Movie Review 2004
◇Movie Index

テイキング・ライブス('04アメリカ)-Sep 15.2004
[STORY]
カナダ、モントリオールにある工事現場で、絞殺され両腕を切断された死体が発見された。猟奇殺人と睨んだ警察はFBIのイリアナ・スコット(アンジェリーナ・ジョリー)に協力を要請する。彼女は現場や死体を見て分析するプロファイラーで、すぐに犯人の特徴を指摘し始める。そんなある時、犯人を目撃したというコスタ(イーサン・ホーク)という男が現れる。警察は彼自身が犯人ではないかと疑うが、イリアナは否定する。一方、死んだはずの自分の息子を目撃したという老婦人が現れる。彼女の息子マーティン・アッシャーは誰かを殺してはその人の人生を乗っ取っていて、今回の事件の犯人であることが分かる。
監督D・J・カルーソ(『The Salton Sea』)
−◇−◇−◇−
原作はマイケル・パイの『人生を盗む男』らしいが、殺人者の名前がアーケンハウトだったり、彼自身が主人公みたいなストーリーで、映画とはちょっと違うみたい。舞台がモントリオールということでフランス語圏なんだけど、フランス語はあまり出てこない。そのかわり刑事たちはフランスで活躍するチェッキー・カリョ、オリビエ・マルティネス、ジャン=ユーグ・アングラードが出演している。そしてキーファー・サザーランドはキーパーソンとして、マーティンの母をジーナ・ローランズが演じており、何気に出演者は豪華だ。

とはいっても、肝心のストーリーがちゃんとしていなければ全て無駄なわけで・・・。設定はすごく面白いと思う。マーティンが最初に人生を乗っ取るシーンなんてドキドキしてしまったし、途中で死体が発見されるたびにビクッと身体が反応(笑)この中の一体誰なんだろう、と想像するのも面白かった。ひょっとして(ネタバレ)アッシャー夫人に化けてる?と思ってしまった(笑)だって執拗に指を映すからさ。てっきり一部皮がめくれているのかと・・・。中に人が入ってたらさすがにビックリしただろうなー。というか伝説のトンデモ映画になったかも(笑)
あれは真っ赤に塗られた爪を映すことで、マーティンの性格形成には夫人自身にも問題があったことを示唆してたんですかね。
(ここまで)

でも、その後の犯人のやり方の回りくどさ(笑)に納得できなくなっていくのだ。映画を盛り上げるためだけに行動しているように見えてしまったらもうダメでしょ。映画だし相手はサイコパスだし、ある程度なら予測つかない行動に出ても納得できるけど、それをはるかに超えてましたね。地下室のあれはなんの意味が?そして自分が犯人だとバレるようなことしてどうするよ。

せめて特別捜査官イリアナのキャラクターをきちんと設定していれば面白かっただろうに。彼女の能力が発揮されるのはほんの最初だけで、あとはもう犯人の思うツボ。どこが優秀なんだか分からない捜査官にされてしまって、これでは彼女があまりにも可哀相だ。クライマックスでようやく彼女の執念を感じることができたが、その後が穏やかすぎて拍子抜けしてしまった。ここで少しでも任務を成し遂げたんだという強い意思の表情を見せてくれれば、映画が引き締まっただろう。
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CODE46('03イギリス)-Sep 15.2004
[STORY]
近未来。世界は都市部の中と砂漠化した外に分かれていて、通行には“パペル”と呼ばれる許可証が必要だった。ある時、上海にあるパペル印刷会社でパペルの偽造事件が起こる。調査員のウィリアム(ティム・ロビンス)が派遣され、職員たちに話を聞くうち、マリア(サマンサ・モートン)が犯人であると突き止めるが、彼女に惹かれたウィリアムは虚偽の報告をする。そして妻子がありながら彼女と愛し合うようになるが・・・。
監督マイケル・ウィンターボトム(『ひかりのまち』
−◇−◇−◇−
脚本は過去のウィンターボトム作品4本を手がけたフランク・コトレル・ボイス。
“CODE46”とは、同じ遺伝子を持つ者同士の性行為を禁じた法律で、結婚前には必ず検査をするよう義務付けられている。

近未来とはいっても、わざわざ大掛かりなセットを組んだりせずに、できるだけ今現在ある場所を使い、ちょっとした小物のアイテムで未来感を出している。中国の町並みも少し画像の色を変えるだけで随分違うように見えるものだ。今現在とそれほど変わっていない部分もあり、すごく変わっている部分もあって(その変わっている部分が突拍子もないものだけど)リアルでなかなか面白い。トヨタの車も使われてたなー(笑)

ただCODE46中心の話かと思っていたら、パペルのほうが重要というかCODE46がメインになるのが物語の中盤以降なので、期待していたのとちょっと違うなぁと感じた。また、一部の人間がパペルを発行してもらえないのは何故なのか?とか、CODE46に抵触するとどうなるか?が、すぐには分からないのがもどかしい。この映画のゆったりとしたテンポや、登場人物たちが違反した場合の危機を感じてないせいもあるだろうが、もう少しこれらのネタでドキドキしたかった。うーん、この手のハリウッド映画を見過ぎか・・・?

モートンもロビンスもほっぺたぷっくりの赤ちゃん顔なので、同じ遺伝子と言われて思わず納得なんだけど(笑)彼らが惹かれあったのは遺伝子同士が惹かれてしまったのかもしれない。性行為があったからといってすぐに妊娠するとは限らないわけだし、この時代ならもっと完璧に避妊できるだろう。それなのにCODE46という法律まで作って罰している。出会えば必ず惹かれ合ってしまうからなのでは?そしてその人以外を愛せなくなってしまう。そうなると人口も減りますわな(笑)だから法律を作ったと・・・こういう切り口でも面白かったかも。
ウィリアムとマリアも、どんなに離されても記憶を消されても、またどこかで巡り会ってまた愛し合う。それを予感させるラストが見たかった。本作のラストもこれはこれで好きなんだけどね。
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ヴィレッジ('04アメリカ)-Sep 14.2004オススメ★
[STORY]
1897年ペンシルヴァニア州にある小さな村。深い森に囲まれたその村には、森の中に入ってはいけないという掟があった。森に棲む《彼ら》を脅かすようなことがあれば村人たちが襲われてしまうからだ。人々は《彼ら》を畏れ、決して森に入ることはなかった。しかしある時、ルシアス(ホアキン・フェニックス)が村にない薬品を買いに森を抜け、町へ出かけると言い出す。そのルシアスが大怪我を負い、彼と結婚の約束をしている盲目のアイヴィー(ブライス・ダラス・ハワード)が彼を助けるために町へ行くことになる。
監督&脚本M・ナイト・シャマラン(『サイン』
−◇−◇−◇−
巷ではあまり評判良くないみたいだし、アメリカでも2週目でガクーンと下がってしまった作品だけど、私は面白かった。驚きと感動の『シックス・センス』がやっぱり1番だけど、これは2番目に好きかも。この続きが見てみたいと思ったし、過去作品をもう一度見返してみたいと思ったから。

というわけですっごく見たくなって『アンブレイカブル』と『サイン』を、暇を見つけて借りてしまった(実はこの2本を見てたために感想が遅れたのでした)劇場で見た時にはどちらもいまいち・・・と思ってたんだけど、面白いんだ、これが(笑)共通点があったり、シャマラン作品全部を見てるからこそさらに楽しめるところがあって(まぁシリーズや続編でない限り映画は1本1本が独立した作品であってほしいとは思ってるけど)これはこれで面白いなぁと思った。

『サイン』で、グラハムたちが地下に隠れると《奴ら》がドアをドンドン叩くシーンがある。『ヴィレッジ』も同じように《彼ら》がやってくる分かるとアイヴィーたちが地下に隠れるシーンがある。これはやはり意識して同じようなシーンを作ったのだと思う。
(ここからこの2作のネタバレ)『サイン』での《彼ら》は本物の宇宙人だった。私は宇宙人なんて言ってるけど本当は違うでしょ〜と思ってたので、本物が出てきてしまった時には呆気にとられてしまった。だから『ヴィレッジ』も本物の怪物だったりするのでは?!と思っちゃったんだよね。
映画を見るまでは、この村の人たちはアイヴィーやノアだけでなく全員が何らかの障害を持っていて、健常者たちに隔離されているのかと思ってたのだ(余談だが、アイヴィーのお姉さんも相当ヤバい(笑))《彼ら》というのもただの噂話で、本当には出てこないのだと。でもあの赤マントが出た瞬間にこれも本物だったのか!って。それがなまはげ(笑)だったので、一瞬でも信じた私はハメられた!と悔しくてしょうがなかった。
(ここまで)『サイン』を事前に見ていなければ、こんな風に思うこともなかっただろう。

『アンブレイカブル』との共通点・・・というか私のこじつけかもしれないけど、それはフードのついたマントというかコートね。ついでに『華氏911』との共通点もあるので(ヴィレッジの公開日が9.11なのは偶然か)それも絡めます。『華氏911』でテロの警戒レベルというのが出てくるんだけど、一番危険は赤、危険が高いのがオレンジ、危険が高まっているが黄、慎重を期すが青、そして危険がないが緑とされている。ヴィレッジで《彼ら》は赤いマントを纏っている。そして村人たちは黄色のマントなのだ。何で黄色?映画では一応黄色は邪悪なものから身を守ってくれる幸運な色なんだそうだが、どうみても危険度は高そうだ。青か緑なら納得できるのに・・・って、いましたね、緑のレインコートの人が。そう、『アンブレイカブル』のデヴィッドです。彼の色だから緑は使わなかったんじゃないかな。安全なのは彼だけだってことで。
まぁ本当のところはきっと(ここから『ヴィレッジ』のネタバレ)村人たちに緑を着せたら、万が一森に入った時に見分けがつかなくなって年長者たちが困るからだろうな。黄色は目立つから監視しやすいということだろう。あと赤は不吉な色だから隠すよう教え込むというのは上手いなーと思った。つまり赤マントが視界に入ったら反射的に眼を伏せてしまうということだ。あの赤マント、まじまじと見たらたぶんバレるよ、なまはげだって(だからなまはげ言うな)うまい作戦だ。(ここまで)

もう1つ、『華氏911』との共通点がある。(ここからは『華氏911』と『ヴィレッジ』のネタバレ)『華氏911』でアメリカ政府が警戒レベルを自在に引き上げたり下げたりして国民の不安を煽っているとムーアは言っていた。それと同じことを『ヴィレッジ』の村の年長者たちがやっている。誰かが村を出て行きたいと言えば《彼ら》で恐怖心を煽り、村を統率する。年長者たちは尤もらしいことを言っているがすごく怖いことをしている。果たして、あの村はどこまで持つのか。それが気になってしまって仕方がない。いや、もうあのラストの時点で破綻しているのかもしれない。でも最後のアイヴィーの笑顔で救われてしまう。後味が妙に爽やかなのだ。(ここまで)

共通点はこれくらいにして(って随分書いたなーおい)映画そのものの感想だけど、こんなに初々しい恋愛シーンは久しぶりに見たなーと感動してしまった。アイヴィーが恐怖におののきながらもルシアスを待ち、手を取るシーンがこの映画のベストでありクライマックスシーンだと私は思う。また、うすらぼんやりと映る《彼ら》が怖いのなんのって。ここのカメラワークも最高だった。そして登場人物で特筆すべきはやはりノアだ。日本ではたぶんこういうキャラクターは登場させられないだろう。ていうか、彼は相当頭がいいのでは?(ここからネタバレ)《彼ら》がやってきてみんなで地下に隠れるシーンがあるが、ノアはここでクスクスと笑うのだ。彼が知的障害だからか、と最初は思うんだけど、思い返せばそうじゃないことが分かる。《彼ら》が狂言だということを知っているから笑ってたんだよね。ノア!恐ろしい子・・・(←月影先生風に)彼はひょっとしたら狂ったフリをしてたのか?!(ここまで)いや、それは考えすぎか。

なんかネタバレばっかりで読みにくい感想文なので、読みたい人はシャマラン作品と『華氏911」を是非どうぞ(って宣伝かい)
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スウィングガールズ('04日本)-Sep 11.2004
[STORY]
山形にある高校の夏休み。教室では13人の女子生徒が補習授業を受けている。外では高校野球の応援に行くブラスバンド部員たちがバスに乗り込んで出発した。数分後、弁当屋が届けにくるが間に合わず、困り果てている。それを教室から見ていた友子(上野樹里)は、弁当を自分たちが届けに行けば補習をサボれると思いつき、他の生徒たちも同意して届けに向かう。しかし途中でアクシデントがあり大幅に到着が遅れ、日に当たりっぱなしだった弁当を食べたブラスバンド部員たちが次々と食中毒で倒れてしまう。これでは次の試合で応援ができない。そこでたった1人難を逃れた部員の中村(平岡祐太)は、責任を取ってもらうおうと彼女たちに楽器をやらせようとする。
監督&脚本・矢口史靖(『ウォーターボーイズ』
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オーディションによって選ばれたメンバーはキャラクター重視で選ばれたためほとんど楽器の経験がなく、4ヶ月の猛特訓の末、劇中で演奏される曲すべて吹替えなしでこなしたという。私もTV番組で見たけど、たしかにすごく上手ではない。でも多少下手でも吹替できちんとした音であるよりもずっと良かった。指使いがめちゃくちゃじゃないし(って私はあまりよく分からないんだが)息継ぎがリアルだもんね。そして何より、演奏を終えた時の顔がいいのだ。

だけども『ウォーターボーイズ』といい『スクール・オブ・ロック』といい、この手の映画の前半はどうしてこうも寒々しいんだろう。こうしないとクライマックスが盛り上がらないものなんだろうか。ドタバタは嫌いじゃないが、やっぱり一生懸命さがほしい。真面目にやっているのに不可抗力のトラブルが発生してしまったのならいい。でも自分がふざけたせいでアクシデントが起こるのを見るのは腹立たしい。特にバイトとコンクールのアレはもう呆れるしかなかった。あそこは(ネタバレ)もっとシンプルに、雪で間に合わないかもしれない、とか、道に迷ったところを演奏で人に気づいてもらう。(ここまで)で良かったと思うんだけどなぁ。あと分かるんだけど、楽器を買うのに四苦八苦するシーンがちょっと多すぎたかな。かといってすぐに買えてしまえばまた文句言うんだろうけど(笑)

良かったのは横断歩道のところ。あそこからようやく演奏の面白さをこちらも感じることができたいいシーンだった。関口さん(本仮屋ユイカ)はポイントポイントでガールズを正しい方向へ導くいい子だ。しかもメガネっ娘ですよ(萌え)ほかに三つ編み、ギャル、ヤンキー、ぽっちゃり、と男子のココロを掴むキャラクターを各種取り揃えてて、なんかやらしいなぁと思いつつも、やっぱり関口さんカワイイーと私も(女ですが)盛り上がったり。ただ女の子が16人もいるとさすがに恐いなと思う時もあった。たった1人の男の子のほうが可憐だったかも(笑)
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ヴァン・ヘルシング('04アメリカ)-Sep 7.2004
[STORY]
19世紀。モンスターハンターのヴァン・ヘルシング(ヒュー・ジャックマン)は、バチカンの秘密結社からドラキュラ伯爵を捕らえ、 東欧の地を守り続けてきたヴァレリアス一族を救う任務を負う。一族では今や王女アナ(ケイト・ベッキンセール)だけが 生き残っており、ドラキュラの花嫁たちが彼女を殺そうと執拗に狙う。ヴァン・ヘルシングは一族が残したドラキュラに 関する資料から、ドラキュラ城の場所と伯爵を倒す方法を探っていく。
監督&脚本スティーヴン・ソマーズ(『ハムナプトラ2 黄金のピラミッド』
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ブラム・ストーカー著作の『吸血鬼ドラキュラ』に登場するヴァン・ヘルシングは60歳の大学教授だった。それが本作では年齢不詳で過去の記憶がない謎多きマッチョ兄さんになって登場する。一方ではモンスターハンターとして活躍するが、もう一方では殺人者(モンスターは死んだ後に人間に戻るため誤解されている)として追われる身なのである。そして毎晩悪夢にうなされ、それが今回のドラキュラ伯爵と関係しているらしい。

というキャラクターなんだけど、過去がどうこう言っても悩んで落ち込むようなキャラではない。ぶっちゃけあまり深くは考えてないだろう(笑)考える前にまず身体が動いてしまう野生の勘タイプで、その行動すべて正解に導いてしまう最強の男なのだ。まぁ映画そのものも彼のキャラそのまんまなんだけどね。見ている間ずっと腕をぐいぐい引っ張られて、これで本当にいいわけ?と何となく腑に落ちない部分がありながらも、ゴールに着いたところで、結果に満足というよりもその達成感で思わず喜んでしまうという、そういうお話でございました(笑)

だってね、ドラキュラがフランケンシュタインを必要とする科学的根拠とかそういうことは全く語られないから。とにかく必要ったら必要なの!この強引さがこの監督の魅力であり、ちょっとムカつく(笑)部分でもある。続編も作れそうな雰囲気を匂わせていたけど、1作目でこれだけ出してしまったら次はどうするつもりだろう。ミイラ男は『ハムナプトラ』ですでに出てるしねえ。あと敵キャラはもっと魅力的な人に演じてもらいたいなぁ。ドラキュラはダメ過ぎた・・・。

ドラキュラ城を空から舐めるように映すシーンを見て、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』のオルサンクに似てるなぁと思っていたら、エンドクレジットのミニチュア製作にWETAの文字が。嬉しかったなー。そういえばバチカン僧侶のカール役を演じたデヴィッド・ウェンハム(指輪ではファラミア役)の背がヴァン・ヘルシングの肩くらいまでしかなかったんだけど、189cmと185cmだからそれほど違いはないはずなのに・・・ホビット方式で撮ったんでしょうか(と無理やり指輪ネタで纏めてみる)あ、実際は思いっきり猫背でがんばったようです。
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