Movie Review 2009
◇Movie Index
バーン・アフター・リーディング('08アメリカ)-Apr 30.2009
[STORY]
アル中が原因でCIAを辞めたオズボーン(ジョン・マルコビッチ)は暴露本を執筆中。オズボーンの妻で女医のケイティ(ティルダ・スウィントン)は財務省連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中で、夫と離婚するために彼のPCからデータを盗みCD-ROMにコピーする。だが、そのCD-ROMがフィットネスセンターで働くチャド(ブラッド・ピット)の手に渡ってしまう。チャドは全身整形したい同僚のリンダ(フランシス・マクドーマンド)と共謀してオズボーンを脅迫しようとするが・・・。
監督&脚本ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン(『ノーカントリー』
−◇−◇−◇−
コーエン兄弟久々のオリジナル作品。『ノーカントリー』で力を入れすぎて疲れてしまったのか、本作はおなじみのメンバーを揃えて楽しく作ったという感じ。始まりは些細なことなんだけど、次第にコトが大きくなって最後はとんでもないことになってしまうというクライム・コメディで『ファーゴ』に近いかな。あれよりもさらにおバカで、見終わった後に全くモヤモヤしない。タイトルの“読んだら燃やせ”じゃないけど、見たら忘れてしまえって言われてるような気がした(笑)というわけでもう半分くらい内容を忘れてますが(ダメじゃん)

見終わって、振り返ってみればストーリーそのものはそれほど面白くはなかったな・・・と感じてしまったが(スマンね)見てる間は予測不可能なところが良かったな。一体ここからどう転がっていくんだろう?っていうワクワク感は最後まであった。予告で想像してたのとだいぶ違ってて。ネタバレだけど(ここから)予告でクルーニーが撃った相手はマルコビッチだとばかり思ってたのよ。不倫相手の夫が家に忍び込んできたから殺しちゃったのかーって。(ここまで)かなり騙されました。

これは真面目に見るよりも、ピットが演じたチャドみたいに、ちょっと軽めのテンションで見ればよかったな。ビール飲みながら夜中に見るとか、筋トレしながら朝っぱらから見るとか(笑)ピットはなんかもう見てるこっちが嬉しくなってしまうくらいのおバカっぷりで、今までの役で一番好きかもしれない。欲を言えば、もっと出番を多くしてほしかったよ。 たったあれだけなんて、何て贅沢なんだ!(笑)
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スラムドッグ$ミリオネア('08イギリス=アメリカ)-Apr 26.2009
[STORY]
電話会社でお茶くみをしている青年ジャマール(デヴ・パテル)は、インドでも大人気のクイズ$ミリオネアに出場した。彼は次々と難問をクリアし1000万ルピーを獲得する。だが、収録後にジャマールはイカサマの容疑で警察に逮捕されてしまう。ジャマールは、出題された問題の答えをすべてスラム育ちで学んだと語り始めた。
監督ダニー・ボイル(『ザ・ビーチ』
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原作はインド人作家ヴィカス・スワラップの『ぼくと1ルピーの神様』
第81回アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚色賞・撮影賞・編集賞・作曲賞・歌曲賞・録音賞の8部門を受賞した。

脚本を手がけたサイモン・ボーファイは私の大好きな『フル・モンティ』の脚本を書いた人で、作曲のA.R.ラフマーンは同じく私の大好きな『ムトゥ 踊るマハラジャ』の音楽を手がけた人だ。さらにアカデミー賞受賞とくれば期待しないでどうする!というわけで楽しみにしていた映画だった。
(関係ないけどミリオネアを扱ったフランス映画『ぼくの大切なともだち』も大好きだ)

けど、ワタシ的には同じく作品賞にノミネートされた『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のほうが良かったな。映画の内容が全く違うので比べられないんだけど、見てる間にズーンときて、終わった後でもジワジワっときたのは『ベンジャミン』だったから。『ミリオネア』のほうはドキドキハラハラできたし、クイズとジャマールの過去が繋がっていくところも面白く、最後はスカッとした。けれど余韻が足りないというか、エンドクレジットでダンスを躍らせたところで一気に冷めちゃった。これが完全なインド映画ならダンスはもちろんOKさ。でもこれはインドが舞台なだけで作ってるのはイギリスだからね。ダンスが合ってないんだ。しかもダンス自体もそれほど上手くない。後から知ったけど、デヴ・パテルはイギリス生まれなのね。通りでダンスがいまいちだったわけだ。

子供時代のジャマールと兄サリームが、孤児となって兄弟2人で逞しく生活していくシーンがとてもいい。過酷だければ希望を失わず、まっすぐな瞳で運命に立ち向かっていく。ところがジャマールが大人になったところで違和感を覚えてしまった。ラティカやサリームは大人の役者に変わっても違和感がなかったんだけど、ジャマールだけは少年から青年になったところで全くの別人になってしまった。おぼっちゃんって感じでスラム育ちに見えないのよ。やっぱりイギリス生まれだからかねぇって申し訳ないけどそう思っちゃった。そこもあまり感動できなかった理由かな。やっぱりインド生まれ育った人に演じてもらいたかった。
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レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―('09アメリカ=中国=日本=台湾=韓国)-Apr 19.2009
[STORY]
曹操(チャン・フォンイー)率いる軍を、軍師の孔明(金城武)と司令官の周瑜(トニー・レオン)らの活躍により、劉備・孫権の軍が撃退に成功した。だが曹操は2000隻ものの戦艦を率いて赤壁へ進軍してくるのだった。そんな中、曹操軍で疫病が蔓延するが、非情な曹操は死体を船に積んで敵軍に流してしまう。それによって連合軍にも疫病が流行り、劉備は撤退を決断する。孔明は1人赤壁に残り、周瑜らととともに戦う道を選ぶが・・・。
監督&脚本ジョン・ウー(『レッドクリフ Part I』
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というわけでパート2.なんかヘンなサブタイトルがつきました。最終決戦はまだしも、未来へのっていうのはどうなんすかね。原題は『決戦天下』なのね。こっちのほうがカッコイイなー。あとCMもヘン(ローズ&マリーを出したり、キャンプファイアー!なんつて・・・とかさ)何かズレている。
そのローズ&マリーがパート2から見ても大丈夫と言っているが、パート1ほど詳しい説明はないので『三国志』を知らない人にはキツイと思う。パート1を見ている人にとっては、既に各国の状況や登場人物のことを分かっているので前作より見やすいだろう。

だが、内容的にはパート1のほうが面白かったな、私は。肝心の赤壁の戦いが単調なの。兵士たちが突撃する、矢が放たれる、爆破される、兵士たちが突撃する、この繰り返し。パート1での八卦の陣の戦いのような面白さはない(そういえば趙雲が赤ちゃんを護るシーンも面白かった)それだけこの戦いがまさに死闘であるという表現なのかもしれないが、その割に戦いの終わりがあっけない。曹操に対して周瑜が甘すぎるし、多くの屍が転がる中で、役名がある人たちだけが生き残って突っ立っているのもギャグかと・・・。パート1でも思ったけど、これだけ長い時間をかけておきながら何故か物足りなさを感じてしまうという不思議な映画だ。満足感が得られないという。コミカルなシーンにかなり尺を取っているせいもあるかもしれない。

それと気になったのは、ジョン・ウーは劉備(ユウ・ヨン)が好きじゃない?ということ。パート1で、のちに孫尚香(ヴィッキー・チャオ)と結婚する伏線のようなシーンがあったけど、パート2ではそんなの全くなし。まず出番が少ない上に敵前逃亡して部下たちに諭されて戦いに赴くという情けなさ。そして戦場で活躍するのはやっぱり張飛(ザン・ジンシェン)関羽(バーサンジャブ)趙雲(フー・ジュン)の3人で、劉備はほとんど映らない(3人がカッコイイからいいけどさー)そして尚香のほうには敵の兵士との淡い恋のエピソードが挿入され、劉備とは顔を合わせることもないのだ。ここまでくるとちょっと気の毒だ。

2作見て、映像より何より岩代太郎の音楽が印象に残ったな。テーマ曲から主題歌までほぼ1つのメロディなので覚えやすいというのもあるけど、今後もあらゆるところで使われそうな 音楽だ。
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ザ・バンク 堕ちた巨像('09アメリカ=ドイツ=イギリス)-Apr 8.2009
[STORY]
インターポールの捜査官サリンジャー(クライヴ・オーウェン)は、NY検事局のエレノア(ナオミ・ワッツ)らとともに、ルクセンブルグに本部がある国際銀行IBBの不正を調べていた。だが、内部告発者と接触した同僚が殺され、告発者もまた事故に見せかけて殺されてしまう。その後も事件を調査しようとするが圧力がかかり、ついに捜査の打ち切りを命じられるが、サリンジャーはIBBCが1人の殺し屋を雇っていることを突き止める。
監督トム・ティクヴァ(『パフューム ―ある人殺しの物語―』
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ティクヴァが監督した映画は今までほぼ見てきたし、主演がオーウェンということで見てみた。銀行の裏側を描いた作品としか知らなかったが、難解な映画かと思っていたらアクション多めで、規模が大きいのか小さいのかよく分からない映画だった。

世界第5位の規模を誇り、政府や企業、犯罪組織など世界中から莫大な資金が集まるメガバングIBBC。その銀行が武器密売の取引に絡んでいるという情報が入り、インターポール捜査官のサリンジャーが、ドイツ、イタリア、アメリカ、トルコと世界中を飛び回って陰謀を暴こうとするストーリー。これだけ読むと相当スケールが大きいと思うでしょ。確かにいろんな場所でロケしているし、ニューヨークのグッゲンハイム美術館を実際に使っての銃撃戦も、美術館の構造をうまく使っていて見ごたえがある(どうやら改装前に使わせてもらったみたいね)

なのに話が小さくみえるのは、登場人物の少なさと、やってることがちっちゃいからだろう。銀行は情報が漏れそうになると密告者を消すわけだが、雇ってる殺し屋は1人だけ(笑)事件を捜査するのも3人くらい、銀行側の人間も5人くらいしか出てこない。人数が少ないほうが情報が漏れにくいというのはあるだろうけど、いつも同じ殺し屋を使うってのはあまり賢くない。しかも他の国まで行って仕事させるなんて、あちこちに証拠が残るに決まってるだろうが。そんなわけで案の定、そこから足がついちゃって事件が進展するわけだが、その証拠隠滅のためにかえって派手にやらかしてしまう。今までコソコソやってたのは何だったのかと。正直ドンパチを見ながら「バカ?!」と思ってしまった。

オーウェンはヨレヨレになりながら頑張っていたが『トゥモロー・ワールド』のセオ役がちらつき、あの時の凄みまでは出せてないなぁと思ってしまったし、ワッツの役も物足りなかった。厚みのあるストーリーならこの2人が恋愛に発展するシーンなんて邪魔だっただろうが、これならラブシーンの1つでも入れといたほうが盛り上がったかも(笑)
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トワイライト〜初恋〜('08アメリカ)-Apr 4.2009
[STORY]
17歳のベラ(クリステン・スチュワート)は母親の再婚を機に、父が暮らすワシントン州フォークスに引越す。そして転校先の高校で、カレン一家と呼ばれる独特な雰囲気を持つグループが目に留まる。その中でひときわ目立つエドワード(ロバート・パティンソン)とベラは同じ授業を取ることになるが、彼はあからさまにベラを避けるのだった。そんなある日、ベラは学校の駐車場で車に挟まれそうになるところをエドワードに助けられる。
監督キャサリン・ハードウィック(『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』)
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原作はステファニー・メイヤーの『トワイライト』で、第四期まであるティーン向け小説。アメリカではベストセラーになり、映画も大ヒットしたという。

私は原作も未読だったし、映画のほうも最初は興味なかったんだけど、映画紹介番組か何かで「超イケメンの吸血鬼!」と紹介されているのを見て「どこが?!」と思ったのが、最初に興味を持ったところかな(笑)だって、申し訳ないけどパティンソンって微妙っすよ(おい)でもブサイクだか美人だか分からない顔好きな私としては、実際に見てどんな具合か(具合て)確かめてみたいと思って見に行ってみた。

で、やっぱり映画を見ても微妙でしたっ!というか、カレン一家全員ヘンです。女性たちは綺麗だけど男どもがみんなヤバイ。日本人から見て白人なんて何もしなくても白く見えるのに、さらに白くするとバカ殿にしか見えなくなっちゃうのね。エドワードの父カーライル(ピーター・ファシネリ)なんて、おそらくいじらないほうがカッコイイだろうに、なぜそんな白さに・・・。パティンソンは本当にギャグかと思うほど顔が白くて眉毛が黒くて唇は赤くて、バカ殿状態な顔が多かった。せめて眉の色が髪と同じ色だったらマヌケ度が低くなっただろうに。角度によってはカッコイイところもあったけどね。

設定やストーリーはまぁまぁ面白かった。ヴァンパイア映画というより学園ラブストーリーとすればなかなか。CGがチープなことや、カラーコンタクトのフチが見えちゃってるところはご愛嬌。自分が中高生だったら夢中になったかもしれない。ヒロインはモテモテだし、危険が迫ればすぐに彼が助けに来てくれるしね。危険だから逃げてるハズなのに、わざと危険なほうに逃げてないか?などツッコミどころ満載な映画ですが(笑)そんな中、ベラ役のスチュワートがとてもよかった。彼女の強い眼差しと年齢の割に浮ついていない存在感が、作品そのものを落ち着かせていて、彼女がヒロインでなければもうちょっと軽い映画になったんじゃないかと思う。

吸血鬼の設定が血を吸うのと不老不死なこと以外はあまり関係なく、超人的な能力を身につけていて強すぎるのはちょっと不満だ。太陽の光も別に弱いわけじゃなくて、身体が光っちゃうだけなんでしょ。十字架やニンニクじゃなくても、弱いものがもう少しあっても面白かったんじゃないかな。
続編はすでに決定らしいけど、小説の通り4部作までやるんでしょうか。早くもパティンソンが劣化してるので(おい)やるなら早めに撮ったほうがいいだろうね。
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