Movie Review 2008
◇Movie Index

ノーカントリー('07アメリカ)-Mar 23.2008スゴイ★
[STORY]
テキサスの荒野でハンティング中に、モス(ジョシュ・ブローリン)は麻薬取引現場を見つける。そこでは銃撃戦が行われたらしく、複数の死体が横たわっていた。そこで200万ドルの大金を発見したモスは危険と知りながらも持ち帰ってしまう。その夜、現金を持ち去ったことがバレてしまい、モスは殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われる身となってしまう。一方、保安官エド・トム・ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は事件を捜査するため2人の足取りを追う。
監督&脚本ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン(『ディボース・ショウ』
−◇−◇−◇−
原作はコーマック・マッカーシーの『血と暴力の国(原題:No country for old men)』
第80回アメリカアカデミー賞で8部門にノミネートされ、作品賞・監督賞・脚色賞・助演男優賞(バルデム)の4部門を受賞した。

原作は未読だけど(これから読んでみようと思ってる)予告を見た時にはサスペンス、バイオレンス色の強い映画だと思ってたんだけど、実際に見てみて、確かにサスペンスらしいところもあるけど微妙に外していくし、バイオレンスシーンはたくさんあるけれど、作品全体の空気はとても文学的だと感じた。

年老いた保安官の目から見た麻薬取引を巡る凄惨な事件。彼は無能ではなくむしろ殺し屋の行動を的確に把握できる有能な人だが、把握できるからこそ奴の怖ろしさを肌身に感じて追うことを躊躇う。若い時ならば、体力も瞬発力も持ち合わせていると自信を持って立ち向かっていたかもしれないが。自分の限界を感じた保安官は結局仕事を辞めてしまう。
解決しないまま終わる、やるせなさを残す映画は私はすごく好きだけれど、これがアカデミー賞で選ばれるって、アメリカの今の状況などを反映しているのかなぁなんて思ったり(まぁ最近は『クラッシュ』『ミリオンダラー・ベイビー』なんて作品も選ばれているけども) そういうのを抜きにしても映画としてとても優れているんだけどね。

始まってすぐにシガーの“仕事ぶり”をしっかりと見せる。一度捉えた獲物はたとえ自分が傷ついても逃さない。このカウンターパンチにやられて、徐々に殺戮シーンが 少なくなっていくにもかかわらず、シガーがちょっと動いただけでも緊張してしまった。最後なんて会話をした次のシーンでは家から出てきた ところしか見せてないのに、絶対に殺っている!と観客に思わせる。この演出がすごい。そして見事に演じきったバルデム。あの髪型じゃなかったらまた少し違った印象を受けただろう。本人は嫌だったみたいだけど、あの髪型だからよかったのよ(笑)彼が去っていくところを見て『羊たちの沈黙』のレクターを思い出してしまった。シガーも歴史に残る悪役だ。
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マイ・ブルーベリー・ナイツ('07香港=中国=フランス)-Mar 22.2008
[STORY]
ニューヨーク。失恋したエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は恋人が来ていたカフェにやってきて、店のオーナー、ジェレミー(ジュード・ロウ)に2人が暮らしていた部屋の鍵を託す。それからエリザベスは閉店間際に来ては、必ず売れ残るというブルーベリー・パイを食べて心を癒すようになる。それでもなかなか恋人のことが忘れられないエリザベスは旅に出る。メンフィスでは飲んだくれの警官アーニー(デヴィッド・ストラザーン)と彼の元妻スー・リン(レイチェル・ワイズ)と知り合い、ラスベガスではギャンブルに興じるレスリー(ナタリー・ポートマン)と出会う。
監督&脚本ウォン・カーウァイ(『2046』
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カーウァイ初の英語作品。第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門オープニング作品。

物語の舞台やキャストが変わっても、やっぱりカーウァイの映画だった。夜の街の灯り、いいタイミングで流れてくる耳に残る歌。ただ、今までの作品の中では一番甘ったるいかな。パイの味に合わせたか(笑)これが香港映画だったらおそらく主人公は女じゃなくてちょっと身勝手な男で(たとえばトニー・レオンとか)男を待つのは女で(たとえばコン・リーとか)なんか『欲望の翼』のヨディとスー・リーチェンみたいなのも思い出すし(笑)それが今回は逆なのが新鮮だけれど、待つのが男ということで甘い話だと思ったのかも。女が待つとなると、耐え忍ぶって感じだもんね。

失恋して慰めてくれる人はいるけれど、自分で立ち直らなければとエリザベスは旅に出る。なぜか旅先で長期滞在してバーやダイナーで働くのは謎だが(笑)そこで新たな出会いがある。彼らは愛している人から目を背けたり傷つけたりし、失ってからその大切さに気付いている。それを見てきたエリザベスはニューヨークで待ってくれている人の元へ帰っていく。と、こんな話なわけだが、これはこっちがまともに解釈したものであって、実際はその場その場でスタイリッシュなシチュエーションを見せてるだけで、あまり伝わるものはない(苦笑)
だからノラ・ジョーンズにはあまり演技をさせずに、他の役者に頑張らせているところが面白いなーとか、これみよがしにヴィトンを見せ過ぎだなーとか、寝てる間にチューって・・・少女マンガならOKでもリアルだといくらジュード・ロウでもちょっと引く・・・とか(笑)あとはそんな感想くらいです。

それよりエクセルシオールカフェとコラボ商品のブルーベリーケーキがやたらまずくてブルーになったことのほうがワタシ的には印象深い(苦笑)ケーキじゃなくてやっぱりパイが食べたいなぁ。これを食べないと気持ちは晴れそうにない。
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死者の部屋('07フランス)-Mar 16.2008
[STORY]
クビになった男たちが腹いせに工場の壁に落書きをし、その帰りに車で男をはねてしまった。その傍らからは200万ユーロの現金が入った鞄が見つかった。2人は鞄を持ち去って逃げた。翌日、その事故現場近くの倉庫で、誘拐された盲目の少女の遺体が見つかった。刑事のリュシー(メラニー・ロラン)は少女が微笑みながら死んでいることと、昔流行した人形の服を着せられていることに注目する。同じ頃、同一犯による別の少女の誘拐事件が発生する。
監督&脚本アルフレッド・ロット(初監督作)
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フランス映画祭2008上映作品。原作はフランク・ティリエの同名小説で、日本では本作のほかにパリ警視庁の警視が主人公の2作が出版されていて、本作の続編も刊行予定らしい。

以下は後日。
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ディディーヌ('07フランス)-Mar 16.2008
[STORY]
ディディーヌ(ジェラルディーヌ・ペラス)は布地のデザインをする仕事をしている35歳。あまり自己主張せず周りの空気に合わせるタイプだ。そんなある時、身寄りのない夫人の忘れ物を届けに老人介護団体へ来たディディーヌは、誘われるままにボランティアに携わるようになる。そして変わり者で皆が嫌がるマダム・ミルポア(エディット・スコプ)の家に毎週通うことになるが、彼女の甥ニコラ(クリストファー・トンプソン)に好意を持つようになる。
監督&脚本ヴァンサン・ディエッチ(『Julie est amoureuse』)
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感想は後日。
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娘と狼('07フランス)-Mar 15.2008
[STORY]
第一次大戦後、戦争で兄を亡くしたアンジェル(レティシア・カスタ)は兄の代わりに獣医になろうとする。だが馬の扱いが難しく、アンジェルは猛獣を扱うロシア人の元で働くことに。そして野生の狼が住む山に、飛行機で旅立った。しかし途中で不時着し、アンジェルは怪我をして歩けなくなる。そこへ狼と暮らす男ジョゼッペ(ステファノ・アコルシ)が現れ、彼女を自分の小屋へと連れていく。一方、村ではアンジェルが行方不明と聞いた村長のエミール(ジャン=ポール・ルーヴ)が山の捜索を始めていた。
監督&脚本ジル・ルグラン(『Malabar Princess』)
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フランス映画祭2008上映作品で、観客賞を受賞した(ちょっと意外でした)

原作がないオリジナルストーリーなのだが、非常に風変わりな作品だった。アンジェルが幼い頃に捕まった狼を逃がしたことから始まる物語なのだが、ファンタジックなストーリーなのかな?と思っていると全く違う方向へ行き、結局は「自然破壊をやめて野生動物を守ろう!」な話、だったのかな?(笑)最後の最後まで先の読めない映画だった。
それもこれも主人公アンジェルの、フランス女にありがちな我の強い性格のせいなわけだが。確かに美人だけども振り回される男たちが気の毒。女には難しい言われたのに獣医になる!と学校に行ったはいいが、重労働に根を上げて文句タラタラ。今度は野生動物を扱いたい!と嫌がる相手に無理言って飛行機に乗せてもらうものの、地図はなくすは、山の中で強引に着陸させるは、怪我するは・・・どこまで馬鹿なのかと。森の中でジョゼッペと出会うあたりからは好感を持てるようになるが、ジョゼッペや狼のために行動を起こすのに、彼女に好意を持っているエミールを利用するところでまたダウン(笑)嫌だ、こんな女は。
私のチョイスが悪いのかもしれないが、彼女の映画は『歓楽通り』も本作も好きになれない役で残念だ。

そのかわり男たちはみんなそれぞれ個性的で魅力的だったので楽しめた。『ロング・エンゲージメント』の郵便屋さんがお気に入りだったワタシ的には(ちょっと嫌な役ではあったが)エミールが一途で素敵な人に見えたし、ジョゼッペは純粋でチャーミング。エミールのお父さんもアンジェルのお父さんも味があったし、猛獣使いのロシア人と整備士の兄ちゃんは文句言いつつも優しくていい人たちだった。ついでに狼の演技(?)も素晴らしかった。監督の話によると狼は調教しても野生なのだそうだが、ちゃんと演出通りの動きをしていたんじゃないだろうか。表情もしっかり捉えていて、セリフはなくとも彼らの言いたいことが伝わってきた。
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