Movie Review 2004
◇Movie Index

舞台よりすてきな生活('00アメリカ)-Oct 26.2004
[STORY]
イギリス人劇作家のピーター(ケネス・ブラナー)は、現在はロスで妻のメラニー(ロビン・ライト・ペン)と2人で暮らしている。しかし最近メラニーが子供を欲しがるようになり、舞台の脚本では子供の描写ができず、子供嫌いのピーターはノイローゼ気味。そんなある時、隣に母娘が引っ越してくる。メラニーはピーターに子供に慣れてもらおうと、少女エイミーの子守を買って出る。最初は避けていたピーターだったが、エイミーから脚本のヒントを得ようと一緒に遊ぶうち、いつしか打ち解けていく。
監督&脚本マイケル・カレスニコ(『プライベート・パーツ』の脚本を経て監督デビュー)
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第17回東京国際映画祭特別招待作品。製作総指揮はロバート・レッドフォード。

原題は『How to kill your neighbor's dog(隣人の犬を殺す方法)』。全体的な明るさやストーリー展開は邦題ぴったり。脚本が書けなくて悩む子供嫌いの劇作家が、近所に越してきた少女と交流するうちに友情が芽生えるという“すてきな”お話だ。一方で、隣の犬がうるさくて夜中に散歩するピーターが、彼をストーカーする男に出くわすというエピソードがある。その彼との会話や劇場での役者たちとのやりとりは原題のほうが合っている。前者が明るい日差しの中や開放的な場所でのシーンが多く、後者は夜や密室が多い。前者と後者で登場人物もほぼ分けられていて、ピーターがその間を行き来しているという感じ。構造は面白い。でも邦題のイメージで映画を見ると、その夜のシーンで引っかかってしまう部分があるんだな。
具体的に言うと(ここかれネタバレ)ピーターの愚痴によってストーカーは犬を殺してしまうわけだが、同時にピーターの前からストーカーという邪魔者も消えてしまった。つまり一石二鳥だったわけ。そして“すてきな”生活を手に入れたと。ここが気持ち悪いんだな。ただ『隣人の犬を殺す方法』と言われると納得できる。でもそうなると表の部分である女の子との交流が浮いてくるわけで。見終わった後にすっきりしたかったのに、もやもやしたものが残ってしまった。(ここまで)
タイトルはいっそのこと『舞台よりすてきな隣人の犬を殺す方法』で(そりゃ違うだろ(笑))

ブラナーはあて書きされたのかと思うほどハマり役。オナラも臭そうだし(笑)ロビン・ライト・ペンは今までどちらかというと薄幸な、苦労を重ねたような役ばかり見てきたので、今回のような明るくて快活な役がとても新鮮だった。それにきちんとメイクしてるせいかやっぱり綺麗な人なんだなーと見とれてしまったよ。2人のキャストが良かっただけに、もっとストレートに素敵なストーリーにしてほしかった。
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ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方('04アメリカ=イギリス)-Oct 24.2004
[STORY]
ロンドンでBBCのラジオコメディの仕事をしていたピーター・セラーズ(ジェフリー・ラッシュ)は、熱心な母親の薦めで映画にも出演するようになり、『マダムと泥棒』で高い評価を得て、次々と映画に出演する。しかし妻のアン(エミリー・ワトソン)とうまくいかなくなり離婚。その後『ピンクの豹』のクルーゾー警部役で大ブレイクし、女優のブリット・エクランド(シャーリーズ・セロン)と出会い2度目の結婚をするが、直後に心臓病で倒れてしまう。
監督スティーヴン・ホプキンス(『ロスト・イン・スペース』)
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第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。第17回東京国際映画祭特別招待作品。原作はロジャー・ルイスの『ピーター・セラーズの生と死』(映画の原題もこれと同じ)
ラッシュは本作の中で各国の訛りや男女の声色を使い分けるため、5ヶ月もの間ボイストレーニングを積んだという。

セラーズの性格をそのまま映画に反映したような作り。コメディタッチかと思えばシニカルで、セラーズ出演映画のパロディを挿入したりと目まぐるしく大忙し。まるで生き急いでいるような印象だ(私はセラーズがこんなにエキセントリックな人だって見るまで知らなかったんだけど)

そしてラッシュの芸達者ぶりに驚き、ただ感嘆するばかり。本作でラッシュ演じるセラーズが、セラーズの両親や友人に扮してセリフを喋るシーンがところどころで挿入されるんだけど、最初はこの表現にビックリして(というか、一番最初はラッシュが演じてるって気づかなかったよ)大丈夫なのか?!この映画は・・・と不安になるほどだったんだけど、だんだんとこれがとても効果的な演出だと思うようになった。
セラーズはどんな人物でも演じることができたが、私生活でも人と接する時には常に誰かを演じているように見えた。淋しがりやのくせにプライドが高く、自分を理解できる人間などいないと思い込んでいる。そうやって家族や友人との間に壁を作り遠ざけ、さらには自分自身をも見失っていくという、それがこの演出によって切なく伝わってきた。

ただ何せ駆け足なもんで、セラーズの出演作品や経歴をちゃんと分かってないとついていけないなぁと思った。彼の結婚のエピソードも2人目までしか描かれないので、最後に4人と聞いてビックリしちゃったし(笑)4人だったのかよ!
それにもっと詳しく見たかったのは2人の監督とセラーズの関係だ。ピンクパンサーシリーズのブレイク・エドワーズと、あのスタンリー・キューブリック。セラーズはエドワーズには随分と悪態をつき、エドワーズもまた腹を立てているものの、互いに理解し信頼しているように見えた。セラーズはエドワーズが自分から離れていかないと分かって甘えていた部分があったんじゃないかな。こいつならいくら言っても大丈夫って。まるで子供みたいだけど・・・子供そのものか(笑)
一方のキューブリックに対しては実際文句を言わなかったようだね。キューブリックもセラーズが出すアイデアをどんどん受け入れていたようだし。天才同士で波長が合っていたのだろうか。この違いが面白いからもっと見たかったんだけど、2人に焦点を当てすぎてしまうとセラーズの映画ではなくなってしまうから(特にキューブリックは彼だけで1本の映画ができそうなので)仕方ないやね。
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2046('04香港)-Oct 23.2004
[STORY]
1967年。シンガポールで知り合った女賭博師(コン・リー)がかつて愛した女性と同じ名前だったことに衝撃を受け、香港に戻ってきた元新聞記者のチャウ(トニー・レオン)。昔なじみのダンサーのルル(カリーナ・ラウ)が使っていた部屋2046号室の隣2047に住み始め、小説を書き、飲みに行っては女を連れ込んでいた。ある時、ホテルのオーナーの娘ジンウェン(フェイ・ウォン)が、出張で来ていた日本人(木村拓哉)と恋に落ちるが、父親に反対され悲しみに暮れているのを見て、彼女たちを主人公にした近未来小説“2046”を書き始める。また、チャウは2046に引っ越してきた女バイ・リン(チャン・ツィイー)と付き合い始めるが、チャン夫人(マギー・チャン)のことが忘れられずにいた。
監督&脚本ウォン・カーウァイ(『花様年華』
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第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作品。1999年に撮影開始されるも一時中断し、その間に監督が病気になったり『花様年華』が制作されたりして、5年掛かりでようやく完成。『2046』とは香港が中国に返還された1997年から50年後にあたる年であり(返還から50年間、つまり2046年までは特別行政区として維持する取り決めがされている)チャウがかつてチェン夫人と会っていた部屋の番号でもある。『花様年華』の続編にあたる作品で『欲望の翼』とも関係している。

『欲望の翼』はかなり前に見たため断片的にしか覚えてなかったので、本作を見た後でもう一度レンタルして見たんだけど、確かに『2046』との関係は深い。というかこの2作を見てないと本作だけではツライだろう。『欲望の翼』でヨディ(レスリー・チャン)の恋人スー・リーチェン(マギー・チャン)は『花様年華』のチャン夫人であり、もう1人の恋人ミミ(カリーナ・ラウ)は『2046』でもまだヨディを忘れられずにいる。最後に登場するギャンブラーの男(トニー・レオン)これがチャウだろう(本作で女賭博師に勝たせてもらった話がある)
ここまではいいとして、何よりビックリしたのはヨディと本作のチャウがそっくりなこと。その気のない女を口説きまくり、その女が自分を愛し始めていることに気がつくと急に拒絶しはじめるところ。ヨディとチャウを重ね合わせたのは意図的だろうが、結果的に亡くなったレスリーを哀悼しているように見えて(撮影は彼が亡くなるもっと前だろうが)ゾクッとした。かつてこの2人が愛し合った仲(もちろん『ブエノスアイレス』という映画の中でだが)だったのも頭にあったか?カーウァイはやっぱりあまり好きじゃないけど、こうやって総合的にみると興味深いことが多くて面白い。

さて本作だが、はっきり言って近未来の部分は全然いらなかったな。つまんないんだもん。これじゃあ売れないですよチャウさん(笑)
たぶん撮影当初は『ブレードランナー』みたいなものを作りたかったんだと思う。レプリカントのレイチェルとフェイ・ウォンの雰囲気そっくりだったしね。特にアンドロイドの時ではなく、ジンウェンがタバコを吸っているシーンを見て、レイチェルがタバコを吸うシーンを思い出したほど。
でも結局『花様年華』の続編になってしまったんだよね。それならそれで良かったのに。『花様年華』を見た時にガックリしたけど、本作を見て『花様年華』の株が逆に上がったような気がする(笑)確かに見てて苦痛だったけれどシンプルかつ濃密で美しかった。でも本作は近未来シーンがお粗末すぎて(あのCGもいまいち)チャウの女性たちに対する気持ちが小説に込められているように思えなかった。ぜんぜん切なくないのだ。本当はもっといろんなシーンを撮ったり想定してたりしたんだろうが、あんな中途半端なものを入れるくらいなら最初からないほうがまし(鬼)
チャウが女たちとの一時の快楽を選択しながらも、どこかでチャン夫人の幻を追いつづける、タクシーの中のシーンが一番印象に残っている。ああいうシーンの積み重ねを見せられると切ない。本当に少ししか出てこなかったけどマギー・チャンの存在感の凄さを改めて感じた。
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ライス・ラプソディー('04香港)-Oct 23.2004
[STORY]
夫と離婚して3人の息子を育てながらシンガポールでレストランを経営するチェン(シルビア・チャン)には悩みがあった。それは長男と次男がゲイで、それぞれ男の恋人と同棲していることだ。せめて高校生の三男レオだけは女の子に興味を持ってほしいのだが、全くその気配がない。そこで隣のカフェの店主キムツイ(マーチン・ヤン)に相談し、フランス人留学生サビーヌをチェンの家に住まわせることにする。果たしてレオは彼女に興味を持つのだろうか!?
監督ケネス・ビィ(『スモーク・ミラクル』)
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第17回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。日本での一般公開も準備されているとか。エグゼクティブ・プロデューサーにジャッキー・チェン(映画には登場しないがセリフに彼の名前が出る)音楽は日本の川崎真弘が担当。
それと、私は映画を見た後で知ったのだが、キムツイを演じたマーチン・ヤンという人は俳優ではなく、香港で料理ショー番組もやっている料理の先生なのだそうだ。私はてっきりコメディ専門の役者さんだと思ってたよ。

原題は『海南鶏飯』という、チェンのレストランの人気メニューのこと。日本ではシンガポールチキンライスと呼ばれているらしいと聞いていろいろ検索していたら、タイ料理のカオマンガイもほぼ同じものなのね。こっちは食べたことありました。スープで炊いたご飯と蒸し鶏にタレをかけて食べるんだけど、ご飯も鶏もあっさりしていて、かなりタレをドバドバかけて食べた覚えが(笑)なーんだ、これのことだったのか。映画ではこの料理がどんなものかあまり映されず、いまいちピンとこなかったので映画を見ていても取り残されているような、入り込めそうで入れない感じがずっとしていた。逆にチェンに対抗してキムツイが海南鴨飯というのを作るんだけど、こちらは料理するシーンがあったおかげで鶏飯よりも良く見えてしまった。まぁシンガポールじゃ海南鶏飯はわざわざ見せるまでもないということなんだろうけどね。カオマンガイだと知ってて見ていたらまた少し印象外違ったかもしれない。

レオがゲイなのかそうでないのか?というところはすごく面白かった。無口で無愛想で、何を考えているのか分からない男の子な上に、親友の男の子と仲良く遊んでいるシーンがすごくアヤシイのだ。でもお母さんのことも大事にしているから極度のマザコンか、まだ子供っぽいだけなのかも?なんて考えてしまったり。そこへさらにサビーヌという女の子も登場し、彼女と徐々に仲良くなっていくのを見て、やっぱりゲイじゃないのか、いや、でもやっぱり・・・という感じで、見せ方がとても上手かった。
でももう少しフォローもあって良かったのでは。例えば(ネタバレ)レオとサビーヌが寝てしまった後、レオはやっぱり男(というか親友)のほうが好きなんだ、ってことをサビーヌもレオ自身も気づいてしまうシーンがあれば良かったと思う。なんか一夜明けたらサビーヌの扱いがかなりぞんざいになってしまった。彼女がレオをどう思っているか?が全く描写されなくなり、いきなり悟りを啓いたようになったりチェンの家を出ると言い出したり、お役御免!という感じなのだ。(ここまで)可哀想だよー。チェンも冷たいしさ。

ラストシーンはあれでもいいのだが、上に書いたような中途半端なシーンが多かったおかげで満足度に欠けた。どうせなら長男の結婚式をきちんとやって、鶏飯と鴨飯をふるまって、チェンが笑顔で認めるっていう締めなら良かったな。
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ツイステッド('04アメリカ)-Oct 11.2004
[STORY]
ジェシカ・シェパード(アシュレイ・ジャッド)は、父親が母親を殺して自殺したという過去を持ち、現在は父の同僚だったミルズ本部長(サミュエル・L・ジャクソン)の元でサンフランシスコ市警に勤務している。ある時、パトロール中に連続殺人犯の疑いのある男を逮捕したことで殺人課捜査官へ昇進したジェシカは、パートナーとなったマイク(アンディ・ガルシア)と共に撲殺された男の事件の担当になるが、その男はジェシカと一晩だけ関係を持った男だった。さらに第二の殺人が起こるがまたしてもそれはジェシカと関係のあった男だった。果たして彼女が犯人なのか?!
監督フィリップ・カウフマン(『クイルズ』)
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夏頃に本作と『テイキング・ライブス』がまるでセットのように続けて予告編を流していて、『テイキング』も見るからこれも見とくか、と軽い気持ちで見たんだけど・・・まぁはっきり言っちゃうと『テイキング』よりひどかったですなぁ。

オープニングタイトルバックは70年代の映画を見るようなサンフランシスコのベイエリアから始まり、大空に羽ばたく鳥がいつのまにかジェシカの瞳に映っているというCGを使ったシーンに変わるところは面白かったし、ひょっとしたらと期待したんだけども、その後はヒロインがやっぱり無能だったり犯人が意味ない行動を取ったりと『テイキング』と同じような展開に。しかもこっちのほうが全くハラハラしない。やはり何人か怪しい男が登場して思わせぶりな行動を取るも緊張感がないし、この作品で一番面白く見せなきゃならない“犯人がヒロイン自身かもしれない”というところが一番ダメだった。

男に対して攻撃的な態度を取ったり、夜な夜な酒場に行っては男を引っ掛け自分が男を支配しているのだと満足し、時に両親の事件を振り返っては涙するというキャラクターはいい。多重人格なのかもしれないと思わせるわけだし。でも早々と彼女が犯人ではないと分からせてしまうのは勿体ない。しかも同じシーンを繰り返しすぎだし。多分見てる人のほとんどが同じツッコミを入れただろうな。
(ネタバレ)いいかげん、ワインに薬が入れられてることに気づけよ!!(ここまで)
ってね(笑)いいように解釈すれば親切なサスペンス、かな。上に書いたところもそうだし、タバコのシーンで犯人が分かるようにもなっているし。

それにしてもアンディ・ガルシア太ったな・・・。将来太るだろうなぁーとは思ってたけど、もうちょっとするとマフィアのボスも板についてきそうな脂のノリ具合で。しかもジャッドと比べるとすんごい顔デカイのね。この映画で一番の衝撃はそこでした(笑)
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