Movie Review 2010
◇Movie Index

ゲゲゲの女房('10日本)-Nov 28.2010
[STORY]
1961年。島根県の安来に住む飯田布枝(吹石一恵)は、貸本漫画家の武良茂(宮藤官九郎)と見合いから5日後に結婚し、東京の調布で新婚生活を始める。見合いの時には、売れっ子の漫画家で恩給もあると聞いていたが、実際は恩給は茂の両親が全額受け取っており、漫画は売れず、時計や背広を質に入れて、なんとか生活する毎日だった。
監督&脚本・鈴木卓爾(『私は猫ストーカー』)
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原作は漫画家水木しげるの妻・武良布枝の同名自伝。
NHK連続テレビ小説のほうが先に放映となってしまったが、映画のほうが先に企画されている。
平岩紙、徳井優、柄本佑の3人はドラマと映画の両方に出演(役柄は違う)貸本屋役で出演の鈴木慶一は音楽も手がけている。

TVドラマ版は土曜・祝日などでちょこっと見るくらいだったが(親は熱心に毎日見ていた)そのたびに「水木さんがこんな優男なわけない」と向井理の見た目も演技も気に入らなくてイライラしていた。その反動なのか、別の映画を見に行った時に見た本作の予告で、宮藤官九郎が演じる水木さんのあまりのハマり具合にビックリ。吹石一恵も、いくら松下奈緒が頑張っても醸し出せない野暮ったさをナチュラルに見せつけてて(これは褒め言葉です当然)ちゃんと年の差がある夫婦にも見えるし、こっちのほうが断然いいじゃないか!と、これは絶対に見ようと決めたのだった。

ドラマ版ほど予算がないということで、夫婦が住む家は一軒家を改築して使ったり、外でのシーンは現代の風景をあえて取り入れて撮影したという。墓地や河原でのシーンは問題なかったが、さすがに東京駅(現在駅舎工事中)やパルコ(1969年1号店開店)が出た時にはギョッとしてしまった。そこまで開き直ることはないと思うんだけど(笑)どちらも撮り方や撮影場所を変えれば何とかなったはず。わざと映像を白っぽく荒くしてあるので、それ以外では古めかしさはしっかり出せていたし、登場人物の服装や小物でも工夫がなされていて、違和感はなかった。

何だかよく分からないシーンが突如始まったり、妖怪が出てきて踊ったりと(でも人間は気づいてない)この手の邦画にありがちなシーンがいくつか挿入され(ホラーかと思うような場面もアリ)こういうシーンを入れるくらいならもうちょっと本編を長くやってくれないかな、と見てる最中は思ったのだが(苦笑)見終わった後でふと思い返してみると、この作品はあそこで終わって正解だったと思い直した。映画では漫画が売れ始めたことを間接的に伝えて終わってしまう(質に入れた戻ってきたという映像を簡単に見せるのみ)成功してバンザーイ!みたいなシーンは一切ない。でも、この映画では成功したかどうかはさして重要ではないのだ。貧乏でもつらくても、食べるために一生懸命働いて生きていく、それを見せたかっただけ。そして挿入されたいくつかのシーンは、いつ抜け出せるか分からない貧乏生活への不安や、戦後といってもまだ茂の中では終わっていないということを表現しているようにみえた。

キャストについては、やはり水木さんを演じたクドカンがよかった。若い頃の水木さんそっくりの風貌と飄々とした喋り、独特の笑い方。単なるモノマネじゃなくて、入ってる、って感じだった。キャスティングした人もスバラシイよ。吹石一恵もハマってたし、この2人がドラマ版のキャストだったら毎日録画したね、私(笑)
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ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1('10イギリス=アメリカ)-Nov 22.2010
[STORY]
ヴォルデモート(レイフ・ファインズ)の力は人間界にも及び、ロンドンから脱出する人々が後を絶たなかった。ハリー(ダニエル・ラドクリフ)は、ロン(ルパート・グリント)やハーマイオニー(エマ・ワトソン)たちに守られながらロンの家に避難するが、そこも敵に襲われてしまう。逃げた3人は“分霊箱”を見つけ出して破壊するための旅に出るが、魔法省やホグワーツもヴォルデモートの支配下に置かれていた。
監督デヴィッド・イェーツ(『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
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原作はJ・K・ローリングの同名小説でシリーズ最終巻。デヴィッド・イェーツは『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』から、本作のPART2までの 4作連続で起用されている。
初の全編3D上映と言われていたが、PART1は間に合わず通常版で上映。後編は3Dでの上映が予定されている。

7作目ともなると登場人物たちに愛着があるので、キャラクターの誰かが殺されてしまったり、ケガしたりするのを見るのがいたたまれなくなってくる。ダーク・ファンタジーとまでは言えないけど、コミカルなシーンはかなり少なくなった。ホグワーツは全く出てこないし、人間たちもロンドンから逃げ出し、魔法省も敵に掌握されてしまう。1作目の可愛らしいファンタジーから随分と変わったものだ。ハリーたちもぷくぷくで可愛かったのが何というか大人っぽくなったというか老化したというか、いろいろ変わりましたが(マルフォイ・・・)でも便利な魔法が使えるところ(小さなポーチからいろいろ取り出せちゃうグッズとか、結界を張る魔法とか)は変わりないかな。主人公も読者の対象もティーンだからしょうがないけど、都合がいいものが多いなぁと感じてしまうのも確かだ。

もう1つ気になったのは、ヴォルデモートの分霊箱を手に入れたハリーたちが、代わる代わる首に掛けて敵に奪われないようにするんだけど、掛けてる間は体力を消耗し、邪悪な心が芽生えてきてしまう。これを見てパッと頭に浮かんだのはやはり『ロード・オブ・ザ・リング』だった。指輪を持ったフロドが、ゴラムが、指輪の 魔力に取り憑かれていく。指輪をサウロンに奪われたら敢然復活してしまう、そんなところがそっくりだ。今までもちょいちょい似たところはあったし比較されてきたけれど、ここまで似てるところがあるとはね。パクッたとかそういうことはあんまり思いたくないんで(さすがに『指輪』が『ハリポタ』をパクッたという意見には「それはない」ときっぱり言うが)これがファンタジーの王道というやつなんだろう、という気持ちで見ていくつもり。
これ以上の感想は、PART2を見てから纏めたいと思う。

本作では魔法大臣にビル・ナイ、ルーナの父親にリス・エヴァンス、デス・イーターにピーター・ミュランとまたまた有名俳優が起用され、彼らを総動員してこのシリーズを盛り上げようというイギリスの本気を見せてもらった。PART2にも驚きのキャストはいるのかな。ストーリーも含めてどういう結末を迎えるのか楽しみだ。
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エクリプス/トワイライト・サーガ('10アメリカ)-Nov 21.2010
[STORY]
エドワード(ロバート・パティンソン)からプロポーズされたベラ(クリステン・スチュワート)は、結婚するよりも早く自分もヴァンパイアになりたいと思っていた。だが、エドワードは彼女にまだ人間のままでいてほしいと願っていた。そんなある時、シアトルで行方不明者が続出する事件が発生しており、ベラたちが住む町の住人も行方不明になっていた。これらの事件は、以前エドワードに恋人を殺されたヴィクトリア(ブライス・ダラス・ハワード)の仕業で、彼女はヴァンパイアになった者たちを引き連れ復讐しようとしていた。エドワードたちはオオカミ族のジェイコブ(テイラー・ロートナー)らにも協力を仰ぐが・・・。
監督デヴィッド・スレイド(『ハードキャンディ』
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原作はステファニー・メイヤーの『トワイライトV』(原題は『Eclipse』)
映画は『トワイライト〜初恋〜』『ニュームーン/トワイライト・サーガ』から続くパート3。次回作の『Breaking dawn』は前編と後編の2部作構成になることが決まっている。

前作でベラに「死んでしまえ」とまで思ってしまった私だったが、本作ではもう呆れるしかない女になってました(ガックリ)タイプの違う男の子から愛されてしまった私・・・選べない!どっちも好きなの!みたいなシチュエーションが好きな女の子って多いのかねえ。パート1から確かにベラは人間からも人間以外からもモテモテだったけど、エドワード以外は軽くあしらってたのであんまり気にならなかったんだ。でも今回は!!確かにジェイコブはパート1ではモッサリしててあまりカッコ良くはなかったが、作品を重ねるごとに精悍になってますよ。逆にエドワードは「お前、歳取らないちゃうんか?」とツッコミを入れたくなるほどシワシワですよ。でもフラフラしすぎだろう。ジェイコブに浮気してもエドワードは怒らない、ずっと自分のことを愛し続けてくれるっていう変な驕りがベラから感じ取れちゃって、もう勝手にすれば、と思ってしまった。もう既に私の中ではベラは最悪の自己中女なんだけど、このままベラ嫌いでラストを迎えるのはやっぱり嫌だ。せっかくパート1から見続けてるからね。最後はよかったねーでスッキリ終わってほしいわ。

今回もまた監督が違う人なんだけど、前作のような凝った映像は全くなくて、クセのない・・・率直に言うと何ら特徴のない映像だった。これなら前作の監督のほうが印象に残るシーンが多くて楽しめたな。次回作は『ドリームガールズ』のビル・コンドンが監督を務めるそうだが、どうなることやら。

今回登場するヴィクトリアは見た目がちょっと変わったなぁと思ってたら(でも外国人は容姿がガラッと変わったりするから、と思ってそれ以上気にしてなかったら)キャストが代わってました(笑)パート2まではレイチェル・レフィブレだったのが、本作では何とブライス・ダラス・ハワードだった!まさか彼女が演じてるなんて思わないよー。本作のヴィクトリアはラスボスにあたる重要な役なので、彼女ほどの役者が演じるのは当然かもしれないが、それならもうちょっと見せ場を作ってあげてもよかったのに。

見せ場といえば、パート2までは単なるベラのクラスメイトで、頭の悪そうなジェシカを演じていたアナ・ケンドリックが、『マイレージ、マイライフ』でオスカーにノミネートされた故か、本作では卒業生総代としてスピーチをしていた(笑)こういうところがあからさまで面白いわー。『X-メン』シリーズでのハル・ベリーみたい。高校も卒業したし本作で彼女の出番は終わりだろう、と思ってたら、どうやら次回作にも出るみたいね。

さらにパート1では「くわっ」と瞳孔開いてるだけの兄ちゃんだったジャスパー(ジャクソン・ラスボーン)が、本作ではリーダーシップを発揮し、やたらカッコよくなっていた。彼も本国で活躍中なのかね?エドワード亡き今(勝手に殺すな)ジャスパーがさらに活躍することを願って続編を楽しみに待とう。
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100歳の少年と12通の手紙('09フランス)-Nov 20.2010ヨイ!★
[STORY]
白血病で小児病棟に入院している10歳の少年オスカー(アミール)は、いたずらをしても許してくれる大人たちに反発し、偶然出会ったピザ屋のローズ(ミシェル・ラロック)が自分に遠慮なく罵るのを見て気に入ってしまう。そしてローズにだけは何でも話すとデュッセルドルフ医師(マックス・フォン・シドー)に訴える。そこで医師はローズにオスカーの話相手になってほしいと依頼する。最初は断るものの、ピザの出前を毎日取る条件でローズは12日間、オスカーの病室を訪ねることになった。
監督&脚本エリック・=エマニュエル・シュミット(『地上5センチの恋心』)
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原作は監督を務めたエリック・=エマニュエル・シュミットの同名小説。映画が先にあって小説は後からノベライズみたいなので出版したのかと思ってたら、2003年にすでに出ていた小説だったのね(日本でも2003年に『神さまとお話しした12通の手紙』のタイトルで出版)
もともと劇作家で舞台作品を数多く手がけていて、本作も映画より先に舞台化されているし、『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』も舞台から映画になった作品だった。

予告を見た時から泣きそうだったんだけど、本編見てやっぱり何度も泣いてしまった。けれど予告ではしんみりした映像ばかりだったけど、本編は意外とコミカルなシーンが多かった。ミシェル・ラロックが女子プロレスラーのコスチュームを着て(ちょっとビックリした)バケモノみたいな相手と対戦するシーンが何度か挿入されるのだ。自分は元女子プロだとオスカーに言い(嘘だけど)過去の戦歴を語っていく。どんなに身体が大きくて強い相手でも、勝つことができるんだとオスカーを励ますのだ。このプロレスの映像はプロレスというよりサーカスに近いような、独特のセンスで最初は思わず「えっ」とのけぞってしまったんだけど、見慣れるとこっちまで楽しくなってくる。悲しい話でもとことん湿っぽくするのではなく、こういう軽いシーンを入れることで緩急をつけられるほうがかえって感情を揺さぶられてしまうようだ。ずっと泣かせようとするシーンばっかりだと逆に見てるこっちの頭も身体も冷えていくんだよね。また泣くんか、とかまだこれ引っ張るんかい、とかね(苦笑)だから、この映画ではプロレスシーンで気が緩んだあとに、オスカーの手紙でドッと涙が溢れてしまう。またねぇ、このオスカーを演じているアミール君の声がめちゃくちゃ可愛いのだ(顔も可愛いけど)可愛すぎるから神様に気に入られて連れて行かれちゃうのかな、なんて思ってしまうほどだった。

オスカーに毎日面会することになったローズは、1日を10年間だと思って過ごすことと、毎日神様宛に手紙を書くようオスカーに命じる。実は、そこがちょっと強引だなと感じてしまった。それを言ったらこの映画の根本が崩れちゃうんだけど(笑)ローズがどういう人間なのかまだこっちが理解してないうちの発言だったから違和感があったのかもしれない。彼女の性格や生い立ちなどが、オスカーと出会う前にもう少し描かれていたら、もっとすんなり入っていけたかもしれない。引っかかったのはそこだけ。あとはすごく好きだ。『八日目』『ぼくのバラ色の人生』が好きな人に特にオススメ。
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ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ('09イギリス=カナダ)-Nov 14.2010
[STORY]
1950年代のイギリス、リバプール。伯母夫婦に育てられたジョン・レノン(アーロン・ジョンソン)は、優しかった伯父が亡くなり厳しい伯母のミミ(クリスティン・スコット・トーマス)と2人きりになってからたびたび衝突するようになる。そして実の母ジュリア(アンヌ=マリー・ダフ)に頻繁に会いに行くようになる。ジュリアはロックが好きで、ジョンもまた彼女の影響で音楽に夢中になっていく。
監督サム・テイラー=ウッド(長編初監督)
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監督はイギリス人アーティストで、短編映画では故アンソニー・ミンゲラが製作に携わっており、本作はミンゲラに捧げられている。監督(43歳)と主演のアーロン・ジョンソン(20歳)は婚約してて、すでに子どももいるんだってさ。すごいな。ちなみに実母役のアンヌ=マリー・ダフ(40歳)の夫はジェームズ・マカヴォイ(31歳)最初はこの年の差もなかなか、と思ってたけど上には上がいるのね。

ジョン・レノンの高校時代を描いた物語で、ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンらとビードルズの前身クオリーメンを結成している(リンゴ・スターは1962年加入)レノンを描いた作品は他に『バック・ビート』(1960年代、元メンバーだったスチュアート・サトクリフの生涯を描いた作品)と『チャプター27』(1980年にジョン・レノンを暗殺したマーク・チャップマンを描いた作品)がある。本作はそれらより前の1952年から1958年頃までが描かれている。

ビートルズもジョン・レノンも曲は好きだけど本人たちにはそれほど興味はなく(マッカートニーの離婚のゴタゴタはつい注目しちゃったけど)しいて挙げれば、レノンはヨーコのどこが良かったのか・・・ってところくらいか。今のヨーコを見てるとちょっとムズ痒くなるもんで。レノンもああいう最期を遂げたからレジェンドだけど、今もヨーコと活動してたら単なるイタイ人になってたかもしれないけどね。

話は逸れたけど、本作はだからストーリーよりも主演のアーロン・ジョンソンやクリスティン・スコット・トーマスの演技が見たくて見てみた。『ジョージアの日記』のジョンソンはホントにキラッキラでキュートだったからね。それと比べると今の彼の演技は落ち着き過ぎてるよ。怒りを爆発させて家を飛び出したシーンなんか見ても、荒削りだけど危ういっていうのを感じない。まだ若いのに。やっぱり奥さんがえらい年上ってのが(←やっぱそこ気になりますか)

実母と伯母を演じたそれぞれの女優は流石だった。主役はジョンだけど、監督が女性だけあってこの2人の対比に力を入れているのがよく分かった。アーティストだからか、映像の色使いもいいし、光の取り入れ方も工夫している。印象に残ったのは家の中。伯母の家では、伯父が亡くなる前は暖色系の色を使い、亡くなった後では寒色系の色が目立つように配置されている。ジュリアの家は暖色系。ミミとジュリアは衣装の色でも対比させていて、ミミは黒、ジュリアには赤いドレスや赤いアクセサリーを身につけさせ違いを強調している。でも2人が和解した後は、ミミはグレー、ジュリアはピンクと、完全ではないけどお互いが歩み寄ったように見える色を選んでいる。ジョンとミミが抱き合う時のミミの衣装も暖色系だった。単純かもしれないけど、女性らしい細やかさでこういう演出は嫌いじゃないな。

映画の最後で、ジョンは毎週ミミに電話をするようになったというところでちょっと泣きそうになったんだけど、調べてみたら彼は亡くなる3日前にも電話してたんだね。そしてミミが亡くなったのは1991年。彼女の最後の言葉を知って、そこで初めて泣いちゃったわ。映画でもそのところまで言及しても良かったんじゃないかな。
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