Movie Review 2009
◇Movie Index
アバター('09アメリカ)-Dec 26.2009スゲエ!★
[STORY]
戦争で半身不随となった海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は“アバター・プログラム”に選ばれる。それは衛星パンドラで希少な鉱物を採掘するためのプロジェクトで、ジェイクの亡くなった双子の兄が関わっていた。兄たちはパンドラの先住民ナヴィと人間のDNAを掛け合わせた“アバター”を人間の意識と連結させて動かすことに成功しており、ジェイクは兄と同じDNAを持つことから、兄のアバターを動かせるのではないかということで起用されたのだった。ジェイクはアバターとのリンクに成功し、ナヴィたちが住む森へ足を踏み入れる。
監督&脚本ジェームズ・キャメロン(『タイタニック』
−◇−◇−◇−
キャメロン12年ぶりの映画。本作は『タイタニック』完成前にすでにストーリーの元となる脚本を執筆していたそうで、構想に14年、製作に4年以上かけられた。キャメロンは3D用カメラを自ら開発し、ナヴィ語まで作り出した。
興行収入は同じくキャメロンが監督した『タイタニック』が持つ記録18億4800万ドルを抜き、歴代1位となった。

いろんなところで書かれているけど、私もこの映画を見てまず思ったのが『ダンス・ウィズ・ウルブス』にそっくりだということ。それと『ラスト サムライ』ね(『サムライ』も『ウルブス』に似てると散々言われたけど)
侵略する側だった主人公が、原住民と親しくなって(特に原住民の女性と親しく)侵略する側に立って戦うようになるというところがそっくり。ついでに主人公がちゃっかり生き残るところもそっくりだ(笑)

でも『ウルブス』も『サムライ』も過去のアメリカの侵略を描いたもので、結局原住民たちはアメリカの力に屈してしまった。でも本作は未来が舞台で、原住民たちだけでなくほかの動物たちも人間と戦い、勝利する。これからの人類には歴史を繰り返してほしくない、彼らの暮らしと自然を守り、うまく共存するのが新しい生き方である、と提言しているようだった。そこが今までの作品とは違う新しいところかな。・・・ただアメリカは何だかんだ尤もらしい理由をつけて正義感ぶって強奪するんですけどね。

ジェイクは人間である時と、アバターを使ってナヴィ族と接触する時の2つの世界を行き来していて、どちらが本当の自分なのか分からなくなり悩むシーンがあるのだが、3Dで専用メガネをかけて見ている私も似たような気持ちになった。どこまでがスクリーンでどこからが自分の座席なのか分からなくなってしまったようで、映画の中のナヴィさんたちの頭だと気付かず「頭が邪魔で前が見えない!」と一瞬本気で思ったシーンが・・・(笑)人の頭でスクリーンが隠れる劇場じゃないのに、完全にそれを忘れてしまっていたのね。それに気がついた時には愕然としたよ。映画が終わってメガネを外した時、急に現実に引き戻されたような、ちょっと寂しい気分になった。現実世界に嫌気がさす、“アバター鬱”とかいうものを発症する人も出ているそうで、これは3Dで見たからこそ起こる現象かもしれない(2Dでそこまで思えるかどうか)それだけリアルに感じちゃうんだろうな。ナヴィの世界は、美しさとグロテスクさのバランスが絶妙で、今回もWETAはいい仕事してます。

本作はキャメロンの趣味全開で、『エイリアン2』に出てきたパワーローダーをさらに精巧でパワーアップさせたような兵器が暴れ回る(ちなみにパワーローダーに乗るクオリッチ大佐を演じたスティーヴン・ラングは『エイリアン2』のオーディションで落とされている)それを見て、23年前では彼のイマジネーションに技術が追いついていなかったのが、ようやくここにきて思い描いた以上のものを見せられる!とすべてぶつけているように見えた。見る前までは14年もかけて・・・と半ば呆れていたけれど、実際に見てキャメロンのやりたかったこと、その熱い思いが存分に伝わった。
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レイトン教授と永遠の歌姫 THE ETERNAL DIVA('09日本)-Dec 23.2009
[STORY]
ロンドンの大学で考古学を教えるレイトン教授(声:大泉洋)の元に、教え子だったジェニス(声:水樹奈々)から手紙が届く。それは亡くなった友人が7歳の少女になって現れ「永遠の命を手に入れた」とジェニスに説明したというのだ。その謎を解くため、レイトンは早速、弟子のルーク(声:堀北真希)、助手のレミ(声:相武紗季)とともに、ジェニスが出演するオペラ会場へ向かう。会場は人々で溢れかえっていたが、観客たちはみな、永遠の命を求めるために集まっていた・・・!
監督・橋本昌和(初監督作)
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ニンテンドーDS用ゲームソフト「レイトン教授」シリーズのアニメ映画で、第4作目のゲーム『レイトン教授と魔神の笛』の直後から始まる。物語はゲームの続きではないが、一部の登場人物がゲームと同じ登場人物で映画では特に人物紹介がなく、ゲームをクリアしている人前提で話が進んでいる。

私は1作目のゲームからずっとプレイしてきていて、キャラクターがカワイイしゲーム内のアニメーションがよくできているので、アニメ化されそうだなぁとずっと思っていた。といっても「見たい!」と思ってたわけではなくて、この映画もレディースディと重なったので見てみた。期待してなかったので、それほどガッカリはしなかったが、DSのちっちゃい画面で見たアニメのほうが綺麗だったし迫力があったなぁ。映画のスクリーンが大きすぎるのか、ゲームよりアニメのほうが予算が少なかったのか(笑)映画のほうが雑に見えた。まぁこんなもんか。

ゲームほどではないが、途中でいくつかナゾトキをする場面があり、死んだはずの女性が7歳の女の子になって現れたり、永遠の命を授かるとか、レイトンらしい大きなナゾもあって、なかなか面白かった。レイトン先生とルークはやっぱりかわいいし(勢いでマグカップ買っちゃった)ゲームの時はレミがちょっとずうずうしく見えてあまり好きではなかったけど、映画では嫌味がなくてカッコよくて、次のゲームからは楽しくプレイできそうだ。それからゲームの時も強烈だったけど、映画ではさらに凄かったのがグロスキー警部(声:大塚芳忠)だ。ヤバイっす!(笑)そのYシャツは一体どういう作りなんでしょう。濡れたリーゼントを絞るとかひょっとしてノーパン?!とか、行動もヤバイ。てゆーか変態。でも目が離せなかった(笑)だんだん彼が出てくるのが楽しみになってきて「いい運動になったぜ!」というキメ台詞に思わず「素敵!」と思ってしまったり。チェルミー警部は派手なアクションをしないキャラだから、グロスキーは映画のことも考えて作り出されたのかもしれないな。

と、レミやグロスキーの今後が楽しみと思いつつ、ゲームで微妙なヤツと思ったデスコール(声:渡部篤郎)は映画でもやっぱり微妙なヤツで、どうやら次のゲームでも懲りずにまた出るようで、このシリーズ通しての悪役なのかと思うと、アツロウが苦手なのもあってさらに微妙な気持ちになるのだった。
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カールじいさんの空飛ぶ家('09アメリカ)-Dec 19.2009
[STORY]
古い一軒家に1人暮らしをしているカール・フレドリクセン(声:エドワード・アズナー)は、立ち退きを要求されても頑として家を守り抜いてきた。それは亡き妻エリーと過ごした大切な家だったから。しかしついにカールは家を手放し、施設に入らなければならなくなった。そして立ち退く日の朝、カールはたくさんの風船を家に取り付け、大空へ飛んだ。エリーと一緒に行こうと約束した場所へ行くために――。ところが、以前カールの家を訪ねてきた少年ラッセルもたまたま家にいたことから、一緒に旅をするはめになってしまう。
監督&脚本ピーター・ドクター(『モンスターズ・インク』
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第62回カンヌ国際映画祭でアニメでは史上初のオープニング上映作品に選ばれた。ピクサーでは初の3D版も公開された作品。同時上映の短編アニメは『晴れ ときどき くもり』

カールとエリーの出会いから別れまでを見せる予告ですでにボロ泣きだった私。本編でも2人のエピソード部分でもうありえないくらい泣いて、このまま上映時間が終わるまでに体力が持つんだろうかと心配になるほどだった(3Dメガネをかけて泣くのは、かけてない時よりさらに疲労する)『WALL・E/ウォーリー』もそうだったけど、セリフをつけずにここまで見せるっていうのは凄い!ピクサーは自分たちが作った映像がどこまで通用するかを試してるみたいだと思った。

でもカールが風船つけて旅に出てからは、はっきり言っちゃうけど期待ハズレ。壮大な冒険が始まるのかとワクワクしていたのに歩くシーンが多くて意外と単調。伝説の怪鳥も早々と出てきちゃう。カールじいさんの底知れない体力にアニメとはいえやりすぎだろうとちょっと冷めつつ、ダラダラ続く道のりにうんざりしはじめていた。
その後、カールとエリーが憧れていた冒険家のチャールズ・F・マンツ(声:クリストファー・プラマー)が出てくると物語は動き出すが、このマンツの描き方がどうもね・・・。

脚本家が違うから監督のせいとはいえないと思うけど、彼の前作『モンスターズ・インク』も悪役の描き方に疑問があった。本作もマンツは最初はカールたちに優しかったが、カールたちが怪鳥を助けたことから、カールたちをつぶしにかかろうとする。でもマンツは過去に名誉を傷つけられ、挽回するために怪鳥を捕まえようと何年もやってきたわけで、カールたちにとってはそりゃ悪い人だけど、同情できる部分も多いと思うのよね。マンツの最後は後味悪く、映画のラストはとても良かったけどスッキリできず、私が深く考えすぎなんだろうか?と悶々とした。彼の名誉が回復しないまでも、なんとか幸せになれる話にはできなかったのかねえ。

私は今回始めて3Dの映画を見たんだけど、予告の『アリス・イン・ワンダーランド』の飛び出し具合にビックリしてしまったので、本作では思ったより飛び出してこなくてちょっと残念。奥行きは感じたけどね。
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ジュリー&ジュリア('09アメリカ)-Dec 13.2009
[STORY]
同時多発テロ後のニューヨーク。作家になることを諦め、9.11の事後処理の仕事に追われるジュリー・パウエル(エイミー・アダムス)は、友人がブログで人気を博していると知って自分も趣味の料理を生かしてブログを始めることを思いつく。それは料理家ジュリア・チャイルド(メリル・ストリープ)のレシピ本にある524のフランス料理を365日で作り上げるというもの。最初は順調に料理が仕上がり、ブログも人気が出てくるが・・・。
その50年前、1949年パリ。外交官の夫ポール(スタンリー・トゥッチ)と共にパリにやって来たジュリアはフランス料理のおいしさに感激し、自らも料理を習おうとプロになるための料理学校ル・コルドン・ブルーに通い始める。そして友人たちとともにアメリカ向けに料理本を出版しようとするが・・・。
監督&脚本ノーラ・エフロン(『ユー・ガット・メール』)
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原作はジュリー・パウエルの『ジュリー&ジュリア』で、Webに掲載していたブログに加筆し書籍化したもの。
本作に登場するジュリア・チャイルドはフランスにいた時にル・コルドン・ブルーで学んだ料理を主婦向けに作ったレシピ本『フランス料理の達人』がベストセラーとなり、料理番組『The French Chef』で人気を博した実在の人物である。

原作は今ちょうど読んでいるところなんだけど、これがすっごい読みにくい(苦笑)固有名詞がバンバン出てくるのでそのたびに注釈はつくし、話もあちこち飛ぶ。翻訳した人は大変だったんじゃないかな。主人公ジュリーの混乱ぶりが『ブリジット・ジョーンズの日記』にちょっと似てるんだけど、本作のほうがリアルで共感を生みやすいかもしれない。

映画はぐちゃぐちゃしたところを削ぎ落としてあってとても分かりやすかったが、ジュリーの追い詰められてる感まで落としちゃってる。だからジュリアのパートと比べるとちょっと弱くて物足りない。イライラするのも料理ができないからってだけに見えちゃってて、仕事のストレスや親からのプレッシャー、女としてギリギリってところをもっと見せたほうがよかった。
ジュリアについては・・・やっぱりストリープ上手いわ。最初はなんかモノマネしてるみたい?って思ったけど、見てるうちにそんなこと忘れちゃった。

とはいえ、映像のトーンがすごい私の好みだった。料理もおいしそうに撮られているし。ジュリアのパートは時代を意識してか使っている色は少なめで少し白っぽくしてふわっとした雰囲気を出している。逆にジュリーのパートははっきりした色使いで、9.11後ということもあってか少し重たく見える。パートが変わる時にジュリアの時代ですよ、ジュリーの時代ですよ、と説明がなくてもすぐ分かるようになっている。それから私が1つとても気に入ったシーンがあって、それはブフ・ブルギニョン(牛肉のワイン煮込み)をある主婦が作るところ。ワインを注いだ瞬間にジュワーっとしぶきが飛んでレシピ本に赤い斑点ができちゃうのだ。おそらく本を持っていた人たちの多くがこの斑点を作ったのだろう。このシーンを見て急にノスタルジックな気持ちがこみ上げ、心地良くなった。

と、終盤までは「この映画好きだなー。繰り返し見てもいいなー」と思ってた。だがいきなり寝耳に水な事が!何とジュリアがジュリーのブログに不快感を持っているというのだ(ブログやってる時はご尊命だったのね)ああでも、このあと2人は対面して誤解を解き、料理本だけじゃなく本当に関わりを持つんだ、そこで泣いてしまうかも・・・と期待してたのよ。それなのにその問題については取り上げられないまま、いつの間にかさらっと綺麗に本編が終わってしまった。そしてエンドクレジット前で寝耳に水どころか冷や水を浴びせられたようなテロップが。ジュリアは2004年に91歳で亡くなっていて、2005年に『ジュリー&ジュリア』がアメリカで出版されたんだと。え?じゃあ誤解を解かないままジュリアは死んじゃったんだ。そして嫌な言い方だが、まるで彼女が死ぬのを待ってから本を出したみたい。本当はいろいろ事情があったのかもしれないけど、映画からそれ以上のものを読み取れと言われても無理だし。すっごいモヤモヤして、好きだなーという気持ちもいつの間にかどこかへ飛んで行ってしまった。
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ニュームーン/トワイライト・サーガ('09アメリカ)-Nov 28.2009
[STORY]
ベラ(クリステン・スチュワート)は18歳になり、17歳のままでいるヴァンパイアの恋人エドワード(ロバート・パティンソン)より年上になってしまった。ベラはエドワードに自分をヴァンパイアにしてほしいと頼むが、エドワードは彼女に人間のままでいてほしいと願っていた。そんな時、歳を取らないカレン一家に周囲が違和感を覚えるようになったため、エドワードはベラに別れを告げ町を去ってしまう。打ちひしがれたベラをジェイコブ(テイラー・ロートナー)は慰め、2人は親しくなっていくが、突然彼もベラを避けるようになる。
監督クリス・ワイツ(『ライラの冒険 黄金の羅針盤』)
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2008年の映画『トワイライト〜初恋〜』の続編で、原作はステファニー・メイヤーの『トワイライトU』(原題は『New Moon』)
キャスト、スタッフはほぼ変わらないが、監督が交代している。

前作はちょっとキュンとくるところもあったけど、本作はベラが自分とエドワードしか見えていない自己中女になっちゃってて、見てる途中でもううんざりさせられた。ベラの前からいなくなったエドワードが、実はまだ自分を守ってくれているということが分かると、わざと危険な目に遭ってエドワードに助けてもらおうとするわけ。もうイタイのを通り越して「お前なんか本当に死んでしまえ」と思わず念じてしまった(すまん)

さらにエドワードがいない寂しさを紛らわすために他の男の子と出かけてみたり、女の子の友達と遊びに行ってほったらかしにしたり、やることなすことすべて恋愛至上主義って感じで、ベラに共感できる人なら「切ない〜」なんて思っちゃうかもしれないけど、そうじゃない人からしたら同性から一番嫌われる女ってやつになっちゃってる。迷惑かけられてるほうがかわいそう。ベラのお父さんなんか特に気の毒になっちゃった。こういうラブストーリーが理解できないってのは歳かな(遠い目)

とまぁ、ストーリーについては首をかしげたくなったが、映像や演出はかなり工夫があって、冒頭にインパクトあるシーンを持ってきて観客を引き付けたり、ベラが落ち込んで何も手につかなくなっちゃうところも「そこまで落ち込むのかよ!」とツッコミを入れたくなるほどだったが(笑)凝ってて映像としては面白い仕上がりになっていた。ただやっぱり男性監督のせいか、前作のキャサリン・ハードウィックのように、ベラとエドワードを美しく見せようという意識は感じられず(特にエドワードに対して)目をハートマークにしたい女の子向けなんだから、そこはもう少し気を使えと思った。ただ逆に前作はアクションがショボかったのでどっちもどっちだが。

3作目も2010年公開が決まっており、1年に1本、同じキャストのまま上映することができるというのは簡単なようでいて凄いことだと思うし、あと2作なので最後までちゃんと付き合うつもりだ。
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