トマは『奥さまは名探偵』(原作は『親指のうずき』)が本国でヒットし、2作目のクリスティ作品に本作を選んだ。舞台をフランスに置き換えたため、探偵の名前がバトル警視からバタイユ警視などに変わっている。

ちゃんと推理したい、犯人探しを楽しみたいというならBBC製作ドラマのほうがよっぽども上手く作ると思うんだけど(笑)『奥さま』よりはミステリー作品になっていた。細かいこと言うと、トレヴォーズ弁護士(ジャック・セレ)が夕食会で過去にあった事件の話をするシーンがあるんだけど、その事件の加害者には身体的に“ある特徴”があるとみんなに言うわけ。原作では登場人物はみな身体的特徴を持っていて、この中の誰もが加害者に該当しているので「一体誰が?」と楽しめるんだけど、映画では特徴が分かるのは2〜3人くらいかな?その時点で犯人である範囲がグッと狭まってしまって、もったいないことをしている。

でも登場人物のキャラクターはやっぱり魅力的で、年老いていても快活なカミーラやおかしな歌を歌うバタイユ(フランソワ・モレル)、泣き虫なメイドとコミカルな執事、悪女全開な後妻と儚げな前妻のファッションも見もの。ただギョームはこの中では周りに呑まれちゃって存在感がいまいちだったな。ハンサムだし服の着こなしはいいんだけど(笑)キャロリーヌが強すぎたのかもしれない・・・。

上でミステリーとして見るならBBCのほうが上手いと書いたけど、やっぱり劇場でクリスティ作品をもっと見たい(たくさん作られていた70〜80年代は劇場に行けなかった歳だし)パスカル・トマもどんどん作ってほしいし、そろそろ本家イギリスも何か映画化してくれないかな。
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