田植え踊りは東北の民俗芸能で、早乙女と男衆からなる例が多い。山形県の田植え踊りの分布は、日本海側の庄内地方や南部の置賜地方には稀で、村山地方や最上地方に多い芸能である。構成は2列の横並びで前列男衆、後列早乙女の例が多いが、3列の例や男衆だけで1列の例もあり多彩である。男衆の採りものや役柄から、山形県の場合は、テデ棒系(エンブリ系)と「やじゅうろう系」に大別するのが一般的のようである。やじゅうろう系は寒河江市や西村山などに限られ、テデ棒系の方が広範囲で数も圧倒的に多い。
早乙女は花笠をかぶり、幕を垂らして顔を隠す。女装の場合が多いが、後継者不足もあって女性が演じる例もある。中には早乙女を失って男衆だけの例もある。早乙女の採りものは扇・ささら・綾竹・花笠などの中から3種類という例が多い。
テデ棒系の男衆は頭部に房や金輪の着いた棒を振りながら踊るのでその名がある。その原型は「柄ぶり」という田をならすための農具ともいい、会津の早乙女踊りの男衆は柄ぶりを模して小型化したものを持って踊る。源内棒といっているところでは、田植え時に縄を張るための棒だとしている。それらは田植え時に使う棒状のもの、ということでの説明かも知れないし、修験的要素を考えれば錫杖も考えられる。豊穣の呪具ということから考えると、毛や金のついた棒状のものといえば男根と考えるのが自然である。テデ棒の名は「手に手に棒」から来るという先生もいるようだが、テデはてて親のててなら親父の棒といういうことになる。
テデ衆の採りものはテデ棒だけではなく、中太鼓といって太鼓が入る例も多い。中太鼓は山形市以南は鞨鼓が多く、東西村山地方は団扇太鼓が多い。 |