Movie Review 2002
◇Movie Index

恋ごころ('01フランス=イタリア=ドイツ)-Feb 9.2002
[STORY]
イタリアの劇団で主演女優として活躍していたカミーユ(ジャンヌ・バリバール)が3年ぶりにパリに戻ってきた。今は座長のウーゴ(セルジオ・カステリット)と付き合っているが、前の恋人ピエールのことが気になり会いに行ってしまう。しかし彼にはソニアという相手がいた。一方ウーゴは劇作家ゴルドーニの幻の戯曲を探している途中でドミニクという女子大生と知り合う。
監督&脚本ジャック・リヴェット(『美しき諍い女』)
−◇−◇−◇−
これはどういうシーンなんだ?というポスターに惹かれ、『恋ごころ』というタイトルにも惹かれて見に行ったけど、なんかどっちも自分が期待してたのと違ってたな(笑)毎度毎度勝手にイメージを膨らませるなと自分に言いきかせてるけど、タイトルやポスターを見ればそれなりに考えるのが普通じゃんか(逆ギレ?)本作の原題は『VA SAVOIR』意味は「その時にならないと分からない」だそうだ。このタイトルなら十分納得。台本は監督の頭の中にだけ存在していて、役者たちは「その時にならないとストーリーが分からなかった」という。そういう意味でつけたわけじゃないだろうが、見てるこっちもストーリーが見えるようでなかなか見えてこなかったな(笑)

ストーリーは劇団のパリ公演の合間に進んでいく。カミーユは元恋人ピエールとソニアに会い、ウーゴは女子大生ドミニクと兄のアルチュールに会う。これらはそれぞれ別のストーリーになるかと思いきや、 ここが映画らしいのだがカミーユ側のある人物とウーゴ側のある人物とに接点があることが(観客にだけ)分かってくる。それが分かった途端に、今までのダラダラ感も気にならなくなり急に面白く感じたな。ここまでがガマンのしどころ(ガマンて・・・)
しかしストーリーの合間合間で挿入されるピランデッロとかいう劇作家(←オイ)の芝居がキツかったな。ちゃんと字幕がついてるのに、日本語なのに、芝居のストーリーが全然理解できなかった。最後まで!(また逆ギレ?)

カミーユ役のバリバール、ドミニク役のエレーヌ・ド・フジュロール、ソニア役のマリアンヌ・バスレール、3人ともいい女で、ファッションも見どころの1つ。どんなちぐはぐな格好しててもそれなりに見えるからフランス女性て不思議。対する男3人は、ウーゴ役のカステリット、アルチュール役のブリュノ・トデスキーニはOK。でもピエール役のジャック・ボナフェは見た瞬間に「この人がカミーユの忘れられない人なの?」と思った。だって髪が・・・ゴホゴホ。いや、セクシーハゲはOKだけど、ただのハゲだったんだもん。フェロモンも全然出てなくてなー。しかも途中でこの人全然出てこなくなっちゃったのは何か理由があったんだろうか?もっと脇だと思ってたソニアのほうが出番が多くなっててびっくり。
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カンダハール('01イラン=フランス)-Jan 31.2002
[STORY]
アフガン人でカナダに亡命したナファス(ニルファー・パズィラ)は、アフガニスタンのカンダハールにいる妹から「20世紀最後の皆既日食が訪れる日に自殺する」という手紙を受け取る。ナファスは何とか妹に会おうと奔走するが、ようやくイランのビザを手に入れたのが日食の3日前。ナファスは難民たちにまぎれてカンダハールを目指すが・・・。
監督&脚本モフセン・マフマルバフ(『サイクリスト』)
−◇−◇−◇−
今、世界中でもっとも注目されている国であり、少し前までは世界中から忘れ去られていた国がアフガニスタンだ。これを書いている私もそうだった。バーミヤンの仏像が破壊された時、初めてこの国に注目したのだと思う。あの仏像は写真で見たことがあって、これを壊してしまうなんて何事だとちょっと怒った覚えがあるが、それはこの国のことを何も知らない証拠だった。そして2001年9月11日の事件以来、この国についての情報を色々と知ることになったが、そこに住む人々がそれまでどんな生活をしていたのかはあまりよく分からなかった。そんな時、いろんな意味で話題となった本作が公開となったので見に行ってみた。

たった一館での上映だったせいもあるだろうが、平日の昼間でも満席で立ち見が出るほどの盛況ぶりにまず驚いた。さらに映画の内容にも驚いた。もっとドキュメンタリータッチの映画かと思っていたが、完全にフィクションだった(ってチラシにフィクションって書いてあったけど、まさかここまでとは)いわゆるロードムービーであり、展開がやっぱりイラン映画だ、とも思った。ネタバレしてしまうので読みたくない人は飛ばしてほしいのだが(ここから)ナファスが妹に会うところまでは描かれないのだ。(ここまで)そんな予感はちょっとしてたんだけどやっぱり、だった。そういうところがイラン映画っぽいなぁ思ったわけなんだけど。

けれども、見てガッカリはしなかった。逆にこういう表現ができるということが凄いと思った。ただ飢餓や貧困に喘いでいるだけの人々を映してはいない。自分の理屈を押し通し、金のためならなんでもやる、どこまでもタフな人々がそこにいた。彼らを見ていてちっとも哀れだと思わない(思うのは奢りか・・・)したたかさに逆に腹が立つほどだ。さらにパラシュートで落ちてくる義足を求めて足を失った人々が追いかけるシーンは滑稽きわまりないが、それらすべてが、ただ“生きるため”にやっていることなのだ。ナファスの旅を通して、彼らの生きる力を観客に訴えかける。
また、親が子供たちをタリバンの神学校に入れようとするのは、入れば食べ物に困らないからだ、ということもさりげなく提示している。コーランが読めて、武器を扱えなければ追い出されて食いっぱぐれる。そういうことなのだ。

ところでブラック・ムスリムを演じた疑惑の彼だが、実際の彼がどうであれ、映画の中では見てて思わず惚れちゃいそうになるね(笑)この映画では唯一ナファスが信頼できる存在として描かれていた。
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息子の部屋('01イタリア=フランス)-Jan 30.2002オススメ★
[STORY]
精神分析医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は妻のパオラ(ラウラ・モランテ)娘のイレーネ、息子のアンドレアと幸せに暮らしていた。ある日、ジョバンニとアンドレアはジョギング行く予定を立てていたが、突然患者からどうしても来てほしいと頼まれ、そちらを優先してしまう。帰ってくると、アンドレアがダイビング中に事故で死んでしまったと知らされる。
監督&脚本もナンニ・モレッティ(『親愛なる日記』)
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2001年カンヌ映画祭パルムドール受賞作品。

『親愛なる日記』を見に行った時、正直言って「イタリアジン、ヨクワカラナ〜イ」という感想を持った。一章と二章のまったり加減に寝てしまいそうになり、三章でようやく話が面白くなってきたと思っていたら終わってしまったという。そういう意味ではとても印象深い作品ではあったけど。

さて、そんなモレッティの私にとっての2作目はどうだったのかというと、イタリア人も日本人も同じ人間なんだなぁと、当たり前のことなんだけど、ふと思ったってことかな。ここまで共感できるとは正直思ってなかったのね。もっと突拍子もない、ドラマティックな展開のストーリーかと思いきや、息子が生きているときのシーンも、亡くなった時も、そしてその後の家族の様子も、すべて淡々とゆったりと描かれている。息子がどんな人間だったのかが曖昧なのもとてもリアルだ。またジョバンニが、あの日の仕事を断っているところ、息子が潜りに行かないように止めているところなどを想像し「あの時ああしておけば良かった」と後悔するシーンがあり、これには痛々しくて泣いてしまった。彼が死んでしまったのは偶然の出来事なのに、自分のせいにせずにはいられない、これが親というものなんだろうな。

家族構成が私の家族と同じだったせいか、やたらこの映画の中に入り込んでしまったが、家に帰ったら弟が大怪我をして寝込んでいてビックリ。やめてくれよ(泣)
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仄暗い水の底から('02日本)-Jan 19.2002
[STORY]
松原淑美(黒木瞳)は、夫(小日向文世)と離婚することになったが、娘・郁子(菅野莉央)の親権を巡って争っていた。淑美は過去の精神科通院歴などで形勢不利となっていたため、まずは自立しようと新居を探し始める。そして古いが十分な広さのマンションへ郁子と入居するが、天井から雨漏りがしたり、郁子が幼稚園で倒れたりとトラブルが続くようになる。その原因は2年前に郁子と同じ幼稚園に通っていた女の子が行方不明になった事件と関係があるようで・・・。
監督:中田秀夫(『リング2』
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原作は『リング』シリーズの鈴木光司。本作は映画のタイトルになっている短編集の中の一編「浮遊する水」を元に、新たに肉付けされた作品となった。

いきなりだけどネタバレ。この作品の元ネタ“マンションの水が臭いという苦情があって、貯水タンクを調べてみたら死体があった”事件は私が子供の頃に聞いた、かなりショッキングな話だったので今でもよく覚えている。本当に恐ろしくて、しばらくは水に触れるたびに怖くて仕方なかった。これがマンション暮らしだったらトラウマになってたかもしれんです(はは)

この映画も、そういう怖さがもっと出てればよかったんだよね。でもやっぱり幽霊さんで怖がらせる映画になってしまった。しかも一般ウケも狙って母子の愛情も入れなきゃならない。さらにしがらみもあるのでミス東京ウォーカーの水川あさみを出さなきゃいけないと、わざわざ作られたであろうおまけシーンもついて(笑)だからところどころは怖いけれど、一本筋の通った怖さがない。

相変わらず監視カメラでエレベーターを映すシーンは怖かった。これぞ『リング』仕込み(笑)そして電柱に張られた行方不明の少女の顔写真、これが一番怖かった。さすが『女優霊』仕込み(笑)菅野莉央ちゃんのおかっぱ頭に黒目がちの瞳も要所要所で怖くて、彼女はナイスキャスティングでした。
逆に怖くなかったところ。いっつも思うんだけど、どうも表現がおかしいと思われる箇所が多々あり。たとえば予告やCMでやってる女の子の足から水が流れるシーン。床に水が伝っていくところは客観的に見て綺麗。きっと自信持ってやってそう。でもそれをこのシーンで使うのは違うような。だって“おもらし”みたいなんだもん!ちっちゃい子がジワッと出しちゃったような(ごめーん)もっと身体から水滴がしたたり落ちるような感じだったら怖かったのに。
さらに言えば(ネタバレ)淑美に掴みかかった美津子ちゃんが泥粘土細工(笑)だったこと。それはないよー。ここはやっぱり長いあいだ水に浸かってたんだから、ふやけてブヨブヨでないと・・・コワッ(←想像したらしい)
クライマックスでのエレベーターから水がドバッにも思わず力が抜けました。
(ここまで)

ま、この映画はただのホラー映画じゃなくて衝撃のグランド・ホラー映画ですから、これでいいんでしょう。グランドの意味が全く分かりませんが、そういうことなんでしょう(どういうこと?)

ところで中田“かばくん”監督はこの映画の最中に水浴びしたんでしょうか。ピュルピュルと耳を回しながら(だからそんな内輪ネタはやめれ)
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トマ@トマ('00ベルギー=フランス)-Jan 19.2002
[STORY]
近未来。トマ(ブノワ・ヴェレール)は“広場恐怖症”という病にかかってから一度も外に出たことはなく8年間もの間、家の中に引きこもっていた。財産は保険会社に管理してもらい、テレビ電話を使って精神科医にかかっていたが、ある時、治療のプログラムとして“出会い系クラブ”に入会させられる。
監督ピエール=ポール・ランデル(長編初監督)
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この映画は最初から最後までトマの部屋のテレビ電話のモニターしか映し出されない。そして主人公トマもまた結局顔を見せることはないという(影をちょこっと見せてくれるけどね)非常に珍しい映画だ。

普通ならそんな設定では飽きてしまいそうだけれど、このモニターに様々な人が映し出されるので飽きることない。サイバーセックスの相手であるヴァーチャルガール(この女の子のCGがものすごくオタクっぽくてカユくなるが、そこがまたリアルだったりして)や、過保護な母親、保険会社社員、出合い系クラブの女の子たちと、数え切れないほどの人々がトマに話し掛けてくる。これが実際にトマが出会う人達だとしたら一生懸命覚えようとしただろう。でもモニターを通して見る人となると、画面が切り替わるたびにこちらもスッパリ忘れることができて、何ら混乱することがなかった。そして次第に自分もトマの視点になって物事を見るようになっていった。それこそヴァーチャル体験してるかのよう(笑)とは言っても、やはり自分は女だし“広場恐怖症”でもないので共感することはなかったけど。むしろ「早く外へ出ろ!」と応援しながら見たかな。

話の展開としては、本気で惚れてしまった相手のために勇気を出して外に出てみようかどうしようか主人公が悩むという、誰でも考えつきそうなありがちなパターン。ラストに関しても私はもっと簡単に考えていた(ここからネタバレ)トマがエヴァを気にかけることも、エヴァがトマに打ち明ける経歴も、すべて保険会社や精神科医の仕組んだことではないか?なんてね。きっとハリウッド映画だったらそうだったんじゃないかな。マイケル・ダグラスの『ゲーム』みたいにさ。そして最後はエヴァから種明かしされてハッピーエンド。ま、こんなもんだろうと。でもラストのトマの影を見て、エヴァのことが本当であり、トマにとってものすごい試練が待ち受けているんだ(慣れない屋外で、どこに消えたか分からない彼女を探なければならないこと)って気づいた。(ここまで)ラストを見て自分の予想がハズれて良かったと思った(笑)

好き嫌い分かれる作品だと思うが、自分は予想に反して(正直あまり期待してなかった)面白かった。それにしてもトマを演じたヴェレールってどんな顔してるんだろう。パンフに載ってたのかなぁ(公式ページには顔がなかった)
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