Movie Review 2009
◇Movie Index
不灯港('09日本)-Jul 29.2009
[STORY]
小さな港町で漁師をしている万造(小手伸也)は、38歳独身の一人暮らし。嫁が欲しくて役場主催のお見合いパーティに出るも、周りから浮いて大失敗。ところが、そんな万造の家に子連れの女が転がり込んでくる。その女、美津子(宮本裕子)は男に捨てられ、男の子供だった少年とともに行く宛もなく途方に暮れていたのだ。万造は2人を家に住まわせることにする。そして美津子に恋をするようになるが・・・。
監督&脚本・内藤隆嗣(『MIDNIGHT PIGSKIN WOLF』)
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2006年第28回ぴあフィルムフェスティバルで入賞した監督の第18回PFFスカラシップ(長編映画製作援助システム)作品。
PFF入選の監督はその後めざましい活躍をしている監督が多いので、今回も青田買い的な気分で見に行くことにした。タイトルがまずすっごく良くて気に入ったし、予告やチラシからも面白さが伝わってきて、かなり期待しまったのだが・・・ちょっと微妙でしたー。

自分が気に入る作品はオープニングから「これはいい映画に違いない」という予感がするんだけど、この映画は冒頭ですでにちょっと違うなぁと感じていたら、最後まで違うなぁで終わってしまった(苦笑)一緒に見に行った友人なんて、オープニングを見ながら寝ちゃったそうだ(私と同じくらい楽しみにしていたというのに)

万造はどっから見ても漁師なのだがロマンチストで、クサいセリフも真顔で言ってしまう男という設定。そのギャップを笑おうと待ち構えていたが、セリフ回しが想像と違って抑揚のない棒読みで、うっかりすると聞き逃してしまうものだった。オフビートな作品に仕立てるための演出か知らないが、もっとストレートにウケを狙っても良かったと思う。麿赤兒演じる洋服屋のオヤジに騙された人がいっぱいいるくだりは笑ってしまったし、万造がヒマワリのアップリケを付けるシーンはキュンとなった。全体的には面白いストーリーだったので、もう少しテンポをよくしたりメリハリをつければ、と残念なところが多かった。

ところでラストのお魚さんはどう解釈していいのでしょうね。

(1)うっかり落としたか捨てた
(2)持ってた人が身投げしたか殺された

2番目でいい、と思ってしまう私は鬼ですかね・・・。
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ハリー・ポッターと謎のプリンス('09イギリス=アメリカ)-Jul 16.2009
[STORY]
ハリー(ダニエル・ラドクリフ)はダンブルドア(マイケル・ガンボン)に連れられてホラス(ジム・ブロードベンド)という男に会う。ホラスはかつて魔法薬学の教授としてホグワーツで教鞭を取っており、ヴォルデモートがトム・リドルという少年だった頃に最も親しかった教師だった。だが、ヴォルデモートの復活を知ってからは身を隠していた。ダンブルドアはホラスにホグワーツに戻ってきて欲しいと頼み込む。それはホラスがヴォルデモートに関するある秘密を隠していたからだった。
監督デヴィッド・イェーツ(『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』
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シリーズ6作目。監督は前作と同じデヴィッド・イェーツで、次回作『ハリー・ポッターと死の秘宝』の監督にも決まっている。『死の秘宝』は前編と後編の2部作になることも決定している。

本作は次の最終章へのための序章という感じで感想も書きにくいんだけど、前フリばかりで上映時間が長い割には最後まで盛り上がりに欠ける作品になってしまったなという印象。ハリーとダンブルドアがヴォルデモートの魂が入っているという分霊箱を取り出すシーンなんてものすっごい地味で(笑)「映画としてこれでいいの?」なんて思っちゃった。少年時代は出てくるけど現在のヴォルデモート(レイフ・ファインズ)が今回登場しないのも物足りない。

まぁ何だかんだ言って今まで全てのシリーズを劇場で見てるんだけど、原作を読むのを途中でやめてしまったからか、大筋は理解してるんだけど細かいところが分からなくなってきたのがちょっと悔しい。本作にしても、何でこんなところから映画が始まるのか?ハリーは何でこんなところにいるのか?というのが分からなかったし、タイトルにある“謎のプリンス”の正体が分かっても「はぁ、そうなんですか」という感想しか出なかった。原作だとプリンスの正体が分かったことで何か驚くべき事実が明らかになってるんでしょうか?(といってももう原作を読む気はないのよね)

今回はヴォルデモート関係以外では、ハリー、ロン、ハーマイオニーの恋愛話が大きく進展している。ロンがいきなりモテてるのが謎だし、ハリーがロンの妹を気にしてるのも唐突で、なんか置いてけぼりにされたような気分になったが(それも原作を読んでいれば違和感ないんだろうね)ハーマイオニーがやきもきするところは可愛かったなぁ。あと個人的に双子の兄ちゃんがカッコよくなってたのが嬉しい驚き。それとドラコ・マルフォイ(トム・フェルトン)は顔変わり過ぎだ。特殊メイクでわざと悪人顔にしたのかと思ったほど。来日時の写真を見ると悪人ではないが、それでもアゴ伸びすぎだろう(失礼)将来、ドラコも恨みが強くなって第2のヴォルデモートにならないか心配だわ。

とにかく次回の2部作できっちり盛り上げ、きっちり着地させてほしい。それだけ。
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それでも恋するバルセロナ('08アメリカ=スペイン)-Jul 5.2009
[STORY]
アメリカ人のヴィッキー(レベッカ・ホール)とクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)の2人は、スペインのバルセロナを訪れる。そしてあるパーティーで画家のフアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)と出会う。彼は建築家のマリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)と離婚したばかりで、別れる時には刃傷沙汰にもなったという噂の男だった。そんな彼がいきなり2人をオビエドに連れていきたい、2人と寝たいと言い出す。ヴィッキーは怒るが、クリスティーナは彼に興味を持ち、結局2人はフアン・アントニオとオビエドへ向かう。
監督&脚本ウディ・アレン(『タロットカード殺人事件』
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ウディ・アレンがヨハンソンをヒロインに迎えた3作目。ペネロペ・クルスが第81回アカデミー賞の助演女優賞を受賞した。

振り返ってみると、ヨハンソン出演の3作の中では『マッチポイント』が一番面白かったな。これは2番目ってところ。でもペネロペ・クルスがオスカー受賞ってのは納得しかねる。確かに彼女は存在感があったけれど、それはエキセントリックな役だったからでは?演技としてはそれほど良かったとは思えなかった。

保守的なヴィッキーと奔放なクリスティーナは2人とも同じスペイン男を好きになるのだが、どちらのアメリカ娘もスペインの荒々しい女には勝てなかった、つーか男も女も勝手気まますぎてついていけなかった、というお話。スペインの情熱に浮かされて同じように振舞おうとするも、ふと我に返ってやっぱり違う!そうじゃない!となるわけ。最後のヴィッキーとクリスティーナの表情がこの映画を象徴している感じでとてもよかった。

映画の内容から逸れるが、3作見てやっぱり思ったのはアレンのヨハンソンに対する歪みきった愛ですな。一番楽しめたのは内容よりこれかも(笑)他のアレン映画ではベッドシーンがあまりないけど、この3作についてはヨハンソンのベッドシーンにかなりネットリと長く時間をかけて撮っている。また、役柄は3作ともあまり賢いとは言えないキャラクターで、男に翻弄されるばかりで幸せを掴めずじまい。なんかこう、自分が恋人や夫の役を演じられない悔しさをぶつけているようにしか見えないんだが(苦笑)ヨハンソンもこんな役ばっかりよくやったよね。今後も出演予定はあるんだろうか。

個人的にはヨハンソンでもクルスでもなく、ヴィッキーを演じたレベッカ・ホールが私は印象に残った。特別美人というわけではないし地味なんだけど、日本人が一番共感しやすい、普段は常識ある真面目な人間だが本当はちょっと冒険してみたい、というキャラクターを自然に演じていたからかもしれない。クリスティーナとマリア・エレーナだけだったら観客はついていけない映画になっていただろうな。ヴィッキーがいたからちょうどいいバランスの取れた作品になった。
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扉をたたく人('08アメリカ)-Jul 4.2009
[STORY]
コネチカット州で大学教授をしているウォルター(リチャード・ジェンキンス)は、妻を亡くしてから仕事に打ち込むことができなくなっていた。ピアノを習い始めるもうまく弾けずに教師を何度もクビにしていた。そんなある時、学会のためにニューヨークに出張し、25年前から借りている別宅のアパートに帰ってみると、そこには見知らぬ外国人カップルが住んでいた。
監督トム・マッカーシー(『The Station Agent』)
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監督&脚本のマッカーシーは『父親たちの星条旗』で、ジョン・“ドク”・ブラッドリーの息子ジェイムズを演じた俳優でもある。
脇役として活躍しているリチャード・ジェンキンスの初主演作品で、第81回アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされるなど、数多くの映画祭でノミネートや受賞を果たしている。

堅物の男がひょんなことから西アフリカの太鼓ジャンベを演奏する若者と知り合い、ジャンベの虜になり、若者とも友情を育んでいく楽しい物語だと思っていたのに、こんなに遣り切れない話だったなんて・・・。ジャンベはむしろ脇役で、メインテーマは“アメリカの移民問題”でした。

2001年9月11日にアメリカ同時多発テロが起き、そのわずか45日後に「米国愛国者法」が成立した。これは事件を起こしていなくても予防という意味で外国人を検挙できるという法律だ。特にイスラム系移民が主な対象となった。そして翌年には「移民・関税管理局」が非合法移民を5年間で半分にするという計画を発表。まさにこの政策にタレク(ハーズ・スレイマン)が当てはまってしまったのだ。しかも彼はテロ支援国家だと名指しされたシリア出身だ。タレク個人を知っているウォルターや観客にとっては、タレクがテロ目的で入国しているなんて絶対に違うと分かるが、国側から見たらシリア出身でミュージシャンなんて怪しいと思っても仕方がないだろう。

わざとか分からないが、すごく丁寧なところもあるし物足りないほどブツッと切っている場面もあり、見てるこっちの感情の置き所が分からなくなってしまう映画だった。特にタレクがもう登場しないと分かった瞬間は思わず「え?」と声を上げそうになっちゃったもの。これがもし邦画なら、こっちがうんざりするくらい別れのシーンを見せて泣かせようとするだろうに。このあっけない幕切れに、怒ったり泣いたりもできなくて、ただやるせない気持ちで劇場を出るしかなかった。その後、ウォルターがあそこでちゃんと改札を通れていれば、タレクの母モーナ(ヒアム・アッバス)が書類を捨ててなければ、そもそもタレクがあそこに住んでなければ・・・なんてことまで考えてしまった。○○が一番悪い!というのがないから余計にタチが悪い。ウォルターもモーナもタレクも、みんながちょっとずつ悪いことをしてしまったことで大きな不幸を呼んでしまったんだな・・・。

これはこれでいい映画だったけど、私としては想像していたような楽しい異文化交流映画を見たかったな、とも思う。
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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破('09日本)-Jun 28.2009イイ!★
[STORY]
北極で封印されていた第3使徒が復活し、真希波・マリ・イラストリアス(声:坂本真綾)が搭乗するエヴァ仮設5号機が迎撃した。
一方、日本では初号機と零号機に加え、実践用のエヴァ2号機が配備され、パイロットとして式波・アスカ・ラングレー(声:宮村優子)が来日する。当初はシンジ(声:緒方恵美)とレイ(声:林原めぐみ)を蔑視していたアスカだが、第8使徒との戦いで1人では戦えないと分かると、次第にシンジたちに心を開くようになっていく。
総監督・庵野秀明(『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
−◇−◇−◇−
前作『序』はTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』とほぼ同じ内容だったが、本作は新たな登場人物や使徒が登場し、ストーリーも独自のものとなっている。また、旧作ではアスカの苗字が惣流(そうりゅう)だったが、本作では式波(しきなみ)となっている。

TV版とは違う展開ということだけは知っていたけれど(本作は試写会も行われず公開直前まで情報がほとんど明かされなかった)オープニングから度肝を抜かれ、ラストまであっという間。一言で言うと「おもしれぇーーーーー!」って感じでした(笑)

ストーリーについては新たな謎も増えて余計に分からなくなってしまったところもあるけど、映像が大迫力で満足できた。家に帰ってからまた『序』のDVDを見直してしまったんだけど(ヘヘヘ)これよりさらに映像のクオリティが上がっているのがよく分かった。特に戦闘シーンの迫力と使徒の気持ち悪さが格段に違います。全体的に、人間もエヴァも使徒もみんな生々しくなったと思う。それがあらかじめ意図したことなのか、映像技術の向上のせいなのかは分からないが。

まず人間のキャラクターだが、レイがTV版よりより感情を出すシーンが多くなり、アスカの勝気な理由も分かりやすくなったし、シンジも何だかんだ言いつつカッコよくなった。以前の無機質さや中二病感が薄れたのは寂しくもあるが、私には以前はちょっとウザすぎたので、これくらいがちょうどいい。また、食事を作ったり食べたりするシーンが多く、魚が泳ぐシーンなどを入れたことで“生きるということ”をより強調している。

そして今回のエヴァは動きがやたらセクシー(笑)元々手足が長くて細腰というロボットアニメにはないスタイルだったけど、本作では特に下半身がたまりません(鼻血)膝を曲げたり腰を落としたり走ったりする姿に萌えます。使徒は使徒で動きが滑らかになり、死ぬと大量の赤い液体をぶちまける。エヴァも使徒も生き物であるということを強調している。

『序』の時点ではまだ『破』をどうするか決まってなかったようだが、この『破』を完成させた今、次回作の方向性は決まっているのだろうか。上に書いたように生々しさを強く感じたということが今後のストーリーにどう影響していくのか、私はそこに注目していきたい。つーか、難しいことを書こうとしたけど簡単に言うと「早く続きを見せろー!」ってことです(笑)
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